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インタビュー

【ONE】『キングダム』のように──不撓不屈の若松佑弥「王者になった瞬間、家族をリングに、自分の世界を見せたい」

2020/05/19 12:05
【ONE】『キングダム』のように──不撓不屈の若松佑弥「王者になった瞬間、家族をリングに、自分の世界を見せたい」

【写真】2019年8月、ユスターキオを1R KOし、盟友・秋葉尉頼の写真を掲げて勝利コールを受けた若松。(C)ONE Championship

「オメデトウ! 君は将来、絶対にチャンピオンになれるよ!」──ONE Championshipのチャトリ・シットヨートンCEOが、若松佑弥の肩を叩いて激励した。2019年8月2日のフィリピン・マニラ大会、若松は元ONEフライ級世界王者ジェヘ・ユスターキオを1R右ストレート1発でノックアウト。地元の英雄の勝利を信じた大観衆を一瞬の内に静まりかえらせた。

5カ月前の日本大会では、元UFC世界王者デメトリアス・ジョンソンに善戦するも、ONE参戦から2連敗と苦境に立たされていた若松にとって、完全アウェーでのユスターキオ戦の完璧な勝利、自身も格闘家であるチャトリ代表は、心を大きく揺さぶられたのかもしれない。

続く10月の日本大会で、試合途中に右拳脱臼のアクシンデントがあった中、韓国の強豪キム・デファンから判定勝利をもぎ取り、現在ONE2連勝中。“不撓(ふとう)不屈”の精神で逆境を乗り越え、“日本格闘技界の次世代エース”であることを証明した若松は、新型コロナウィルス感染拡大で世の中が暗澹たるムードの中、何を想うのか。

家族と離れて生活している、練習はいつも通り

――コロナ感染拡大を受けて、私生活の変化はありましたか?

コロナのことがあるので家族と離れて生活しています。小さい子供(2019年12月に長男が誕生)がいるので、奥さんと話し合いました。毎日、LINEで顔は見ていますが、正直寂しいですね」

――生活はどうですか?

「今は練習して、家に帰って、寝ての繰り返しの毎日。料理の8割は自炊しています。簡単なものですが、色々と作りますよ。腕前は上がりました。得意料理はカレーです」

――フィジカルコーチの堀江登志幸さんからは何かアドバイスを?

「追い込み過ぎず、栄養とって、免疫を上げれば大丈夫と言われています。日常は消毒とかマスクとかしっかりやって、練習は練習でいつも通りやれと。適切な身体の使い方やスタミナの配分など、堀江さんには色々と教えてもらっています。去年の1月から付いてもらっていますが、とても助かっています。フィジカル、メンタル、食事の面、すべて堀江さんに相談して決めている感じですね」

自分も試合がしたい、チームの結束が強まった

――4月17日開催の「Road to ONE:2nd」に出場した同じTRIBE TOKYO M.M.Aの工藤諒司(椿飛鳥に1RTKO勝利)選手と後藤丈治(祖根寿麻に1R一本勝ち)選手が素晴らしい勝ち方をしました。

「本当に刺激になりました。観ていて自分も試合がしたいという気持ちになった。純粋に羨ましかったですね」

――長南亮代表が大会後のTwitterで「弟子達に教えている事は間違っていないと再確認できた」と2人を賞賛していました(※長南氏は、6月27日に無観客で『TTF CHALLENGE 08』開催も発表)。

「仲間が長南さんにそう言われていると、次は自分も! って気持ちになりました。チームを引っ張る長南さんがいて、悪いところをちゃんとアドバイスしてくれて、堀江さんが良いところを褒めてくれる。堀江さんがジムに入ってから、チームの結束がより強まった様に感じます」

クルーズ、セフードと対戦? いつやっても負ける気はしない

――最近の練習内容は?

「最近、寝技をよくやっています。スパーで決まる様になってきて楽しくなった。前は、寝技はディフェンスの面でしか意識していなかったけど、映像を見ながら研究したり、ロータス世田谷代表の八隅(孝平)さんや青木(真也)さんに学びながら、前以上に取り組んでいます」

――ところで今月にフロリダで無観客で開催された「UFC 249」は見ましたか?

「はい、メインイベント出場のトニー・ファーガソンに注目していました。あと、同じ階級なのでドミニク・クルーズとヘンリー・セフードにも注目していて」


(C)UFC/Getty Images

――彼ら(クルーズやセフード)と戦う自分を想像しましたか。

「そうですね。もしやったとして、いつやっても、今でも別に負ける気はしないです」

ONEが背伸びをさせて、育ててくれた

――ONEのこれまでを振り返ると、対戦相手(キンガッド、DJ、ユスターキオ、デファン)は錚々たる面々。これまでの流れは、荷が重かった部分も?

「正直に言うと、最初は荷が重かった。自分より“格上”でしたから。でも、ONEが自分に期待してくれて、育ててくれている。背伸びをさせて、チカラをつけさせてくれている、そう思いながら戦ってきました。キツイと思う時もあったが、結果、問題ないし、むしろ、感謝しています」

――常に進化し続けないといけない。ターニングポイントになった試合は?

「全ての試合に意味がありました。振り返ると全てに反省すべき改善点があって、キンガッド戦は動きが固すぎて、思ったように力が発揮できなかった。DJ戦はもっと自信を持って行くべきだった。8月のユスターキオ戦は最高な勝ち方。10月はアクシデントがあり、こういう時もあると勉強になった。全てがあって今の自分がある。なんか、山を登っている様な気持ちですね」

――ユスターキオ戦、右ストレートを決めての1R KO。最高の勝ち方でした。

「当初、(リース)マクラーレンとの試合が組まれていて。変更でのカードでしたが、自分は正直ジェへの方が相性が悪いと思っていました。早くKOしなければ、アウェーだし判定だと危ないと思っていて。当日、体調は万全で、あの時点での自分のあの勝ち方は100点だと思いました」

――試合後、チャトリ代表から「将来、王者になれる」と激励されました。

「本当に嬉しかったです。(チャトリ代表が)お世辞でも、誰にでも、言っているとは思えなかった。その言葉を信じて、頑張ろうと思いました」

レベルが拮抗している、DJを倒してチャンピオンになりたい

――4月27日発表の公式ランキングで4位でした。印象は?

「世界で4番目に強いと言う意味で、4位は嬉しかったです。このランキングに入った選手は、皆強くてレベルが拮抗している。例えば、自分の一つ上のカイラット(アクメトフ)は、世界的にもUFCでも十分通用すると思います」

――次に対戦したい相手として、アクメトフ(同3位)とマクラーレン(同5位)の名前を挙げていました

「カイラットは元世界チャンピオンだし、自分はマクラーレンの方がキンガッド(同2位)より強いと思う。マクラーレンを倒せば、キンガッドを倒せる。そうなると、(現世界王者の)アドリアーノ(モラエス)と同じレベルに立てる。まず2人を倒したいです」

――世界タイトル戦は?

「自分はアドリアーノとDJが戦えば、DJが勝つと思う。そうなれば、もしタイトル戦ができるなら、すぐにでもしたい。DJを倒してチャンピオンになる。でも、自分の流れで言えば、あと2、3戦して、それを蹴散らしてDJにリベンジ。ファンもその方が喜びますよね」

家族をリングに上げたい、自分が見ている“世界”を見せたい

――好きな漫画は『キングダム』だと聞きました。

「はい、『キングダム』はずっと読んでいます。主人公の李信と今の自分を重ねています。彼は何もないところから、独学で研究し、強い奴らと戦い、挫折もありますが、最後は大将軍になる。自分に似ている気がするんです」

――印象的な場面は?

「まだ国も統一できてないくらい小さいのに、毎回、将軍クラスの強敵を倒すんです。その部分に惹かれます。今、57巻くらいまで進んでいるのですが、今の自分とちょうど同じ様な感じですね」

――李信と一緒に世界の頂点を目指すのですね。若松選手が王者になった瞬間、すぐ何をしたい?

「家族を、妻と息子をリングに上げたい。自分が見ている“世界”を見せたいです」

(協力:ONE Championship)

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