(C)ONE Championship
2024年3月9日(土)10時から、タイ・バンコクのルンピニースタジアムにて『ONE Fight Night 20』(U-NEXT配信)が「国際女性デー」を祝してオール女子ファイターの大会として開催されている。
▼第9試合 ONE世界アトム級キックボクシング王座統一戦 3分5R
×ジャネット・トッド(米国/正規王者)
[判定0-3]
〇ペッディージャー(タイ/暫定王者)
※ペッディージャーが王座統一、初防衛に成功。
“JT”の愛称で呼ばれるトッドは母親が日本人。流ちょうな日本語も話し、日本でも出稽古で江幡兄弟との練習経験を持つ。宇宙工学のエンジニアの仕事もこなす才女でもある。2017年IFMA世界選手権で銅メダルを獲得したのを筆頭に、アマチュアムエタイで数多くのメダルを獲得。2019年2月からONEに初参戦すると、いきなりスタンプ・フェアテックスのアトム級ムエタイ世界タイトルに挑戦したが判定負け。
その後は3勝(2KO)の戦績をあげ、2020年2月にスタンプと今度はキックボクシングルールで再戦。判定2-1でスタンプを破り、ONEアトム級キックボクシング世界王座を奪取した。2022年7月にはララ・フェルナンデスに勝利してアトム級ムエタイ暫定世界王座にも就いたが、2023年3月の王座統一戦で正規王者アリシア・ヘレン・ロドリゲスに敗れた。
暫定王者のペッディージャーは7歳でムエタイを始め、「男の子を打ち負かす少女」として有名となり、10歳で100戦以上を戦い、そのうち70回以上は男子選手との戦いであった。有名になりすぎてテレビで試合が放送されるようになると、タイの法律によって男子選手との試合は禁止に。2016年2月には『ムエタイオープン』に初来日し、小林愛三と対戦して判定負け。2017年11月にはシュートボクシングに再来日するとMIOに判定負けを喫している。
ムエタイで順調に勝ち星を重ねる中、アマチュアボクシングのタイ代表として選ばれ2018年AIBA女子ユース世界選手権48kg級銀メダルになるなど活躍。2022年8月にはプロボクシングデビューも飾っている。ムエタイでの獲得タイトルは、WPMF世界ミニフライ級王座、WMC世界-45kg級王座、2021THAI FIGHTクイーンズカップ-51kg級優勝など。ONEには2023年3月から参戦し、4連続TKO勝ちを収めると2023年12月には“世界最強女子”として知られるアニッサ・メクセンを判定3-0で破り暫定王座に就いた。
1R、ジャブを突くトッドに対し、ペッディージャーは右ミドルを蹴っていく。トッドのジャブの引き際に右ストレートを入れるペッディージャー。ジャブから右フック、すぐに前蹴りとつなぐペッディージャーにトッドはジャブから左ロー。ペッディージャーの右に対してトッドも右を合わせに来るが、ペッディージャーはヘッドスリップして自分だけ当てる。ペッディージャーは右ミドル、ワンツーから左ミドルとつなげた。
2R、右の打ち合いとなるが、ペッディージャーは左右ミドル、左ヒザも織り交ぜる。ムエタイのベタ足ではなく前後のステップを踏むペッディージャーは、入る時は左足を上げて踏み込む。トッドはペッディージャーが前へ出てくると左フックを打って左側へ回り込み、ペッディージャーを右フックからの左フックで迎え撃つ。ペッディージャーはワンツーを打ち込み、左ハイも放つ。
3R、ペッディージャーは左右ミドル、左ボディからの右ミドル、前蹴りと縦横無尽に多彩な攻撃で前へ出て行く。トッドもジャブやヒザで対抗するが、ギアを上げたペッディージャーが圧を強めてパンチと蹴りを織り交ぜる。テンカオも鋭く突き刺す。下がりながらもワンツーを打つトッドにペッディージャーは右ミドル。終盤には右ストレートを3発立て続けに当てる。完全にペッディージャーのラウンドに。
4R、トッドのパンチを左ミドルで迎え撃ったペッディージャーはパンチで前へ出る。ワンツーからの左ミドル、トッドの蹴りはかわして右ストレート。ヒザでボディを攻めておいての左ボディも打つペッディージャー。右ストレートをヒットさせて距離を作るとすかさず左ミドルも当てる。ペッディージャーが前へ出てヒザ、すぐに右ストレート。
5R、ペッディージャーが左ミドル、ワンツーから右ミドル、ワンツーで迎え撃つトッドにペッディージャーは前蹴り、左右ミドル、ヒザで前に出て右ストレートを放つ。残り半分を過ぎると、ペッディージャーは左ヒザを連発、左ボディも打つ。トッドが左ミドルを空振りして半回転したところにペッディージャーが右ストレートを打ち、トッドが転倒してこれがダウンになる。最後は打ち合いを見せたトッドにペッディージャーも応じた。
判定3-0でペッディージャーが勝利。王座統一と世代交代に成功し、22歳の新女王が誕生した。「国際女性デーの日にこういった結果を残せたことが嬉しいです。もちろんキックボクシング王座も防衛したいし、ムエタイのタイトルも獲りに行きたい」と2種目王者になりたいと宣言した。
トッドは爽やかな笑顔で「素晴らしい才能のある選手と戦えたことに感謝します。若いタレント性のある選手と戦えたことを誇りに思います。泣きそうな気持です。みんなありがとうございます。私の人生を支えてくれた皆さんに感謝します」と泣きながらメッセージを送ったトッド。「ここで私の夢が叶ったことは最高のことでした」とチャトリ代表への贈り物をリングアナウンサーに渡すと、両手のグローブを外してリングの上に重ね置き、現役生活に別れを告げた。