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インタビュー

【RIZIN】計量前に、朝倉海が語っていたこと──「アーチュレッタという世界的に実績ある選手に勝って王者になって、UFCではフライ級で戦いたい」=大晦日連続インタビュー(9)

2023/12/31 10:12
 2023年12月31日(日)の『RIZIN.45』(さいたまスーパーアリーナ)の「RIZINバンタム級(-61.0kg)タイトルマッチ」(5分3R)に向けた前日計量で、王者フアン・アーチュレッタ(米国)が2.8kgオーバーで王座剥奪。現在「試合当日計量」で変則王座戦実現の交渉中の朝倉海(ジャパントップチーム)に、本誌では計量前に単独インタビューを行っていた。  そこで朝倉は、アーチュレッタ戦に向けた万全の体勢、試みと自信を語り、元Bellator王者に勝利することで、RIZIN王者として、UFCに「フライ級」で挑戦する気持ちを熱く語っていた。2.8kgもの体重超過を受けて、彼がなぜ試合実現を望んだのか、インタビューの言葉から感じてほしい(※榊原CEOは大会開始前に「試合1時間前計量で68kg契約で行う」と語った)。 【独占インタビュー】大晦日連続インタビュー(1)新井 丈大晦日連続インタビュー(2)斎藤 裕大晦日連続インタビュー(3)ヒロヤ大晦日連続インタビュー(4)新居すぐる大晦日連続インタビュー(5)YA-MAN大晦日連続インタビュー(6)皇治大晦日連続インタビュー(7)弥益ドミネーター聡志大晦日連続インタビュー(8)堀口恭司大晦日連続インタビュー(9)朝倉海 日本人の組み力と全然違う。海外の選手と戦うときには海外選手と練習する必要があった ――赤坂日枝神社の山王橋参道の階段ダッシュは、来日組の選手やコーチまで参加してるんですね。 「はい、みんなで。今日はヒロヤとヴィンス(モラレス)と僕とあとレスリングコーチのビリー(ビゲロウ)、4人でやって来ました」 ──階段ダッシュは、一人だとただ苦しいし、追い込むのが大変そうですけど、複数でやると頑張れますね。 「そうですね。練習終わりの最後の締めにやって、けっこうハードだから酸欠状態になって、みんな足に来ると喜んでます(笑)」 ──元UFCのヴィンス・モラレスに加え、レスリンゴコーチのビリー・ビゲロウも来日し、元谷戦前に参加したエリー・ケーリッシュコーチがケージウォリアーズのブライアン・ブーランドを呼び寄せたそうですね。 「はい。一昨年にシンジケートジム(米国ラスベガス)に2回行って、ヴィンスはバンタム級で一緒の階級なので毎回一緒にスパーリングパートナーみたいな感じでやってきて、すごく強いし、めちゃめちゃいい練習になるなと思っていて。ヴィンスの彼女が日本人で、その彼女にも現地でたくさん助けてもらったんです。彼もRIZINに出たいという話を聞いていたので、『じゃあ来年一緒に試合しようよ』という話をしているなかで、アーチュレッタと僕の試合が決まった。ヴィンスは『もしアーチュレッタ戦が決まるなら手伝うよ』と言ってくれていたので、あらためてヴィンスに『日本に来てくれないか』という話をしたら、『いいよ』と言ってくれたので、トレーニングパートナーとして呼んだ形です。せっかく来てくれるし、戦績的にも十分なので、RIZINに出られないか榊原さんに相談したら、今回ヴィンスの試合(vs.元谷友貴)も決まりました」 ――5月に朝倉選手が元谷選手に3R KO勝ちした、その数日前にモラレスは石原夜叉坊選手に一本勝ち。そして7月にもアイダホで2R TKO勝ちしていますね。 「はい。ヴィンスはレスリング力だったり打撃力がアーチュレッタと近いものがある。そういう選手は日本にはなかなかいない。さらに“仮想アーチュレッタ”という意味では、ブライアンと一番一緒に練習していて、彼はイリア・トプリア(※2月にUFC世界フェザー級王者アレクサンダー・ヴォルカノフスキーに挑戦)とも戦ってますし、トプリアには敗れてますが、以降も5勝2敗。戦績的に実力もあります。レスリング力がかなり強くて、打撃も上手い。何よりアーチュレッタの動きを模倣してくれるので、それでイメージがつきやすくてとても力になっています」 ――ブライアンに関しては、欧州経由ということはエリーが推薦したのでしょうか。 「そうです。エリーに“対アーチュレッタ”用にいい選手がいないか聞いて、3人くらいリストアップしてくれて、その中でブライアンが一番いいなと。ブライアンとヴィンス、基本その2人とスパーリングしてましたね」 ――モラレスの鋭いジャブに強い右オーバーハンドからの組み、ブライアンのテイクダウン──MMAボクシング&レスリング漬けですね。 「そうです。レスリングとボクシング。やっぱり2人と組んだときに、日本人の組み力と全然違うんですよね。海外の選手と戦うときには、絶対にそういう選手たちと練習しておかないと駄目だなということで招聘しました」 ――アーチュレッタ並みのMMAの圧力を、シンジケートジムにいたときのように体感しておく必要があったと。今回のアーチュレッタ戦は当初、7月30日の『超RIZIN.2』で行われる予定だったのが、海選手の左膝内側側副靱帯損傷により、アーチュレッタ選手が緊急出場の扇久保博正選手と対戦して判定勝ちしています。この5カ月間で、当初の作戦とはまた少し変わってきたのではないでしょうか。 「そうですね。変わってきましたね。アーチュレッタの研究を半年くらいずっとしてきて、アーチュレッタの動きを調べ尽くしたので、かなり分かって、対策もどんどんより細かくできるようになって、レスリング力もかなり向上して、ストライキングもさらに上がっている。とにかく自信がありますね」 ──内山高志さんのジムで出会った佐々木修平トレーナーは、現在井岡一翔選手の再起を支えています。海選手とももう4年半のコンビで、志成ボクシングジムでのミット打ちにも変化が? 「打ち方ですね。以前は手打ちになっていたり脇が開いていて、力が相手に伝わらずに倒せないことがあったんですけど、ボクシングを習うようになってからKO率が上がって、いまは倒せるパンチが何個かあるので、それを試すのが楽しみです」 ──今回の試合、誰も言う通り、アーチュレッタのテイクダウンと海選手の打撃がポイントになる。アーチュレッタのテイクダウンを切って蹴りやパンチを入れること、たとえテイクダウンされても立つこと、この点に関して、かなりの自信がありそうですね。 「もちろん、テイクダウンをさせないつもりでいます。でも最悪されたとしてもそこからの練習もめちゃめちゃ積んでいるので、立つのもそんなに難しくはないかなと思っています」 ――それはリング・ロープでも大丈夫? 「リングでも大丈夫です。ロープでも練習してますから」 ――ということは、打撃で踏み込んでいったとしても相手のテイクダウンを切る自信がある? 「あります。だから今回そこまでアーチュレッタのテイクダウンを警戒してないです。もし押さえ込まれても、その練習を散々してきているので大丈夫です」 [nextpage] フライ級の身体を作れば、全然できる ――前回の渡米時に、メラブ・ドヴァリシビリの試合前の練習相手を務め、パッチー・ミックスの圧力も体感した。特にドヴァリシビリの試合に向かう姿勢を見て、直前の追い込みの必要性と、怪我の心配との兼ね合いは難しくなかったですか。 「けっこう直前まで練習をやったんですが、今回スパーリングは減らしてたんです。打ち込みだったり、シチュエーションスパーリングにして、壁レスリングだったり、場面毎のポジションからの練習をたくさんやってきましたね」 ――その点では、ヴィンスに帯同してきたビリー・ビゲロウコーチの指導が活きて来るのではないですか。ビリーはメラブやアルジャメイン・スターリングも指導していますよね。 「そうです。ビリ―がマジですごいです。彼はUFCチャンピオンを何人も育てているコーチで、技術がものすごい。知らない技術がたくさんありましたね。ビリーが全部アーチュレッタの試合の動きとか見てくれて、“こういうときはこうする”というのを全部教えてくれたので、自信はありますね」 ――JTTにはエリーコーチも常にいるので、そのビリーの教えを確認したうえで、コーディネートしてくれる。では、佐々木トレーナーのボクシングミットとエリーのMMAミットとの兼ね合いはどのようにアジャストしているのでしょうか。海選手が自ら融合させている? 「それは、ボクシングジムにもエリーが来てくれてコーチ同士で話し合ってもらっています。その上で自分の中でもお互いの戦略を聞いて融合させています」 ――ということは、エリーが今回の試合のヘッドコーチ的な役割を果たしている? 「そうですね。エリーがヘッドコーチです」 ――アーチュレッタ戦はどういう展開になっても対応して、自分の強みを出すこと出来ると? 「そうです。だからKOを狙っていきますけど、KOできなくても勝つ自信はあります。拳もヒザも何ともないですし、バンデージの巻き方も研究して、衝撃を相手に伝えると、拳への負担を逃したりする、自分に合う巻き方が分かったので大丈夫です」 ――万全ですね……。今回の試合「ダブルメインイベント」とはいえ最後のオオトリにはなりませんでした。 「どっちでも良かったんですけれど、気楽に戦えるなって。メインは試合内容をいい内容にしないといけないって責任が強いので。盛り上げるのは盛り上げて勝って、メインに繋げられたらと思います」 ──会見では英語でアーチュレッタ選手とやりとりも見せましたね。 「今後、海外で試合することも視野に入れているのでその準備で試しにやってみましたね」 ──大晦日に勝てばRIZINバンタム級のタイトルを獲得する。チャンピオンベルトを持つことで、海選手にとって今後、目標とする海外挑戦の通行手形になると考えますか。 「はい。RIZINとの契約があるので、チャンピオンになってすぐに海外に挑戦するかといったら、まだ分からないですけど、僕の理想としては、ここでUFCに挑戦したいなとは思っています」 ――今、BellatorがPFLに買収され、PFL内での王者対決、Bellator海外シリーズのプランなど、先行きが不透明です。そんな状況下、いま仰ったUFCでは、かつてのライバルのマネル・ケイプ選手がフライ級に落として、現在8位。堀口恭司選手もフライ級に戻した。朝倉海選手も、ROAD FC時代にはフライ級で現UFCのアラテン・ヘイリ(UFC4勝2敗1分)を1R、ヒザ蹴りでKOに下しています。世界では、朝倉海選手もフライ級で戦うという選択肢も考えられますか。 「あると思います。体重的には落とせると思っているので。コーチたちも皆、『フライ級で勝負したほうがいい』ということは言っていたので、その身体を作れば、全然できる」 ――そのためにもRIZINでベルトを獲得することで、世界への挑戦も具体的に視野に入ってくるのですね。 「はい。今回、元Bellator王者のファン・アーチュレッタという選手が世界的にも素晴らしい選手だと思い、実績も凄いので、ベルトを獲るということよりも、その選手に勝つことが自分の選手としての価値を上げるので、そっちの方が大事だと思っています。頑張ります!」
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