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2023年12月31日(日)『RIZIN.45』(さいたまスーパーアリーナ)のオープニングセレモニー前の第4試合・フェザー級(66kg)で、現PANCRASE同級王者の新居すぐる(HI ROLLERS ENTERTAINMENT)が、元DEEP同級王者の弥益ドミネーター聡志(team SOS)と対戦する。
「週6サラリーマン」と元クラブセキュリティで「週6酒のみ」の対決と語った新居だが、グラップリングを含む直近5試合すべてを一本・KO勝ち。そのうちの4試合を1Rフィニュシュと進化を遂げている。
2019年から3年間は1勝4敗と負けが込んでいた状況から、いかに新居は、PANCRASEのベルトを獲得し、大晦日参戦を決めたか。
アームロック&シザースチョーク(洗濯ばさみ)に全振りしたスタイルの秘密と、「今はBreakingDownみたいに揉めるのが流行ってるけど、僕は“いい人”同士の気持ちいい格闘技が見せれたら」という真意を聞いた。
【独占インタビュー】
大晦日連続インタビュー(1)新井 丈
大晦日連続インタビュー(2)斎藤 裕
大晦日連続インタビュー(3)ヒロヤ
大晦日連続インタビュー(4)新居すぐる
大晦日連続インタビュー(5)YA-MAN
大晦日連続インタビュー(6)皇治
大晦日連続インタビュー(7)弥益ドミネーター聡志
大晦日連続インタビュー(8)堀口恭司
大晦日連続インタビュー(9)朝倉海
弥益選手とは練習したことがあるけど──
――11月末の会見では「週6でサラリーマン」の弥益ドミネーター聡志選手に対し、「週6で朝まで飲み歩いている」発言がありました。それは……。
「本当です。会見後も夜の便ですすきのに行って飲んでました」
――でも、試合1カ月前からは止めると。
「12月に入ったらさすがにやってないですけど、会見後は残り数日あったんで、最後の飲みおさめですね。でも、ちゃんと練習はもちろんしてます。練習しないで飲んでるのはヤバイです。ちゃんと練習もしてます」
――格闘家に夢があると思わせたいからだとしても、せっかく練習してるのに毎日のむのも、ヤバイと思います(苦笑)。会見でいろいろ語っていたので、少し細かい話を追加でうかがいます。新居選手の必殺技アームロック&シザースチョークですが、THE OUTSIDERに出ていた時期に佐野哲也選手のジムで練習してAB選手から習ったと。
「はい。ABさんに1度だけ、洗濯ばさみを教えてもらったんです。その日の練習のときに。それに関しては技術もクソもなくて、感覚でずっとやってきたから、他の人がどうやってやってるのかも知らないまま最近までやってきました」
──ということは、そのメンバーから考えると、弥益選手とも練習したことがあるのではないですか。
「あります」
――やはり……。
「5、6年前じゃないですかね。自分がまだ我流で寝技やってたときなので。そのとき、でも僕“やり辛いな”くらいの印象で、寝技だけで見たら“負けることないな”と思いました。その頃に川尻(達也)さんに『僕、アームロックと洗濯ばさみしか知らないから、何か技を教えてもらえますか?』と聞いたら『アームロックをどこからでも取りにいくスタイルはいいし、必殺技は警戒されても極まるものだから、突き詰めた方がいいよ』と言われて。でも、対策されてなかなか極められなくなったときに、2年前に初めて先生について寝技を教えてもらうようになって“我流”からだいぶ進化したので、そこから寝技も変わってます」
【写真】2023年3月のKIWAMIでは小見川道大にアームロックから洗濯ばさみで一本勝ち。
――それが、YAWARA柔術アカデミーの村田良蔵代表ですね。
「はい。村田先生にアームロックをさらに進化させてもらって、得意技から必殺技になりました。黒帯相手でもほぼ取れますもん」
――ノーギでということ?
「道衣を着ても取れます」
――そうなんですか。もともと柔道ベースでフィジカルも強い印象ですが、グラップリングでもアームロックをバンバン使って、稀有なスタイルだと感じていました。
「2015年のVTJ前に『GRAPPLERS CROWN』という組み技の大会に初めて出て、ライト級で赤尾セイジ選手、世羅智茂選手に勝って、そのときに洗濯ばさみで一本勝ちしたんですよ。あとで世羅選手のことを知って、自信になりましたね」
──2017年のRIZINの格闘技EXPOでも“コンバ王子”のロゴをつけてアームロックを極めて勝ち進んでいましたが、修斗の石橋佳大選手との試合ではアームロックを仕掛けてもポジションを譲る形になっていました。
「そうですね。あの頃もまだ我流で、それこそ本当にただかけるだけだったので、ポイントもクソもなくて、無理やりだったんです。あの頃からずいぶん変わりました」
──そして2023年9月のPANCRASEで亀井晨佑選手にシングルレッグからバックテイク、すぐに持ち上げ落としてキムラクラッチ、シザースチョークを極めました。あの動きは……。
「練習したものがそのまま出ましたね。アームロックと洗濯ばさみはセットなんで、相手がアームロックと洗濯ばさみのどちらかを警戒したら、腕か首を極める」
──そこに至るまでの進化もありますよね。SNSを拝見すると、寝技同様に打撃やレスリングもパーソナルで受けているようですね。
「MMAのガチスパーって今年1回もしてなくて、打撃はもうキックの選手とだけやっていたんです。大沢文也選手とか、MOMOTARO選手、ANIMAL☆KOJI選手、KrushやK-1選手たちと打撃練習をやって──僕はMMAを想定した打撃でやってるんですけど、打撃のみでそのあたりの選手とやってるから、スピードも全然違うし、変則的な打撃の選手ともやってるから、特にびっくりもしない。森本“狂犬”(義久)選手を指導していた青木(利康)さんにもミットを持ってもらっていますし、やっぱりムキになって打ち合っちゃったら距離感もミスるというのは、前回のPANCRASEで勉強したので、今回は大丈夫ですね」
──そして柔道の組みだけではない、レスリングもしっかり強化されているように感じます。亀井戦のラストもシングルレッグからスタンドバックに回って勝機を掴んだ。
「柔道のように胸を合わせて投げたり、足技を使わなくても、レスリングなら遠い間合いからでも組みつける。レスリングは安楽龍馬という、2024年のパリオリンピックを目指している選手から習っています」
──安楽選手ともパーソナル練習なのですか。
「はい。彼が元々クラブのお客さんだったんですけど、そこから繋がって、北海道RIZINのときに、僕の仲のいい友達から、『すぐる、レスリング力ちょっと足りないんじゃないか』って言われて、『レスリングやるわ』となって、そこから安楽のパーソナルをやったら、前回のタイトルマッチでレスリングを使って投げることができて。安楽はいまの僕のMMAに必要なレスリング技術を選択して教えてくれるんですよ。あのベルトを獲ったシングルレッグからバックを取る動きは、ずっと練習していましたね」
──なるほど。となると、MMAのスパーリングは誰とやることになるのですか?
「鼻を粉砕骨折していたこともあって、9月のPANCRASEが終わってから1回もやってないんですけど、今やっと治ってきたので、グラント(ボグダノフ)くん、吉野光選手ともMMAグラップリングをやるので。まったくやらないわけじゃないです」