鹿志村戦で傷めた左腕をアイシングしながらDJは語った(C)ゴング格闘技
2023年3月25日と26日の両日、東京・ニューピアホールにて、『DEEP TOKYO IMPACT 2023 1st/2nd ROUND』と『PANCRASE 331/332』の4大会が開催された。
怒涛の4大会のメインカードから勝者の声を紹介したい。第1回は「バンタム級」で寝技師・鹿志村仁之介(セラ・ロンゴ・ファイトチーム)を判定で下したDJ.taiki(パンクラスイズム横浜)の言葉だ。
勝ち名乗りを受けた勝者はケージの中で、「腕十字はメッチャ痛かった。人生は格闘技だけじゃない。格闘技でやってきたことをほかの人生に繋げたいから諦めないところを見せたかったです。いまは自分のためじゃなくて、人のためにやっています。ゆかりん、生きがいを与えてくれてありがとう。土屋さんのミット、引退したらこの辛さを味わうこともないので、土屋さんのためにも。今日は首の皮一枚、現役でつながった。ダラダラ続けてもいけない。次か、その次か、佐伯さんと話し合って決めたいと思います」と語っている。その言葉の真意を聞いた。
佐伯さんが『次の試合で引退』と言ったら──
──試合前からDJ選手のペースのようでした。
「(計量コメントが)あんなに効くんだって。試合は90%、残りの10%は練習や日頃の生活が関わる。その10%をいかに上げるかのときに、SNSで書くよりも計量で直に言った方がいいから。試合はいかに自分が冷静に戦い、いかに相手の戦略をずらすかだから、正直、相手に何の感情も無い。嫌いでもないし」
──相手の寝技を凌いでからの判定勝ちでした。「格闘技だけじゃない」から「諦めない」というのは逆説的に格闘技愛を感じます。
「マイクでも言いましたが、1Rの十字で腕傷めましたけど、ただ、格闘技だけじゃないんですよ、人生って。格闘技で培ったことをどう活かすかだと思うんで、格闘技だけで生きていくならすぐタップして、次の試合に迎えばいい。ただ自分はほかの仕事、次の人生に活かしたいんで、そこを諦めないで頑張る。格闘技のために格闘技をやっていない。
ウチの代表(北岡悟)が『勝利がすべて、勝てば正義』と言うのも分かるけど、僕は過程も大事。だって、負けることもあるわけじゃないですか。アレックス・ヴォルカノフスキー(UFC世界フェザー級王者)に勝てますか。勝てないじゃないですか。ただ、試合に向かう、試合で戦う過程は人生にいきる、その後の格闘技以外のことに。だからあの場面も諦めずに……よくこんなんで戦ったよな、って。腕が痛くて(苦笑)。この気持ちの強さをこれからに活かそうと。“アレ、痛いの?”ってよく言われるんですけど、ほんとスゲー痛いよ。食らってみろと(笑)」
──相手のテイクダウンを切ってからの距離感の設定は?
「技術的な話になりますけど(笑)。センターを取れ、と。基本的に壁を背負っていると不利なわけですから、いかに自分のスペースを大きく作るか、というのは後輩にも指導しています。壁との距離は常に把握していろ、と」
──なるほど。試合後に「今日は首の皮一枚、現役でつながった。ダラダラ続けてもいけない。次か、その次か、佐伯さんと話し合って決めたいと思います」ということでしたが、ピリオドを見据えながら、着地点はどこになるでしょうか。
「はっきり決めていたのはCOROとのタイトルマッチ。あれで勝てば、次の防衛戦で引退と決めていました。それがキリがいいなと思っていたんですけど“あの試合で最後にするのはな”って。人生の半分以上やっていると辞めどきが難しい、自分としては。だから佐伯(繁DEEP代表)さんが『次の試合で引退』と言ったら『ああ、分かりました』と言って辞めるでしょうし。その方がいいのかもしれない。なかなかほかに『引退しろ』という人はいないから。最初(2001年にアマチュア戦デビュー、2004年にプロデビュー)から『格闘技をやっていることが家族にバレたら辞める』って言っていて、10年バレなかったですからね(笑)」
──佐伯代表との信頼関係から来る言葉でしょうか。
「それは無いと思うんだけどなぁ(笑)。契約書で喧嘩してんですよ。こっちは憲法をちょっとかじってるから(※行政書士の資格を取得中)、『そうしたら憲法違反ですからね』って言ったり(笑)」
──鹿志村選手にはまた上がって来い、と?
「鹿志村選手に? まあシンガポールのこともあるし、いまは“ドンマイ”としか言いようがない。今回はハム・ソヒと俺の勝利です」
──……今後の目標を。
「DJ.taikiの引退興行を打ってもらうことですかね。佐伯さんの都合のいいときに。『40歳になったら引退する』と言って、もうなりましたからね。親は常に『引退しろ』と言うし、DEEPとの関係で『お前の試合は組まない』と言われたら、強制終了で『分かりました』と言うしかない」
──メインイベントで勝つ選手をなかなか「組まない」とは……。
「それでPANCRASEには行かないですよ(笑)。Fighting Nexusにも、それはしない、さすがに」
──やっておきたい相手もいる?
「いるんですけど……やってくれないですからね(苦笑)。おっさんだけど、別に若いからと言って強いと思ってないから」