高谷さんの言葉で、本当にチーム一丸で本気になって、あの舞台を目指していいんだなって
――あの齋藤戦を見ていて思ったのですが、中村選手、サウスポーに構えてましたよね。右足前で。でもレスリングのときも右足前でした。レスリングでは利き腕と同じ側の足を前に出して構える選手が多いですが、中村選手はちょっと違うなと感じたんです。
「……よく、分かりましたね。左利きなんです」
――あのスーパーマンパンチを見て、左利きじゃないかと思いました。吉田沙保里選手の逆バージョンですね。なぜレスリングではサウスポー構えだったんですか。
「それは、美憂先生が教える初めての子だったんで、全部自分と同じように構えを教えちゃって(笑)。『レスリングは右足が前!』って。自分も“ああ、そうなんだ”と思って、右足を前にして構えて。左利きなのに右のレスリングで覚えちゃったんです」
――レスリングのときにも時折、スイッチしてましたね。怪我の功名というか、左右どちらでも戦えるようになった。
「たしかに、レスリングのスイッチは途中から採り入れるようにしていましたね」
――あのスーパーマンパンチからのテイクダウンの流れは圧巻でした。得意技なんですか?
「いや、全然そういうわけじゃなくて。スーパーマンパンチを打って距離詰めようと思って。そうしたら、相手の顎がパーンって顔浮いてくれたんで、そのまま勢いを殺さずにテイクダウンに行こうと、切り替えました」
――そこからは一気に試合を決めました。
「そうですね。フィジカルで圧倒って感じですかね」
――パンクラスイズム横浜でもトレーニングをされているのですね。
「レスリングのキャリアの後半くらいから、横浜でタケダイグウジさんにフィジカルを教わっていたので、その延長線上で松嶋こよみ選手や、それに北岡悟代表もすごく良くしていただいて」
――あの肩固めも……。
「はい! 北岡さんから」
――そしてEXFIGHTでの練習も。
「高谷裕之さん、岡見勇信さん、石田光洋さん、門脇英基さん……達人ですよね。たとえば、門脇さんの身体の使い方は、自分がレスリングで感じていたことに近いんです。もう、いろいろなタイプの全然違うスタイルの選手から習うことができています」
――プロMMAファイターの取組みを見て感じていることはどんなことですか。
「人それぞれですけど、例えばこよみさんは、スイッチしながら両方とも攻撃で出せますし、僕もそれは世界ではスタンダードな標準装備になってきているので、そこに早く到達しないといけないなと思っています。そこに到達するためにダイグウジさんからムーブメントとか、こよみさんからいろいろパターンを教わってもいます」
――バックボーンを持ち、LDH martial artsと契約をする中で、中村選手がこの『格闘DREAMERS』で切磋琢磨することに、どんな意義ややりがいを感じていますか。
「やっぱり世界を知れば知るほど、みんなを見て思うのは……簡単に『UFCのベルトを巻く』っていう言葉が日本では出せなくなっている。そんなことを口にするのも駄目なんじゃないかな、みたいな空気感がある中で、ここにいる選手たちはもう、『UFCのチャンピオンになる』って真っ直ぐに言える子たちが集まっている。最初からそういう意識を持てる環境に身を置けるというのは、絶対に大事だなと思いますね」
――頂きの高さを知ろうとする中でも、目指すところは最高峰なんだということを言える面子だと。
「そうですね。この間、僕が練習で足首を挫いたときに、高谷さんが言った一言目が、『UFCって足首テーピングありだっけ?』って。まだ、僕がデビューしてないのにそういうことを言ってくれたのがすごい刺激になったんですね。ああ、ほんとうにチーム一丸で本気になってちゃんとあの舞台を目指していいんだなって思える環境なんだって」
――その中でも中村選手は、キャリアとして抜けた部分と、課題もある。どんな形で存在感を示していきたいと思っていますか。
「存在感を示すためには、もちろん最終選考でも勝つだけじゃなくて、内容も問われてくると思います。それは難しいところですけど、アマ2試合とも寝技で取って、練習でも取れることが増えてきているので、打撃面での成長もしっかり見せることが必要だと思っています。あくまでも一番の武器であるレスリング軸に、それを生かすために打撃もしっかり使っていく姿を試合で早く見せたいです。この間の試合も結局、相手が来たのにタックルをどーんと合わせて、殴ってフィニッシュする形だったので」
――それがいまの段階で出来ているとも言えます。
「そのくらいのものを求められていることも分かっています」
――プロを見れば見るほど、途方もない頂が雲の上にある。そこへ行けるのかなって悩んだりすることはないですか。
「もちろんそれはあります。でもやっぱり、小さい頃に、そういう世界のトップの舞台で活躍していることを想像して、ワクワクしていた自分というのが、毎回毎回支えになってくれていて。あれだけ遊んでくれたお兄ちゃんたちが、あんなかっこ良かったように、僕も絶対こういう大人になるんだという想いがあって、その少年時代の僕が今でもずっと、いるんです」
――世界を目指す修斗の子が、ここにもいたわけですね……。「最終審査」の試合の相手は、すでにプロで活躍している新井拓己選手(ストライプル新百合ヶ丘)に決まったそうですね。
「レスリングで足利工業大学附属から大東文化大に進んで、そこからプロ修斗でも戦っていますね」
――ビデオも見て、どう感じていますか。
「ちゃんと決着つけて、越えるべき相手だなと思います。大学卒業して、身体を動かす延長から始めたようなファイターたちには絶対負けたくない。思いの強さの違いというのをちゃんと見せなきゃいけないなと思っています。自分のルーツはプレッシャーでもありますが、強さでもあります」
――PUREBRED大宮で見て来た格闘家たち、そこで学んだレスリングを軸に上がっていきたいと。
「そうですね。どれだけアメリカの強いレスラーでも、実際に肌を合わせてきてるし、何十人も。心が折れる瞬間というのは何回も体験してきてるんで。心の折り方は分かっています。レスリングを通してですけど、何が嫌なのかを学んできてるので」
――この『格闘DREAMERS』の中で自分はどういう存在になりたいと思っていますか。
「初代のリーダー的な存在に。一足先に契約選手になっているので、みんなが背中を追いかけてこれるような、全てを背負って戦う頼もしい存在になりたいです。越せるもんなら越してみろとも」
――MMAファイターとしての目標を教えてください。
「将来の夢はUFCのベルトを巻いて、防衛を重ねることです」
◆第2話 岡見勇信「覚悟なんて簡単に人を裏切るから」──“地獄の合宿”2次オーディションへ
◆第3話 2日目グラップリングスパーは、中村倫也vs.岡田達磨のレスラー対決、山内渉vs.鈴木崇矢の極真対決も
◆第4話 那須川天心がマススパー「試合だったら、1人1回は倒れてる」。中村倫也、宇佐美正パトリック……最終日の試合形式スパーでは名勝負続出!
◆第5話 高校6冠ボクサー宇佐美の進化と叩き上げレスラー岡田の再試合は衝撃KOに! 柔道の高木オーディンvs.マッチョ八木、そして合格者の前に平本蓮と弟の平本丈が「入れ替え戦」を要求
◆第6話 平本蓮を感動させた弟・丈の勝利と涙。無慈悲な「入れ替え戦」が見せた格闘技の厳しさ
◆第7&8話 朝倉未来「実力差、ちょっとあった。1年でこれだけ強くなれる」vs. 教え子の完敗に高谷裕之「イラつくな…」いよいよ「最終決戦」へ
◆第9話 平本蓮の弟、17歳の丈が最終審査試合で、16歳・鈴木崇矢に負傷TKO負け。泣きじゃくる弟に蓮「人生あと何年あると思ってんだよ」