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アスリートが集う『格闘DREAMERS』のなかで、放送初回から、「再婚した父のDVから母や自分を守るために強くなりたい」と語っていた漆間將生。
地下格闘技から、日の当たる場所へ。2次オーディションを通過したが、「朝倉未来1年チャレンジ」合格者の畠山祐輔に敗れ、最終予選の2週間前のEXFIGHTでの試合では、レスリングの強豪・原口伸にも苦杯を舐めた。
悩み、もがき続ける漆間の相手に「最終審査」では、2020年PANCRASEアマチュア全日本オープントーナメントライト級優勝&2021年3月のDEEPフューチャーキングトーナメントフェザー級優勝という“怪物”吉村海飛(和術慧舟會HEARTS)が、用意された。
「7試合連続KO勝ち」の吉村に、漆間も沈められるのか?
5月15日(土)20時30分から、ABEMAにて配信される「最終審査」での“外敵”との試合を控えた漆間に、その想いを聞いた。
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この壁は、これからの人生において絶対に大事になってくる
――『格闘DREAMERS』では、様々なバックボーンを持つアスリートが揃うなか、異色の経歴で戦う姿勢を示している漆間選手です。元々のバックボーンは何ということになるのでしょうか。
「バックボーン……番組でも話したんですけど、最初、小中学生のときに辛いDVを経験して、それで前の親父と闘いたいなと思って、格闘技や護身術を独学で学んだり、プロレス好きで技とかを真似していました。
サッカー部にいるときに見つけた総合格闘技道場に通って、そこで空手を2年ほど学んだんですけど、地下格闘技にしか出られなかったんです。僕がいた九州のほうでは、そういった大会はどこも似たようなルールで、殴って殴って、グラウンドにバーンって行ったら、グラウンドは5秒しか許されなくて起こされる。チョーパン、頭突きとヒジもOKというルールでやっていましたが、高校卒業時に、ちゃんとしたところで寝技もやりたいな、総合格闘家としてやりたいなと思って、レスリングや寝技ベースのジムに移りました。でも地下格闘技にしか出してくれなくて……。
当時、THE OUTSIDERが有名で、そこに選手をよく出している桂塾という、鹿児島で菊野克紀さんがいらっしゃったところに行こうと思って。そこで技術以上にメンタル面を鍛えられました。空手をベースに稽古を積んで、それで6年間ほど練習してきました」
――では、MMAの基礎から習ったという形ではなかった。
「そうですね。桂塾には菊野克紀さんの師匠がいらっしゃるんですけど、その塾長が寝技とかも自分で編み出す感じで、さらにアームロックだったらアームロックだけを極めるみたいな感じの練習方法でした。あとは、大学時代に少し柔道部に入って、高校レスリング部に出稽古に行かせてもらったりもしました」
――小学生くらいからDVを受けたというのは……。
「些細なことから母が暴力を受けて僕自身へのDVも中2の頃まで続きました。最後は、母が裸足で外に逃げ出して、パトカーが来て、親父が連れて行かれて終わったという感じでした」
――……壮絶ですね。子供の頃から母親が暴力を受けているのを見て、何とかしたいと思っていた。
「そうですね。目の前で見ていて、歯向かったんですけど、小学生だからやられて……その恐怖心も植え付けられて」
――それで自分が強くならないといけないと思ったのですね。
「そうですね。母はストレス障害が残って、祖母も人工透析を受けなければならなくて、金銭面とかも大変で、高校へ行ってずっとバイトをしていました」
――漆間選手さんはいわゆるヤングケアラーになるしかなかった。本来大人が担う家事や家族の世話などを日常的に行ってきた。そのなかで学校にも通う必要あった。行政の助けだけでは足りないほどですね。
「障害年金だけではとても暮らすこと出来ないので、自分が現場に出て働きながら、練習をしてきました。母が行ってほしいということで、奨学金で大学に行ったのですが、これも借金ですし、医療費用もかさむのでバイトをずっとして」
――学校ではどんなことを学んだのですか。
「祖母の介護に携わりたいなと思って、福祉を選んで、メンタルケアとか心理学的なものを学びたくて……でも、その頃に母の病気もあって、なかなか学校にも行けていないです」
――それで、漆間選手が働きながら格闘技の練習も続けてきた。
「そうですね。働いて格闘技して、働いて格闘技して……。日頃のストレスを格闘技にぶつけていたというのもあるかもしれないです。自分もみんなと遊びたいなとか思ってたんですけども、強くなるしかないなと思って、数年間を費やしてきました」
――憎しみが原動力になることはあると思いますが、そこをモチベーションにやり続けることは大変なことだとも思います。やっていくうちに、格闘技自体の厳しさや楽しさの中で、強さを得ていく瞬間もあったのでしょうか。
「自分は幼少期からDVを受けているときに、学校の友達とかにも隠しようがない状況だったので、けっこう地元の人は知っていて、そんな中で、『親父を見返すために頑張れよ』と応援してくれる人が増えたんです。大会で対抗戦があったときに、相手の大将格を倒したときにすごい反響があって、MMAで戦って、こんなにみんなが応援してくれるんだと、総合格闘家として生きることが、みんなの力にもなるなんて、すごいなと思ったんです。
そういう応援が、自分の原動力になっていることもありますし、やるからには、日本で留まりたくない。その先にある世界を目指したい。そう思って、東京に出て来ました。家族の病気や借金もあるので、仕送りをしながら練習していくなかで、周囲の友達もサポートしてくれたりもしています。だからもっと強くなりたいです」
――漆間選手は「THE OUTSIDER」にも出られていますね。
「60-65(kg)に出させてもらって、チャンピオン挑戦トーナメント決勝で負けました」
――その「THE OUTSIDER」出身の「朝倉未来1年チャレンジ」にも挑戦したそうですね。朝倉未来選手はどんな存在ですか。
「アウトサイダーからRIZINに出られて、僕もアウトサイダーで活躍したので、早く追いつけるんじゃないかな、そこを目標に頑張ろうと思って、未来さんのその企画で頑張ってみようと思い応募したら、最終選考までいきました。そこで未来さんとスパーさせてもらって……レベルの差も感じて、落とされたんですけど、やっぱり抜けていてすごい選手なんだなと感じました」
――上を目指す以上、そういったレベルの差を感じることはこれからも何度もあると思います。そういった中で、いま『格闘DREAMERS』にチャレンジして、感じていることはどんなことでしょうか。
「東京に出てきたのも、周りのサポートのおかげもあって、絶対ここで力をつけて大成するぞという気持ちがあります。高谷裕之さんや岡見勇信さんに出会って、貴重な意見をもらってこうして試されていることで、その気持ちが強くなっています。
一方で出稽古先のプロ選手とスパーリングすると──今までは鹿児島のほうでは自分が相手に恐怖を植え付けて、上で戦ってきたんですけど、こっちで逆に恐怖を植え付けられてしまって──この人は越えられないんじゃないかと思ってしまう場面が出てきて、自分の持ち味が出せない部分が多くなって、ちょっとつまずいていて、ストレスや不安を感じています。
いろいろジムに連絡して、出稽古で1日、2日行くだけで、自分が知らない技術がたくさんあって……今までも大事なポイントをノートに書いているんですけど、こっちに来るともう本当に、毎日ずっと書いていて、逆に頭に入り切らないくらい、覚えるべき技術の量が多くて。そこにどう自分をマッチさせるのかも……。
でも、そこを乗り越えていかないと絶対上にはいけないと思っているので、これから本当に技術面もそうですけど、やっぱり一番はメンタルを鍛えて、最終審査に向けてやっていきたいと思っています」
――『格闘DREAMERS』で、最初にEXFIGHTで中村倫也選手とスパーリングして、気持ちの強さを見せました。より格闘技を知っていくなかで、伸び悩みもある。階級も上げてどんな葛藤がありますか。
「打撃が得意だったのが、こっちに来て、戦績的には一本勝ちとKO率が半分くらいで、何が飛び抜けているのか自分でも分かっていないんです。鹿児島に行ったときは、ずっと打撃でやってきたんですけど、こっちに来て、打撃のトップレベルの選手に会って、逆に組み技で動けている。打撃はいいときもあるけど悪いときもあって、自分はどういう選手で上がっていけるのか、何かきっかけがないとたぶん上には行けないと感じています。
階級を上げたというのは理由にはしたくない。自分の100パーセントを出せることが出来ていないので、高谷さん、岡見さんに期待してもらっている分、本当に死ぬ気で頑張らなきゃいけない。ここで何か結果を残さないと、これからもやっていけないと思うし、この壁は本当、これからの人生において絶対に大事になってくると思っているので、この時間は本当に大事にしてやっていきたいと思っています」
――持ち味はどこにあると、ご自身では思っていますか?
「鹿児島のときは、自分の三日月蹴りやバックスピンで道場生が怖がってしまうので『三日月とバックスピンは禁止』と言われていたくらいだったんですけど、こっち来てから全然通用しなくて、逆に自分が怪我しちゃうこともあり、それだけの武器じゃ生きていけないとすぐに感じました。自分の持ち味は、幼少期から乗り越えてきた環境が違うメンタル、そして(宇佐美)パトリックとガチスパーやっても倒れないくらいの打たれ強さにあると思っています」
――体重も違いますね。
「『ゾンビ』と言われているんです。こっちに来てからそう言われ始めたんですけど、そういう試合が最近できていない。やりきれていないのに終わっちゃうのは、相手の打撃にビビって、怖がって、レスリングとか寝技に逃げているから。ほんとうの意味での攻めの動きじゃない。ここを克服しなくちゃいけないです」
――漆間選手は配信では厳しい場面が映し出されていますが、「朝倉未来1年チャレンジ」での畠山祐輔選手との試合は「完全版」を拝見すると、敗れはしましたが、悪くない内容でした。それに、最終予選の2週間前のEXFIGHTでのアマチュアMMA大会でも敗れましたが、相手はフリースタイルレスリングで全日本選手権70kg級を制しているBRAVEジムの原口伸選手。アマチュアではかなりの強豪です。今回の「最終審査」に向け、そして、今後の目標を教えてください。
「そうですね……自分、本当に悩むことはあんまりなかったんですけど、いまの自分にすごくストレスを感じています。『格闘DREAMERS』の最終審査で強い“外敵”との試合(※吉村海飛(和術慧舟會HEARTS・2020年PANCRASEアマチュア全日本オープントーナメントライト級優勝&2021年3月のDEEPフューチャーキングトーナメントフェザー級優勝。7試合連続KO勝ち)が決まっているので、『格闘DREAMERS』でここまで残った者として、本当やるしかない。まずここで勝ち残って、世界に出て戦った高谷さんや岡見さんについていって、誰も寄せ付けないくらいの強さを持ちたいです。
UFCとか軽々しくは言えないですけど、そこで勝つことが日本の期待でもあるし、格闘技が広まることにもなると思うので、UFCを目指してやっていきたいと思っています」
――この選手にだけは負けたくない、とライバル視している選手はいますか。
「最初はずっと倫也さんをターゲットに火が点いてたんですけど、最近は、打撃はこっちが教えるし、寝技はこっちが教えてもらうという、いい関係も出来ているので。もしも、同じLDH martial arts所属で戦えることになったら、ちゃんと倫也さんよりは上の戦績を出していけるように頑張っていきたいと思います」
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