エンセンvs.クートゥアーは歴史が変わる瞬間だった
――ちなみに、坂本代表にとってVTJのベストバウトとはどの試合になるでしょうか。
「ベストバウト……すごい難しいですね。やっぱり絶対に外せないのは、エンセン井上vs.ランディ・クートゥアーですね(※1998年10月「VALE TUDO JAPAN '98」1R 腕十字でエンセンが一本勝ち)。これはもう外せないです。『エポックメイキング』って、いつも僕は言うんですけど、エンセンvs.クートゥアーと、佐藤ルミナが(ヒカルド・“リッキー”・)ボテーリョに勝った(※1997年1月「修斗」3R ヒールフック)とき、この2試合はやっぱり修斗の中での変わる瞬間というか、歴史が変わる瞬間であったと思うので、VTJではエンセンvs.クートゥアーはまず絶対に外せないです。
それに、ルミナとハファエル・コルデイロ(※1999年12月「VALE TUDO JAPAN '99」1R ヒザ十字でルミナが勝利)の試合も良かったですね。それにさきほど挙げた堀口と石渡くんの試合(※2013年6月「VTJ 2nd」5R KOで堀口が勝利)も。想像を超える、何かの価値観が変わる瞬間でした。
いい試合、思い入れ深いシーンはたくさんあります。たとえば、ヒクソンが来たことは事件だし、五味(隆典)が戻ってきてくれたのは嬉しかった(※PRIDE、戦極を経て、UFC参戦前の2009年10月に「VALE TUDO JAPAN 09」でトニー・ハービーに判定勝ち)。宇野(薫)くん、(桜井)マッハ(速人)、藤井惠選手の試合も……それにさきほどのルミナと所英男選手の試合が行われたことも。
――エンセン戦は、坂本代表はプロモーターとして組みました。rAwチームとの交渉が困難だったとも聞きます。その中でエンセン選手が勝ち切ったのは、ひとしお身に染みたのではないですか。
「そうですね。やっぱりことの大きさって時間が経たないと分からないことがあります。当時は近くにいるから見えてなくて“エンセン、やったな”と思うばかりでしたが、長いスパンで見れば見るほど、これは偉業だなと。本当の偉業って、こうしてずっと語り継がれる。堀口と石渡もそう。記憶に残る、起点になるもの──その意味で、この2試合はちょっと特別ですね」
――“他流試合”のなかには日本人選手同士の戦いも含まれそうですね。
「一つのテーマとしては、今まで世界で戦ってきた選手との戦いも『対世界』じゃないかなと思っています。海外に出て戦うということは、周囲も含め、みんながみんなハッピーなわけでもない。でも、やっぱり外に出て、海外で試合をして、結果を出すことは大変なことです。日本にいたらチヤホヤされますよ。海外に行けば、いちから自分を構築しなければいけない。負けることもあれば、勝つこともある。そういう挑戦をしてきた人たちがいるから今がある」