MMA
インタビュー

【Bellator】堀口恭司はなぜマットに倒れたのか──4R 3分24秒、モヒガン・サン・アリーナの悲劇をひもとく

2021/12/06 12:12

なぜ距離は近くなったのか?

 金網を背に感じている堀口は、自ら左をフック気味に振って前へ、これを首で受けたペティスは左を返すが、ここもすっと後ろにかわす堀口。ダブルレッグに入るが、がぶるペティスがギロチン狙いでクラッチを組む前に引きはがす堀口。

 ペティスの左をかわしてまたも外から右をかぶせる堀口。そこに右まで繋ぐペティスは前へ。ここでペティスはこの試合、初めてと言っていいクリーンヒットを左ボディで当てている。

 サークリングして距離を取り、左の突きを押し込んで行く堀口。その打ち終わりを追うペティス。ペティスが中央を取るため、ステップし、サークリングする堀口の方が多くの距離を動いている。

 注目すべきは、なぜその距離が近づいたのか、だ。

 追うペティスに堀口は大きめの左フック。この左をかわして懐に入ったペティスは、右で脇を差し、堀口の右ヒジを掴んでいる。

 相撲でいう「おっつけた」形でペティスはヒジを内側に押し、右を差せない堀口。そのヒジを内側に押し込むように固定しての近距離で右ハイキックへ。

 堀口はそれを瞬時に察知し、頭を下げてダッキングして潜るが、その回転のまま、一気にペティスは振り向きざまに左のバックフィストへ!

 右手をおっつけられ頭を上げたばかりの堀口の右のガードは間に合わず、コンパクトに、しかし遠心力がついたペティスの左裏拳は、堀口のアゴを打ち抜いた。

 ペティスはその瞬間を堀口のリアクションを利用したという。

「あれは流れのなかで出来たこと。ホリグチはすごい“やりやすくなっていた”と思うんだ。それで、彼の動きのなかで、彼は出入りの外に出る動きはあんまり計算されていないように思えたから、そこをうまく突くことが出来た。

 コーチはジャブ、ジャブで離れるということを指示していて、彼は自分が動くたびにリアクションする、それで、思うに1Rから4Rを通して、彼は本気でディフェンスすることなく上手く逃げられる状況だったから、僕は蹴りを出したけど上手くいかなかったりして、それで、自分が(堀口の左を)かわしたことで(近づいて右ハイキックを)彼が避けることに繋がり、それでスピニングバックフィストを当てられたんだ」

 ペティスはこの一連の動きをスパーリング動画で見せており、身体に染み込んだ得意な形としているのは間違いない。2Rにも離れ際にハイキックを狙っており、近距離での蹴りからの回転技は“ペティスコンドー”の必殺技だった。

 堀口の手はもともと低く構える空手の構えだ。それは手が低い位置の方がハンドスピードが速く、突きの出どころも分かりにくい利点がある。また、手を低く構えることで、相手の動きにも反応しやすく、目のいい堀口のディフェンスはもともとガードしてのブロッキングではなく距離で外すことが多い。

 このとき、ペティスの右ハイキックは、倒すためのハイキックというより、練習動画でも見せている通り、相手に潜られても回転してのバックフィストに繋げられる動きであり、強振しないがゆえに軸もブレずに速く小回りに回転できている。

「たら・れば」で言えば、もしこのとき堀口がハイキックにダックで反応せずブロッキングしていたら、もし自ら打ち込みに行かずアウトボクシングしていたら……と考えを巡らせることも出来るが、それが意味をなさないのが格闘技だ。

 北米の5R戦は、堀口にとって、2019年6月のダリオン・コールドウェル戦以来、2年半ぶり。右膝前十字靭帯断裂と半月板損傷の手術以降は初となる。マイク・ブラウンコーチは本誌の取材に練習で5Rのシミュレーションは出来ていると語っていたが、それでもステップ、サークリングが多く、テイクダウンゲームを仕掛けていた堀口にとっても苦しいラウンドに入っていたことだろう。

 最後の場面や一部のコメントだけを切り出しても結果論でしかなく、この4Rに至るまでの攻防のなかで、両者のスタミナや精神状態がどうなっていたかを試合を通して見るべきで、さらに試合に至るまでの環境も影響して、今回の結果に繋がっている。

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