2021年4月15日(木)、ONE Championshipが米国のTNT(ターナー・ネットワーク・テレビジョン)とジョイントして試合を放送する「ONE on TNT」シリーズ第2週の「ONE on TNT 2」が、ONE Super AppおよびABEMAにて午前9時30分から配信された。
元UFC世界王者のデメトリウス・ジョンソンがアドリアーノ・モライシュにKO負けした前週に続き、今週の大会では、メインでONE世界ライト級選手権試合が行われ、王者のクリスチャン・リー(米国)が、挑戦者のティモフィ・ナシューヒン(ロシア)を1R TKO。2度目の防衛に成功した。
また、日本から中原由貴(マッハ道場)と、上久保周哉(TRI.H studio/頂柔術)が参戦。ともに勝利を挙げている。
▼第5試合 ONE世界ライト級選手権試合 5分5R○クリスチャン・リー(米国)[1R 1分13秒 TKO] ※左フック→パウンド×ティモフィ・ナシューヒン(ロシア)※リーが2度目の防衛に成功
格闘一家に生まれ育ち、現ONE世界女子アトム級王者アンジェラ・リーを姉に持つライト級王者クリスチャン・リーは、現在5連勝中。
2018年11月に徳留一樹を1R パウンドアウトすると、2019年1月に4カ月前に反則の投げで敗れたエドワード・ケリーも1R パウンドでTKO。同5月には青木真也の腕十字を凌ぎ、2RにパンチラッシュでTKOに下し、ライト級王座を獲得した。
2019年10月にONE4連勝中だったザイード・フセイン・アサラナリエフに判定勝ちし、GP王者にも輝くと、2020年10月の前戦では、14勝無敗だったユーリ・ラピクスを1R TKOに下し、初防衛に成功。今回のTNT放送で、全米デビューとなる。
ライト級3位のナシューヒンは、2018年9月にアサラナリエフに1R TKO負けも、2019年3月にエディ・アルバレスに強烈な右フックで2R KO勝ちで再起を果たすと、2020年11月の前戦で長身のピーター・バウシュトに判定勝ちで2連勝。王座挑戦を決めた。
1R、ともにオーソドックス構えから。ナシューヒンの左を掻い潜りダブルレッグに入るリー。切るナシューヒンに離れる。右にサークリングするリーは右ハイで牽制。じりじりと圧力をかけるナシューヒンが右を繰り出すが、それをスウェイでかわしたリーが前手の左のカウンターをヒット! 腰を落としたナシューヒンに、リーは右のパウンドラッシュ! レフェリーが間に入った。
22歳のクリスチャンが2度目の防衛に成功。6連勝をマークし、戦績をMMA15勝3敗とした。
試合後、リーは「10週間のハードなトレーニングを積んできた。もうすぐ子供が生まれるんだ。ナシューヒンはとても危険な相手で、パンチにダッキングして対処することを考えていた。何度も練習してきた動きだ。彼のパワーにスピードと正確性で戦った。もし続いていてもバックから絞めていたよ。今後、誰が相手でも戦う」と笑顔で語った。
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▼第4試合 女子ムエタイ アトム級 3分3R○ジャネット・トッド(米国/ONEアトム級キックボクシング世界王者/同級2位)[3R 1分36秒 TKO]×アン・リン・ホグスタッド(ノルウェー/同級3位)
“JT”の愛称で呼ばれるトッドは母親が日本人。流ちょうな日本語も話し、日本でも出稽古で江幡兄弟との練習経験を持つ。宇宙工学のエンジニアの仕事もこなす才女でもある。2017年IFMA世界選手権で銅メダルを獲得したのを筆頭に、アマチュアムエタイで数多くのメダルを獲得。2019年2月からONEに初参戦すると、いきなりスタンプ・フェアテックスのアトム級ムエタイ世界タイトルに挑戦したが判定負け。
その後は3勝(2KO)の戦績をあげ、2020年2月にスタンプと今度はキックボクシングルールで再戦。判定2-1でスタンプを破り、ONEアトム級キックボクシング世界王座を奪取した。前戦は2021年3月にアルマジュニクに勝利している。
ホグスタットはISKAムエタイ世界王座に2度就いたほか、スカンジナビアとノルウェーのISKAローカルタイトルを獲得している。ONEには2020年1月に初参戦し、同じくアルマジュニクから勝利を収めている。
1R、両者ともアップライトのムエタイスタイル。トッドはやや前重心。トッドはワンツー、フックからアッパーのコンビネーション、左フックからの左ヒジをを繰り出していき、ホグスタッドは前蹴りとローで様子を見る。
2R、トッドは出入りしての左フック狙い。ホグスタッドの右ローを左スネでカットし、着地すると同時に右ローを返すトッド。ホグスタッドは前蹴り、右ロー&ミドルで応戦するが、単発のためトッドを捉えるには至らない。ホグスタッドの蹴りをわずかなバックステップでかわしてパンチを打ち込んでいくトッド。ホグスタッドはパンチも蹴りも空振りが目立つ。
3R、ホグスタッドは前へ出て左ミドル、ワンツーを繰り出すが、トッドの前蹴りで派手に転倒。ホグスタッドの右ミドルにトッドが左ミドルを返すと、ホグスタッドはうめき声をあげながらダウン。レフェリーが様子を見てストップ。トッドの鮮やかなKO完勝となった。キックボクシングルールに続き、トッドがムエタイルールでも実力者ぶりを見せつけた。
トッドは勝利後のインタビューで日本人の母親の誕生日を祝福、日頃の感謝の言葉を伝えた。
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▼第3試合 フェザー級 5分3R○中原由貴(日本)[2R 反則] ×シネチャツガ・ゼルトセトセグ(モンゴル)
中原は、ONEデビュー戦でエミリオ・ウルティアにTKO勝ち後、2戦目でゲイリー・トノンの足関節に一本負けし、ニューヨークでダナハーシステムを学んできた。2020年12月の前戦では、12勝無敗のラスラン・エミルベクを見事1R TKOに下し、ONE戦績を2勝1敗とした。
対するゼルトセトセグは、ONE Warrior Seriesから本戦契約を果たしたストライカー。モンゴルでボクシング代表として活躍しており、2020年1月にマー・ジャワンを55秒、右オーバーハンドでTKOに下している。スイッチもするパワフルな打撃巧者だ。
1R、ともにサウスポー構えから。鋭い前手の右で入るゼルトセトセグ。ダブルレッグテイクダウンを奪う中原に首を抱えてブリッジで返そうとするゼルトセトセグ。
強力なパワーだが、バランスを保つ中原はヴァンフルーチョーク狙いも、腕を解いたゼルトセトセグに上から中原はマウント奪いヒジ打ち! さらに立ち際にギロチンチョークへ! それを突き飛ばして抜けるゼルトセトセグ! 恐るべきパワー。
立ち上がる中原。ノーモーションで右で飛び込むゼルトセトセグ。伸びる右からスイッチするが肩で息をする。右をもらう中原だが致命打はもらわず。しかしダブルレッグは切られる。下がりながらも左ミドルを当てる中原。互いに右の打ち合いに、ゼルトセトセグのマウスピースが飛ぶ。
2R、オーソドックス構えになるゼルトセトセグに左ミドルを当てる中原。サウスポー構えになるゼルトセトセグ。今度は右ミドルを突く中原。オーソになると左ミドル。大きく左右を振るゼルトセトセグの打ち終わりをカチ上げテイクダウンは中原! しかしゼルトセトセグも右を差して立ち上がる。
ダブルレッグをケージからケージまでドライブする中原。苦しい動きを厭わず前に。頭を胴体の横に出した中原は両足を足で束ね、背中を着かせる。「時間を使え」の声に、しっかりパスガードし、ヒジを突く。マウントを奪い、パウンドに後ろを向くゼルトセトセグ。身体を伸ばしリアネイキドチョークを狙う中原。再び正対するゼルトセトセグはハーフに。
ゼルトセトセグが下から左で差して上を取り返そうとしたところで、中原は自ら足を取りうつ伏せになり、ジョン・ダナハー直伝のサドルロックから外掛け内ヒールフックへ! しかし、寝技状態でゼルトセトセグは反則の蹴りを顔に打ち込む。
試合中断。再開となるとスタミナ厳しいゼルトセトセグはインターバルが取れた形だが……。レッドカードがゼルトセトセグに出され、中原が反則勝ちに。ダメージのある中原はコメントできないため、ゼルトセトセグがマット上でマイク。「抜けるために足を振った。アクシデントだった」というゼルトセトセグだが、明らかに打突しており、言い訳は出来ないだろう。
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▼第2試合 フライ級 5分3R○ワン・ジュグァン(中国)[3R 1分51秒 KO] ※右ヒジ×キム・キュサン(韓国)
中国のジュグァンは2019年9月にREBEL FCで坂野周平に判定勝ち。現在4連勝中で今回がONEデビュー戦。
対するキュサンは、HEATやTFCで活躍後、2019年5月にONEデビュー。いきなりジェヘ・ユースタキオと対戦し判定負けも、184cmの長身と長いリーチで2019年11月に藤澤彰博に1R 右アッパーでKO勝ち。2020年11月に若松佑弥に1R KO負けを喫している。
試合はリーチを活かしたキュサンの蹴りに苦戦したジュグァンだが、3R、詰めるキュサンの入り際に、ジュグァンが右ヒジ! 強い気持ちと身体で5連勝を飾った。
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▼第1試合 バンタム級 5分3R○上久保周哉(日本)[2R 2分13秒 リアネイキドチョーク]×ミチェル・チャマール(米国/グアテマラ)
MMA11勝1敗1分の上久保は、2018年7月のONE初参戦から4勝負け無し。前戦は2019年11月にブルーノ・プッチに判定勝ちを収めており、今回は1年4カ月ぶりの試合となる。“永久寝技地獄"の異名を持つ組み力を発揮するか。
対戦相手は、当初ランキング3位のトロイ・ウォーセン(米国)だったが、試合前日に急遽、ミチェル・チャマール(米国/グアテマラ)に変更に。MMA7勝2敗のチャマールは、2010年にBellatorに参戦しブライアン・エクステインに判定負け。現在は拠点とするフロリダのローカル団体で3連勝中だが、前戦は2015年1月にギロチンチョークで一本勝ちと6年間のブランクがある。
ウォーセンが4月22日に、上久保も対戦を望む元UFCのジョン・リネカーとの対戦が決まるなか、上久保は「ウォーセンは自分の立ち位置と実力を知る上で基準となる選手でしたし、とても強い選手なので楽しみにしていた」と悔しさを隠しきれない。鬱憤を晴らすようなファイトを見せるか。
1R、いきなり中央を取り右で差して組んだ上久保。腰に乗せて前方に崩してテイクダウン。今度は左で差してパスガードを狙う。上体を金網で立てるチャマールは立ち上がるが、コントロールしているのは上久保。
ボディロックからテイクダウンを2度。立ち上がるチャマールを背後からふくらはぎを蹴り、小外も混ぜて倒してサイドを奪い、グラウンドヒザを頭に突く。下からバギーチョーク狙いのチャマールは背中を着くが、抜く上久保はチャマールの左手をヒザでマットに釘付けにし、右でパウンドを入れる。コーナーの礒野元氏からは「ダメージ優先で、行けたら行く」と声がかかる。
2Rもいきなり詰める上久保は、左右を突き金網まで詰めてダブルレッグからすぐに脇を潜りボディロックへ。突き放したチャマールにさらに近距離で左右を振り、今度はシングルレッグから前足を挟んで、ボディロックから引き出しテイクダウン! ボディトランアングルで4の字に足を組み、背後からパウンド。ヒジも突く。亀になるチャマールにバックマウントからパウンドさらにリアネイキドチョークを極めた。チョークに何もさせずに一本勝ちした。
5連勝をマークした上久保は、「ノーサプライズ。バギーチョークはタイトだった」とコメント。今後は上位ランカーとの試合が望まれるところだ。