(C)U-NEXT/GLADIATOR
2024年5月18日(土)と19日(日)、中国・上海のUFCパフォーマンス・インスティチュート(UFC PI)にて、『ROAD TO UFC:Season 3』(U-NEXT配信)が開催される。
今回は、フライ級、バンタム級、フェザー級、女子ストロー級の4階級でトーナメント戦が行われ、各階級の優勝者は、UFCとの契約が決まる。日本からはフライ級に松井斗輝。バンタム級に野瀬翔平、小崎連、透暉鷹。フェザー級に原口伸、安藤達也、河名マスト。女子ストロー級に本野美樹が出場し、ワンマッチに雑賀“ヤン坊”達也が参戦する。
その初日18日のフェザー級1回戦で、韓国のソン・ヨンジェ(Wild Gym)と対戦する河名マスト(ロータス世田谷)にインタビューした。
▼ROAD TO UFCフェザー級1回戦 5分3R
河名真寿斗(マスト)(日本)9勝3敗
ソン・ヨンジェ(韓国)6勝0敗1分
河名は、元グレコローマンレスリングU-23世界王者。全日本社会人選手権優勝・国体二連覇などの実績を引っさげて、MMAに転向も、初戦でジェイク・ウィルキンスのハイキックを受けてカットしドクターストップ。苦い黒星を経験した。しかし、その後は約2カ月毎に試合を行い、怒涛の5連勝。武器であるグレコをMMAにアジャストし、急激にMMAファイターとして成長。し2022年8月には北米LFAでUFCのマイルズ・ジョンズと兄弟のイラジャ・ジョンズと対戦。判定負けを喫した。
2022年11月のNEXUSで寿希也を2R TKOに下すと、2023年6月のGLADIATOR 022でPANCRASEで透暉鷹、亀井晨佑を苦しめたパン・ジェヒョクにスプリット判定負け。9月の前戦でユン・ダウォンに判定勝ちで再起を飾ると、12月にチハヤフル・ズッキーニョスを1R TKO。2024年2月のパン・ジェヒョクとの再戦で判定3-0で完勝。今回のRTU出場を決めた。MMA9勝3敗。
対するヨンジェは、4連勝をマークした2019年6月の試合から2023年9月までブランクがあり、2023年9月のAFCでダン・ホアンミンに1R KO勝ちで復帰。12月には清水俊一を1R KOに下して、AFCフェザー級暫定王者となっている。MMA6勝0敗。
オーソから左ジャブ、ワンツーのストレートはモーションが小さくシャープな打撃で、5つのKO・TKO勝ちを記録している一方で、組みは未知数のヨンジェを相手に、河名は「僕のほうはどんどん、どんどん組みに引きずりこんで、苦しいしんどい試合をやり続けて、ドロドロになってUFC勝ち取る」と語った。
河名「『思い切ってダブルに入ればいいじゃん』と意識転換ができてフォールに持っていけた」
──『ROAD TO UFC』(RTU)参戦が決まった瞬間はどのように感じましたか。
「『マジか!!』みたいな感じで(笑)、安心より驚きが大きかったです。というのは、参戦が決まってからビザを申請する時間のことも考慮すると、このタイミングで連絡が来なかったらもう厳しいのでは? と言われていた目安の時期を過ぎた頃にマネージャーから『もう少し待っていて』と言われて、その時にはもう期待はしていなかったので(笑)、拾われたというような感覚でしょうか」
──エントリーするにあたって、たとえば年齢やキャリアも含めて、どういう選手であれば通るという選考基準が細かく提示されているわけではありません、その点は出場したい選手としてはやはり気がかりですか。
「そうですね。そういう意味では、1年前のRTUの時には自分は入れなかったけれども、実際に選ばれた選手たちはがみんなベルトを持っていました。だから『まずはGLADIATORのベルトを目指そう』と考えて、そこはつまづきながらもなんとかクリアできたので、自分としては人事を尽くして天命を待つという気持ちでした」
──LFAのアライジャ・ジョンズ戦後、パン・ジェヒョクとの2戦を経て、打撃の進化が大きく見られました。どのような取り組みをしてきたか教えていただけますか。
「最初は“組むために組む”というか。スタートが組むところからだったから、初戦は結局テイクダウン切られてしまって何もできない状態だったので“組むためには立ち合いで殴らないといけないよね”というところになって、高谷裕之さんのところ、EX FIGHTでミットを持ってもらったり、立ち合いを意識しながら、なおかつ試合で、相手の打撃の距離で向き合いながら、自分も組むために振るし、でもそれだけだと怖さはないので、差しに行く、思い切りブン殴るっていうところは常に意識しながら、試合ごとに積み重ねていったという意識です」
──打撃の練習で特に意識してきたことや成果をどのように感じていますか。
「組みにつなげる意識を持ちながら、始めた頃から『ミットはめちゃくちゃ硬い。当たれば効く』と言われていたのですが、でも当たらないから分かるらないじゃん、と(苦笑)。ずっと不安に思っていたのがいざ実戦になったら、ジェヒョク戦の初戦の3R目とか、べつにそんなに思い切り振っていないのに、相手の口が切れていたりして“もしかして効いているのかも?”というのが、だんだんそのあとの2戦を通して“当たれば効くじゃないか”と自信もついてきて。自分で殺しに行かなくても当たれば相手が死に近づいていると分かったら、より組みにいけるという意識に持っていけました。打撃が伸びたからこそ、組みを切られてももう一回いけばいい、という心の余裕が生まれました」
──ジェヒョクとの2戦目では、河名瀬選手の左前手のフックに右ストレートを内側から打ち抜かれました。それでも後半にはその左をヒットさせていましたね。カウンターを被弾することも厭わず……。
「そのせいで脳の資源はだいぶ減り……(笑)、HP減りましたけど、得たものは大きいです」
──打撃が強化されたことで、相手の上体を上げて組みやすくなった実感がありますか。背中を着けきれなかった初戦に比べていかがでしょうか。
「その点で言うと、背中を着けさせる前のところなのですよね、テイクダウンの入りを意識したというか。初戦はハイクラッチ、前に出ている足を掴めば倒せるだろうと思ったら、片足立ちで“残った、残った”をされて、自分が逆に削られる状況だったのが、“思い切ってダブル(レッグに)入ればいいじゃん”と意識転換ができたので、そのまま倒してフォールに持っていけたというのはあります。それを相手によって変えることをしています。上組みのほうが組みやすければ上組みするし、パン・ジェヒョクはハイクラッチに強いんだったらダブルで、ドライブして走って倒しに行くというところですね」
──打撃を磨くきっかけとなったのが、LFAでの経験だったのでしょうか。
「あのときは打撃を振ることすら覚えていなかったので、レスリング一本槍で行ってそれをはじきかえされたので、今とは全然違います。ボコボコにされてこんなものかと思いましたが、逆にこのレベルに辿り着けなくはないと当時思ったことも覚えています。実際、対戦相手(ジョンズ)はチャンピオンになりました。フィダーショーでLFA王者にUFCへのチャンスがあるとして、そのレベルまで持っていく必要があるという見方だと、行けるだろうという見積りはあります」
──河名選手の小手の強さについても伺いたいのですが、ジェヒョクとの初戦はテイクダウンしても押さえきれなかった。2戦目で倒して、あの立ち上がりの際で小手勝負で押さえ込む選手はあまり多くないのでは、と。相手が脇を差してきたところで小手を効かせる。ここでのパウンドでダメージを取り返しました。
「僕にとってあのポジションが一番安心できるというか。ただ差されて、小手が弱かったらそのまま後ろ取られちゃうんですけど、僕の場合は逆に小手でこっちが止めているという状態になっています。止めて、相手も差し上げられないし動けないから反対の手でバランスをとるしかない。たとえば左で差していたら、右手をマットに着いてついてバランスとるしかないですよね。そうしたら相手の両手が塞がっているので、僕は右手で巻いていたら左手でぶん殴れる、っていうイメージですね。
レスリングでずっとやってきたことなのでそこには自信があります。MMAというよりは組み技のなかで相手に下を選択されたときに上下入れ替わられないように、常に上にいるにはどうしたらいいか考えていたら、小手だと。組み技から派生して。僕にとってあそこからがぶりにいったり後ろに回ったり、いかに相手の上に乗った状態をキープできるのかという目的のために小手を選択しているという感じです」