(C)ONE Championship
2021年4月15日、ONE Championshipが米国のTNT(ターナー・ネットワーク・テレビジョン)とジョイントして試合を放送する「ONE on TNT」シリーズ第2週の「ONE on TNT 2」が配信された。
同大会では、日本から上久保周哉(TRI.H studio/頂柔術)と中原由貴(マッハ道場)が参戦。ともに勝利を挙げている。
MMA12勝1敗1分の上久保は、これで2018年7月のONE初参戦から5勝負け無しに。前戦は2019年11月にブルーノ・プッチに判定勝ちを収めており、今回は1年4カ月ぶりの試合だった。
対戦相手は、当初ランキング3位のトロイ・ウォーセン(米国)だったが、試合前日に急遽、ミチェル・チャマール(米国/グアテマラ)に変更に。MMA7勝2敗のチャマールは、2010年にBellatorに参戦しブライアン・エクステインに判定負け。その後フロリダのローカル団体で3連勝中という選手だった。
ウォーセンが4月22日に、上久保も対戦を望む元UFCのジョン・リネカーとの対戦が決まるなか、上久保は「ウォーセンは自分の立ち位置と実力を知る上で基準となる選手でしたし、とても強い選手なので楽しみにしていました」と悔しさを表していた。
試合は、1Rからテイクダウンを奪い、チャマールが立ち上がっても組み手をモノにして、立つ方向を限定させて再びテイクダウン、コントロールを続けた上久保が優勢に。
下になった柔術黒帯のチャマールのバギーチョーク(サイドの相手に同側の手足で三角に絞める)に固められたものの、2Rには、ボディロックからテイクダウンし、バックを奪い、見事リアネイキドチョークを極めている。
試合後のインタビューでは、「今回は“勝って当たり前の相手に勝っただけ”」「1位のジョン・リネカーやユサップ(サーデュラエフ)、それとやる予定だったスティーブン・ローマンは興味があります」と、上位ランカーとの試合を望んだ上久保。
その中で、「今回は実は新しい組技のスタイルを試したので、過去の試合と見比べて欲しい」とも語っている。
果たして、上久保が語った「新しい組技のスタイル」とは何か。勝者が投げかけたヒントを読み解くのも、格闘技の楽しみ方のひとつだろう。その正否はともかく、本誌も考えてみたい。
例えば、上久保の金網際でのテイクダウン。
ケージレスリングで、シングルレッグに入る上久保はこれまで、片足を両足で挟み、自身のおでこを肩につけ、相手に肩にオーバーフック(小手巻き)をさせにくいようにしてから、正座して相手の両ヒザを横に向かせて両足を束ねて、ダブルレッグに移行しテイクダウンを奪ってきた。
しかし、今回は、脇を差して片足を挟んでからダブルレッグに移行するよりも腰に乗せての崩し、または脇を潜ってのバックテイク、ボディロックの動きを重視しているようにも見える。さらにスタンドのボディロック状態では、背後から相手のふくらはぎをカーフキックで蹴っていた。
あるいは、ケージ際で相手の対角の手を後ろ手に縛っての打撃、寝技では背後からボディトランアングルで4の字に組んでから、グラウンドのオタツロック1(足を組んだ側と同側で二重がらみ。オタツロック2の場合は足を組んだ側と対角の右足を固定)で左足を固定してから、腰をズラして背後からヒジを突く動きも効果をあげていた。
実のところ、上久保は試合中に何を“試して”いたのか。上記と異なり、もっと組み技のディテールの部分で、実戦のなかで組み技師は思考していたのかもしれない。
“永久寝技地獄"の異名を持つ上久保は、試合前の本誌の取材に「自分の身体の位置取り、頭の位置取り、一つひとつを、少なくとも以前の試合よりはもっと丁寧にやることを考えてきました。よりシステマチックに、組技に関しては練ってきたつもりです。どういうときに相手は手を着いて動くのか、頭を上げて動こうとするのかとか、そういう部分に関しては、以前よりも丁寧に練習はしてきているつもりです」と語っている。
ONE5連勝でMMA8連勝をマークした上久保。「自分が学んでいる技術を追求していった中で、誰にでも通じると信じて、自分がどこまでやれるのかを知りたいなとは思います。それが頑張ってる理由というか、格闘技が好きでずっと続けてる理由です」という日本バンタム級の求道者の今後に注目だ。