フェザー級で日本から選ばれた3人が全員レスラーで気になるけど──
──フェザー級トーナメント出場選手で、ほかに注目している選手や戦ってみたい選手はいますか? この階級は日本人選手が3名(安藤達也と原口伸)出場しますが、その点も含めて教えてください。
「やっぱり選ばれた3人が全員レスラーなので(笑)、ほかの2選手のことは気になりますよね」
──準決勝がどういうブラケットになるのか分かりませんが、皆が勝ち上がってきたらどこかしらで日本人対決を経験することになります……。
「今のところ、あんまりそこに意識はないですね。結局、僕はUFCと契約がしたい。その契約をかけてここで戦わなくてはいけないので」
──どちらと当たっても専修大学vs.国士舘大学ですね(笑)。
「そうなりますね(笑)。大学の教えにも特徴はありますけど、どちらかというと僕がグレコローマンで、ほかの2人ともフリースタイルなので、スタイルのぶつかり合いという話になってきますね」
──昨年、RTUも行われたシンガポールの会場で開催されたUFCファイトナイトでの中村倫也選手のセコンドに付かれていましたが、UFCの舞台を体感できたことはよかったですか?
「そうですね、やっぱり想像しているものと現地の空気感は違うと思うので、その空気を味わえたのはよかったです」
──オープニングラウンドの会場は上海PI。相手は中国人選手ではないのでアウェーと感じてはいないかもしれませんが、海外での試合について思うところは?
「アウェーというのを判定に関して考えれば、どこであろうと勝ち負けを判定に委ねた時点で分からないので、そうならないよう、フィニッシュを求めつつドロドロと引きずりこんでいければと思っています」
──そういう試合をしていれば、その末にもし判定となっても文句なく勝利できているということですね。
「はい。」
──UFCにつながる舞台に出場するにあたって、どんな選手として、世界の人にあるいはUFCに対して、この試合に注目してもらいたいですか?
「アメリカで、それこそUFCで勝てるようなレスリング出身選手は、打撃ができて、ボクシングするのかと思ったらタックル入ってくるというようなミックスされた部分が発揮できています。自分も、まだまだ足りていないですが、打撃とレスリングの融合的な部分がちょっとずつ形になってきているので、その発展途上なものを見せられたらいいと思っています。それからテクニックだけじゃなくてハートの部分で“コイツは人の心を動かせる”と思ってもらえたらいいなと」
──ダイヤモンドの原石のような……。
「僕の場合、自分が光るというよりどちらかというと相手の光を消すような選手になっていけたらとは思っています(笑)」
──ライツアウトする。UFCがどのような舞台だから、河名選手はそこを目指しているのでしょうか。
「そこはアマチュアマインド的な部分があると思いますが、僕はオリンピックを目指してレスリングという競技で戦ってきて、レスリングはもうオリンピックや世界選手権でチャンピオンになることが“この人が世界で一番強い”とはっきり分かる。MMAという競技においては、現時点で世界中を見た時に、UFCは『UFCチャンピオンが世界で一番強いよね』と誰もが認識するような舞台になっているので、そこに向かって走っていきたという気持ちです。
そこに高い山があるなら、じゃあ登ってみたいよねっていう。逆に言えば、世界の頂点を目指していなかったなら、たとえば自分が持つGLADIATORのベルトもそうですけれど、最初からGLADIATORのベルトまでを目指している選手では結局そこには届かないと思うのです。目標を高いところに持っているから、どんどんマイルストーンを置いて、乗り越えていけるという意識はあります」
──そういう考え方はレスリングを始めた頃からずっと持っているのですか?
「いえ、全然考えていなかったですよ(笑)。とりあえず練習して、別に自分が強いかも分からないけれど、試合に出たら勝っちゃったということももちろんあるので」
──そういうレスリングに対してどういう経緯で真剣に取り組むように?
「中学時代は陸上部で長距離走をやっていたのですが、高校入学にあたって陸上を続けるかレスリングを続けるか、というのが、一番最初に人生の選択をする機会でした。高校1年生の時の陸上のインターハイの会場が、47都道府県を回り回っての最後の開催地としての沖縄でした。一方レスリングは、石垣島だったんです。“陸上は3年間やっても多分無理だろうな”という意識もありました。
レスリングのほうは、県大会は結局人が集まっているチームが勝てるというか、レスリング人口が少ないから団体競技で7人が集まることだけでもそもそもすごいというのがあって“ここに自分が行けば、もし試合に負けても石垣島に行けるぞ”と思って(笑)。だからレスリングが違う開催地だったら陸上を続けていたかもしれない(笑)。結局チーム自体は強くなかったので、団体戦も初戦敗退して、顧問の先生が次の日に竹富島に連れて行ってくれたりして(笑)」
──海を渡った話になったところで、U-NEXTでは河名選手の試合を、このRTUで初めて見る方もいるかと思うので、お名前の「真寿斗(マスト)」の由来についても伺えますか?
「父親がヨットに乗っていまして、ヨットの『マスト』=『帆柱』のように、みんなを支えられる人間になってほしいという意味でつけられた名前です」
──その名にふさわしい人生を歩んでいると感じていますか?
「どちらかというと、僕が支えるというよりは、みんなに支えられて生きていますね。いっぱい周りにマストが立っているかのようです」
──周囲のマストとともに、しっかりとマストを立てて悠然と海を渡って行ける人、ということなのかもしれませんね。それでは最後に、U-NEXTのライブ配信を通して応援する皆さんに、メッセージをお願いします。
「今回、トーナメント3戦、必ず、とにかく苦しいしんどい試合をやり続けて、ドロドロになってUFC勝ち取ります!」