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2020年5月31日(日)、無観客の『ABEMA』テレビマッチとして「プロフェッショナル修斗公式戦 Supported by ONE Championship」が行われた。
メインイベントとなった第8試合では、「世界バンタム級暫定王者決定戦」として、環太平洋王者の岡田遼(パラエストラ千葉)と、レスリンググレコローマン元日本代表の倉本一真(修斗GYM東京)が対戦。倉本最大の武器であるジャーマンスープレックスを完封した岡田が、カウンターの右フック、さらに左ストレートで倉本をマットに沈め、暫定王座を腰に巻いた。
第6試合では、青木真也による「AOKI PROJECT提供マッチ」として、世羅智茂(CARPEDIEM)と岩本健汰(IGLOO)の日本を代表するグラップラーがサブオンリーのルールで激突。ケージレスリング、さらにトップからパスガードを仕掛けた岩本に対し、ときにポジションを許しながらも極めさせず、ボトムから逆襲に転じた世羅が白熱のグラップリングマッチを展開。判定無しの10分時間切れドローとなった。
また第3試合と第4試合では、修斗女子初代スーパーアトム級王座決定トーナメント準決勝2試合が行われ、第3試合では、杉本 恵(AACC)が粘る中村未来(マルスジム)を振り切りリアネイキドチョークで一本勝ち。続く第4試合では、ベテランの黒部三奈(マスタージャパン)が、元全日本ジュニア柔道体重別選手権覇者の大島(旧姓・安達)沙緒里(AACC)をマウントからのパウンドで下し、それぞれ7月の決勝戦進出を決めている。
第1試合では、「格闘代理戦争」出身の空手家・木下タケアキと、『探偵ナイトスクープ』で話題となった“野生児”西川大和が対戦。西川がベアフットから繰り出す力強いテイクダウンを決め、17歳にしてプロ修斗デビュー戦を勝利で飾った。
大会は、4月17日の「Road to ONE:2nd」同様に、ケージサイドの中継スタッフおよびカメラマンが防護服を直用。コーナーマンおよび関係者もマスクを着け、試合毎にマットを消毒。メインの勝利者インタビューも距離が置かれメディアの動線が制限されるなど、新型コロナウイルス感染防止策が徹底された「無観客大会」として行われ、『ABEMA』にて生中継された。
プロフェッショナル修斗公式戦
PROFESSIONAL SHOOTO 2020 Vol.3 ABEMAテレビマッチ
Supported by ONE Championship
2020年5月31日(日)18時開始
▼メインイベント 第8試合 世界バンタム級暫定王者決定戦 5分5R
〇岡田 遼(同級1位・環太平洋王者/パラエストラ千葉)
[2R 3分02秒 KO] ※左フック
×倉本一真(同級2位/修斗GYM東京)
プロ修斗31年の歴史に於いて初めて暫定王者を決めるバンタム級至極のカードが実現する事となった。第8代環太平洋王者・岡田遼(パラエストラ千葉)vs“投神”倉本一真(修斗GYM東京)の一戦が決定。
現環太平洋王者・岡田遼は2019年9月、“怪物”安藤達也を相手に初防衛戦を行い、ドローながら王座防衛に成功。
2020年に入り堀口恭司が所属しているATT(アメリカントップチーム)の合宿に1カ月参加し、マイク・ブラウンコーチの下、ATTのドリルを反復、ハニ・ヤヒーラ、アレッシャンドリ・パントージャらと練習を積んできた。
帰国後もパラエストラ千葉グループで扇久保博正、神田コウヤ、鶴屋玲らとレスラー対策を練ってきている。オールラウンダーぶりに磨きをかけた岡田は、倉本とは「MMAファイターとして差がある」という。この試合の先に正規王座との統一戦、そしてUFC挑戦を見据える。
その岡田の前に立ち塞がるのがMMA7戦全勝、2019年のMVPとベストバウトをダブル受賞した“投神”倉本一真だ。驚異のジャーマンスープレックスを武器とする倉本は、2012年~2014年まで天皇杯全日本選手権グレコローマン60kg級3連覇を果たし、2013年と2014年には世界選手権の日本代表にも選ばれている。
7戦のうち5つのKO勝利があるが、全てが投げによるダメージでのKO勝利。2019年11月の根津優太戦では、スタンドスキルで勝る根津の打撃をくらいながらも高角度ジャーマンを連発。3R開始直後に危険と判断した根津セコンドがタオルを投入し、7連勝を決めた。
根津戦の怪我を回復させ、2020年1月から再始動。前戦とは違う試合が出来ると自信を見せている。倉本はレスリングで勝つのではなく、レスリングを“活かして”勝つパターンを確立しており、相手に打撃の距離を作らせず、組みのなかに打撃も織り交ぜ、いかにアプローチするか。勝者は、正規王者で現在ONE参戦中の佐藤将光への挑戦権を獲得することになる。王座戦の5Rがどう影響するか。
先に入場は倉本。セコンドから背中を叩かれケージイン。マット上で見事なブリッジを見せる。続けて環太平洋のベルトを肩にかけて岡田が入場。国歌斉唱の後、両者がコールされた。
1R、ともにオーソドックス構え。いきなり前蹴りから走って低いダブルレッグで足首を引いてテイクダウンした倉本。金網背に上体を立てる岡田の足を束ねる倉本。
立ち際は投げを狙われるため注意が必要だ。バックについてくる倉本に正対際でクローズドガードに入れてギロチンチョークは岡田!
がっちり入るが、首を取られたまま倉本は立ち上がり岡田を落として頭を抜く。フックガードで尻を着ける岡田に首投げから袈裟固めを決める倉本も、頭抜き立つ岡田はスタンドに。
岡田はミドルキック、左ジャブを突き、右ストレートも。倉本はバックフィストも大きい。手を着いた後ろ廻し蹴りから近づくアプローチも見せるが、岡田はサークリング。
2R、右ローを当てる岡田。詰めて左右を振る倉本をいなす岡田は右ロー。倉本は打ち下ろしの右を当てるが、体を入れ替え岡田はダブルレッグも深追いせず。倉本の組みに尻をマットにつけて投げられず。倉本に力を使わせる岡田。徐々にバックに回り投げを狙う倉本は金網際で肩パンチも。
サークリングする岡田にバックフィストを狙う倉本。しかしその打ち終わりに岡田は右のショートフック! コンパクトに打ち抜かれた倉本はグラつき倒れるが続くパウンドに、驚異的なタフネスさを見せて立ち上がる倉本。しっかり追う岡田は、左右から左フックで倉本をマットに沈めた。
試合後、世界のベルトを腰に、環太平洋のベルトを肩にかけた岡田は、ケージのなかでマイクを握り、「修斗のダブルチャンピオンの岡田遼です。12年前に初めて鶴屋さんに出会った日から、人生いいときばかりじゃないんで、正直、ここまで何回も『もうだめだ』『もう辞めよう』と思いました。でも、そのたびに『いまはお前は苦しいかもしれないけど、いつかお前は必ず環太平洋のベルトも、世界のベルトも巻いて笑える日が来るから』って背中を支えてくれていたのが鶴屋さんです。言わせてください。鶴屋さん、ただの大学生だった俺をここまで育ててくれて、夢を叶えてくれてありがとうございます」と師匠の鶴屋浩氏への感謝の言葉を述べた。
パラエストラ千葉ネットワークとしては松根良太、扇久保博正、内藤のび太、黒澤亮平に続く5本目の修斗世界タイトルのベルト獲得となる。
続けて岡田は、「『人間万事塞翁が馬』です(※幸せが不幸に、不幸が幸せにいつ転じるかわからないのだから、安易に喜んだり悲しんだりするべきではないというたとえ)。これからまた俺も辛くて苦しい時間が、人生がやってくると思います。いまコロナで苦しい時間を過ごしている方がいたら、人生、悪いときばかりじゃないです。いつかきっと、『あのときは苦しかったけど』と笑える日が来ると思います。ウチの師匠はよく『叶えたいことは口に出せ、言葉に出しなさい』ってよく言います。だから僕は12年間ずっと『修斗のチャンピオンになりたい』って言ってきました。いまは『一刻も早く、またお客さんでいっぱいの会場で修斗が、格闘技が開催できる日が戻ってくるように』と口に出して、今日のマイクを終えようと思います」と、コロナが収束してファンの前で再び試合が出来るようになるという願いを言葉にすることで、現実のものとする決意を語った。
そして最後に、「修斗バンタム級、激戦区と言われています。だけど、倉本、安藤、ラカイの化け物、藤井、祖根……みんな俺に勝てないよ。なぜ勝てないか? オンラインレッスンします。彼らより俺のほうが修斗を愛しているから! 今日はありがとうございました。以上」と咆哮し、きっちりメインを締めて、マットを後にした。
KO 2R 3分02秒 ※勝利した岡田が世界バンタム級暫定王者に
[レフェリー]片岡誠人
[サブレフェリー]
田澤康宏 1R 9-10
長瀬達郎 1R 10-9
豊永 稔 1R 9-10