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インタビュー

【RIZIN】弥益ドミネーターと対戦する新居すぐる「120%で折りに、絞め落としに行くから極まる」「BreakingDownと違って“いい人”同士の気持ちいい格闘技を!?」=大晦日連続インタビュー(4)

2023/12/27 21:12
 2023年12月31日(日)『RIZIN.45』(さいたまスーパーアリーナ)のオープニングセレモニー前の第4試合・フェザー級(66kg)で、現PANCRASE同級王者の新居すぐる(HI ROLLERS ENTERTAINMENT)が、元DEEP同級王者の弥益ドミネーター聡志(team SOS)と対戦する。 「週6サラリーマン」と元クラブセキュリティで「週6酒のみ」の対決と語った新居だが、グラップリングを含む直近5試合すべてを一本・KO勝ち。そのうちの4試合を1Rフィニュシュと進化を遂げている。  2019年から3年間は1勝4敗と負けが込んでいた状況から、いかに新居は、PANCRASEのベルトを獲得し、大晦日参戦を決めたか。  アームロック&シザースチョーク(洗濯ばさみ)に全振りしたスタイルの秘密と、「今はBreakingDownみたいに揉めるのが流行ってるけど、僕は“いい人”同士の気持ちいい格闘技が見せれたら」という真意を聞いた。 【独占インタビュー】大晦日連続インタビュー(1)新井 丈大晦日連続インタビュー(2)斎藤 裕大晦日連続インタビュー(3)ヒロヤ大晦日連続インタビュー(4)新居すぐる大晦日連続インタビュー(5)YA-MAN大晦日連続インタビュー(6)皇治大晦日連続インタビュー(7)弥益ドミネーター聡志大晦日連続インタビュー(8)堀口恭司大晦日連続インタビュー(9)朝倉海 弥益選手とは練習したことがあるけど── ――11月末の会見では「週6でサラリーマン」の弥益ドミネーター聡志選手に対し、「週6で朝まで飲み歩いている」発言がありました。それは……。 「本当です。会見後も夜の便ですすきのに行って飲んでました」 ――でも、試合1カ月前からは止めると。 「12月に入ったらさすがにやってないですけど、会見後は残り数日あったんで、最後の飲みおさめですね。でも、ちゃんと練習はもちろんしてます。練習しないで飲んでるのはヤバイです。ちゃんと練習もしてます」 ――格闘家に夢があると思わせたいからだとしても、せっかく練習してるのに毎日のむのも、ヤバイと思います(苦笑)。会見でいろいろ語っていたので、少し細かい話を追加でうかがいます。新居選手の必殺技アームロック&シザースチョークですが、THE OUTSIDERに出ていた時期に佐野哲也選手のジムで練習してAB選手から習ったと。 「はい。ABさんに1度だけ、洗濯ばさみを教えてもらったんです。その日の練習のときに。それに関しては技術もクソもなくて、感覚でずっとやってきたから、他の人がどうやってやってるのかも知らないまま最近までやってきました」 ──ということは、そのメンバーから考えると、弥益選手とも練習したことがあるのではないですか。 「あります」 ――やはり……。 「5、6年前じゃないですかね。自分がまだ我流で寝技やってたときなので。そのとき、でも僕“やり辛いな”くらいの印象で、寝技だけで見たら“負けることないな”と思いました。その頃に川尻(達也)さんに『僕、アームロックと洗濯ばさみしか知らないから、何か技を教えてもらえますか?』と聞いたら『アームロックをどこからでも取りにいくスタイルはいいし、必殺技は警戒されても極まるものだから、突き詰めた方がいいよ』と言われて。でも、対策されてなかなか極められなくなったときに、2年前に初めて先生について寝技を教えてもらうようになって“我流”からだいぶ進化したので、そこから寝技も変わってます」 【写真】2023年3月のKIWAMIでは小見川道大にアームロックから洗濯ばさみで一本勝ち。 ――それが、YAWARA柔術アカデミーの村田良蔵代表ですね。 「はい。村田先生にアームロックをさらに進化させてもらって、得意技から必殺技になりました。黒帯相手でもほぼ取れますもん」 ――ノーギでということ? 「道衣を着ても取れます」 ――そうなんですか。もともと柔道ベースでフィジカルも強い印象ですが、グラップリングでもアームロックをバンバン使って、稀有なスタイルだと感じていました。 「2015年のVTJ前に『GRAPPLERS CROWN』という組み技の大会に初めて出て、ライト級で赤尾セイジ選手、世羅智茂選手に勝って、そのときに洗濯ばさみで一本勝ちしたんですよ。あとで世羅選手のことを知って、自信になりましたね」 ──2017年のRIZINの格闘技EXPOでも“コンバ王子”のロゴをつけてアームロックを極めて勝ち進んでいましたが、修斗の石橋佳大選手との試合ではアームロックを仕掛けてもポジションを譲る形になっていました。 「そうですね。あの頃もまだ我流で、それこそ本当にただかけるだけだったので、ポイントもクソもなくて、無理やりだったんです。あの頃からずいぶん変わりました」 ──そして2023年9月のPANCRASEで亀井晨佑選手にシングルレッグからバックテイク、すぐに持ち上げ落としてキムラクラッチ、シザースチョークを極めました。あの動きは……。 「練習したものがそのまま出ましたね。アームロックと洗濯ばさみはセットなんで、相手がアームロックと洗濯ばさみのどちらかを警戒したら、腕か首を極める」 ──そこに至るまでの進化もありますよね。SNSを拝見すると、寝技同様に打撃やレスリングもパーソナルで受けているようですね。 「MMAのガチスパーって今年1回もしてなくて、打撃はもうキックの選手とだけやっていたんです。大沢文也選手とか、MOMOTARO選手、ANIMAL☆KOJI選手、KrushやK-1選手たちと打撃練習をやって──僕はMMAを想定した打撃でやってるんですけど、打撃のみでそのあたりの選手とやってるから、スピードも全然違うし、変則的な打撃の選手ともやってるから、特にびっくりもしない。森本“狂犬”(義久)選手を指導していた青木(利康)さんにもミットを持ってもらっていますし、やっぱりムキになって打ち合っちゃったら距離感もミスるというのは、前回のPANCRASEで勉強したので、今回は大丈夫ですね」 ──そして柔道の組みだけではない、レスリングもしっかり強化されているように感じます。亀井戦のラストもシングルレッグからスタンドバックに回って勝機を掴んだ。 「柔道のように胸を合わせて投げたり、足技を使わなくても、レスリングなら遠い間合いからでも組みつける。レスリングは安楽龍馬という、2024年のパリオリンピックを目指している選手から習っています」 ──安楽選手ともパーソナル練習なのですか。 「はい。彼が元々クラブのお客さんだったんですけど、そこから繋がって、北海道RIZINのときに、僕の仲のいい友達から、『すぐる、レスリング力ちょっと足りないんじゃないか』って言われて、『レスリングやるわ』となって、そこから安楽のパーソナルをやったら、前回のタイトルマッチでレスリングを使って投げることができて。安楽はいまの僕のMMAに必要なレスリング技術を選択して教えてくれるんですよ。あのベルトを獲ったシングルレッグからバックを取る動きは、ずっと練習していましたね」 ──なるほど。となると、MMAのスパーリングは誰とやることになるのですか? 「鼻を粉砕骨折していたこともあって、9月のPANCRASEが終わってから1回もやってないんですけど、今やっと治ってきたので、グラント(ボグダノフ)くん、吉野光選手ともMMAグラップリングをやるので。まったくやらないわけじゃないです」 [nextpage] あんな「いい人」と残酷な試合をするとは ――会見では「アームロックと洗濯ばさみだけ」と言ってましたが、それだけじゃないと思っています。 「いや、マジで本当、その二つしか知らないんですよ。自分バレてもいいくらい、本当それしかないんですよね。“もっとここからこういう技も覚えたほうがいいよ”とよく言われて、一般会員さんとかと練習するときはそういう練習もするけど、結局、試合前になるとアームロックの練習をするから、それに偏ってる。それが僕のいいところだと思ってるから。投げとかは元々柔道もやってたから、レスリングも今やっていますけど、決め技がその二つしかないので──」 ――すべてそこに帰結する形になってる? 「そうです。全部それのためのやつだから、ドミネーター選手はそれを分かってると思うけど、分かっていても自分、絶対極められるから」 ――手首さえ持てれば行ける? 「そうですね、ガチッて手首持って手をセットするんですけど。だから、向こうは絶対手を取られないようにしてくる。でもそうすると僕、洗濯ばさみもあるんで。どっちかで絶対極められます。分かっていても極まるのが必殺技なんで」 ――現在、6月のRIZIN北海道大会での1R KO勝ちも含め4連勝中。その極めは、それ以前の前回のRIZIN参戦時のときとも精度が異なる? 「山本空良戦(2022年2月)ですよね。あのときは寝技を習ってなくて独学だったので。その前の中村大介選手とやる前は、ヒザの前十字靭帯を切って1年半くらい寝技をせずに、実戦感覚が掴めないまま負けて悔しい思いをした。山本戦のあとにセキュリティを辞めて格闘技により集中しました。だから、あのときの寝技はドミネーター選手と練習した頃の寝技なので、そんな大したことないです、別に。いまはクレベル選手ともやりたいです、絶対極める自信があります」 ――そこまで自信があるとは……。しかし他の人にはない技術体系ですよね。 「そこに特化していますね」 ――弥益選手も、実はアームロックとシザースチョークで勝利しています。どんな試合になると思いますか。 「自分以外の試合をあまり見ないので、アームロックがほんとうに得意なのか、そうなったら望むところだし、たぶん……意外に打撃もけっこうドミネーター選手ってやってくるじゃないですか。だからお互い殴り合って、寝技でも展開あって、めっちゃいい試合になると思うんですけど……、ただ僕は1ラウンドしか体力持たないので、本当に1ラウンド全力出し切って極めに行ければ」 ――本当はそんなことないんじゃないですか。9月のPANCRASEのタイトルマッチは2Rに極めています。 「前回2ラウンド目だったんですけど、本当“延長戦”の気持ちです。“延長戦始まったな”みたいな」 ――2Rの時点で延長戦……近年に格闘技に向き合ってきたことは、ここまでの話で感じます。スタミナもつけようとしているのでは? 「もちろんつけようとはしてるんですけど……、僕の必殺技のいいところって、120パーセントで極めに行くから極まるんですよ。でも、たいていの人はそこで80パーセントくらいしか出せないから3ラウンドもつ。普通、限界超えるくらい力を使ったら、5分3ラウンドもたないんです。それだと僕のいいところが消えちゃうから、僕はもう1ラウンドで思いっきり取りに行きます」 ――そこは、見どころですね。 「本当に関節かけたら僕折りにいくつもりでいくし、絞めたらもう落とすつもりでいきます」 ――たしかにそこでガッと極めにいくから取れる。それが“延長戦”でも極めたところに新居選手の進化を感じています。 「絶対120パーセントのアームロックなのに、違う技を覚えちゃうと、こういう体勢だとこっちもあるって考えちゃうと、120がたぶん90とか80になっちゃうんですよ。だから、それ以外別に覚えなくていい」 ──必殺技と心中するということですね。しかし、前回のRIZIN参戦時と異なり、今回はPANCRASEのベルトを持って参戦する。その気持ちは? 「やっぱりPANCRASEの代表として、ドミネーター選手は元DEEPのチャンピオンなので、他団体の選手を倒すというのに意味があるかなと思っています。そこで勝つためにも、迷わず自分を出します」 ――RIZIN北海道大会では盟友の飯田健夫選手を右ストレートからのサッカーボールキックで沈めた。今回は、4戦目のRIZINで、しかも出たいと望んでいた大晦日のRIZINに臨むにあたって、どんな試合をしたいと思っていますか? 「本当に大晦日って“天と地”じゃないですか。今年負けて終わるのか、勝って終わるか、そこで全部決まるから。けっこう残酷な試合を、あんないい人とするという」 ――“いい人”とも夢の潰し合いをするのが格闘技ですね。 「会ったら毎回喋るし、練習もしたことあるけど、ずっと常に謙虚だし。誰がどう見てもいい人じゃないですか、あの人。会見のときもそうですけど。でも自分、いい人とばかり試合してるから、前回の北海道の飯田健夫戦もそう。今はBreakingDownみたいな、ちょっと揉めるのが流行ってるけど、僕はいい人同士の気持ちいい格闘技が見せれたらなと思って。いい人だけど試合は残酷。それを、煽り合いじゃなくて、試合で見せられる格闘家同士の戦いを見せたいですね」 ――なるほど。一見いい人じゃない側に見える新居選手の格闘家としての内面を知れてよかっです。 「ええ、マジっすか? そう見えてました?」 ――そもそもクラブセキュリティだから、良くない人を止める方ですしね。 「そうですよ、自分。止める側だし、いい人じゃないですか、自分も(笑)」 ――ちなみにセキュリティで力を使わなくちゃいけないときもときには……。 「もちろんセキュリティでアームロックとか洗濯ばさみ、練習してました」 ――練習……(苦笑)。 「下手に揉めるより怪我しないんですよ、そのほうが。もちろん極め切んないですよ。その形になれば大人しくしてくれるから、変に投げたり、バーンと自分も手を出しちゃうと怪我しちゃうから、スッとやってサッと極めるのが一番いいんですよ。大人しくなるから」 ――セキュリティで制圧術として使っていた……。やっぱり弥益選手の“いい人”とは種類が違うかもしれない(笑)。それがリング上でどう出るのか、楽しみします。 「ぜひ、楽しみにしてください!」
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