2020年10月17日(日本時間18日)、アラブ首長国連邦・アブダビの「UFCファイトアイランド」にて「UFC Fight Night: Ortega vs. Korean Zombie」が開催された。
UFC Fight Night: Ortega vs. Korean Zombie
2020年10月17日(日本時間18日)UFCファイトアイランドアラブ首長国連邦・アブダビ
【メインイベント】
▼フェザー級 5分5R○ブライアン・オルテガ(米国)146lbs/66.22kg[判定3-0] ※50-45×3×ジョン・チャンソン(韓国)146lbs/66.22kg
メインイベントで、フェザー級2位のブライアン・オルテガ(米国)と4位のジョン・チャンソン(韓国)が対戦。計量では、オルテガ、チャンソンともに146ポンド(66.22kg)パスしている。
当初、両者は2019年12月の韓国釜山大会で対戦予定だったが、オルテガがヒザの負傷で欠場、チャンソンは緊急出場したフランキー・エドガーに1R TKO勝利し、今回のオルテガ戦を迎えることとなった。
巧みなボクシングに加え、強力な柔術を武器に、2018年3月のフランキー・エドガー戦の1R KO勝利まで14勝1NCと負け無しも、12月の前戦マックス・ホロウェイ戦で4R TKO負けで初黒星。ヒザの負傷から1年10カ月ぶりの復帰戦となる。
今回の“コリアンゾンビ”との試合では、ヘナー・グレイシーが新型コロナウイルスの検査で陽性となり、再起戦のオルテガのコーナーにつくことが出来ないという。今回は新チームで進化した姿を見せられるか。
前日計量前では、髪をバリカンで切り落としてる動画をアップしたオルテガ。減量苦からのものと思われたが、実際には、化学療法を受けるなど髪の毛を失いウィッグを必要としている子どもたちのために、ヘアドネーションとして寄付したことをマネージャーのティキ・ゴーセン(元WEC・UFCファイター)が明かしている。
対するジョン・チャンソン(韓国)は、UFCでメインイベントを張ることができる数少ないアジア人ファイターの1人。
日本の戦極等で活躍し、小見川道大、石渡伸太郎にも勝利しているチャンソンはMMA16勝5敗。キックボクシングでも15勝6敗の戦績を誇るストライカーで、MMAではオルテガより3年長いキャリアを持つが、UFC参戦中に兵役で2年間ファイターを休業していたこともあり、2011年からの9年間でまだ8試合。打ち合い上等のスタイルと見られがちだが、戦いに幅の広さがあり、息の長さも見せている。
今回、名将エリック・アルバラシン(ヘンリー・セフードやピッチブル・ブラザースのコーチ)からは、スカイプによりアドバイスを仰ぎ、ファイトキャンプでは、米国から韓国にジョニー・ケースとボビー・モフェットをトレーニングパートナーとして呼び寄せ練習を行って来た。
2018年11月に1年9カ月ぶりの復帰戦でヤイール・ロドリゲスに敗れるも、2019年にはヘナート・モイカノ、フランキー・エドガーの両者を1R TKOに下すなど、3試合連続ファイト・オブ・ザ・ナイト受賞の激闘を繰り広げている。
1R、静かなグローブタッチ。ともにオーソドックス構えからスタート。右ローから入るオルテガ。チャンソンは左ボディストレートで軽く牽制。サウスポー構えにスイッチするオルテガは右ボディストレート。右ローをヒット。チャンソンも右インローをカーフに打つ。
左ジャブで測るチャンソンに右フックをかぶせるオルテガは右アウトサイドロー! 前手の突き合いから左ボディストレートを入れる。さらにワンツースリーと先に手を出すオルテガ。チャンソンは右ローを打つがローブロー気味に、しかしそこにオルテガは左フック!
ダウンしたチャンソンだがオルテガは追わず。立て直すチャンソンに右ローから鋭い左ハイをガード上から当てる。さらにチャンソンの蹴りの打ち終わりに右を狙う。
2R、サウスポー構えのオルテガの前足に右のカーフキックはチャンソン。ワンツースリーとオルテガを見ながら右アッパーも打つチャンソン。オルテガはサークリング。チャンソンの打ち始めにシングルレッグに入るが、切るチャンソン。四つから突き放される。オルテガは左のオーバーハンド。かわすチャンソンは右ローもローブローに。すぐに再開。圧力をかけるチャンソンは左から右アッパー! オルテガは右のサイドキックを腹に打つ。
オーソドックス構えに戻し右ハイを打つオルテガ。チャンソンの左のダブルに下がりながらオルテガは右のバックヒジ! ダウンしたチャンソンだが立ち上がり打ち合いに応じる。しかしそこにダブルレッグテイクダウンはオルテガ! 足を効かせて立ち上がるチャンソンの首をギロチンチョークに狙うが、そこは警戒するチャンソンが組ませない。
3R、チャンソンのダメージはいかほどか。サウスポー構えのオルテガはオーソに戻し、再びサウスポー構えに。右ミドルを打ち込むチャンソン。オルテガの右に左フックを返す。喧嘩四つの前手争いから右ローはオルテガ! さらに右ロー、サイドキック。左ボディーストレートも。ワンツースリーと前に出るチャンソンをかわすオルテガ。サイドキックにパンチを狙うチャンソン。オルテガは右ローをこつこつ突く。
左ボディストレートはオルテガ! 右ロー、さらに右手でチャンソンのヒザを触りテイクダウンの動作を見せるオルテガ。右インローはチャンソン。その打ち終わりにシングルレッグに入り、放して右ストレートを当てるオルテガ。チャンソンの入りに再びバックヒジを狙う。ここもオルテガのラウンドに。
4R、ここまでのラウンドでボディー打ちとローキックはオルテガが上回る。取り返したいチャンソンは右の蹴りで前に出る。サウスポー構えから右の関節蹴りを狙うオルテガは右の蹴り、さらにシングルレッグで詰めて、片足立ちのまま下がるチャンソンを放して右フック! マウントを奪いに行くが、バックを譲らず立ち上がるチャンソンに右ヒジでカットさせる!
サウスポー構えから右の蹴りをサイドキック、ローと打ち分けるオルテガ。左から右を振るチャンソンだがかわすオルテガは左ミドル。チャンソンの右ミドルを掴んで右ストレートを打ち込む。左右を外側から打つチャンソン。ブロッキングするオルテガは右の関節蹴り。
右ミドルを打つチャンソン。シングルレッグに入るオルテガ。正対して離れるチャンソンにオルテガはまたもバックヒジを狙う。ブザー。
5R、右ローを当てるオルテガ。詰めるチャンソンはワンツーも遠い。前手争いから右手で前足を触るオルテガ。テイクダウンプレッシャーをかけることで打撃を打ちにくくさせる。ジャブからホロウェイばりの真っすぐを狙うチャンソン。受けに回るオルテガは金網際でサークリング。追うチャンソンはワンツー。ムエタイの5Rのように凌ぐオルテガはシングルレッグも深追いせず。右ジャブをヒットさせるオルテガ! チャンソンの左目の傷口が広がる。
追うチャンソンにカウンターのシングルレッグはオルテガも深追いせず。スタミナ苦しいか。しかしステップを踏むオルテガは右ジャブをヒット! 下がりながらも左前蹴り。バックヒジのモーションを見せたところでブザー。
判定を待たずに両者は健闘を称え合うと、チャンソンが大きな笑顔でオルテガの頬を右手で軽く平手打ち。両者はがっちりハグし、ヒザをマットに着いて頭を下げて礼をした。
判定は3-0(50-45×3)でダウンを奪ったオルテガがチャンソンに勝利。サウスポー構えからの関節蹴りやローキック、その前足へのシングルレッグなど、チャンソンの得意な打ち合いにさせなかったオルテガが進化を見せて、再起を果たした。
試合後、オルテガは「新しい自分になって、よりよいMMAファイターとしてカムバックするのに必要な全てを、レスリングからストライキングから、とにかく何もかもを出来る限り練習して臨んだ。こうして試合をすることで自分はやれるって分かった。ラクなとこにいても成長はできない」と新チームに感謝の言葉。
さらに、インタビュアーのダニエル・コーミエーから「“ニューバージョン”のオルテガは、ダナ・ホワイト代表が組もうとしているヴォルカノフスキーと戦う準備はできている?」と王者アレクサンダー・ヴォルカノフスキーへの挑戦を問われ、「ヴォルカノフスキー、君がチャンプ、君とやったらエキサイティングな試合になる」と語った。
バックステージでの公式インタビューでは、「自分は外れていた。それは分かっている。2年も試合をしていなければ外される。みんなに思い出してもらうためにここにいる。もう一度、こうなって嬉しいし、このレベルで自分の手が上がるということが重要だ。それが一番になるということ」と、再び頂点を狙える位置に戻ったことに安堵の表情。
欠場の間の様々なファンの声について、「スポーツに関して言えば俺はレイカーズのファン。子供の頃からレイカーズのファンだし、ドジャーズファンだ。勝っても負けても、チームとともにある。MMAにも、当然、韓国のファンが大勢いることは分かっている。彼らにはコリアンゾンビがいるし、今は自分に(ファンが)来ているけど、俺が負ければまた別の誰かにいく。たぶん、ファンの記憶は短いんだろう。俺についてきてくれているファンのことは愛しているし、心の底から感謝している。いろいろな人に心が移っている人に言いたいのは、忠誠を示して俺たちのやっていることに関して気分よくしてもらいたいってことかな」と、良い時も悪いときもともにあってほしいと望んだ。
また、今回の試合ではサウスポーに構え、シングルレッグも見せるなど、新たな姿を披露したが、「ゲームプランに拘ったのは今回が初めて。いつもなら、ゲームプランなんて無視するけど、(負傷明けで)始められるところが何もなかったし、でも、今回はホントのゲームプランだった。コーチがどうとかじゃない。俺は自分のやるべきことをやる。このスポーツではそういうチャンスを掴まないといけないんだ」と、作戦を練って勝利の糸を掴んだことを明かしている。
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【セミメインイベント】
▼女子フライ級 5分3R○ジェシカ・アンドラージ(ブラジル)126lbs/57.15kg[1R 4分55秒 KO] ※右ボディ×ケイトリン・チョケイジアン(米国)126lbs/57.15kg
アンドラージは元UFC世界女子ストロー級王者。2019年5月の「UFC 237」で王者のローズ・ナマユナスに挑戦し、ナマユナスのキムラロックをスラムで頭からマットに叩きつけて失神KO勝ち。ストロー級王座を戴冠した。しかし、2019年8月の中国大会で挑戦者のジャン・ウェイリーに1R TKO負けで王座陥落。2020年7月の「UFC251」ではナマユナスとの再戦でスプリット判定でリベンジを許し、今回、フライ級に転向。
チョケイジアンは女子フライ級1位。当初、アンドラージと対戦予定だったジェシカ・アイに2018年12月にスプリット判定負けも、ジョアン・カルダーウッド、ジェニファー・マイアに判定で連勝。
2020年2月の「UFC 247」では王者ヴァレンティーナ・シェフチェンコに挑戦も、3R クルスフィックス&パウンドによるTKO負けで王座奪取ならず。5月にシェフチェンコの姉であるアントニーナに判定勝ちし再起を果たしている。アンドラージより18cm長身だ。ニューヨーク在住の魅津希の練習パートナーの1人でもある。
1R、ともにオーソドックス構え。詰めて右で差すアンドラージ。しかし差し返すチョケイジアン。そこを巧みに崩したアンドラージがテイクダウン。下から三角絞めを仕掛けるチョケイジアンをスラムで外すアンドラージ。さらに腕十字狙いに身体を離す。立ち際をフックで狙ったアンドラージ。
組み際のヒザは打点が高いチョケイジアン! しかしアンドラージの右ローにチョケイジアンは尻餅をつく。金網まで押し込みヒザはチョケイジアンも押し込むアンドラージは足をフットスタンプで踏む。
スタンド。クリンチボクシングを狙うアンドラージだが、テンカオを合わせるチョケイジアン! 入りにくくなるアンドラージだが左右の連打で前に出ると金網に詰めて得意のハイクラッチのシングルレッグでリフトしテイクダウン!
ここはすぐに立ったチョケイジアンだが、四つ組みから右ヒジを打つチョケイジアンにアンドラージはみぞおちにショートの右ボディ! 顔をしかめて背中を向け、腹を押さえて後退したチョケイジアン。明らかに効かせたアンドラージは跳びヒザ蹴りで追い、続けて右ボディフック! チョケイジアンが屈んで崩れたところでレフェリーが間に入った。1R 4分55秒、KO勝利。アンドラージはUFCのバンタム級、ストロー級、フライ級の3つの階級で勝利を収めた最初の女子ファイターとなった。
アンドラージのニックネームの「バチ・エスタカ(Bate Estaca)」は、ポルトガル語で「パイルドライバー」を意味するが、今回は体格差をものともせずパイルドライバーではなく、強烈なボディショットで女子フライ級1位を撃破。ストロー級に続く二階級級制覇に名乗りをあげた。
試合後、アンドラージは公式インタビューで強烈なフィニッシュの瞬間について、「彼女のボディに一発を食らわせたら、わめき散らしながら、あっちを向いてしまったから、一瞬、試合が終わるかもと思ったけど、それでも彼女がまたこっちを向いてきたから、まだ終わってないと思って、もう一度いったの。そうしたらレフェリーが止めにきた」と振り返った。
続けて、「本当に楽しかったわ。素晴らしいファイトウイークだった。何もかも幸せよ。バンタム級で戦ってきた(※2013年のUFC初参戦時はバンタム級。2015年からストロー級)から、慣れっこだったし、感触も良かったの。この階級の子たちは大きいけれど、私は強いし彼女たちと戦っていける」とフライ級での手応えを得て、再び頂きを目指すことを語った。
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【メインカード】
▼ライトヘビー級 5分3R○ジム・クルート(豪州)206lbs/93.44kg[1R 2分01秒 KO] ※左右フック→パウンド×モデスタス・ブカウスカス(りトアニア)206lbs/93.44kg
プロデビューから7連勝で「DW's Contender Series 2018」に出場し1R TKO勝ちを決めたクルート。UFCでもポール・クレイグをキムラで極め、サム・アルヴェイを1R TKOに下すなど2連続フィニッシュ勝利。
しかし、2019年9月にライトヘビー級10位のミーシャ・サークノフにペルヴィアン・ネクタイで1R 一本負け。2020年2月にミハエル・オレクシェイチュクに1Rキムラロックで一本勝ちし、再起を飾っている。サム・グレコを師に持つストライカーだ。
対するリトアニアのブカウスカスはMMA11勝2敗。「Cage Warriors」で3連勝し、2020年7月にオクタゴンデビューし、アンドラス・ミケイリディスにヒジを効かせ、1R終了時TKO勝ち。UFC初勝利をマークしている。
ともにオーソドックス構え。ダブルレッグから組み付き金網まで押し込むクルートだが、ヒザ蹴りが金的に。再開。右ローを当てるクルート! さらに右ロー。
ブカウスカスは近い距離で左ストレート、さらに左ミドルを打ち行くが、左をかわして蹴りにカウンターの右フックはクルート! ダウンし立ち上がろうとするブカウスカスにさらに右フックを打ち抜くと、続けて左フック! ダウンしたところにパウンド1発を入れレフェリーを呼び込んだ。
勝利後、コンテンダーシリーズ出身のクルートはケージサイドのダナ・ホワイト代表に握手を求め、ダナ代表もそれに応えた。勝利のクルートはMMA12勝1敗に。
ともにオーソドックス構え。ダブルレッグから組み付き金網まで押し込むクルートだが、ヒザ蹴りが金的に。再開。右ローを当てるクルート! さらに右ロー。
ブカウスカスは近い距離で左ストレート、さらに左ミドルを打ち行くが、左をかわして蹴りにカウンターの右フックはクルート! ダウンし立ち上がろうとするブカウスカスにさらに右フックを打ち抜くと、続けて左フック! ダウンしたところにパウンド1発を入れレフェリーを呼び込んだ。
勝利後、コンテンダーシリーズ出身のクルートはケージサイドのダナ・ホワイト代表に握手を求め、ダナ代表もそれに応えた。勝利のクルートはMMA12勝1敗に。
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▼ウェルター級 5分3R○ジェームス・クラウス(米国)171lbs/77.56kg[判定3-0] ※30-27×3×クラウディオ・シウバ(ブラジル)171lbs/77.56kg
ウェルター級のBJJ黒帯対決。MMA27勝8敗のクラウスは34歳。TUF25でウェルター級に参加しベスト4に。ウォーレイ・アルヴェス、セルジオ・モラエスらに勝利するなどUFC4連勝後、2020年2月に欠場したアントニオ・アローヨの代役としてトレヴィン・ジャイルスと緊急対戦もスプリット判定負けで連勝ストップ。今回もムスリム・サリコフの代役としてスクランブル参戦を決めた。
シウバは2014年3月にUFCデビューも、2015年から2018まで長期欠場。2018年5月のノルディン・タレブ戦にリアネイキドチョークでの一本勝ちで復帰戦を飾ると、2019年3月のダニー・ロバーツ戦も腕十字で一本勝ち。2019年8月にはコール・ウイリアムズにもネック・クランクで勝利している38歳だ。
1R、サウスポー構えのシウバは思い切りのいい大振りの打撃。オーソドックス構えのクラウスは長いリーチから右ボディストレート。バランス崩したシウバを追わずスタンド勝負か。大きな右のオーバーハンドからダブルレッグテイクダウンはシウバ。立ち上がるクラウスのスタンドバックにつき足をかけて崩しに。立ち上がるクラウスは足を外してスタンド勝負。
シウバの大きな右をかわすクラウス。シウバの蹴りからの組み付きをがぶるも抑え込みはせず。スタンドに戻るシウバは左から右も大きい。クラウスは右を顔面、ボディにヒット! 金網に詰まり打撃を嫌ったシウバのダブルレッグを切ったところでブザー。
2R、右ストレートをはたくように顔面に打つクラウス。さらに左も。大きなワンツーで前に出るシウバだが身体が流れる。右ボディから左ストレートの対角線攻撃のクラウス。シウバは左ミドルを返す。さらに左ストレートもアゴを引いて受けるクラウスは、シウバのダブルレッグをがぶって切るとスタンド勝負。右を当てるシウバだがバランスを崩す。シウバの左をもらいながらも右を当て返すクラウスは、右のダブル! シウバがワンツーを返してブザー。打撃の的確さはクラウスだが手数が欲しい。
3R、ワンツーの左を上体を崩しながらも当てるシウバ。クラウスも右ストレートを返すが、シウバもまだ前に。さらに左ローでクラウスのバランスを崩すと左ストレート。クラウスは見えているためダメージは無いが印象が悪い。右ストレートを返すクラウス。左インロー、左ストレート、テイクダウントライと身体が流れながらも仕掛けるのはシウバ。クラウスも声を上げて右のダブルから組み付いてテイクダウンアテンプトを印象付けるが切るシウバ。クラウスはボディストレート。さらに右ジャブでシウバのアゴを上げさせる。シウバの左に右ストレートを合わせるクラウス。ブザー。
判定は的確な打撃を入れたクラウスが勝利した。
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▼フェザー級 5分3R○ジョナサン・マルチネス(米国)146lbs/66.22kg[判定3-0] ※30-27×3×トーマス・アルメイダ(ブラジル)146lbs/66.22kg
プロデビューから驚異の21連勝をマークしたアルメイダは、2016年5月のコーディ・ガーブラント戦で1R KO負け。キャリア初黒星を喫した。その後、アルバート・モラレスには勝利も、ジミー・リベラ、ロブ・フォント相手に連敗。フォント戦後に左目の手術で長期欠場し、今回が2年9カ月ぶりの試合で、フェザー級に階級を上げての試合となる。
テコンドーがバックボーンのマルチネスは、2014年のプロデビューから4年かけてUFC入り。オクタゴンデビュー戦こそ判定で敗れたものの、その後、3勝1敗と好戦績をマーク。2020年8月の前戦ではフランキー・サエンツに跳びヒザ蹴りからのパウンドで3R KO勝ちを収めている。
1R、オーソドックス構えのアルメイダ。サウスポー構えのマルチネス。左回りで出入りするアルメイダ。左ローを打つが右ジャブの返しをもらうアルメイダ。さらに左ロー。しかしマルチネスも下がりながら右ジャブを狙うと得意の左前蹴り。前足に左ローを突くアルメイダ。喧嘩四つで前手の突き合い。右ジャブを被弾するアルメイダ。マルチネスは左ミドルをガード上に当てる。アルメイダの左ローに右ジャブで頭を上げさせるマルチネスは左前蹴り・ミドルで前へ。
2R、アルメイダは前足にニータップでシングルレッグを狙うが、深追いせずすぐに離れる。右ジャブダブルはマルチネス。アルメイダはワンツースリーを右アッパーまで振るが、かわすマルチネスは右ジャブで出入りを止め、左の蹴りで突き放す。左目上をカットするアルメイダ。近い距離になると首相撲から左ヒザ! しかしそこに右をアゴに当てマルチネスに尻餅を着かせる!
すぐに立つマルチネス。テイクダウンの動きも織り交ぜる。右ハイをガード上に打つアルメイダ。アルメイダの入りに左ストレートを当てる。ワンツースリーで前に出るアルメイダをかわすマルチネス。
3R、ジャブの交換から組みに行くアルメイダだが、切るマルチネス。アルメイダのワンツースリーにしっかり左を合わせに行く。右ボディストレートから左を狙うアルメイダに左ストレートをヒットさせるマルチネス! 左ハイをガード上に当てる。
アルメイダは左のダブルから右を振るが、しっかりかわすマルチネスは首相撲からヒザ。そこに右をかぶせるアルメイダはダブルレッグ狙いも深追いせず。アルメイダの右をかわしての左を2度当てる。終了間際にカウンターのテイクダウンに入るが、金網まで押し込んだところでブザー。
判定は3-0(30-27×3)で的確な打撃を入れたマルチネスが勝利した。アルメイダはバンタム級での爆発力をフェザー級で見せることは出来ず3連敗。マルチネスはアルメイダ戦の勝利に感極まった様子で、ダニエル・コーミエーの「次は?」の質問に「分からない、誰でも」と言葉少なく答えた。
また、試合後の会見では、「アルメイダの大ファンで、この試合を受けた。コーチが自分を信じてくれていたから、俺はただそこに行って、自分のすべきことをしなきゃいけなかった。満足しているよ。とても楽しかった。2015年にインスタグラムで、“アルメイダはいつか世界チャンピオンになるだろう”と投稿した。その彼と戦ったんだ。すごく良いね。相手はただフックを連打していて、ストレートフック、ストレートフックと続けてきていた。向こうよりも自分の方がずっと速いと分かっていたし、相手の試合を何度か見てきたから、どんどんジャブを打っていったんだ。この試合は8日前に決まったから、(勝利して)いい気分だ。みんなに自分のことを知ってもらいたい。多くの人は俺が何者かさえ知らない。発言してランキングを上げるためにここにいる。アルメイダに勝ったばかりだし、うまくいけばいいんだけどね」と、ファンだったアルメイダに勝利したことを喜び、ランキングアップを望んだ。
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【プレリム】
▼ライト級 5分3R○グラム・クタテラーゼ(ジョージア)156lbs/70.76kg[判定2-1] ※29-28×2, 28-29×マテウス・ガムロ(ポーランド)156lbs/70.76kg
プレリミのメインでは、KSWの二冠王マテウス・ガムロ(ポーランド)がUFCデビュー。MMA17勝0敗1NCのガムロは2020年8月の前戦「KSW54」でマリアン・ジュコフスキを判定で退けライト級王座を防衛。無敗のままオクタゴンに参戦する。
対するジョージアのグラム・クタテラーゼはMMA11勝2敗。2015年6月から8連勝でオクタゴンに初参戦となる。2019年11月の前戦では元UFCのフェリペ・シウバを1R 44秒、逆転の左フックで下しており、粘り強い戦いが持ち味で寝技からのスクランブルを得意とする。
グラップラーながら喧嘩ファイトも辞さないガムロは、これまでKO負けの無いクタテラーゼを相手にどんな戦いを見せるか、注目だ。
1R、実力者同士のUFCデビュー戦。サウスポー構えのガムロ。オーソドックス構えのクタテラーゼ。詰めるガムロにクタテラーゼは右ロー。ローシングルレッグでテイクダウンを奪うガムロ。クタテラーゼはラバーガード。離れたガムに下から蹴り上げも。ハーフから腕十字狙い。そこに鉄槌を落とすガムロ。足関節を狙うクタテラーゼにガムロも足関節に行ったところでクタテラーゼは立ち上がる。
右ミドルを当てるクタテラーゼ。さらに左ロー。低いシングルレッグはガムロも今度は切るクタテラーゼが右ミドル。ガムロもオーソドックス構えに変えワンツーを返す。オーソドックス構えから右を振りシングルレッグに入るも蹴ろうとするクタテラーゼ。そこを掴みに行くガムロだが、切るクタテラーゼは右ミドルをヒットさせる。テイクダウンはガムロだが、打撃はクタテラーゼのラウンドだ。
2R、右を受けて腰を落とすガムロ。クタテラーゼはかかと落としも見せる。遠間から低いダブルレッグも離れるガムロ。クタテラーゼは右ハイキック! ガードするガムロだがパンチの距離を作れない。右ストレートを打ちながらシングルレッグでテイクダウンするガムロだが、すぐに立ち上がるクタテラーゼは右ストレート&ロー! さらに左右でミドルを当てる。しかし続く左ローを掴みテイクダウンはガムロ!
すぐに左手のパウンドをオモプラッタに狙うクタテラーゼ。下から仕掛け、その反応の際で立ち上がる。ダブルレッグからシングルレッグ、身体を起こしたクタテラーゼをがぶり引き落とそうとするガムロだが、クタテラーゼは頭を抜き離れる。ここもクタテラーゼのラウンドか。
3R、先に詰めるガムロ。オーソドックス構えの前足に右ローはクタテラーゼ。シングルレッグから立ち上がり際を内股を狙うガムロだが残すクタテラーゼは離れ右ミドルをガード上から当てる。なおもシングルレッグに入るガムロだが崩すことが出来ず。距離が近くなり触る機会が増えたガムロ。ダブルレッグをドライブして金網際でテイクダウン! クタテラーゼの立ち上がり際をバックに回るが、立ち上がるクタテラーゼ。ボディロックテイク&小内刈で再びテイクダウンもすぐに立つクタテラーゼ。ガムロもヒザ蹴りを入れて放す。
オーソドックス構えのガムロ。クタテラーゼは手数が落ちる。シングルレッグに入るが、切るクタテラーゼ。ともに右前蹴りの相打ち。クリーンダブルレッグテイクダウンはガムロ! 下からのオモプラッタを作らせず、上から鉄槌はガムロ。足を効かせるクタテラーゼ。ブザー。ガムロの最終ラウンドに。
メインカード級のプレリムの判定は2-1(29-28×2, 28-29)のスプリットでクタテラーゼが勝利。ありえる判定だが、ダニエル・コーミエーの勝利者インタビューを受けようとしなかったクタテラーゼはコーミエーに手を引かれてインタビューに応じると、「僕はハッピーじゃない。テイクダウンを奪ったガムロ、君のファイトだった」と謙虚に敗者を讃えた。
また、試合後の会見でクタテラーゼは、「今日がヘッドコーチの誕生日だから、勝利の誕生日プレゼントを渡せたことが一番の幸せだね」とチームへの感謝を示しながらも「でも、それを除くと今日のパフォーマンスには満足していない。ケージに入ると、すべてが違って見えるけど、外から見ていたらそれはそれで違って見えるだろうから、チームと一緒にもう一度、試合を振り返り、小さな部分をいろいろと調整していかないといけない。もしかしたら、UFCのデビュー戦に興奮しすぎてしまったのかもしれない。緊張しすぎとか、興奮しすぎとか、すべてがちょっと度を越していたのかも」と、試合内容には満足していないことをあらためて語った。
UFCデビュー戦での勝利については、「何もかもが最高だし、素晴らしい経験。UFCの人たちはすごいよ。パフォーマはンスインスティチュートのクルーもすごいし、すべての経験が最高だ。一生忘れない。UFCに感謝している。チャンスをくれてありがとう。本当に嬉しい。一瞬一瞬に感謝だ。両親、妹、美しい彼女と俺たちの息子に電話して、みんなと話したい。きっと楽しいだろうね」と、家族に勝利報告することが楽しみと語った。
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▼女子フライ級 5分3R○ジリアン・ロバートソン(カナダ)125.5lbs/56.93kg[判定3-0] ※29-27×2, 29-28×ポリアナ・ボテーリョ(ブラジル)125lbs/56.70kg
1R、ともにオーソドックス構え。開始早々に組み付くロバートソンだが、テイクダウンを許さず金網背に突き放すボテーリョ。なおもロバートソンはシングルレッグに入るも切るボテーリョ。ヒザ蹴りのボテーリョをとらえてテイクダウン奪うロバートソンだが、残り時間少なく。ボテーリョはハーフから抱き着き凌ぐ。
2R、右ローを前足に蹴るロバートソン。マウスピースが外れたところにボテーリョが詰めるがそこにシングルレッグでテイクダウンを奪うロバートソン。ハーフガードからサイド・マウントを奪うとボテーリョの口を塞ぎパウンド&エルボー。ボテーリョは下からしがみついて残り時間を凌ぐ。
3R、ボテーリョの蹴りの打ち終わりにダブルレッグテイクダウンはロバートソン。上体を金網に立てるが剥がして背中を着かせるロバートソンは左を枕に巻き、パスガード、マウント。ヒジを落としながら腕十字を狙う。そこは察知するボテーリョだが、パウンドを受け続け背中を見せる。そこに両足をかけてバックマウントを奪ったロバートソンが背後からパウンドし、ブザー。
判定3-0でロバートソンが勝利。6月のコートニー・ケーシー戦に続くオクタゴン連勝を飾った。ボテーリョはUFC3勝2敗に。
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▼ミドル級 5分3R○パク・ジョンヨン(韓国)185lbs/83.91kg[判定3-0] ※30-25×3×ジョン・フィリップス(ウェールズ)186lbs/84.37kg
プレリミナリーの第4試合で「最多パウンド数」という珍しい記録が生まれた。
ミドル級のノーランカー同士の対戦。ジョンヨンは韓国TOP FCを経て、日本のHEATにも参戦。2016年11月から7連勝でUFCとの契約を決めた。
2019年8月のオクタゴンデビュー戦では米国のアンソニー・ヘルナンデスにアナコンダチョークで一本負け。12月の地元・韓国大会では、カナダのマフクアンドレ・バリユーを相手に初回こそアグレッシブさを見せたものの以降は別人になったかのように遠い距離で戦い、テイクダウンして固める手堅い内容で、母国のファンからブーイングを浴びている。
対するフィリップスはUFC1勝4敗。デビューから3連敗していたが、4戦目となる2019年9月のコペンハーゲン大会で、マケドニアのアラン・アメドフスキーを相手に足を止めての打ち合いの末、17秒KO勝ちで初白星。しかし、2020年7月の前戦では、スウェーデンの新星ハムザト・チマエフにテイクダウンからのパウンドを受け、最後は、2Rにダースチョークで一本負け。あらためてグラウンド技術に穴があることを露呈している。
そんな両者によるミドル級戦では、やはりジョンヨンが徹底してフィリップスの穴を突いた。
ジョンヨンはスタンド打撃を出さず、ダブルレッグ(両足タックル)、シングルレッグ(片足タックル)でテイクダウン。タックルを切れないフィリップスは、背中をマットに着けたままで立つ動きを見せず。ジョンヨンはコツコツと上からパウンドを当てて行く。
2Rも早々にシングルレッグを決めたジョンヨンは、パウンド連打。亀になってしまうフィリップスは闇雲に下からヒジを振ったことでジョンヨンの左瞼をカットさせ、一矢報いることに成功するが、3Rにもまたもシングルレッグを受けると、尻餅を着いて金網まで這ったものの、ジョンヨンに潰され、早々に立ち上がりを諦めてしまう。フィィリップスは最後までパウンド&エルボーを受け続けてブザーを聞いた。
計量後のダナ・ホワイト代表も交えた3ショット撮影中の自撮りでスマートフォンを落としたフィリップスだが、試合も大差の判定で落とし、UFC1勝5敗でリリースが決定的に。
ジョンヨンはオクタゴン2連勝。試合後、ダニエル・コーミエーから「ミドル級最多パウンド記録だ、いやミドル級だけじゃない」と聞かされると、「(フィリップスの前戦のハムザト)チマエフよりも !?」と驚いた表情を見せた。
UFCの公式アカウントによると、ヒットしたトータルストライクスは286発。そのすべてがグラウンドでのパウンドによるもので、インターバル中の分析画面では、パウンドした数が○印で表示され、63個の丸で埋め尽くされた画面に、視聴者から「無礼だ」「なぜ彼は(UFCから)カットされなかったのか分からない」などのコメントがSNSに並んだ。
コロナ禍での欠場・緊急出場などで、ときにコロナ前と比べ、コンディションや実力が伴わない選手の姿を見ることがあるが、フィリップスは2018年からの参戦組。テイクダウンされると何も出来ない部分は成長の跡が見られず。ジョンヨンとしてもフィニッシュしたかったところだろう。
試合後の会見でジョンヨンは「自分は会社人間だから、記録は気にしていないし、誰が相手でも気にしていない。会社から連絡が来て戦えと言われたら受けて立つ。地球上にいる他のみんなと同じようにね」と、最多パウンドについて驕りは見せず。
「自分のゴールはチャンピオンになること。コロナの難しい状況の中で、試合ができて、ランキングも上げられて、俺たちの生活が出来るようにしてくれたUFCには本当に感謝している」とあらためて試合が出来ることに感謝の言葉を語っている。
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▼ライト級 5分3R○ファレス・ジアム(フランス)156lbs/70.76kg[判定3-0] ※29-28×3×ジェイミー・ムラーキー(豪州)156lbs/70.76kg
※テイクダウンを奪いコントロールするムラーキーだが、最終ラウンドで亀になりパウンドを受ける。打撃の手数で上回ったジアムをジャッジは支持。ジアムはオクタゴン戦績を1勝1敗の五分とした。ムラーキーは2連敗。
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▼ライトヘビー級 5分3R○マキシム・グリシン(ロシア)205.5lbs/93.21kg[2R 4分58秒 TKO]×ガジムラド・アンティグロフ(ロシア)206lbs/93.44kg
グリシンがダブルレッグテイクダウン、マウントからパウンド。立ち上がったアンティグロフを左右ラッシュで金網に釘付け。
ガードを固めたままのアンティグロフに、残り2秒でレフェリーが間に入った。アンティグロフは28戦で判定決着は一度のみ。今回もフィニッシュ決着となった。
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▼バンタム級 5分3R○サイード・ヌルマゴメドフ(ロシア)136lbs/61.69kg[1R 0分51秒 KO]×マーク・ストリーグル(フィリピン)136lbs/61.69kg
ハビブ・ヌルマゴメドフの従兄弟で13勝2敗のサイード・ヌルマゴメドフ(ロシア)がバンタム級に出場。UFC初参戦となるマーク・ストリーグル(フィリピン)と対戦する。サイードはオクタゴンでジャスティン・スコッギンス、リカルド・ラマスに勝利も、2019年12月にラオニ・バルセロスに判定負け。今回が再起戦となる。
対するストリーグルは、日本の和術慧舟會GODSでMMAキャリアをスタートさせ、PXCやONEで戦っていたMMA18勝2敗のグラップラー。スカーフホールドアームロック、リアネイキドチョークなど14の一本勝ちを誇る。
プレリミながらバルセロスと非常にハイレベルな攻防を繰り広げたサイードを相手に、ストリーグルは持ち味を発揮することが出来るか。厳しい初陣が用意された。
1R、サウスポー構えのストリーグル。オーソドックス構えのヌルマゴメドフは先に右ロー。ストリーグルも左インローを当てるが、すぐに右ミドルを返すヌルマゴメドフ。再びインローはストリーグル。
遠間からワンツーで飛び込むストリーグル。下がりながらのヌルマゴメドフの左をもらい腰を落とすが、 そのまま右足にシングルレッグへ。片足立ちのヌルマゴメドフはそのまま頭を下げてテイクダウンを狙うストリーグルに右のパンチを6連打! 後方に崩れたストリーグルにさらに中腰で左右の高速ラッシュを打ち込み、計16連打でストリーグルの意識が飛び、レフェリーが間に入った。
衝撃的なKO劇を見せたサイードは、「左のフックを食らわせたら、足を狙ってレスリングを仕掛けてきたから、あいつが落ちるまでパンチを当て続けた。結果、ノックアウトさ。まだまだこんなもんじゃない。トップ10やトップ15とだってやれる。もっと力を見せたい。とりあえず、家に帰って家族と過ごして、それからいっぱい食べたいね」と、上位ランカーとの試合を希望した。