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2021年12月31日、さいたまスーパーアリーナで行われたれた「RIZINバンタム級(61.0kg)JAPANグランプリ準決勝&決勝」に出場した4選手が、GPでの怪我の状況などを報告した。
2021年6月から開幕した16人参加の同GPでは、準決勝で扇久保博正(パラエストラ松戸)が井上直樹(セラ・ロンゴ・ファイトチーム)に判定勝利、朝倉海(トライフォース赤坂)が瀧澤謙太(フリー)に判定勝利し、決勝に進出。
同日の約8時間後に行われた決勝では、扇久保が朝倉を判定で降し、優勝を果たした。優勝賞金は1千万円、準優勝500万円、最速勝利賞100万円は、石渡伸太郎を1R 1分58秒、サッカーボールキックでTKOに降した井上直樹となった。
わずか半年で4試合、2020年年末の試合を含め、1年で5試合を戦った扇久保と朝倉、ベスト4の井上と瀧澤も6月から3試合を戦い、それぞれが代償を負っている。
11月に肋骨を骨折「組みで戦うのを諦めかけた」(扇久保)
大晦日、準優勝の朝倉海は右拳を骨折。準決勝で扇久保と戦った井上も試合中に薬指が外れ、朝倉と戦った瀧澤も顎を骨折した。
そして1日2試合、5分6Rを戦い抜いた扇久保は「大晦日の試合での大きな怪我は無さそうですが、1年を通しての怪我はかなりありました」と明かす。
6月の1回戦の春日井“寒天”たけし戦で右拳を骨折、9月の2回戦の大塚隆史戦では「試合直前までスパーリングができない」なか、カーフキック効かせて判定勝利。3カ月後のGPファイナルに向け、万全の状態で臨むつもりだったが、大晦日前の11月初旬の出稽古で肋骨を骨折したという。
陣営への取材では、様々な治療を行い、「4週間で治して、最後の3週間だけスパーリングをやって、大晦日に向けて作った」という扇久保だが、あばら骨を折ったばかりで、胸に力を込めるグラップリングを武器に戦うことに不安は無かったか。
扇久保は、「怪我をした当初は組みで戦うのを諦めかけましたが、4週間の休養でマインドをリセットできて、“自分の強みはやはり組みだ”と考えることが出来、最後の方は痛みも大分落ち着いたこともあって影響はなかったです」と語る。
まずは準決勝の井上戦に勝つことのみに集中すると、得意の蹴り技で自身の距離を掴み、序盤の井上の組みには我慢の展開。凌いで井上の息遣いが荒くなったところで、スクランブルを仕掛けてポジションを奪い返すと、「そこからは得意のハーフで削って」判定勝利した。
決勝までの8時間の控え室。1年4カ月前に、完膚なきまでに叩きのめされた相手と、1日2試合目で戦わなければならない。身体のダメージから“俺は朝倉海にリベンジしたいのに、なんで今日なんだ。もうこれでいいだろう”と、弱気になる心を周囲の支えもあり、再び気を持ち直すと、決勝に向かった。
試合後の会見、さらに自身のYouTubeで扇久保は、朝倉戦について「下がらず、前足を潰す」作戦だったと明かしている。
「1年前に試合をして感じたのはビビって下がるとダメ。一番は前足を潰すこと。堀口選手がやったようにカーフを蹴って、前戦の時から入っていたインローも当てる。チャンスが来たらテイクダウン。その流れのなかでシングルレッグ(片足タックル)に入る。それを遂行した。朝倉選手がニンジャチョークを仕掛けて来たので、そんなの極まらないよという感じでタイミングでテイクダウンした」
そのテイクダウンが、朝倉“幻想”を拭いさった。