(C)Josh Hedges/Zuffa LLC via Getty Imeges
2020年10月17日(日本時間18日)、アラブ首長国連邦・アブダビの「UFCファイトアイランド」にて「UFC Fight Night: Ortega vs. Korean Zombie」が開催された。
UFC Fight Night: Ortega vs. Korean Zombie
2020年10月17日(日本時間18日)UFCファイトアイランド
アラブ首長国連邦・アブダビ
【メインイベント】
▼フェザー級 5分5R
○ブライアン・オルテガ(米国)146lbs/66.22kg
[判定3-0] ※50-45×3
×ジョン・チャンソン(韓国)146lbs/66.22kg
メインイベントで、フェザー級2位のブライアン・オルテガ(米国)と4位のジョン・チャンソン(韓国)が対戦。計量では、オルテガ、チャンソンともに146ポンド(66.22kg)パスしている。
当初、両者は2019年12月の韓国釜山大会で対戦予定だったが、オルテガがヒザの負傷で欠場、チャンソンは緊急出場したフランキー・エドガーに1R TKO勝利し、今回のオルテガ戦を迎えることとなった。
巧みなボクシングに加え、強力な柔術を武器に、2018年3月のフランキー・エドガー戦の1R KO勝利まで14勝1NCと負け無しも、12月の前戦マックス・ホロウェイ戦で4R TKO負けで初黒星。ヒザの負傷から1年10カ月ぶりの復帰戦となる。
今回の“コリアンゾンビ”との試合では、ヘナー・グレイシーが新型コロナウイルスの検査で陽性となり、再起戦のオルテガのコーナーにつくことが出来ないという。今回は新チームで進化した姿を見せられるか。
前日計量前では、髪をバリカンで切り落としてる動画をアップしたオルテガ。減量苦からのものと思われたが、実際には、化学療法を受けるなど髪の毛を失いウィッグを必要としている子どもたちのために、ヘアドネーションとして寄付したことをマネージャーのティキ・ゴーセン(元WEC・UFCファイター)が明かしている。
対するジョン・チャンソン(韓国)は、UFCでメインイベントを張ることができる数少ないアジア人ファイターの1人。
日本の戦極等で活躍し、小見川道大、石渡伸太郎にも勝利しているチャンソンはMMA16勝5敗。キックボクシングでも15勝6敗の戦績を誇るストライカーで、MMAではオルテガより3年長いキャリアを持つが、UFC参戦中に兵役で2年間ファイターを休業していたこともあり、2011年からの9年間でまだ8試合。打ち合い上等のスタイルと見られがちだが、戦いに幅の広さがあり、息の長さも見せている。
今回、名将エリック・アルバラシン(ヘンリー・セフードやピッチブル・ブラザースのコーチ)からは、スカイプによりアドバイスを仰ぎ、ファイトキャンプでは、米国から韓国にジョニー・ケースとボビー・モフェットをトレーニングパートナーとして呼び寄せ練習を行って来た。
2018年11月に1年9カ月ぶりの復帰戦でヤイール・ロドリゲスに敗れるも、2019年にはヘナート・モイカノ、フランキー・エドガーの両者を1R TKOに下すなど、3試合連続ファイト・オブ・ザ・ナイト受賞の激闘を繰り広げている。
1R、静かなグローブタッチ。ともにオーソドックス構えからスタート。右ローから入るオルテガ。チャンソンは左ボディストレートで軽く牽制。サウスポー構えにスイッチするオルテガは右ボディストレート。右ローをヒット。チャンソンも右インローをカーフに打つ。
左ジャブで測るチャンソンに右フックをかぶせるオルテガは右アウトサイドロー! 前手の突き合いから左ボディストレートを入れる。さらにワンツースリーと先に手を出すオルテガ。チャンソンは右ローを打つがローブロー気味に、しかしそこにオルテガは左フック!
ダウンしたチャンソンだがオルテガは追わず。立て直すチャンソンに右ローから鋭い左ハイをガード上から当てる。さらにチャンソンの蹴りの打ち終わりに右を狙う。
2R、サウスポー構えのオルテガの前足に右のカーフキックはチャンソン。ワンツースリーとオルテガを見ながら右アッパーも打つチャンソン。オルテガはサークリング。チャンソンの打ち始めにシングルレッグに入るが、切るチャンソン。四つから突き放される。オルテガは左のオーバーハンド。かわすチャンソンは右ローもローブローに。すぐに再開。圧力をかけるチャンソンは左から右アッパー! オルテガは右のサイドキックを腹に打つ。
オーソドックス構えに戻し右ハイを打つオルテガ。チャンソンの左のダブルに下がりながらオルテガは右のバックヒジ! ダウンしたチャンソンだが立ち上がり打ち合いに応じる。しかしそこにダブルレッグテイクダウンはオルテガ! 足を効かせて立ち上がるチャンソンの首をギロチンチョークに狙うが、そこは警戒するチャンソンが組ませない。
2️⃣-1️⃣?
— UFC (@ufc) October 18, 2020
3️⃣-0️⃣?
What are your scorecards through three? #UFCFightIsland6 pic.twitter.com/AnyP5eDOPE
3R、チャンソンのダメージはいかほどか。サウスポー構えのオルテガはオーソに戻し、再びサウスポー構えに。右ミドルを打ち込むチャンソン。オルテガの右に左フックを返す。喧嘩四つの前手争いから右ローはオルテガ! さらに右ロー、サイドキック。左ボディーストレートも。ワンツースリーと前に出るチャンソンをかわすオルテガ。サイドキックにパンチを狙うチャンソン。オルテガは右ローをこつこつ突く。
左ボディストレートはオルテガ! 右ロー、さらに右手でチャンソンのヒザを触りテイクダウンの動作を見せるオルテガ。右インローはチャンソン。その打ち終わりにシングルレッグに入り、放して右ストレートを当てるオルテガ。チャンソンの入りに再びバックヒジを狙う。ここもオルテガのラウンドに。
4R、ここまでのラウンドでボディー打ちとローキックはオルテガが上回る。取り返したいチャンソンは右の蹴りで前に出る。サウスポー構えから右の関節蹴りを狙うオルテガは右の蹴り、さらにシングルレッグで詰めて、片足立ちのまま下がるチャンソンを放して右フック! マウントを奪いに行くが、バックを譲らず立ち上がるチャンソンに右ヒジでカットさせる!
サウスポー構えから右の蹴りをサイドキック、ローと打ち分けるオルテガ。左から右を振るチャンソンだがかわすオルテガは左ミドル。チャンソンの右ミドルを掴んで右ストレートを打ち込む。左右を外側から打つチャンソン。ブロッキングするオルテガは右の関節蹴り。
右ミドルを打つチャンソン。シングルレッグに入るオルテガ。正対して離れるチャンソンにオルテガはまたもバックヒジを狙う。ブザー。
5R、右ローを当てるオルテガ。詰めるチャンソンはワンツーも遠い。前手争いから右手で前足を触るオルテガ。テイクダウンプレッシャーをかけることで打撃を打ちにくくさせる。ジャブからホロウェイばりの真っすぐを狙うチャンソン。受けに回るオルテガは金網際でサークリング。追うチャンソンはワンツー。ムエタイの5Rのように凌ぐオルテガはシングルレッグも深追いせず。右ジャブをヒットさせるオルテガ! チャンソンの左目の傷口が広がる。
追うチャンソンにカウンターのシングルレッグはオルテガも深追いせず。スタミナ苦しいか。しかしステップを踏むオルテガは右ジャブをヒット! 下がりながらも左前蹴り。バックヒジのモーションを見せたところでブザー。
判定を待たずに両者は健闘を称え合うと、チャンソンが大きな笑顔でオルテガの頬を右手で軽く平手打ち。両者はがっちりハグし、ヒザをマットに着いて頭を下げて礼をした。
判定は3-0(50-45×3)でダウンを奪ったオルテガがチャンソンに勝利。サウスポー構えからの関節蹴りやローキック、その前足へのシングルレッグなど、チャンソンの得意な打ち合いにさせなかったオルテガが進化を見せて、再起を果たした。
試合後、オルテガは「新しい自分になって、よりよいMMAファイターとしてカムバックするのに必要な全てを、レスリングからストライキングから、とにかく何もかもを出来る限り練習して臨んだ。こうして試合をすることで自分はやれるって分かった。ラクなとこにいても成長はできない」と新チームに感謝の言葉。
さらに、インタビュアーのダニエル・コーミエーから「“ニューバージョン”のオルテガは、ダナ・ホワイト代表が組もうとしているヴォルカノフスキーと戦う準備はできている?」と王者アレクサンダー・ヴォルカノフスキーへの挑戦を問われ、「ヴォルカノフスキー、君がチャンプ、君とやったらエキサイティングな試合になる」と語った。
バックステージでの公式インタビューでは、「自分は外れていた。それは分かっている。2年も試合をしていなければ外される。みんなに思い出してもらうためにここにいる。もう一度、こうなって嬉しいし、このレベルで自分の手が上がるということが重要だ。それが一番になるということ」と、再び頂点を狙える位置に戻ったことに安堵の表情。
"I understand you leave the game for two years and you get counted out, but I'm here to remind everyone."@BrianTCity saw the changes he made turn into success and feels ready to challenge for the featherweight title once again.#UFCFightIsland6 | #InAbuDhabi | @VisitAbuDhabi pic.twitter.com/XPVwze9f7N
— UFC News (@UFCNews) October 18, 2020
欠場の間の様々なファンの声について、「スポーツに関して言えば俺はレイカーズのファン。子供の頃からレイカーズのファンだし、ドジャーズファンだ。勝っても負けても、チームとともにある。MMAにも、当然、韓国のファンが大勢いることは分かっている。彼らにはコリアンゾンビがいるし、今は自分に(ファンが)来ているけど、俺が負ければまた別の誰かにいく。たぶん、ファンの記憶は短いんだろう。俺についてきてくれているファンのことは愛しているし、心の底から感謝している。いろいろな人に心が移っている人に言いたいのは、忠誠を示して俺たちのやっていることに関して気分よくしてもらいたいってことかな」と、良い時も悪いときもともにあってほしいと望んだ。
また、今回の試合ではサウスポーに構え、シングルレッグも見せるなど、新たな姿を披露したが、「ゲームプランに拘ったのは今回が初めて。いつもなら、ゲームプランなんて無視するけど、(負傷明けで)始められるところが何もなかったし、でも、今回はホントのゲームプランだった。コーチがどうとかじゃない。俺は自分のやるべきことをやる。このスポーツではそういうチャンスを掴まないといけないんだ」と、作戦を練って勝利の糸を掴んだことを明かしている。