2021年4月2日(日本時間3日)、BellatorがバイアコムCBS傘下の「Showtime」と独占テレビ契約を結んだライブ中継の最初の大会となる「Bellator 255: Pitbull vs. Sanchez 2」が、米国コネチカット州モヒガン・サン・アリーナで開催された。
メインはフェザー級GP準決勝&同級王座戦として、王者のパトリシオ・フレイレ(ブラジル)が、挑戦者エマニュエル・サンチェス(米国)と2018年11月(パトリシオが判定勝ち)以来の再戦。1Rにカウンターの左フック、右ストレートでダウンを奪ったパトリシオがギロチンチョークでサンチェスを失神させて、王座防衛&GP決勝進出を決めた。
試合後、会見に出席したフェザー&ライト二階級同時王者のパトリシオは、1Rでギロチンチョークを極めたフィニッシュについて「速い結末だったが」と問われ、「そう見えたかもしれないけど複雑な攻防があった」と語った。
ギロチンチョークを極める流れは、打撃でサンチェスからダウンを奪ったことが始まりだった。
エバーソン打撃コーチから「落ち着いて、確実な瞬間を待て」とアドバイスを受けていたパトリシオは、リーチの長いサンチェスの蹴りに対し、「空手を見せることができた」という踏み込んでのカウンターのパンチを左から右でヒット。
サンチェスをダウンさせると、慌てて立ち上がったきたところに、がっちりアームインギロチン。相手にパスして防がれないようにしっかりクローズドガードのなかに入れて絞め上げ、スクイーズすると、サンチェスが座り込んだまま失神。
「彼はもう落ちていたから、レフェリーに伝えたんだ。気を失ったサンチェス自身はその状況を理解していなかったようだけどね」と、フィニッシュの瞬間を語った。
「若くていい挑戦者だったけど、彼に教えてやったんだ。“ベルトをかけて戦うということは俺に倒されるということ”を」
フェザー級ワールドGPのもうひと山では、2020年11月にMMA17戦無敗のAJ・マッキーJr(米国)が、元Bellator世界バンタム級王者のダリオン・コールドウェル(米国)を1R、ネッククランク(本人いわくショルダークランク)に極めて決勝進出を決めており、試合後に「あれはギロチンじゃねーよ」と舌戦を繰り広げたパトリシオとの首極め合戦も注目されるところだ。
【写真】試合後の決勝に向けたフェイスオフでAJマッキーは「お前をテイクダウンしてパウンドしてやる」と毒づいていた。
マッキーとのフェザー級決勝戦について、パトリシオは、「この決勝は完璧だ。彼にとってBellatorがすべてのキャリアで、負け無しだろう? 何が起こるのか見ものだ。そして俺は何が起こるか知っている」と笑顔を浮かべた。
AJがサンチェス戦の完勝劇を観た上で、「自分の方が有利だ」と語ったことについても「これは5Rの勝負で、彼は今まで知らなかった領域に足を踏み入れることになる。何が起きてもおかしくないし、すべてにおいて全く異なる準備が必要になるんだ。あいつは俺のパワーも危険だということも知っているから、より注意深く戦わないとね」と、17戦無敗のAJ・マッキーをしても、5Rの王座戦は未知の領域になることを予告した。
両者の因縁、レコードを見ても、激闘必至のフェザー級ワールドGP決勝。スコット・コーカー代表は会見で「6月か7月とピットブルのマネージャーと話しているから夏あたりには出来るだろう」と語っている。
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パトリシオ「ハビブと戦ったら? 俺には秘策がある」
フィニッシュ直後、カメラに向かって、「世界ナンバーワン、ピットブルだ!」と叫んだパトリシオ。
UFCというもうひとつの頂きがあるなか、常にBellator王者は、オクタゴンの王者と比較されてきた。その状況下で、二階級王者のパトリシオは「世界一」という言葉を発している。
5月16日には、かつてパトリシオが1R TKOに下したマイケル・チャンドラーが、シャーウス・オリベイラを相手に「UFC世界ライト級タイトルマッチ」に臨むことが決定。7月10日にはダスティン・ポイエーとコナー・マクレガーが3度目の対戦に臨む。
また、UFCフェザー級では、王者アレクサンダー・ヴォルカノフスキーと挑戦者ブライアン・オルテガが、UFCが3年ぶりに復活させる『The Ultimate Fighter 29』の両コーチに就くことも決定。シーズン終了後に仕切り直しの決戦に臨むことになる。
パトリシオは言う。「自分自身は“世界のナンバーワン”であることを知っている。自分のレコードも、誰に勝って来たかも知っている。それで十分だ」と、Bellator王者の自負を語る。
この日、サークルケージには、元UFC世界ライト級王者にして29戦29勝無敗のまま引退したハビブ・ヌルマゴメドフが、12勝無敗の従兄弟ウスマン・ヌルマゴメドフのセコンドにつく姿が見られた。記者陣から「ライト級の“GOAT(the greatest of all time)”が見ていることは何かプレッシャーを感じたか?」と問われたパトリシオは、一瞬、怪訝な表情を浮かべてみせた。
そして、マネージャーからの耳打ちに、「ああ、“GOAT”って言うから“俺が俺の試合を観ている”ってどういうことなのかと思ったよ。ハビブがいたことは知っているけど、だからといってそれは俺の試合には関係ない」と一笑すると、「もうひとりの“GOAT”として、もしハビブと戦ったら?」という唐突な問いに対して、「ハビブとの試合? 俺には秘策がある」と言い切った。
「ハビブはいつも前に出続けるだろ? そこにはすごいプレッシャーがある。だから、彼の対戦相手は彼をステップバックさせる必要があるんだ」と「ヌルマゴメドフともし戦わば」を語るパトリシオは、「グレイソン・チバウ戦を見返した方がいいぜ。あれはすごく競った試合だった」と、ヌルマゴメドフに圧力をかけ、テイクダウン狙いをことごとく切ったブラジルの同朋の試合を例に挙げた。
両団体の“GOAT”が揃い、無敗のAJ・マッキーがパトリシオとフェイスオフを繰り広げるなど、豪華な顔ぶれが並んだ「Bellator 255」。決勝は「史上最高の試合のひとつであることは間違いないだろう」とパトリシオも胸を張る。RIZINの榊原信行CEOは、今秋開催のフェザー級ワールドGPに向け、「Bellatorのチャンピオンにも参戦してほしい」と語っており、日本のファンにとっても注目のファイナルであることは間違いない。
AJはパトリシオとの試合を「来週でも喜んでやる」と豪語したが、“ピットブル”は「いますぐやろうぜ! 俺は準備できている。俺もあいつも今ここいる。やろうぜ! いまがその時だ」と闘犬の異名に違わぬファイティングスピリットを見せている。
6月から8月にかけて行われるBellatorフェザー級GP決勝&王座戦はどうなるか。世界が注目している。
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AJ・マッキー「時代は変わった。俺の時代はもう始まっている」
「驚きはなかったよ。彼はギロチンを狙えるところで狙っただけだ。(あなたが戦えばサンチェスとは違う結果になる?)違う。彼は俺じゃないから。
自分は大きくてリーチがあるから、パトリシオが中に入ってくることは出来ない。彼が入ってくるためには隙を作らざるをえない。そこで自分のアドバンテージを活かして、ベルトを手にしたい。
パトリシオは、俺を倒すと言っているけど、時代は変わった。俺の時代が来た。もう始まっている、まあ見てみなよ。
彼はチャンドラーも倒しているフェノミナルな選手だけど、誰も俺を倒すことはできない。
『チャピオンでいるためにはチャピオンらしくしなくちゃいけない。だからいつだって戦えなくちゃいけない』と父(アントニオ・マッキー)は言っていた。だから自分は“来週”と言われてももちろん戦えるよ」