望んでいた「激闘」にならなかった理由
「今後はまだ考えられない。俺はダメだと思ったんですけど……悔しいんで。このままでは終われないんで、ここからもう一回、這い上がって、ここからベルトを獲ったら凄いなと思うんで、それを見届けてほしいです」と、再起を誓う扇久保。
MMAファイターとしてトータルの完成度が高い扇久保だが、前戦の海戦では、自身でもコントロール出来ない誤算があったという。
「海選手は1Rの最初の2分の動きがめっちゃいいのを研究していたので、最初の2分はあまり手を出さずインローを蹴って、2分過ぎてからタックルを入れよう」という作戦だったのが、「コールされる前とか待っているときに“タックルで行くのやめよう。よし今日は打撃で盛り上げよう”と勝手にもう自分で決めちゃって」、作戦とは真逆のスタンド勝負のマインドになっていたという。
開始早々、海の遠間からの左の跳びヒザをバックステップしながら受け、そのまま蹴り足を掴んでシングルレッグに入るも、海の差し上げにテイクダウンに固執することなく扇久保は足を放している。
「跳びヒザを無意識にキャッチしたとき、あの瞬間もまったく力を入れてなくて、(テイクダウンを)獲る気なかったんで放したときに、朝倉選手、めっちゃ笑っていたんで、“そんなもんか”って思われちゃったかもしれないです。まあ、いま言ってもただの言い訳ですけどね」と、扇久保は苦笑する。
海は扇久保に「蹴りも打ってくるんだ」と意識させるなかで、巧みにパンチを効かせた。それは扇久保が近距離でブロッキングをする際に「下を向く癖があったからアッパーとヒザは狙っていた」(海)という海の作戦通りの動きだった。
扇久保は「フォーストコンタクトのボディがめっちゃ効きました。僕が右フックを打って、1発目のボディを合わされて、あれは効きました。そこから自分から打つのを戸惑った、打撃で入りづらくなったところはあるかもしれない。(フィニッシュに繋がるアッパーは)見えてないところから当てられて効かされたのかも」と勝負の際を振り返る。
試合後は、リング上で海と言葉をかわした。「(海の)顔を見た瞬間に堀口(恭司)選手のことが思い浮かんで、僕も勝ったら堀口選手とやらせてくれって言おうと思ってたんで、だからもう『堀口選手とやるんでしょ、勝ってね』みたいな感じで言ったと思います」。
望んでいた“激闘”は、作戦を変えて打撃戦に傾いたことでかえって遠のいた。「僕がタックルに行って、朝倉選手が切って……みたいな展開を僕がしなければいけなかった。結果的にKO負けで激闘が出来なかった。激闘というか……もっと盛り上げる試合が出来なかったのが、かなり悔しいです」