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2022年4月9日(日本時間10日)、米国フロリダ州ジャクソンビルのVyStarベテランズ・メモリアル・アリーナで『UFC 273』が開催される。
メインイベントは、王者アレクサンダー・ヴォルカノフスキー(豪州)が、“コリアン・ゾンビ”ことジョン・チャンソン(韓国)を迎え撃つUFC世界フェザー級タイトルマッチ。さらに正規王者アルジャメイン・スターリング(米国)と暫定王者ピョートル・ヤン(ロシア)によるバンタム級王座統一戦も組まれている。
このダブルタイトルマッチの見どころをWOWOW『UFC-究極格闘技-』解説者として知られ、4月17日にMMA引退試合に臨む“世界のTK”高坂剛に語ってもらった。
ヴォルカノフスキーの異常な体力と精神力を見せられたら、対戦相手は恐怖感を抱くんじゃないか
──『UFC273』のメインイベントは、もともとヴォルカノフスキーとマックス・ホロウェイの3度目の対戦の予定でしたが、ホロウェイの負傷欠場により、ランキング4位のジョン・チャンソンが挑戦者に抜擢されました。
「これはホロウェイが出られなくなった時点で、多くの人が“代わりはジョン・チャンソンしかいない”と思ったんじゃないですかね。“コリアン・ソンビ”の異名が付けられるくらいタフで打たれ強く、どんな相手であろうと立ち向かっていく、何かをしでかしてくれそうな期待が持てる選手ですから。そういう意味でホロウェイ欠場の副産物ではありますけど、すごくいいマッチアップだと思いますね」
――しかし、下馬評ではヴォルカノフスキーが圧倒的に有利と言われています。
「これは仕方がないです。ジョン・チャンソンに限らず、今のヴォルカノフスキーを崩すのは難しい。それぐらいの強さを王者になる前から見せていますから」
――UFC10戦全勝、MMA20連勝中ですからね。
「そのヴォルカノフスキーの鉄板ぶりを支えている要因はいくつもあると思いますけど、一つ挙げると右のパンチが、ストレートにしてもオーバーハンド気味のフックにしても、ものすごく強いんですよね。それを対戦相手も知っていたり、感じていたりするので“右を打つぞ”というフェイントだけで、すごくプレッシャーをかけられるんですよ」
――相手が必要以上に反応してくれると。
「だから右のフェイントに引っかかって、逆に左フックをもらってしまったりとか、連打を打たれることが多い。ヴォルカノフスキーと対戦する選手は、強い右をもらわないのは当然として、それを餌に使っているであろう他の攻撃にどう対応するかが求められるんです」
――また、ヴォルカノフスキーの無尽蔵のスタミナも相手にとっては脅威ですよね。
「そうですね。前回のブライアン・オルテガ戦もそうですけど、時間が経つほど強くなるという不思議な体力の持ち主なんですよ。序盤でフラッシュダウンしたりすることもあるし、テイクダウンの攻防などでかなり体力を使っているはずなのに、なぜかラウンドを重ねるごとに強くなる。あれは超サイヤ人ですよ(笑)」
――途中で金色の戦士に変身してるんじゃないか、と(笑)。
「オルテガ戦では、ギロチンチョークや三角絞めでタップアウト寸前まで追い込まれながら、なんとか抜け出したじゃないですか。でも、一度窮地に陥ってなんとか耐え凌いだ後って、体力的にも精神的にもものすごく消耗するものなんですけど、ヴォルカノフスキーはすぐにプレッシャーをかけて前に出てましたからね。あの異常な体力と精神力を見せられたら、対戦相手は恐怖感を抱くんじゃないかと思いますよ」
チャンソンが上回っているのは、最初のセッティングが早いこと
――そんなヴォルカノフスキー相手に、ジョン・チャンソンはどんな戦いが考えられますか?
「ジョン・チャンソンは殴り合い上等のイメージが強いと思いますけどじつはすごく目がいい選手なんですよ。試合の序盤で相手の打撃の軌道を見切って、すぐに打ち返すとか、カウンターを入れるとか、タックルを合わせるとか、そこのセットアップがすごく早いんです。打たれたらすぐ打ち返すから殴り合いになるんですけど、リーチも183cmと長いので、アウトボクシングでポイントを稼ぐこともできる選手だし、そこからのラッシュで仕留めることもできる」
――ヴォルカノフスキーと背格好が似ている元ライト級王者フランク・エドガーもKOしてますしね。
「エドガー戦も打ち合っているように見えて、ちゃんと見切って当てているんですよね。じつはそういう冷静な試合運びができる選手なんです。“コリアン・ゾンビ”という異名から、打ち合って打たれ強いイメージが強いですけど、それだけだとジョン・チャンソンを見誤ると思いますね」
――では、この一戦はどうなると思いますか?
「正直、真っ向勝負をしたら、さすがのジョン・チャンソンもヴォルカノフスキーには勝てないと思うんですよ。両者ともにタフなストライカーですけど、ヴォルカノフスキーはステージが違うと思うので。チャンソンがいちばん上回っているのは、最初のセッティングが早いこと。先手でパンチを効かせてペースを握って、反応の速さでヴォルカノフスキーの攻撃に対応していけば、勝機も見えてくるんじゃないかと。でも、しっかりペースを握れないと、後半伸びてくるヴォルカノフスキーに体力勝負に持ち込まれて、やられてしまう。だからジョン・チャンソンが、いかにこれまでのイメージと違う、クレバーな戦い方ができるかどうかでしょうね」