MMA
インタビュー

【Bellator】堀口恭司はなぜマットに倒れたのか──4R 3分24秒、モヒガン・サン・アリーナの悲劇をひもとく

2021/12/06 12:12

セルジオ「すべての弟たちへ──ひたすら自分を信じてほしい」

──まずは試合を終えたばかりの率直な感想を。

「うーん、今は超へとへとだよ。1Rから4Rまでずっと彼に捕らえられていたけど、だんだんイライラしてきていたと思うんだ、それで出入りで面白い動きをしていて、自分としては、今夜はフィニッシュするためにたくさんの逆境に立ち向かわなきゃいけなかったけど、完璧に決まって良かった」

──この試合はキャリアのなかでどういう位置づけになりますか。今まで聞いたことがないくらいクレイジーな会場の盛り上がりだったのでは?

「自分にとっては、これまでで4回目か5回目のノックアウト勝利(5KO・TKO)だけど、27戦目にしてついにこういうことが起きて、すごくビューティフルなものだった」

──堀口恭司選手は、本当にタフな対戦相手だったと思います。序盤に苦戦したと言っていたのはどういうところがですか。何かミスがあったか、あるいは何か違うことができたはずだったとか。

「いやー、彼のスタイルがすごく厄介だというだけのことで、それをしっかりと見極めなくてはいけなかった。自分はプランに忠実であり続けて、チームメイトの平本蓮が、ずっと落ち着いているようにと、忍者のような冷静さで、力を入れすぎず、あんまり出過ぎずにしていて、だからあれは流れのなかで出来たこと。無理に出すんじゃなく、流れでそれが上手いこと当たったんだ」

──スピンしたときはご自身の視点ではどうなんでしょう? 明らかに当たった感じがするのか、何が起きたか理解するのに時間を要するようなものだったのか。

「彼が倒れた後、もう一発いれようとしたんだけど、完全に落ちていることに気づいた(から打たなかった)。コーチはジャブ、ジャブで離れるということを指示していて、彼は自分が入るたびにリアクションする、それで、思うに1Rから4Rを通して、彼は本気でディフェンスすることなく上手く逃げられる状況だったから、自分は蹴りを出したけど上手くいかなかったりして、それで、自分が(堀口の左を)かわしたことで(近づいて右ハイキックを)彼が避けることに繋がり、それでスピニングバックフィストを当てられたんだ」

──落ち着いてKOの瞬間をとらえるまで、ラウンドを通して何を考えていましたか。

「デューク・ルーファスからは、はっきりと、3R通して負けてると言われてた。最近見たボクシングのファイターで、多分(テレンス)クロフォードとの試合だったと思うけど、このラウンドも、あのラウンドも負けてる、とコーチに言われていてフィニッシュできなかったのを思い出した。僕にとっては、人生で逆境に立ち向かっていくために、そしてここにやっていくために我武者羅にでもやる必要があった。2、3Rと4Rでは違っていただろう?」

──すごいKOで恐ろしい失神劇でもあった。対戦相手はしばらく失神していて、あなた自身はどうやって気持ちのバランスを取りましたか。

「何を望んでいるかといったらそうじゃないから──つまり人を意識不明になるほどに痛めつけたいと思ったことなどないし、後々の相手の人生に影響を与えてしまうような後遺症になるほどのダメージを負わせるほど傷つけるようなことなんてしたいわけはなくて、確かにこれは残念ながら自分の仕事の一部とでもいうか、そういうものだということで──結果的に、ちょっと嘘くさい言い方になってしまうけど、彼の方がやられた結果で良かった。自分がやられるよりは。そしてそうなった。自分はここ(ケージ)を離れたらとっても優しいし、だけどさ、実際、彼だって自分に同じことをしただろう、そういうことだよ」

──今日、2022年のバンタム級ワールドGP開催が発表され、あなたもそこにラインナップされています。あなたはチャンピオンですから、Bellatorだと、王者が対戦相手を選べたりしますよね、もしそうなったら、誰を選びますか。

「僕は対戦相手を選ぶためにこの位置に上り詰めたわけじゃないよ。僕はそういう意味でのボスになったわけじゃないんだ。誰と戦うかをただ知らせてもらえばいい、事前に知らせておいてもらうなんてこともないよ」

──兄(アンソニー・ペティス)の影に隠れていた弟という影の存在から抜け出して、自分のブランドを構築してレガシーを作っていくというのは簡単なことではなかったと思います。自分の道のりを築くために偉大な兄のもと頑張っている全ての”弟”たちにメッセージをお願いします。

「そうだね……とにかくひたすら自分を信じてほしい。僕はしばらく、自分自身を信じるということが抜け落ちていたことがあったんだ。もしそんなことが今日もあったとしたら、あんなことは成し遂げられなかったと思う。4Rとか5Rまで戦っていると、精神的にはフラストレーションが溜まっていくものだけど、でもそれが原因で自分の前向きな感情が壊れてしまうなんてことはない。

 それで自分はきっとすごいことを成し遂げられるんだって分かっていたし、そうするためにはまだ2Rも残されていて、ついにやり遂げたんだ。3分49秒であのラウンドを終えられた。そう、だからとにかく忍耐強く。僕は我慢するのが得意なんだよ、プロの格闘家になって10年、物ごとが自分が思い描いた通りに運ぶようになってきたと思う」

──今日の勝利以上に、あなたが最後に余分な一発を追撃しなかったことが今後、ファイターであり、マーシャルアーティストとして称賛されていくと思っています。試合前にあなたが言っていたのは、今回のキャンプで不安をコントロール出来るようになってきたと。そのおかげで地に足が着いてきたという感じなのか、逆に3Rまでで不安が優ってしまった感じなのでしょうか。

「いや、正直そうは思わないけれど、28歳で27回目のプロファイトで戦うためには、ファイトウィークで不安をコントロールする方法を学ばなくてはならないと思っていて、どうあれ不安にはかられるものだし、いまだに不安を抱えているけれども、それでもここで他の人間と戦ってパフォーマンスしなきゃいけない、クレイジーな仕事だと思うけれど……そうだな、よく分からないけど、ただ、成長して、格闘家としての自分の人生における自分の役割みたいなことをようやく理解できているんだと思う」

──これからのホリデーシーズンには何が待っている?

「家族と過ごすクリスマスは久しぶりだな、あとはそこにいるフィアンセとの時間が必要だな、感謝際が恋しいよ」

──勝利の理由を考えるとき、あなたの足の状態が気になりました。かなりローキックを被弾していたように思いますし、バランスを崩して倒されたような場面も見られたように思うのですが。

「何度も骨を蹴られた。いくつもの蹴りをチェック(防御)していたけど、もっと骨が──いつもだとふくらはぎの筋肉が痛むんだけど、今はもろに骨が痛いような感じで、蹴りは割とチェックできていたんだけど彼がものすごい強い蹴りを放ってきてたね」

──お兄さんはあなたの勝利にかなり高額を賭けて、2万8千ドル儲けたとツイートしていました。どう感じますか。

「ああ、僕はただ今日自分にベットしてくれた人には誰であれ感謝したいし、僕もお金は欲しいから、僕たちみんなにとって喜ばしいことだね」

──あなたはチャンピオンとして臨むこの試合でアンダードッグでした。それについて思うことは。

「別にそれについては何も。正直そんなことには興味ないからね。賭け事にも興味が無いし、みんなが何かこう自分について見落としてることがあるんだと思うと、それがモチベーションに繋がったとも言えるかもしれない。そうやって原動力を与えてもらったという意味では良かったのかもしれないね。今夜それを見せられたわけで」

──バンタム級ワールドGPに向けて、普通だともう次の対戦相手が話題に上がるところが、トーナメントともなるとそこが問題にならないですね。今日の勝利はGPへの自信になりましたか。

「正直なところ、もっとハードに頑張らなきゃって思っている。4Rまで圧倒されてしまっていたのだから、もっと努力が必要だよ。最高のKOをできたというのは実感してる。けれど、自分のキャリアをもっと長く続けていくためにも、そして向こう8年10年とここにいるためにはもっと頑張らないと」

──意表をつくフィニッシュだったでしょうか。あれを決めるために違うことをするという。

「いや、単に僕は辛抱強いというか、正直に言って彼は、すごくやりやすさを感じ始めていたんじゃないかと思っていて。何ていうのかな、僕たちはあそこで一緒に笑い出し始めてたんだよ(笑)。彼にテイクダウンされて僕が『マザーファッカー』って口に出したら、彼が笑い出しているというような感じで。だから思うに、彼は試合の場で流れを決めていけるようになったことに心地良さのようなものを覚えていたんじゃないかと思っていて、彼のした素晴らしい動きというのは僕を圧倒していて、見事なテイクダウンで僕を倒して、素晴らしいジャブを繰り出し、それによってテイクダウンもして、それは自分の方はあんまり上手く出来なくって、多分すごいやりやすくなっていたと思うんだ。それで、彼の動きのなかで、彼は出入りの外に出る動きはあんまり計算されていないように思えたから、そこをうまく突くことが出来たんだ」

──ネットでも反響が大きくて、「ノックアウトオブザイヤー」などと言われていますが、ご自身としては?

「これまでにもKOというのはあるけど、堀口のような、29勝3敗の相手にあのノックアウトはできることじゃないよね、今にして思えば。彼の反応を見てしまうとクレイジーだったね」

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