「格闘家役になり切る」と嘯く弥益だが、その向き合い方はトリッキーではない(C)ゴング格闘技/RIZIN FF
2023年12月31日(日)『RIZIN.45』(さいたまスーパーアリーナ)のオープニングセレモニー前の第4試合・フェザー級(66kg)戦で、元DEEP同級王者の弥益ドミネーター聡志(team SOS)が約1年1カ月ぶりに復帰。現PANCRASE同級王者の新居すぐる(HI ROLLERS ENTERTAINMENT)と対戦する。
RIZIN初参戦で朝倉未来に敗れ、ベイノア、萩原京平を相手に2連勝。2022年11月の前戦で平本蓮と70kg契約で対戦し、度重なるダウンの末に、判定負けを喫した。
再起戦の相手は、PANCRASEでベルトを巻いてRIZINに戻って来た新居だ。弥益は、サラリーマンとして働きながら、かつて憧れたファイターたちが戦った舞台を継ぐリングでの試合に向け、しっかり身体を作って「大晦日に“格闘家の役”ができる」と嘯いた。その真意とは?
【独占インタビュー】
大晦日連続インタビュー(1)新井 丈
大晦日連続インタビュー(2)斎藤 裕
大晦日連続インタビュー(3)ヒロヤ
大晦日連続インタビュー(4)新居すぐる
大晦日連続インタビュー(5)YA-MAN
大晦日連続インタビュー(6)皇治
大晦日連続インタビュー(7)弥益ドミネーター聡志
大晦日連続インタビュー(8)堀口恭司
大晦日連続インタビュー(9)朝倉海
最低に転がり落ちて、大晦日にチャンピオンとやる。「いいんかそれで、お前」って
――会見でもずいぶん語ってくださったので、この個別取材では、まずは妹弟子の万智選手と松田亜莉紗選手の熱闘についてうかがいます。セコンドについた弥益選手はあの判定3-2(29-28×3, 28-29×2)をどう見ていましたか。
「自分は、万智ちゃんが2ラウンドを取ったと思ってたんですよ。なので2、3Rを取って勝ったと正直思った試合でした。3ラウンド目が終わった直後に、俺喜んでたんです。無邪気に喜んでて、万智ちゃんも喜んでて“やったー”って。そしたら梅田(恒介)さんが、『俺、負けだと思ってるけど』って言ってて。『いや、無いっしょ』って……。
たしかにギリギリだったんですけど、自分は2ラウンドのテイクもどきとヒジ打ち。壁際のヒジが少なくとも自分は入ったように見えて、松田選手が明らかに嫌な顔をしてちょっと下がったシーンが見えてたので、これが入っていればたぶん2R目は取っているだろうと。
で、3R目はもう確実に万智ちゃんなので、これは取ったなと思った結果がああなってしまったので、そういう意味では本当にセコンドとしてもっと3は行かせなくちゃいけなかったのかなと思うと、ちょっとやっぱセコンドの難しさと責任を感じましたね」
――2R目は万智選手が右をもらって鼻血を流しながらボディロックテイクダウン。それを立たれながらも押し込んでヒジ、ヒザ。試合前に万智選手が危惧していたのは、テイクダウンに行って立たれてそこで止まっていると、細かい打撃をもらうのを気をつけたいと。テイクダウン後の動きを警戒していました。
「そうですね。すぐ立たれちゃってたので。やっぱり渡辺(彩華)戦でもなかなかテイクに苦戦したところはあったので、そこを踏まえてもっとこうしたほうがいいよというのは、梅田さんからも自分からもいくつか提案をしていて、一緒に練習するときとかはそこをいろいろ指示していました。そのへんの良さがやっぱり3ラウンドまで出なかったんですよね。1Rと2Rが渡辺戦の頃のままで頑張ってしまったところがどうしてもあって、成長を見せることができるのが、ちょっと遅かった。少しエンジンがかかるまでが時間がかかってしまったなという感じですね」
――その練習したことを試合があることで出せる。それが試合で現れるかどうか。万智選手は成長を試合で見せたけど、判定は届かなかった。翻って弥益選手は、前回の本誌のインタビューで、平本蓮戦を「一つの試合としては消化できているけど、個人的な部分が未消化なまま」と発言しました。仕事・家族を持ち、身体的なダメージも考えるなかで、再びリングに上がることを決めたこと、それが大晦日の試合であることについては、どうとらえていますか。
「そうですね……まずはいいんかなっていう。前戦で負けて、言ったら平本選手は、もちろん今はもう強さを証明できていると思うんですけど──それでもやっぱり自分とやった頃なんてまだ駆け出しじゃないですけど、ようやく1勝したくらいのタイミングで、その選手に負けた」
――平本戦はフェザー級の試合ではなく、70kg契約でしたが……。
「最低に転がり落ちたと思っているので。かつ1年間何もやってない、表にも出てない、他の人のYouTubeで他の人の試合を偉そうに喋ってるくらいしかやってない人間が、大晦日という場所でいいんかって。かつ対戦相手もこの間、PANCRASEでチャンピオン取ったばかりだろう。“いいんかそれで、お前”っていう思いは正直あります。でも、だからこそすごくありがたいことというか、あり得ないことだと思っていますし」
――練習をすることで成長を感じて、またそれを試したくなる。それは今でも同じですか?
「だんだん考え方が逆になってきたというか、試合をして、試合を経て成長して、それを練習で出したいな。で、先輩に褒められたいなという」
――いまだにそういう──弥益選手が認めるところの格闘家にファイターとしての成長を褒められたいと……。しかし、「次は“弥益が勝つだろう”的な相手ではなく、上の人とやってみたい」と希望していた弥益選手にとって、またも門番的な役割の試合が組まれたという見方も出来ます。弥益選手は「チャンピオンを取ったばかりだろう」とは言っていましたが、新居選手はRIZINでは1勝2敗。そして、新居選手とはこれまでに練習したこともあるのではないですか。
「そうですね、1回くらい練習したことあると思います。新居選手が佐野哲也選手と練習していたということは、東京の清水俊一さんが主催されてる練習会にもたぶんいらしていたので、わりと近い場所にずっといたというイメージはあって。たぶん東京出てからなので、2017年とか2018年くらいですね。GENスポーツパレスかどこかで練習して、もしかしたら茨城時代にもちょっと絡んだことがあるかもしれないです。自分がアマチュアの頃から存在は存じ上げていましたし、なんとなく周りにいる人だなという印象がずっとあったので、まさかこんなところで巡り合うか、という感慨深さみたいなものはあります」