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2020年5月9日(現地時間・日本時間5月10日)、米国フロリダ州ジャクソンビルのヴェテランズ・メモリアル・アリーナにて、『UFC249』が開催された。
当初、『UFC249』は4月19日(日)に開催予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大により延期。今回、大会前に複数回にわたる新型コロナウイルス検査の上、陽性反応が出た選手およびセコンド(計3名・無症状)の試合を中止し、セコンド含むケージサイドの関係者がマスクを着用。試合開始90分前にならないと会場入りが許可されないなど、安全対策が取られた上で、必要最低限の関係者立会いのもと、「無観客試合」として11試合が行われた。
メインイベントでは、ライト級暫定王者決定戦としてトニー・ファーガソン(米国)とジャスティン・ゲイジー(米国)が対戦。ゲイジーが12連勝中だったファーガソンを5RにTKOに下し、暫定王者に就いた。試合後、暫定王座のベルトを腰から外したゲイジーは正規王者ハビブ・ヌルマゴメドフとの対戦をアピールした。
セミファイナルでは、北京五輪金メダリストで元二階級制覇王者のヘンリー・セフード(米国)が、ドミニク・クルーズ(米国)を挑戦者に迎え、2R TKO勝利。バンタム級王座防衛に成功後、電撃引退を表明している。
▼UFC暫定世界ライト級王座決定戦 5分5R
〇ジャスティン・ゲイジー(米国)4位・22勝2敗
[5R 3分39秒 TKO]
×トニー・ファーガソン(米国)1位・25勝4敗
※ゲイジーが新暫定王者に。
メインイベントに登場するファーガソンは、UFC史上初となる2度目のライト級暫定王座を手に入れるべくフロリダに乗り込む。現在、12連勝という大記録を打ち立てているファーガソンは2019年6月の『UFC 238』でドナルド・セラーニに2R TKO勝ちして以来の試合。これまでアンソニー・ペティス、ケビン・リー、ハファエル・ドス・アンジョスといった強豪を打ち負かしてきた。もともと4月18日に開催予定だった『UFC 249』に向け、減量を敢行し、155ポンドまで落としたことをツイッターで報告するなど、今回の試合で再びの王座戴冠に向け、気合十分だ。
HYPE LEVELS OFF THE CHART.@TonyFergusonXT @Justin_Gaethje #UFC249 pic.twitter.com/ojfNCv5zkJ
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対するゲイジーは元WSOF王者。2019年9月の『UFC Fight Night 158: Cowboy vs. Gaethje』でセラーニに1R TKO勝ちして以来の試合となる。UFCではデビュー以来、すべての試合でファイトボーナスを獲得しており、ライト級の中でも最高のノックアウトアーティストとして知られる。これまでセラーニ、エドソン・バルボーザ、ジェームス・ビックらをいずれも1R KO・TKOに下しており、今回も強烈なフィニッシュと、初のUFC王座獲得を目指し決戦に挑む。なお、ダナ代表は、「この試合の勝者が正規王座戦でハビブ・ヌルマゴメドフと戦うことになる」と明言している。
#UFC249 Official Result: @Justin_Gaethje def Tony Ferguson by TKO, Round 5, 3:39.
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1R、ともにオーソドックス構えから。ファーガソンは左右にスイッチし上下に頭を上げ下げ。左ミドルを当て、左スーパーマンパンチを狙う。最初のゲイジーのシングルレッグはファーガソンが切る。ファーガソンは右アッパーもゲイジーも返す。
ゲイジーの入りをかわし、左インローを先に当てるファーガソン。ゲイジも右のローを返す。左の前蹴りはファーガソン。さらに前足にパンチも。ファーガソンの入りにゲイジーは右を強振。ファーガソンはいきなりの右ハイもゲイジーはブロック。互いに左の相打ち!ゲイジーは左フックをガード上に当てる。
2R、いきなり左スーパーマンパンチはファーガソン。かわすゲイジーだが、続く右は被弾。ゲイジーも左ストレート! スイッチするファーガソンは左のカウンター狙い。かわすゲイジーは右アッパー! さらに右フックをヒット。そして右ローを当て、ファーガソンの左ジャブを外側の右に潜る。右を振って頭を振ってウィービングで入るゲイジー。さらに右ロー。ファーガソンも右ローを返す。
ゲイジーの右ローを足を流して受けるファーガソン。さらに右で入るが、ゲイジーは左ヒジからの右ストレートをヒット! 頭をずらすファーガソン。2R終了間際に互いに右アッパー! ゲイジーがヒザをマットに着くがすぐに立ち上がりホーン。
3R、右のカウンターを狙うゲイジー。右ボディから左フックを当てる。ファーガソンの打ち終わりに左フックも当てる。左頬、右目じりから出血するファーガソン。片足立ちのスーパーマンパンチを狙うファーガソンにゲイジーは右を当てる。さらにファーガソンのジャブに右ストレート! バランスを崩すファーガソン。さらに右ストレートも! サウスポー構えになるファーガソンは右ボディストレート。さらに左ローをマットに手を着いて水面蹴りのように繰り出す。
4R、左インローから入るゲイジー。ファーガソンはスイッチして歩きながら右前蹴り。右バックフィストをダッキングしてかわしたゲイジーに後ろ廻し蹴りも。これもかわしたゲイジー。左ジャブのダブルを打つと、ファーガソンの右を受けながらも左フック! 右の相打ち、さらにファーガソンの右アッパーにゲイジーはショートの右! ファーガソンは身体を崩す。追い足で詰めるゲイジーもかわすファーガソンは前手のジャブで立て直す。
右のオーバーハンドを狙うゲイジー。かわすファーガソンは、左ボディをヒット。左ジャブ、左ボディストレート、右ハイと手数はファーガソン。ブロックするゲイジーも左ハイをブロック上に返す。
5R、最終ラウンドに右手を挙げて自身を鼓舞するゲイジー。サウスポー構えのファーガソンは右脛からも出血。左ジャブを当て右ストレート、さらに左を3連打で当てるゲイジー! しかしファーガソンも顎を引き下がらず。右ローを返す。しかし詰めるゲイジーは右ストレート! さらに右をヒットするもいつもの“やりすぎ”の深追いはせず。ファーガソンは前転しての足関節狙いもゲイジーは切る。
ファーガソンの右に左をかぶせ、さらに右を当てるゲイジー。顔を腫らすファーガソンに左を当てると、ファーガソンは動きを一瞬止めて頭を振る。しかしそこに続けてゲイジーは左ジャブ! 体勢を崩し後退したファーガソン。ハーブ・ディーンレフェリーが試合を止めた。
🏆 The Highlight hits GOLD.@Justin_Gaethje #UFC249 pic.twitter.com/mjsFT94tft
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ゲイジーは4連勝でライト級新暫定王者に。ファーガソンは2012年5月のマイケル・ジョンソン戦の判定負け以来、8年ぶりの黒星、連勝は12でストップした。ゲイジーは試合後、暫定王座のベルトを腰から外し、正規王者ハビブ・ヌルマゴメドフとの対戦をアピールした。
試合後、ダナ・ホワイト代表から腰に巻かれたベルトを外したゲイジー。インタビュアーのジョー・ローガンから「要らないのですか?」と問われると、「本物が欲しい」と一言。「でも勝った気分はいいですよね?」と聞かれ、「もちろんいい気分だ。こんなアドレナリンは無い。このスポーツを4歳からやってきた。1日だってサボったことはないんだ」と続けた。
🗣️ "There's no other challenge I want right now. I want to fight him."
— UFC (@ufc) May 10, 2020
🏆 @Justin_Gaethje is READY to unify against Khabib! #UFC249 pic.twitter.com/I4IfNWKjQU
さらに、出血しながら5Rまで戦ったファーガソンについて、「強いことは分かっていた。(レフェリーストップは)彼にとっては死ぬ覚悟で来ているから残念だろう。僕も同じように死ぬ覚悟でここに来ている。オクタゴンにはそういう気持ちで来ているんだ。慈悲もない。でも、いい人間になるために、家族のために働き、社会奉仕もしている」と、コロナ禍で厳重注意のなか、タイトルマッチを終えた感想を語った。
「世界最高のコーチたちがいるから、拳が壊れても負けるわけにはいかなかった」と左の拳を見せて、「今日は殴り合いを楽しみ過ぎないようにした。世界最高の試合が出来たと思う」と語ったゲイジー。
最後に無観客の会場でマイクに向かって、「アメリカを代表して戦った。ロシアも強いけど、彼以外に戦う相手はいない」と正規王者ハビブ・ヌルマゴメドフとの対戦をアピール。
「こんな手でごめんね。神と両親に感謝したい。彼らが僕に見本を示してくれた、導いてくれたから今の僕がある」と感謝の言葉を述べた。
A heartbreaker for El Cucuy.
— UFC (@ufc) May 10, 2020
Give this man his well-deserved applause. 👏 #UFC249 pic.twitter.com/UFwfg7OvrC
続けて、延期に次ぐ延期のなか、前回は試合キャンセルになっても最後まで減量を敢行してリミットをクリアするなど凄みを見せたファーガソンは、ローガンから「すごい試合だった」と声をかけられ、「長い長いトレーニングキャンプだった。12月から準備してようやく実現した。途中はヌルマゴメドフ戦に向けた準備もあったけど、今回フィニッシュされたのは悔しいよ」とコメント。
12連勝でストップした今後については、「これからまた戻って勝利を重ねないとね。僕のチームはみんなタフだ。ジャスティン、試合をしてくれてありがとう。このスポーツがまた戻って来ることを願っている。家族のみんなありがとう」と、MMAの再興を願い、オクタゴンを後にした。