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新型コロナウイルスが感染拡大し、大会が次々と延期・中止となるなか、試合のない日々、格闘家たちは何を考えて生きているのか──テレビ&ビデオ「ABEMA(アベマ)」が、4月26日(日)夜7時より「格闘チャンネル」にて格闘家たちの“今”に迫った『Fighter's Diary』を放送する。
それに先駆け、4月12日(日)より「ABEMA」格闘チャンネルの公式YouTubeにて、3週連続で先行映像の配信がスタートした。「試合のある/格闘技のある日常」に備え、格闘家たちは“今”をどう生きているのか。
戦いを生業とするファイターたちにとって、練習や試合は生きがいでもある。取り上げられたら、それが無くては生きていけないほど、切実なものだ。一方で、格闘技よりも家族や別の生活が大切だという選手もいる。試合を切望する者、拒否する者──現代を生きる人々の誰も経験したことが無い状況で、その危機に立ち向かう共通意識や正しい知識のなかで、双方の価値観があることを認めることが重要だ。
第1弾には、青木真也・堀口恭司・平田樹・中村K太郎&杉山しずか・若松佑弥が出演している。その一部を下記に紹介したい。
トップバッターとして登場するのは、20歳の平田樹(K-Clann)。
ONE Championship本戦で3連勝を飾りながらも、3月4日にONEが今後のすべての大会の中止を発表したことで、一気にトップ戦線に駆け上がる機会を逸してしまった。
「ほんとうだったら試合があった日程なんですけど、それも無くなると思うんで。やっぱり格闘技しかしてこなかったんで、こういう風になるとほかにすることも特に無いし、収入が無くなると困る部分がたくさんある」と吐露する平田。
「この間終わって、次が大事だよと言われていて、その次が無くなったりしたら、またどっからスタートになるのかなって思って。試合感覚が無くなるのが嫌ですね」と不安を感じながらも、「次の試合がどういう試合になるのかも楽しみなので、そこに向けてまた頑張っていきます」と前向きな笑顔を見せている。
2番目に登場するのは、RIZINにともに出場する中村K太郎(K太郎道場)&杉山しずか(リバーサルジム新宿Me,We)の格闘夫婦だ。
ファイターであり、母親でもある杉山は、「どれだけ平和だったのかっていうのが思い知らされています。平和だったからこそ成り立っていた生活というか、職業だったのかもしれないし、一種の娯楽だったから。そういうものが無い。楽しんでいる場合じゃない世界になってしまったという無力感みたいなものをちょっと感じています」と、格闘技をやれる日常の尊さを振り返りながら、「自分が試合をすることが最優先になるのか、生きていくことを最優先にするのか、練習している場合じゃないのか、どうなのか。状況が上向いたときのために準備していないと作れない身体や作れない技術があるので、ぐるぐるします、頭のなかが」と迷いがあることを明かしている。
一方で、夫のK太郎は、「僕は『なるようにしかならない』というタイプなので。そういう自分を再確認しました」と笑顔を見せる。
テクニシャンとして知られるK太郎だが、「本当にこんなことが続いたら、ほかのことをして暮らすしかないですものね。YouTubeで誰かと戦ったり、自主興行を。格闘家としてやるんだったら、そういう感染リスクが無い状態で戦うしかない。お客さんを呼んでという形では難しいかもしれないですけど、映像としてライブで観てもらったら、こういう状況でも頑張っている人を観ることはやっぱり、ファンの方々の力になるかもしれないので」と、無観客でも映像配信などを通して、格闘技の力を見せたいと考えている。
3番目に登場するのは、ONEで2連勝中の若松佑弥(TRIBE TOKYO M.M.A)だ。2019年12月に長男が生まれ、一児の父となった。
息子とともに出演した若松は、「一番心配なのは子供が感染しないか。家族がいるっていうのが、一番自分は大事なので。格闘技よりもそっちの方がぶっちゃけ大事なんで」と、生活のなかで家族を守ることを最優先したいと言う。
常にマットを消毒をしながら練習を続けているが、「できれば国とかが緊急宣言出してもらって、外出できなくなったりしないと変わらないんじゃないかなと思います。だって他人事じゃないですか、みんななんか。俺らは大丈夫みたいな。『格闘技やってて強いから』みたいな。そうなったらみんな会社の若者とかも、『みんな頑張ってるから俺も仕事やらないと』みたいになっちゃうんで、それがちょっと正直、最悪を招くんじゃないかなとも考えますね」と、警鐘を鳴らし、「これでずっと(ウイルスが)消えなければ試合も無いし金も無くなっていくわけじゃないですか。そういうのに正直怯えながら、生きてるっていうのが正直なところですね。やまない雨はないっていう気持ちはありますけど……どうしたらいいですかね」と、不安を抱えながら日々の練習に向かっていることを明かしている。
4番目に登場するのは、右膝前十字靭帯の断裂と半月板損傷により、BelaltorとRIZINのバンタム級のベルトを返上し、リハビリに励む堀口恭司(ATT)だ。
2019年11月7日に米国の病院で手術を行い、現在はトレッドミルでのランニング姿も披露するなど順調な回復ぶりを見せている堀口は、いまの米国フロリダの状況を、「アメリカの人たちはあまりマスクをしないですけど、いまはコロナが流行っていてみんなしていますね。日本にいるみたいな感じ。アルコール消毒液が全部スーパーから無くなって。なぜかトイレットペーパーまで無くなっている」と苦笑しながら伝える。
ジムの様子については、「プロの選手も感染したくないとか気を付けている選手が多くて、何人も集まるのがダメと政府からも言われているので、あまり練習に来ないですね」と、個人練習が増えているとしながらも、「自分はできる範囲で、まだヒザの怪我の影響もあるんでリハビリ中心ですけど、まあ徐々にヒザも良くなってきてリハビリとドリル練習もやるようになってきています」と、格闘技の実際の動きとなるドリル練習も再開したことを明かしている。
無観客で大会が開催されることについては、「やっぱりリスクがあることはやるべきじゃないかなといまは思いますね」ときっぱり。「ワクチンとか出来ていないし、セコンドも全員の検査を出来るのかといったら、やっぱり分からないわけじゃないですか」と、検査に不備の可能性があり万全な状態が取れない以上、無観客でも大会を開催すべきではないとの考えを表明した。
その上で「試合が無いってみんなマイナスにとらえがちですけど、そこは準備期間だと思って、格闘家としてもっとできること、自分のスキルアップだとかをやっていった方がいいと思います。明るい未来を想像しながらやっていかないとダメ」と、持ち前のポジティブ思考で、できる条件のなかでスキルをアップすることが重要と説いている。
またファンに対して、「格闘技興行が無くて見れなくて、家からも出られず、みんな歯がゆいと思いますが、このコロナ騒動が終わったら、絶対に気持ちが爆発して、もっと格闘技業界もデカくなると思うので、そこまではしっかり予防を頑張って。自分もヒザを治してしっかり盛り上げる試合をするんで楽しみにしていてください」と呼びかけた堀口。年内の復帰戦に向けて、焦ることなくリハビリを続ける堀口の動画にも注目だ。
そしてトリを任されたのは、4月17日(金)に『Road to ONE:2nd』で無観客試合に臨む青木真也(Evolve MMA)だ。
今回のインタビューの多くが感染予防のため、屋外でのインタビューとなっているが、青木はこれまで通り、電車ではなく自転車移動の姿を見せ、自身なりに予防と周囲への配慮をしている部分も見せている。
歩道橋の上でインタビューに応じる青木は、開口一番「これはチャンス」だと言う。「誰も動かないから動くだけで誌面がもらえる。僕は長期戦を覚悟している」と、ウイルスがある日常と付き合いながらも、表現を止めない決意を示している。
「不便はあるって言えばあるけど、別に変わんないよ、やってることは。練習もやるし、仕事もやるし、飛んだ仕事もあるけど、入って来た仕事もある。変わらずやる。それは“格闘家”で飯を食っていない、“青木真也”で飯を食っているから。そこを曲げちゃダメ」と、言いながらも、ファイターとしての矜持も変わらない。
「ほかのファイターに聞くとだいたい『いま試合をしていていいのか』みたいなことを言うでしょ。『いま試合をしなきゃいつするんだって』。格闘技を通じて人を元気にするとか、格闘技を通じて、自分の生き方とか思想信念をぶつけるってことだったら、いまこそ必要なわけじゃん。『やってていいのか』なんて笑止千万だよ」
そんな表現のなか、「感染させるリスク」について問われた青木は、「うつしちゃったら……」と少し間を置いてから、「それはしょうがない。うつされても仕方ない。そういう関係でしょ」と、互いにリスクを承知で格闘技に向き合っていると語る。
「自分でリスク考えて、自分で考えて取捨選択しろと。みんながいま何のために生きてんねんって考えたときに、俺はいつ辞めたっていい、死んでもいいみたいな考えになってきた。俺はだからこそ、この自分の可能性をすべて使い切って(生きたい)」と、死を想うなかでの生についても語る青木。
そんな青木が考える、未来とは──。『Fighter's Diary』のなかで、力強く語られたファイターたちの言葉に注目だ。
■『Fighter's Diary』 番組概要
放送日時:4月26日(日)よる7時~8時 格闘チャンネル