MMA
インタビュー

【ONE】上久保周哉「リネカー戦に変更のウォーセンは当たりを引いた。僕は自分のやるべき事を正しく丁寧に積み重ねていく」=4月15日(木)朝配信

2021/04/14 21:04
 2021年4月15日(木)、ONE Championshipが米国のTNT(ターナー・ネットワーク・テレビジョン)とジョイントして試合を放送する「ONE on TNT」シリーズ第2週の「ONE on TNT 2」が、ONE Super AppおよびABEMAにて午前9時30分から配信される。  元UFC世界王者のデメトリウス・ジョンソンがアドリアーノ・モライシュにKO負けした前週に続き、今週の大会では、日本の上久保周哉(TRI.H studio/頂柔術)と中原由貴(マッハ道場)の試合が放送される。  ここでは、当初トロイ・ウォーセン(米国)と対戦予定が、急遽、試合前日にミチェル・チャマール(米国/グアテマラ)に変更となった上久保のウォーセン戦に向けたインタビューと、その後のチャマール戦に向けたコメントの両方を紹介したい。  MMA11勝1敗1分けの上久保は、2018年7月のONE初参戦から4勝負け無し。前戦は2019年11月にブルーノ・プッチに判定勝ちを収めており、今回は1年4カ月ぶりの試合となる。 "永久寝技地獄"の異名を持ち、練習で肌を合わせたファイターたちの誰もが「強い」と評する上久保周哉は、ONEで何を目指しているのか。  結果的にジョン・リネカーと対戦することになった「ウォーセン」をどうとらえていたのか、そして「ビビアーノよりもリネカー」と言った上久保の「格闘技を好きな理由」を感じてほしい。 いまONEで一番強いのはリネカー。組んでみたいし、体感してみたい ──ご結婚されたそうですね。生活に変化もありましたか。 「取組みとか気持ちとかは、大きく変わるかと言われると、そういうのはないかなとは思いますけど、全部自分でやってた部分で、そこを手伝ってくれたり、補助してくれたりとか、自分が今まで気を使ってこなかった部分とかを助けてくれたりするのはすごい助かってます」 ――なるほど。前戦から1年4カ月ぶりの試合となります。新たな取り組みなどもありましたか。 「たくさん練習はしてきたので。まあ、前よりは強くなってるんじゃないかなと思います。寝技も打撃も、練習量も明らかに増えたし、質も上がった気もしてるので、そういう意味では全体的にレベルは底上げできているんじゃないかなと思います」 ――今回、最初に対戦相手がトロイ・ウォーセンと聞いて「やりたい」と感じのは、どういう気持ちからですか。 「強い選手だなと思ってましたし、レスリング力も、MMAの試合の感じもそうですし、いい相手だなとは思っていました。自分が次にステップアップしていくことを考えてたら、こういう選手を越えていかなきゃいけないんだなと思ってたので、名前を見て、まあ率直にいい対戦相手が来たなと思いましたね」 ――7連勝していたウォーセンは前戦でユサップ・サーデュラエフと接戦の末に敗れ初黒星も、ユサップのボディロックからのテイクダウンから立ち上がっています。ウォーセンの組み力について、どのように感じましたか。 「レスリングだけじゃないのはもちろん、組技というか、柔術に限らず組技をしっかりやっている印象を持ちました。自分はあのユサップとの試合に関しては、まあ、ウォーセンが勝っててもおかしくないかな、どっちが勝っててもあり得る試合だったなとは思ってるので、前回ウォーセンが負けたからというのはあんまり関係なく、いい選手だと思っていました。組技、強いですよね。あれだけきれいにテイクダウンされて、しっかり両脇取られて、抑え込まれているのに、パンチ一発も被弾せずに立ち上がったのは素晴らしい技術を持っていると思いました」 ――その相手に、上久保選手は抑え込むことができるというふうに手応えを見ていますか。 「それをしないと自分は勝ち目ないですからね。それができるだけの練習はしてきてます」 ――前戦のブルーノ・プッチ戦で、あの寝技巧者のプッチ相手に、上久保選手がテイクダウンからバックを取られずに上になり、さらにパウンドを入れてパスガードまでした動きに感嘆しました。パウンド&パスについては、上久保選手の中で、どのような進化があるのでしょうか。 「パスガードももちろんですし、自分の身体の位置取り、頭の位置取り、一つひとつを、少なくとも以前の試合よりはもっと丁寧にやることを考えてきました。よりシステマチックにと、組技に関しては練ってきたつもりです。だから、前回の試合だけではなく、練習の中で考えてきたことは多いですね。どういうときに相手は手を着いて動くのか、頭を上げて動こうとするのかとか、そういう部分に関しては、以前よりも丁寧に練習はしてきているつもりです」 ――寝技の「攻防」があるなかで、上久保選手は今回、リングがケージになっても「あまり変わりはない」と言ってはいましたけど、ケージで試合をするというのは、普段の練習のディテールがより発揮できるのではないですか。 「まあ久々ですしね。せっかくMMAをやってるならケージがいいなとは思ってたので。ケージでやれるのは、練習でやってきてるシチュエーションに一番近いなとは思ってるので、まあいいですよね。ケージのほうが集中もできるので」 ――それは観客などの周囲がリングよりも見えないからでしょうか。 「そうですね。自分けっこうケージのほうが、やっぱ外が見にくい方がいいというか。なんで外見てんだって話なんですけど(笑)」 ――ケージになると、相手にとっても立ちやすくはなるでしょうか。 「五分五分だと思います、そこに関しては。立ちやすいかもしれないですけど、寝かしやすい」 ――バンタム級ランキングは、王者のビビアーノ・フェルナンデスを筆頭に、1位がジョン・リネカー、2位がケビン・ベリンゴン、3位がユサップですから、そのユサップと競ったウォーセンに勝てば、上位陣が見えてくるかと思います。 「ランキングは別にって感じです。ONEに関してはランキングはあんま関係ないかなと思ってるんです。自分がやりたい相手とやれれば、別にランキングはいいかなと」 ――その意味では、ウォーセンは「やりたい相手」なんですね。 「そうですね。自分が選手としての完成度を目指す中では、やんなきゃいけない相手だと思ってます。これを経験する必要もありますし、やっぱ越えていかなきゃいけないですよね、今後を考えても」――今の練習環境は? 「出稽古はロータス世田谷で組技をやってますし、TRIBE TOKYO M.M.A、ALLIANCEでも出稽古をしています。あとたまにIGLOOにも行かせてもらったりとかしてました。自分のジム TRI.H studioでも週1、和田竜光さんとかと組んだり、あとは頂柔術ですね」 ――打撃だけの出稽古は? 「打撃はミットとかはやったりはしますけど、打撃のみのスパーみたいなのは基本的にはそんなにやらないです」 ――ウォーセンとは練習したことがあるそうですね。 「Evolveのトライアウトで一緒だったんで。それで同じ空間で練習はしてたんですけど、自分は試合後に参加してたんで、目の下を切っていて、組み合ったりとかはしてないんです。練習を見ていて強そうだなとは思ってましたけど、同じ階級だとは思ってなかったのでアイツ、デカいなと(苦笑)。レスラーだなと。体力的な面、ラントレとかの練習の取組みとかを見ていて、ちゃんとやってるというか真面目だし、手を抜かない選手だというのは感じましたね」 ――ちなみに上久保選手は米国での出稽古の経験もありますね。その経験がどのように活きていますか。 「そうですね……カリフォルニアに2回行って、ドミニク・クルーズやジェレミー・スティーブンスがいるアライアンスMMAに練習しに行きましたね。1回目に行ったときはムンジアルを見てそのまま練習。翌年はムンジアルに出場して、その後練習に行くというスケジュールでした。一般クラスもプロ練も出てました。朝からずっとジムにいるみたいな感じの過ごし方をして。  初めて行ったときは、選手として駆け出しだったので、もうそれこそ1回一番上を知らないことにはどうにもならない、目標が見えないと思って行ったんです。自分のレベルの低さを知ったというのが1回目ですかね。  2016年に2回目に行ったときには、ある種自分はどういうふうに戦っていくべきなのかを考えました。そして自分のこと以上に、トップ選手たちの取り組みを学ぼうと思って見ていましたし、自分の強い部分と弱い部分、通用する部分というのも確認できました。自分が何ができるのかというのを、2回目は知れたかなという感じはします」 ――さきほどランキングのことやベルトへの執着を強くは見せなかったのですが、上久保選手にとって、こうして格闘技を続けて試合をすることの目的はなんでしょうか。 「好きだからやってます」 ――練習をすることも試合をすることも好きだと。それが仕事でもあって、試合の中で自分の技術や理論が正しいことを証明しているような感じなのでしょうか。 「練習を好きでやっていて、その中で学んできたセオリーだったり、技術の部分とかを、ある種証明するのが試合かなとは思っていますけど、試合があるから格闘技を頑張ってるとか、ベルトのために頑張ってるというよりは、こういうことをある種、自分の身体で試したり、相手がいる中で試したりするというのが楽しいんですよね。それが、格闘技が好きだからやってるって感じになります」 ――求道者というか、格闘技の真理を知りたいような思いがあるんでしょうか。 「そうですね。どこまで技術を追求すれば……自分が学んでいる技術を追求していった中で、誰にでも通じると信じて、自分がどこまでやれるのかを知りたいなとは思います。それが頑張ってる理由というか、格闘技が好きでずっと続けてる理由ですね」 ――そういう中で、ジョン・リネカーという同じ階級に出てきた選手を見て、率直にどう感じていますか。 「素晴らしい選手が来ているなとは思います。それこそフライ級にデメトリアス・ジョンソンが来たときに、みんなが認める世界一が同じ階級に来て羨ましいと思ったように。現実的に、自分がフライ級で──まあ、落とせなくはないんでしょうけど──100パーセントのパフォーマンスが発揮できるかも分からないけど、DJとやれるチャンスがあるんだったらやってみたいなと思ってたところに、ジョン・リネカーみたいなUFCのトップだった選手が来てくれて、やってみたいなと思う気持ちは嘘じゃないですね。  正直ビビアーノより全然リネカーのほうが魅力的です。リネカーは強いですけど、アイツは“世界一”じゃないから。もっと上を見なきゃいけないんですけど、現実、いまONEで一番強いのはリネカーなんで、組んでみたいし、体感してみたいなと思います」 ――そのためにも、今回の試合を超えることで自ずとリネカーへの道は繋がることになりますよね。 「まあそうですね。そういう意味ではランキングは、上にいる人たちが分かるのでいいのかもしれないですね」 ――ところで、普段格闘技以外のところで、捨て犬や捨て猫を保護する施設を支援していると聞きました。 「最初は保護猫とか保護犬の譲渡会があるというのをネットとかで知って、それを主催しているところがカフェなどを併設していたりもするので、都内で行ける範囲で行ってみて、身近なところから支援ができるというのを知って、最初は消耗品だったりを持って行ってたんです。もうちょっと支援したいなと思ったときに、ファイトマネーとかで、定期的に支援する形で、寄付みたいな形でやってます。動物を保護する施設があって、譲渡会があるということ自体、まったく知らなかった人が、こうして支援することで知ってくれるだけでも、まあやってる価値はあるかなと思います」 ――最後に、ファンにメッセージをお願いします。 「特異な、変わったスタイルの選手ではありますけど、KOで勝つとか、一本で勝つとか、そういう話ではなく、自分が持てる技術を全て出し尽くす試合をしますし、相手にとっても地獄のような時間を過ごさせてやろうとは思ってるので、そういう意味では頑張る自分の姿を見て、テレビの前なりで応援していただければいいなと思ってます」 対戦相手が急遽チャマールに変更となった上久保「相手のためにというより、自分が強くなるための時間を過ごしてきました」 ──コロナ禍でのシンガポール大会は今回が初めてですよね。ホテルでの生活、試合に向けての調子はいかがですか。 「ホテルでの生活は、試合に向けてのスケジュールが決まっているので過ごしやすくはあります。外の空気を感じる機会が少ないのは残念かなというくらいで。調子は、当日ケージに入って見てみないと分からないですね」 ──トレーニングはどう過ごしてきましたか? 「特別変わったことはしていません。いつも通り。相手のためにっていうより、自分が強くなるための時間を過ごしてきました」 ──対戦相手が急遽、変わった時の気持ちについて、お聞かせいただけますか。 「正直言って残念な気持ちでした。トロイ・ウォーセンは自分の立ち位置と実力を知る上で基準となる選手でしたし、とても強い選手なので楽しみにしていました。また、彼がリネカーと試合する(4月22日)と聞いて嫉妬の気持ちも強かったです。僕もリネカーと試合する機会があるならやりたかったので、彼は当たりを引いたなと思っています」 ──直前の対戦相手の変更に、どのように対応していますか? 「モチベーションの整理にはそれほど時間が掛からなかったので、これまで通り、変わらずコンディションの調整をしています」 ──MMA7勝2敗の新しい相手ミチェル・チャマールの印象はいかがですか。 「試合の印象は、映像がほとんどなかったので何とも言えません。チラッと挨拶した感じ、人は良さそうでしたし、髭がすごかったです」 ──相手が変わったことは、どんな影響がありますか。 「特に何もありません。自分のやるべき事を正しく丁寧に積み重ねていきます。今までもそうでしたし、これからも同じように地道に積み重ねていくつもりです」 ──2015年から6年間、負け無しで来ています。どのようにして連勝をキープしていますか? 「一生懸命に、基本的なことをセオリーに沿って、正しくやり続けることですね」 ──上久保選手にとっての戦う理由、モチベーションは何でしょうか? 「何のために戦うのかって言うのは、常々自分に問いかけて日々過ごしています。技術を追求して強くなるっていうことに関して、試合というプロセスは必ず踏まないと、と思っています。試合をすることで確実に、ただ練習を積み重ねるよりも大きくステップアップする事ができて、自分のやって来ている技術・練習の正しさを理解する事ができる。自分は勝って何かをしたいというより、技術を追求する過程の中で試合をしているという感じです」 ──今回の大会は、アメリカ向けの大会でもあります。これまでよりも多くの人に観てもらえる機会であることについては、どう考えていますか。 「大きくモチベーションが変わることはないですが、本場の国の人たちに試合を見てもらえる機会っていうのは、改めて考えると嬉しいですね」
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