ピットブルがいままでBellatorでどうしてきた? RIZINは自分のホームなのに
──ブラジルのチーム同士のイザコザや、PRIDE時代の控え室での乱闘なども伝説にはなっていて、野球やホッケーなどのスポーツや、格闘技の会見でも乱闘はある。ただ、クレベル選手はプロのファイターですから、先に手を出されたとはいえ、ご自身が反省している通り、仕返しは、やはりするべきではなかったと思います。
「自分達のホームのなかで、男として、ああいうことをされた自分からすれば、じゃあ例えばピットブルがいままでどういうことをしてきたかを考えてほしいのです。Bellatorではマイケル・チャンドラーとトラブルを起こして控室で喧嘩していますし、そのあとにAJ・マッキーともやっています。今回はBellatorだけじゃなくRIZINでそれを始めました。RIZINは自分にとってはホームです。遂に彼らは、RIZINにまで来て、自分は今はチャンピオンではありませんが、フェザー級トップの選手にそれを始めたわけです。
僕は、一家の長であり、そこには自分たちのレガシーがあり、歴史というものがある。自分は、20年日本でレガシーを築いてきた。そこに敬意があってしかるべきであり、なんぴとたりとも、自分にいきなり自分の、顔だろうが胸だろうが、ホームで突き飛ばしていいわけがない。これはディスリスペクトで、敬意に欠けることです。それを、彼は、何か言い合うとかでもなくて、周りに5人くらいの人を引き連れて、一方的に自分を突き飛ばして、去っていった。臆病者だと言うのなら、それは彼の方だと思います。“誰も何もしてやくれない、いいよ、分かった。ならば自分で伝えよう”と」
──その点では、そういう因縁をリングで、試合で見られたほうがファンが喜ぶと思うのですが、やはり相手に手を出されて黙っていられなかったと。
「……ファイターである前に一人の人間だし、人間であってロボットじゃないんです」
──その人間味がクレベル選手の魅力でもあると思うので、やり返してしまったことはともかく誤解があった部分は説明したいと思います。ところで、今回のきっかけとなってしまった鈴木千裕vs.パトリシオ戦を、ファイターとしてどう見ていたのでしょうか。
「本当に、みんなが驚いたのと同様に自分もすごく驚きました。何が起こったのか、と」
──それをクレベル選手はさせずに、自分から打撃の圧力をかけて、シングルレッグからボディロックに切り替えてテイクダウン、S字マウントから腕十字を極めました。
「それはもうピットブルが千裕選手を舐めていたのだと思います。自分の時は、鈴木の強さを理解して、危険を承知していました。ピットブルはそれを信じていなかったのではないでしょうか。自分の動画でも試合前に必ず同じように言っています、つまり『どんな相手といつ試合をしようと、試合は50:50』だと。何が起こるか分からない世界なのです」
──あの試合のクレベル選手には、YAMAHAもスポンサーがついていますが、試合前には本社を表敬訪問した。きっと出稼ぎ時代の工場勤務のときにYAMAHAの部品も作っていたのではありませんか? そういう会社に支えられていて感慨深いものもあるのではないでしょうか。
「はい……」
──クレベル選手が言っていることは筋が通っているし、手を出されて蔑ろにされた気持ちも理解できます。一方で誤解を招いたであろうことも想像できます。それでも、サポートしてくれている人たちを悲しませないためにも、やはり控室ではなく、リングで強さを発揮するべきではないでしょうか。
「今回は正直、彼らのやり方にハマったと感じています。向こうの思惑に乗ってしまった。彼らはやりたいことをやって、言いたいことを言ってブラジルに帰って、日本に残された自分は、日本でのマイナスイメージを植えつけられた。謝罪をするのは、起こったことに対してではありません。喧嘩までして、本当に悲しいんです。それで自分がただ『ごめんなさい』と言うのもちょっと違う感じがしていて説明をしたかった。彼らのストーリーのなかに取り込まれてしまったと感じています」
坂本健ブルテリア代表 ちょっと自分からもいいですか? クレベルはピットブルチームのスケープゴート(※ある集団に属する人がその集団の正当性と力を維持するために、特定の人を悪者に仕立てあげて攻撃する現象)にされたと思います。ショッキングな、信じられないことが起き、あの会場の人がみんなびっくりして立ち上がっていた。そんななかピットブル側だけが逆の立場にいたわけです。その状況で、リングサイドに派手な衣装で派手な髪色のクレベルを見つけて怒りの矛先がクレベルに向かったのではと。その前にYouTubeのこともあって全部クレベルのほうに行ったのではないでしょうか。あの時、みんなが「クレベルがピットブルに失礼なこと言った」と言っていますが、クレベルは何もしていません。
クレベル 謝罪があるとしたら、チャンピオンたるものは間違いをしてはいけないが、自分は間違ったことをしてしまったということです。
坂本 みんなイメージだけでクレベルを問題児だと思って、クレベルが悪いと言っていますが、それを言うのであればピットブル側の経歴もしっかりと見てほしいと思います。今までどんな問題を起こしているかを。これはファイター同士の話だから、冷静に中立に見てほしいと願っています。