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2025年12月6日(日本時間7日)米国ネヴァダ州ラスベガスのT-モバイルアリーナで開催される『UFC 323: Dvalishvili vs.Yan 2』(UFC Fight Pass/U-NEXT配信)にて、フライ級5位の平良達郎(日本/THE BLACKBELT JAPAN)と対戦する、元同級王者で現2位のブランドン・モレノ(メキシコ)が、メディアインタビューに応じた。会見のほかに、母国メディアの『Hablemos MMA』でモレノがスペイン語で語った本音も加えて紹介したい。
達郎に勝てばチャンピオンシップのチャンスは間違いない
平良同様にモレノにとっても、今回の試合は「チャンピオンシップ」に向かう試合と位置付けている。
「もう秘密にするべきじゃないと思うから言うけど、UFCとは正式な話し合いはしていないものの、僕が3月のエルセグとの試合に勝ったら、UFCは僕と少し話をして“(6月に)もしパントージャがカイカラ・フランスに負けたら、チャンピオンシップの試合を直接、君に与えるよ”って言われたから、僕はすごく慎重に振る舞おうとしたんだ。だって、カイカラがパントージャに勝つなんて難しいと思ったからね。結局、パントージャが勝った。僕はちょっと混乱したままだった。
みんな忙しかったからね。達郎も話では、今回まで戦いたくなかったみたい(※平良は8月にアミル・アルバジ戦が決定もアルバジ欠場でパク・ヒョンソンと対戦。試合後に9.13 ノーチェUFCでモレノ戦のオファーを受けるも、40日後の連戦は難しく、今回の12月に決定)。僕は6月だと言われて、9月だと言われて、結局、12月になったんだ。ちょっと長かったけど、まあ同じことだ。
つまり、達郎に勝てば、チャンピオンシップのチャンスは間違いないと思う。マネル(ケイプ)が(ブランドン)ロイヴァルと戦う(12月14日)から、マネルが勝てば、彼も手を挙げられるかもしれないけど、UFCで何が起こっているかはわからないけど、とても楽観的だし、気分もすごくいいし、エネルギーに満ち溢れていて、準備は万端だ。“自分のもの”を取り戻すためにね」と、3度目の王座奪還に充実したときを過ごしているとした。
23年7月にアレッシャンドレ・パントージャにスプリット判定で敗れ、王座陥落。2024年2月にもブランドン・ロイヴァルと5Rの死闘の末、スプリット判定負けを喫し、2連敗で、9カ月のインターバルを置いた。24年11月にアルバジ相手に勝利し復活するまでの間、モレノは一時は引退まで考えたという。
「僕は本当に、引退寸前のところまで行ってたんだ。ロイヴァルに負けたとき、マジで引退しようとしてた。あの時はメンタルが完全にズレてたんだよ。分かる? ものすごくストレスを感じてて、いろいろなことが頭の中でぐちゃぐちゃになってた。でも、そのあと家族と過ごしたり、チームメイトやコーチたちと一緒に時間を過ごして“ああ、やっぱり俺、このスポーツが本当に好きなんだ”って気づいた。だから今この時期、このプロキャリアの段階は『第二のチャンス』みたいなものなんだ。前よりもこの状況を楽しめている気がする。
最初にベルトを獲ったときは、その責任とか、いろんなものが全然分かってなかった。しかもメキシコという国、何百万人という人たちの“顔”になってしまうわけだからね。あれは本当に大きな責任だよ。その重圧は、精神的にも肉体的にも感じていた。だからこそ、引退寸前まで追い込まれていたんだけど、数カ月、自分と向き合う時間を持った。今は本当にハッピーだよ。めちゃくちゃ幸せだ。今は(減量期で)すごく痩せてる。肌を見れば分かると思うけど、本当にガリガリになってる。毎日、1日のあらゆる時間、お腹が空いてる状態だけど、それでもすごく楽観的で幸せなんだ」と、休暇を取ることで、MMAへのモチベーションが再び高まった。
その一番の目標は「ベルトを取り戻す」こと。
「達郎は本当にタフだし、相当ハードな試合になるって分かってる。それでも僕は、自分の好きなことを続けられているってだけで幸せなんだよ。新しい何かを作る、というよりは、自分のレガシーに付け加えている感覚かな。今の一番の目標は、“ベルトを取り戻すこと”。それがプロキャリアにおける最大の目標だ。それは僕のレガシーにとってもすごく大きな意味を持つ。アレックス・ペレイラは、この前アンカラエフと戦ったときに、確か3度目のタイトル戴冠を達成しただろ? あれは元々俺の記録になり得たものだったんだ。彼がその記録を持っていった、って感覚も少しある。でも少なくとも(王座に返り咲けば)、“俺もやったんだ、2番目ではあるけど違う階級で達成したんだ”と言える。だから自分のレガシーに数字や細かいディテールを積み重ねている感じ。『これを最初にやったのはブランドン・モレノだ』って言われるようなことを増やしたいんだ」
王座を見据えるが、そのための扉を開く鍵が、目前の平良戦の勝利であることを忘れることはない。
「今回の達郎との試合は、まさに、チャンピオンシップを争うための扉を開く、完璧な鍵になると思うんだ。もちろん達郎には最大限のリスペクトを払いたい。今は何よりも、達郎に集中している。ファイトキャンプで研究したけど、彼は明らかに危険なファイターだ。彼はすごくタフだし、若くて、エネルギーに溢れてる。本気でチャンピオンになりたいと思っているのも伝わってくる。マット上の戦い方をよく知っていて、自分のテリトリーで戦うのが得意だけど、打撃を交換することを恐れてはいない」と、平良を高く評価する。
一方で、自身が上回っている自信も隠さない。
「達郎はまだ少し若いとも思う。ポイントは“経験”だと思うんだ。確かにたくさん勝っているけど、例えば前回の試合はランク外の相手だった。そして唯一の黒星は、一番タフな相手だったブランドン・ロイヴァル戦だ。つまり、初めて本当にタフな相手と戦ったときに負けてしまった、ということになる。俺が言いたいのはそこなんだ。もちろん、彼の能力は尊重しているよ。でも同時に、“今の俺は全盛期にいる”と強く感じている。身体も強くなったし、以前とは違う感覚がある。さっき言ったような経験も全部含めてね。達郎が悪い選手だと言っているわけじゃない。ただ、もっと経験が必要だと思う。だけど、その“若さ”こそが彼をとてつもなく危険な存在にしている、というのも事実だね」と、6歳若い平良の強みが、弱みでもあるとした。
対する平良も、インタビューで「モレノの強みは経験。たくさんタイトルマッチをしてきて、たくさん大きな試合をしてフライ級を引っ張ってきたので。寝技も強いし、ボクシングも、自分の強みを試合で出せる経験を持っている。弱みは“我慢できない”というか、大振りになるとか、体勢を崩して相手に当てようとするところとか、そういったところに隙のある選手」と、ボクシング巧者のモレノにもスタンドで付け入る隙があるとし、勝負どころは得意のバックからの攻め、と寝技にも長けたモレノからもバックを奪うことが可能だと自信をのぞかせている。
グラップリングの猛者であるアンドリュー・タケットやマイキー・ムスメシらともグラップリングを磨くモレノは、そのバックの攻防も含め、平良戦を“シンプル”と評し、この試合に向けたプロセスと経験が、王者パントージャとの試合のシミュレーションになるという。
「あのバックテイクは彼がいつも試合で狙ってる技だ。だからパントージャとよく似たタイプのライバルがいるってことは、ちょっと嬉しいよね。明らかに立ち技には多少の違いがあるかもしれないし、バックテイクにも多少の違いがあるかもしれないけど、基本的には同じ戦い方だ。相手をマットに押さえ込み、フックを繰り出して少し戦いをコントロールし、マタレオン(リアネイキドチョーク)で極める。オクタゴンで密着する。
この戦いは“シンプル”だ。なぜなら、達郎が何をしたいのか──つまり、彼が打ち合いを恐れていないことも知っている。おそらく彼は、僕に対してパンチを繰り出そうとするだろう。しかし、結局、彼の本当の狙いは、僕をマットに倒そうとすることだと理解している。これはパントージャとの試合に向けた準備の戦いだと思う。パントージャとヴァンの間で何が起こるか見てみようってところだけど、もし、またパントージャと対戦することになったら、それは今の僕にとって、とてもやりがいのある試合だ。だって、チャンピオンとの試合に向けて準備ができるからね」






