2025年4月19日(日)東京・後楽園ホール『RISE 187』のメインイベントで、バンタム級(-55kg)3分3R延長1Rで同級3位・大森隆之介(EX ARES)が同級1位・鈴木真彦(TEAM 寿)と対戦する。
大森は2020年1月のプロデビュー後、2021年7月に有井渚海に負け連勝がストップするもその後は田渕神太、良星、京谷祐希ら格上を次々と撃破したが、2022年12月に加藤有吾に判定で敗れ連勝がストップ。しかし2024年3月、13戦全勝の山田虎矢太をバックハンドブローでKOする大番狂わせを起こした。8月にはバンタム級王者・大﨑孔稀に挑戦したが判定で敗れ王座戴冠ならず。2025年1月、フェザー級で同級5位・平野凌我を判定で破った。戦績は9勝(6KO)3敗。
自分が“追いついたな”って感覚がある
――喉の調子が悪そうですが、コンディションは仕上がってきていますか?
「めちゃくちゃ仕上がっています。体も今までで1番張りのある状態で体重を落とせました」
――前回はフェザー級で試合をして今回はバンタム級での試合ですが、1度階級を上げてまた落としてというのはキツさは感じないですか?
「それはちょっとしんどかったですね。57.5kgまで落としたら今まで通りリバウンドしたので、67.5kgまで増えてしまったので、結構きつかったです(笑)」
――10kg増えたんですね。
「それを見た瞬間『やばい!』って思って、ちゃんと節制しました」
――どれくらいから節制し始めましたか?
「1月の試合が終わった5日後には67.5kgになっていたので、そこから焦って落とし始めました。でも息上げは良い感じにできていますね。ただ前の試合は本当に体調不良で、追い込みはほとんどできていなかったので、前回からの“お釣り”みたいなのは全くないですね。今回ほんまに仕上げていけてるのが幸せです」
――前回の平野選手との試合はあまり調子が良くなかったということも仰っていましたけど、その辺については何が原因でしたか?
「免疫がちょっと弱いんですよね。もしその辺り詳しい人がいたら教えてほしいです(笑)」
――今回はずっと戦いたいと言っていた鈴木真彦選手との対戦ですが、会見でも言っていましたが、改めてなぜそこまで鈴木選手を追いかけてきたのか教えてください。
「それが『なぜ?』と聞かれると意外と何もなくて。でも手の届かなかった選手が届くようになってきたという実感が自分の中にあって、その中で自分が勝った時に成長を実感できると思った選手が、僕がデビューした時からずっとトップを走っている鈴木真彦選手なのかなと思ったんですよね。だからそういう所で“勝ちたい”という気持ちが他の選手と戦うより強い気がしています」
――鈴木選手という、RISEを支えてきた1人の選手を超えることで、自分自身が今までやってきたことの成果を感じるために必要な1戦ということですね。
「そういう感覚ですね」
――客観的に見た鈴木選手は、ファイターとしてどんな印象がありますか?
「打ち合いで問答無用にどんどん前に突っ込んでくるというか、昔はそれがめちゃくちゃ強いイメージがありました。『これにどうやって勝つねん』みたいな。デビュー戦の時とかは勝てる気がしなくて、5ラウンドやっても体力が続くし怖かった印象が最初はありました。でも自分は自己評価が低いんですけど、『まだまだや』って思っていたのがそう思わなくなってきて、ちょっとずつ『俺の方が上手いな』って思うようになってきて、今は怖さというより楽しみが増えてきています。最近になって自分が“追いついたな”って感覚があります」
――タイトルマッチを経験して、色々な強い選手を超えて着実にステップアップしてきているから、その自信に繋がっているんですね。
「小さい目標をクリアしてきたから、大きい目標も大きく感じなくなったって感覚です」
――おそらく鈴木選手はフルラウンド前に出てくるような戦い方で来るのではないかと思うのですが、その戦い方には付き合いますか?それとも付き合わずに躱していくような戦い方になりますか?
「僕に関してはどっちもできるので、選べる立場ですよね。鈴木選手は接近戦にバロメーターを振り切っているというか、僕は割合的に7-3とか5-5くらいなので、展開によるかなとは思います。でも躱していったとしても打ち合うタイミングは絶対に来るし、そのタイミングで僕は倒す感覚というのを持っているので、打ち合いの中で倒すんだろうなという予感がしています」
――自分の方が距離やファイトスタイルの選択肢が多い分、その場の試合展開によって戦い方やスタイルを変えていく戦いになりそうですか?
「ただ格闘技って頑固なやつが強いじゃないですか。向こうは『一つのことをやっている方が強いぞ』と思っていると思いますけど、それは違うんですよ。僕は色んなことをやるっていうことを一つの事として見ているので、そこに迷いはないという感覚です」
――そういった部分では、柔軟に色んな事に対応していくスタイルを突き詰めているのが“大森隆之介スタイル”ですね。
「そうですね。なので鈴木選手とは対照的なスタイルですよね」
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SNSを使う事が全てではない
――一緒に練習している門口選手は今回の試合に関して何か言っていますか?
「EX ARESに関しては、今目標とか見る点を大事にしていて、『どこにゴールを設定してそのためにどこに届けたいのか』みたいな自分がどういうふうに動けば良いのかってことを大事にしているんですよ。鈴木選手って多分そうではなくて、どちらかというと無我夢中にやってきたファイターだと思うんです。僕は志を持っている者の大きさとかが、絶対にファイトスタイルに影響してくると思っているので、『そういう所をEX ARESとして見せたいね』って話はよくしています」
――朝礼を練習前にみんなでやっているのを拝見したのですが、そういう部分も変えていこうっていう取組みなんですか?
「コーチングを勉強したりしているんですけど、“チェックイン”をすると、練習に入る前にリフレッシュして、自分が本当に今日やるべきことを頭にしっかり叩き込めたり、今ある感情をそのまま伝えるという事をやってから練習に入れるので、気分が上がってすごく良いなと思います」
――大森選手は「ファイターの意識的な部分の底上げや、ファンの開拓をしたい」と仰っていると思うんですけど、その辺りについて大森選手から見た最近のファイターはどういう風に映っていますか?
「人によるっていうのが率直な意見ですね。頑張っているファイターは頑張っているし、逆に頑張っていてもミスっているやつもいるし。10人全員に好かれたら良いって訳じゃないですけど、刺さりすぎるのも良くないなと思っているので、本気で大きくしようと思っていくと自分1人とかファイターだけの力では限界があって色んな知見のある人と組まないと難しいかなと思っています。フェーズ的には良いかなと思っていて、ちょとずつSNSや外に向けるってことに対しては、みんな頑張っている印象があるので、ここからもうちょっと詰めていきたいなと思っています」
――ファイターの意識改革やファンの獲得を得るために、いま大森選手が取り入れている事ってあるんですか?
「僕が言いたいことは『SNSを使う事が全てではなくて、人に届くための努力が必要』っていうだけなので、皆に何かを感じてもらえるのが格闘技だと思っているので、SNSだったりタイミングだったりをもっと突き詰めていきたいです。今回はこの試合に懸けているので、正直全然できていないというかやっていないんですけど、格闘技には格闘技の本物の魅力があるぞって事を、ずっとSNSで発信してきた僕だからこそ、発信しないという手段を取って皆に届ける方法を模索しています」
――それが先日SNSに書いていた『俺なりの試合の見せ方』っていうのに繋がる訳ですね。
「そうですね」
――試合まで10日くらいですが、残りの期間でその過程や表現を見せたいと考えていますか?
「これをやりたいとかは思っていなくて、ただただ試合に勝つっていう事だけを考えています。ただやっぱり勝つだけだと面白くないので、テーマが必要だなと思いました。鈴木選手と試合をして自分がどうしたいかっていうテーマを絞り出すと、言葉は悪くなりますけど『鈴木選手の時代を終わらせたい』と思ったんですよね。今、天心から龍心になったように、鈴木真彦から大﨑孔稀に、門口佳佑から安本晴翔に変わって若い世代にチャンピオンが変わっている中で、鈴木選手がいなくなった方がきれいに新時代になるかなと思ったんですよ。だから時代を変えるつもりで終わらせにいきます」
――最後にファンの皆さまにメッセージをお願いします。
「今回の大会は自分の中ですごく思い入れのある大会で、SNSもあまりできないくらい集中してやってきているというか、それだけこの試合に懸けています。当日は1番仕上がった僕が見れると思うので、楽しみにしていてください。勝手に応援したくなります(笑)」