MMA
インタビュー

【VTJ】5年2カ月ぶりに復活の「VTJ」を坂本一弘サステイン代表に聞く「日本と海外、どれくらいの開きがあるのか? 実際戦ってみないと分からない」

2021/10/11 18:10

何かを生み出すときに出てくるのが、VTJ

――「VTJ」は「VALE TUDO JAPAN」 (ヴァーリ・トゥード・ジャパン)の頭文字を略したものですよね。最初の大会は1994年で、「VALE TUDO JAPAN OPEN 1994」でした。

「そうですね。広く世に呼び掛けた“オープン”トーナメントでした。あの時代に、佐山聡先生と中村頼永さんがヒクソン・グレイシーを日本に招聘したのは大きなことだと思いますし、修斗の選手もそこに出場し、日本のファンもヒクソンの戦いを生で見ることが出来た。その意味では、修斗の裏面というか、A面とB面のように対になっている大会ですね。どちらがAかBかは分かりませんが……この表現、いま通じるんですかね?(苦笑)」

――いまはCDでさえ主流ではないですけど、レコードを求めるファンもいますから通じるかと(笑)。ともあれ、その戦いは表裏一体で、互いに影響を与え合って、ルールまで変えてきました。

「そうですね。必ずしもA面だけでいいわけでなく、B面だけでも駄目だった。その両面があることが修斗の良いところだと思います。何か突き破るべき閉塞感があったとき──ブラジルの黒船や北米の台頭など、世界に日本の強さを証明しなきゃいけない──そういった何かを生み出すときに出てくるのが、VTJだと思います」

――修斗本戦とは異なる形でそれを実現させてきたと。

「競技としての修斗の大事な部分があります。同時にイベントとして、より幅広くいろいろな選手が出られるようにすることで実現できたものもあります。それは外国人選手もそうでしょうし、日本人選手もそうです」

――修斗のプロライセンスを持たない選手が出場機会を得ること出来ました。

「先日引退した石渡伸太郎選手がキング・オブ・パンクラシストとして、修斗王者の堀口恭司と対戦するとか、いろいろな団体の垣根を越えた戦いがありましたね」

――そして、2012年の「VTJ 1st」ではケージを導入しました。UFCジャパンで国立代々木第二体育館のなかにケージを見ましたが、VTJのときも入った瞬間、いつもと違う風景を感じました。メインは所英男選手と佐藤ルミナ選手の越境対決。そして、第4試合では「135ポンド契約」で堀口恭司選手が、元UFCのイアン・ラブランドと戦った試合も印象深いです。

「ラブランド、いい選手でしたね。堀口がいまで言うカーフキックを効かせて。垣根を超えること、そして対世界がテーマとしてありました。そこに準ずるいい選手、強い選手を呼んで、そういうトップどころと日本の選手が戦ったときに、どう戦うかという場を作ってきました。じゃあ、いまはどうなっているのか? ということだと思うんです。日本のMMAのレベルも上がってきている。ただ、海外はもっと上がっている。お互いにレベルが上がっているなかで、実際どれくらいの開きがあるのか、それともあまりないのか。それは実際に戦ってみないと分からない。もちろん個々の能力差もあるでしょう。悲観している人も多いかもしれませんが、必ずしもレベルが違うとは言えない。僕は、日本のレベルはどんどん日進月歩で上がっていっていると思っています。」

―─トップに上る段階で海外選手との試合を体感できたことは、日本のMMAの底上げになったと思います。しかし、いまはその機会が失われてしまった。その箱庭的世界で良し、とする考えもあります。

「日常的に出来ていたものが、コロナで出来なくなった。各団体でいろいろなことを考えて、カードを組んでいっているとは思います。そういう中で、我々としては何をすべきか。まだワクチンが入って来ていない中で、ABEMAさんと協力し、どうやったら感染者を出さずに大会を開催できるか、無観客試合でやったり、消毒や導線を徹底的に考えて防護服を着てまで大会を開催した。批判もありましたが、取り組みをしっかり見ていただいた。そういった経験がいまに繋がっています」

――あのときはいまとは違う緊張感がありました。

「そうですね。こんな時期に何をやってるんだ、というばかりではなく、“こんな時期”でも雑誌は発売されるし、締切はあるし、ゴン格さんも書かなきゃいけないですよね。やっぱり我々もプロモーターである以上“試合放棄”をするわけにはいかない。やるべきことをやった上で届かないこともあるとは思いますが、ベストを尽くしたい。その意味でも、あの時期は、みんな何かしら“戦う方法”を見つけていたんじゃないかなと思うんです。武器が少ないなか、工夫をしてきた。そういう時期を乗り越えてきたので、それで良しとせずに、我々も次のステップに行かなきゃいけない。いまの日常ってコロナ禍が日常じゃないですか。この日常を打破するもののひとつが、身体的なもの、格闘技で戦うことで、みんな“普通”じゃないから格闘技をやってる。このコロナ禍でファイターはどう強くなって、前に進むのか。我々の試みとともに、その新しいステップを見てもらえればと思います」

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