「俺が極められて失神するかもしれんし、腕とか折れるかもしれん。でも──」
自身のYouTubeで未来は、あらためてその理由を説明している。
「チャンピオンにリヴェンジしたいという気持もあったけど、勝ったところでやっぱりクレベル選手のことが脳裏をよぎる。結局、いつか戦わないといけないので、ここで俺が潰そうかなということでやることを決めました」
本誌の取材でも未来は、「仮に斎藤選手とやって俺がベルトを獲ったとしても“自分より強いやつがいる”と思われるのは気持ちよくない。それにクレベル選手とかヴガール・ケラモフって、斎藤選手よりワンチャンあって強いんじゃないかなと思って」と、“強さ”という評価基準へのこだわりが、今回の選択に繋がったと語る。
「ぶっちゃけ、斎藤選手ともう1回やっても勝てると思っているし、ファンのみんなも最強の俺を期待している。その期待に応えたいなっていうのはある。そこだけかな、そこだけのために今回は頑張ります」
魔裟斗から「まだまだやることはある。世界最高峰を目指すべき」と激励された未来。新たな強化に取り組み、“最強の俺”への期待は、ファンのみならず、自身のなかにもある。
「ここで勝ってタイトルマッチに挑戦してベルトを獲りたいですね。まずはRIZINのチャンピオンにならないと、“その先”も見えてこない」という未来は、「あと1年半から2年」という引退までに、“その先”の「世界」に挑戦したいと考えている。
「今回は、俺のキャリアのなかで一番強い相手。クレベル選手に勝ったときに、俺の世界での評価ってめちゃめちゃ上がるよね。世界で戦ってた選手だから。でも俺は勝てると思っている」
現在、海外サイト「FIGHT MATRIX」の世界フェザー級ランキングにおいて、日本勢ではクレベル・コイケが54位、斎藤裕が62位、朝倉未来が68位、74位にISAOがランキングされているのが現実だ。それは北米基準においては、UFCやBellatorの上位選手とからまないと、評価のポイントになりにくいことを示している。
その「世界」では、1位がUFC世界フェザー級王者のアレクサンダー・ヴォルカノフスキー(豪州)、2位がマックス・ホロウェイ(米国)、3位がブライアン・オルテガ(米国)とUFC勢が上位陣を占めるなか、4位に現Bellator世界フェザー級王者のパトリシオ・“ピットブル”・フレイレがランクイン。7位にBellatorフェザー級GP決勝でパトリシオと対戦予定のA.J.マッキー(米国)、8位に唯一のアジア人ジョン・チャンソン(韓国)が名を連ねている。
彼らと拳を交えるためには、ベルトを手に海を渡り、列に並ぶしかない。あるいはワールドGPで迎え撃つか──。それがファイター未来にとって、“最後のチャレンジ”のひとつであることは疑いようがない。
その挑戦を実現するためにも、クレベルとの試合は、未来が真にワールドクラスと戦えるかどうかの試金石となるだろう。両者ともに北米基準では異質な、特化した武器とともに発展途上の部分も併せ持つファイターだが、どんな進化を見せるか。
今後は、YouTuberとしての活動も撮り貯めていた分を配信したら、週1回ほどの投稿に頻度を落とし、試合に向けて練習に集中していくという。
「俺が極められて失神するかもしれんし、腕とか折れるかもしれん。クレベルはそういう危なさを持っている。でも……日本のフェザー級に、俺しか勝てる人はいないと思う。俺のテイクダウンデフェンス能力と打撃力、俺しか倒せる人がいないから、俺がやるしかない。地上波の放送もあるし、東京ドーム大会で気合も入っている。いままで以上に格闘技に本気になっている。またカッコイイ朝倉未来を見てもらいたい」。
対するクレベルは、「半年くらいでスタイルを変えることはできない。私は1回のチャンスを逃さず極める」と、出稼ぎから日本で柔術を始め、ようやく掴んだ成功のチャンスを必ずモノにする構えだ。「神は、実現不可能な願望を心に置かない」と、今回の試練も越えられると考えている。
路上の伝説から日本のスターとなった未来は、ハングリーなクレベル・コイケを凌駕することが出来るか。朝倉未来は“本気”だ。