(C)RIZIN FF
2022年11月6日(日)に愛知・ドルフィンズアリーナで開催された『RIZIN LANDMARK 4 in NAGOYA』で、ベストバウトのひとつに挙げられたのが、元谷友貴(フリー)と倉本一真(リバーサルジム新宿Me,We)のバンタム級(61.0kg・5分3R)戦だった。
元谷は金太郎、ヤマニハ、太田忍を相手に3連勝中で、MMA41戦31勝のキャリアを誇る実力者。立って良し、寝て良し、そしてそれを繋ぐMMAの際の動きの引き出しの多さも試合のなかで取捨選択できる強さを持つ。
対する倉本は、2021年6月のRIZINバンタム級JAPANグランプリ1回戦でアラン“ヒロ”ヤマニハに判定負けも、2022年2月に加藤ケンジをケージで1R TKO。5月には魚井フルスイングを判定で下し、2連勝中で、満を辞して上位陣に挑む試合だった。
試合は、初回に倉本がいきなり詰めてシングルレッグから肩を押してテイクダウンを奪うが、元谷が下からの腕十字、足関節の動きで倉本から離れさせることに成功。スタンドでも元谷がミドルキックを当てると、頭が下がる倉本の入りギロチンや首相撲&ヒザ蹴りを合わせ、バックマウントも奪い攻勢に。
しかし、2Rには倉本がクラッチを組んでジャーマンスープレックス、3Rにも元谷のシングルレッグ&小外がけに倒れながらも、すぐに左ヒジをマットに着いて反転、元谷の脇を潜りバックを奪って後方に投げるなど反撃。
元谷のラッシュに、倉本がフラつきながらも左右で金網に詰め返すと、最後はガードを固めていた元谷が右を当て返して崩してサッカーキックと猛ラッシュ、フルラウンド15分の熱闘に場内から大きな拍手が沸いた。
試合後、元谷はケージのなかで、「ほんとうはバチっと勝って『年末、朝倉海選手と』と言いたかったんですけど、しょぼい試合をしちゃったんで、また1歩づつ上がっていきます」と、判定決着に厳しい自己評価を語ったが、榊原CEOは、「やっぱりプロとして、ルールミーティングでも勝ちにこだわることもそうですが、負ける勇気を持って、最後の最後まで一本を取りにいってくれ、とプロモーターとしての思いを伝えるので、どうしても選手たちにもそういう『判定=悪』というものがあるやもしれないです。しかし今回、倉本選手にも労も労いましたし、元谷選手もほんとうに素晴らしい試合でした。KO・一本でなくても判定であれだけ最後まで観客も飽きさせずに、折れないハートに感動したと思います。判定決着を通り越して、しっかり生き様を見せた試合には最高の評価を与えたいと思うので、今度、元谷選手に会ったら言っておきます」と絶賛している。
試合後会見で、両者は何を語ったか。一問一答全文を紹介したい。
元谷友貴「一歩、二歩と進めば、ベルトに近づける」
──試合後の率直な感想をお聞かせいただけますでしょうか。
「フィニッシュしたかったんですけど、フィニッシュしたと思ったのですが、出来なくて悔しいです」
──フィニッシュ出来なかった理由は?
「自分が決め切れなかったのもあるんですけど……、でも最後勝負どころは出して、勝負はしに行ったので、結果、決められなかったですけど、相手が強かったってことでしょうがないと思います」
──最後は消耗戦のようでした。3R後半はどのような気持ちで戦っていましたか?
「3R後半は、ところどころ自分のパンチが入り出して、いいペースかなと思って。で、効いたところで……そうっすね、やっぱ盛り上がっていたので、もっと試合を決めて盛り上げたかったです」
──対戦してみて倉本選手は試合前にイメージしていたところと違う部分はありましたか。
「対戦する前の想像より圧が強くて。思った以上に強い選手でした」
──「こんな試合」と言っていますが、すごい試合だったと思います。その中で、2R終盤、倉本選手が立ち上がってきて、あそこはちょっとスタミナを温存したのかと思ったのですが、最終回だいぶ攻められていて、しかもそこから残り1分くらいで急に反撃したのは、スタミナを貯めていたのか、そういう意識なくああいう試合展開になったのでしょうか。
「無理にペースを取りに行こうとすると、やっぱり消耗も激しいので、ちょっと相手の様子を探りながら自分の展開になったら行こうと決めていました。で、ちょっと当たり始めて、決めどころやなと思って進めました」
──相当攻められたように見えた場面も、頭はクリアに戦えていた?
「そうですね、結構受け手になって攻められた印象ですけど、まあ、実際攻められたかもしれないけど、頭の中は“まだ大丈夫だな”っていう“勝負どころあったら行くぞ”という感じでやっていました」
──倉本選手の組みに対して細かいヒザを随分突いていました。あれは作戦だったのでしょうか。
「いや、がぶれる展開になると思っていなかったので、結構がぶりの展開が多かったのでここはヒザを蹴らないといけない展開だったのでいっぱい出しました」
──3Rに、元谷選手からシングルレッグをしかけて、小外刈でほぼ倒しかけたのを、倉本選手に切り返されてバックを奪われた瞬間は、どんなことを感じましたか。
「ああ、自分からテイクダウン行って……。そうっすね、あれはちょっとまあ打撃でもちょっとペース掴んでいたので、ここでちょっと展開を変えて上でも取ろうかなと思ったのですが、凌がれましたね」
──対戦してフルラウンドやってみて、倉本選手のMMAでのレスリング力をどう感じたましたか。
「レスリングに対しては、そうですね、最初巻き投げみたいなのしてきたり、“ツーオン”とか、あそこからの展開がたぶん得意だと思うのですが、その展開をやってきて、でも凌げたので。あと良くなかったというか、スタンドバックでしっかりクラッチ取られたときは、やっぱ投げられたり、ヒザを打たれたり、ちょっと良くなかったので、そういうところですね」
──勝利後のマイクについては?
「そうですね、本当はしっかり勝って『朝倉海選手どうですか』と言いたかったんですけれど、まあ言ったところで、こんな試合だと組んでもらえるかも分からないので。まあでも、RIZINが用意してくれた相手と戦いたいと思います」
──今後の目標や展望をお聞かせいただけますか。
「今後はまずとりあえず1歩ずつ、着々と上には行っていると思うので、一歩、二歩と進めば、ベルトに近づけると思うので、また頑張っていきたいと思います」
──RIZINが用意した相手に連勝してきて、そろそろご自身が思う大勝負をアピールしても良さそうにも見えるのですが。
「そうですね。アピールして、なるならアピールします(笑)。まあでも、アピールしても、どうなんですかね? 上とはやりたいです。でも誰でもやります。一歩ずつ上がっていけば、あと1勝、2勝で、(朝倉海らトップ勢が)絶対やらざるを得ないぐらい勝てばいいだけなので、まあ着々と進んでいきます」