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インタビュー

【UFC】マネル・ケイプがポルトガル語で語ったこと(後篇)「RIZINで“なんだよ”Tシャツが3千枚完売」「堀口恭司戦後にATTに誘われたけど」「朝倉海との2試合は」「最高のファイトIQは、俺」

2026/01/10 17:01

「自分自身であれ」。明日負けても、誰も飯を食わせてはくれないから

──そんなことを言われるんですか?

「聞こえてきますよ。でもブラザー、私はこう言いたい。『お前こそ自分の国のために何をしたんだ?』と。『お前が私よりアンゴラ人だと言うなら、お前は国のために何をしたんだ?』と。『私はここにいて、国の旗を掲げている』。それなのに、引きずり下ろそうとするコメントや、腰抜け呼ばわりする声が聞こえる。ブラジルのファンがブラジル人選手を叩くのもよく見ます。私はそういうことに影響は受けません。全く気にしない。勝っても負けても私は私のままだし、稼ぐ額も変わらない。でも、私は“みんな”ではありません」

───はい。

「私はいつも、相手の立場に立って考えます。もっと繊細な選手もいます。私たち(ポルトガル語圏)は似た文化を共有していますが、多くの選手が自分自身でいられなくなっています。オーセンティックになれないんです。なぜなら、国民からの、自分たちの文化からのプレッシャー(要求)があるからです。“こんな振る舞いをしたら、生意気だと思われるんじゃないか”“謙虚じゃないと思われるんじゃないか”と。私たちの文化は宗教とも深く結びついていて『謙虚な人こそが良い人だ』『謙虚な人こそ報われるべきだ』と考えがちです。でも、もし“報われる(ふさわしい)”かどうかが基準なら、建設現場で汗水流して働いている人たちが数百万ドル稼いでいるはずでしょう。このスポーツは“ふさわしさ(メリット)”で決まるものではありません。これは“結果”と“何を提供できるか”の世界です。多くの選手が自分を出すのを怖がっているのを見かけます。テレビの外、格闘技の世界の外では強い個性を持っているのに、カメラの前では萎縮してしまう」

──世間の反応が怖いからだと?

「もちろんです。だから言ったように、みんなが私のように強いメンタルを持っているわけではないし、私生活とプロ生活を切り離せる教育を受けているわけでもありません。だからコメントを恐れ、“自分のイメージが悪くなるんじゃないか”と怯えて、結局“ニュートラル(無難)”な方を選んでしまう。口を閉ざし、自分を抑え、自分自身を構築できなくなっています。

 カメラの前で“謙虚なブラジル人”を演じている連中をたくさん見てきました。でも裏ではとんでもない“クソ野郎(Filha da puta)”だったりします。トレーナーを騙したり、友人を裏切ったり、練習仲間に金を払わなかったり。そういう場面を何度も見てきました。トレーナーだって謙虚なフリをしていることがありますが、実際は違います。みんな、そっち側に流されがちなんです。“こいつはスピリチュアルだ、神を信じている、神の名において勝つと言っている”……でも現実は違う。逆に、ネットで叩かれている選手こそが真面目だったりする。でもSNSでは『あいつは調子に乗っている』『生意気だ』『ボコボコにされればいい』と叩かれる。ジェアン・シウヴァの例もそうです」

──今、彼の名前を出そうと思っていました。

「ジェアン・シウヴァは連勝に次ぐ連勝をしていました。それなのに、人々は彼が負けるのを望んでいました。『今に見てろ、負けるぞ』って。……悲しいよ。いいえ、悲しいという言葉では足りない。そんな逆風の中で、どうやって家に帰り、自分に敵対している人々や国家を代表するメンタルを保てというんだ?『勝手にしろ』と言いたくなるのも当然です。だからみんな、本心を隠して政治的に振る舞うようになる。タブーを破るのを恐れているんです。ジェアン・シウヴァは素晴らしいファイターですよ。モンスターです。あんな次元の選手が自分の国にいるなら、ファンはもっと『行け、やってやれ!』と後押しすべきです。彼がもっと謙虚であるべきかどうか、そんなことは彼の勝手です。明日、彼が負けても、誰も彼に飯を食わせてはくれないんですから。私が言いたいのは、自分自身であれ、ということです。彼がキャラクターを演じているのかどうかは知りませんが、私たちは自分自身であるべきだし、ファンは応援すべきです」


(C)Zuffa LLC/UFC

──彼はディエゴ・ロペスと戦いました。性格は正反対の二人です。

「互いに嫌い合っていても、それは構わない。彼らには嫌い合う権利がある。ジェアンが挑発し、ディエゴが不快に思った。それでいい。友達である必要はない。オクタゴンの中で解決すればいい。それが彼らの仕事です。でもファンは……あんな素晴らしい試合、誰もが足を止めて見入ったはずです。私の意見を言わせてもらえば、ディエゴ・ロペスを初めて見た時、“こいつはクソ強いチャンピオンになるぞ”と思いました。UFCに入る前、テキサスでのFury FCの試合だったかな。私は思いました。“おい、このマナウスの柔術を使いこなす連中……こいつがUFCに行ったらチャンピオンになるぞ”と。私にはそれを見抜く目、予感があるんです。これは神から授かった才能だと思っています。ビジネスでも格闘技でも、5分話せば、その人のエネルギーが自分と合うか、その人が何者かを感じ取れるんです。ディエゴを初めて見た瞬間、“こいつはトップになる”と確信しました。今でもその考えは変わりませんが、あの試合、私はジェアンが彼を叩く(勝つ)と思っていました」

──ジェアンが勝つと?

「私の頭の中では、ジェアンが勝っていました。ただ、ジェアンは少し急ぎすぎました。不注意でした。全力で突っ込みすぎた。突っ込む時は、相手からも何かが返ってくるのを待たなければいけない。ディエゴ・ロペスは非常に賢かった。突っ込んでくるジェアンに合わせて、あのバックスピン(回転)エルボーを出した。非常にインテリジェントです。ジェアンは2Rで“もう自分のものだ”と感じたのでしょう。1Rは危なかったですが、打撃ではジェアンの攻撃が当たるたびに相手にダメージを与えていました。相手がいつ倒れるか、時間の問題でした。残念ながら、彼は焦りすぎてしまいました」

──二人は再戦すると思いますか?

「あり得るね。私は二人とも仲が良いですよ。でも、もちろん私の応援はジェアンでした。彼とは良い友人関係にあります。彼にはチャンピオンになってほしい」

──先ほどの「みんなが恐れている個性」の話に戻りますが、それがスポーツ全体を邪魔していると思いますか? 質問の意図を説明させてください。今、私たちは2026年1月にいます。動画プラットフォームは、格闘技のコアなファンではない層を取り込むために、映画やドラマのようなエンターテインメント要素を求めています。キャラクターが必要なんだと。喋りが立ち、注目を集める選手が。あなたの言う通り、選手がマイクを恐れて自分を抑えてしまうことは、自分の商品価値を下げるだけでなく、結果的にスポーツ全体にとっても良くないことに?

「もし、キャラクターを演じている、フェイクなら問題ですが、オーセンティックなら何の問題もありません。自分自身であるべきなんです。私が言いたいのもそこです。本物になれない人たちが、世間の目を気にして自分の商品を台無しにしている。アメリカ人のことは分かりませんが、私たちの文化圏の話です。良くも悪くも、ポルトガル、アンゴラ、ブラジルは共通点が多い。特にブラジルとアンゴラはね。正直に言いましょう。私は自国(アンゴラ)よりも、ポルトガルからより多くのポジティブなサポート、ポジティブなコメントを受け取ることが多いんです」

──そうなんですか。

「ポルトガルは本来、他人のものしか応援しない(他人の芝生は青い)ような国民性なんです。他国のものは良いと言うけれど、自国の選手には懐疑的だったりする。それでも彼らは応援してくれます。ただし、叩く時は徹底的に叩く。そのコメント欄の荒れ方は共通しています。ロシアを見てください。誰かがチャンピオンになればどう扱われるか。アメリカでオリンピックに勝てばどう扱われるか。ロシアでは国家が総力を挙げてサポートし、ファンは俺たちの誇りだと熱狂します。カザフスタン人と戦った時、私の写真のコメント欄には何千ものカザフ語の誹謗中傷が並びました。『お前は負ける』『死』『この黒人野郎』……」

──人種差別ですか。

「ええ、猿の絵文字を並べたりね。私は先ほども言ったように、そんなことで傷ついたりはしません。むしろ面白いとさえ思います」

──でも、それは度が過ぎていますよ。

「度が過ぎれば過ぎるほど、彼らはもっとやってやろうと思うんです。私がアスー(アルマバエフ)を倒した時、私はこれまでに3人のカザフスタン人と戦って3人とも倒したはずです。ある時、一人からメッセージが来ました。『インシャラー(神の御心のままに)、いつかカザフスタン人がお前を倒す』と。私はこう返しました。『インシャラー、だが今世(この人生)では無理だ』と。彼らのサポートは凄まじい。たとえ負けても『気にするな、次は勝てる』と励まします。選手がすがるような道徳的、心理的なサポートがある。


(C)Zuffa LLC/UFC

 対して、私たちの国の連中は叩くことしかしない。『疲れてやがる』『最初から分かってた』『もう辞めちまえ』。以前、誰かのページで、ある選手がUFCをリリースされたという投稿を見ました。あまりに悲しいコメントがありました。私は感情的になる方ではありませんが、そのコメントには胸が痛みました。『遅すぎた』というコメントです。『もっと早くクビにすべきだった』という意味です。『遅すぎた』だって? その選手には養うべき家族がいる。支払うべき請求書がある。格闘技が彼にできる唯一のことかもしれない。人間が他人の不幸(失業)を喜ぶなんて。もし自分が同じ立場でクビになったら、何て言うんですか?『上司はクソだ』『国が助けてくれない』と被害者面をするはずです。

 これは人々が想像するより複雑な問題です。誰かが職を失うのを拍手喝采して喜ぶなんて。その同じ人間がネットでは『イエス・キリスト、神が第一、神の祝福を』なんて書いている。プロフィール欄に聖書の一節を載せている。偽善者ですよ。他人の不幸を願いながら、聖書では『隣人を自分のように愛せ』と言っている。選手の解雇を祝うことが、自分が優れた人間である証明になるとでも思っているのか。UFCにいるからといって、みんなが大金を稼いでいるわけではありません。大多数はそうではない。大金を稼いだり、副業を持って資産管理ができているのは、ほんの、ほんの一握りです。それなのに人々はそれを嘲笑う。“クソ野郎”だよ」

──非常に鋭い観察です。

「選手には家族がいて、娘がいて、車のローンがあって、食べさせなきゃいけない子供がいる。今、このスポーツはUFCに独占されている。そこをクビになったら、一体どこで金を稼げばいい? ベアナックルにでも出るか? あそこはボロボロになる。ストリートで戦ってきた私でさえ、あんな場所には行きたくない。歯を折り、保険もなく、傷だらけになる。アメリカで暮らすのは金がかかるんです。ブラジルにいても同じです。私は時々、自分の国のファンが発するそんな蛮行を考えてしまいます。ブラジル人ファンを叩いているわけではありません。私の国でも同じようなひどいことを言う連中がいるんです。『あいつはアンゴラ人じゃない』『もう負けたんだから消えろ』『お前は絶対にチャンピオンになれない』。そんなコメントを見て、私は思うんです。『俺は一体、誰を代表して戦っているんだ?』と。

──ジェアン・シルバの名前が出ましたが、ディエゴ・ロペスの例も。「彼はメキシコ人だ、ブラジル人じゃない」なんて言う連中がいます。勘弁してくださいよ。彼はどこで生まれた? ブラジルですよ。家族はどこに住んでいる? ブラジルですよ。血は何だ?ブラジル、マナウスの血ですよ。

「今はメキシコ代表として戦っているからでしょう。現地に住んで市民権を持っている。両方を代表している」

──「メキシコ人だから」と叩くのは愚かです。彼はメキシコでより多くのサポートを得ているのかもしれない。メキシコ人は「お前はブラジル人だ、自分の国へ帰れ」なんて言わないでしょうから。

「ポルトガルで『黒人、自分の国へ帰れ』なんて言われたことは一度もありません。人それぞれ経験は違います。私は自分の経験がすべてだとは言いませんが、少なくとも私はポルトガルでそんな差別を受けたことはありません。ただ、私たちが被害者意識を持ちすぎると、そういう方向に流されてしまいます。だから、私はコメントなんて気にしません。私の人生は、感情的にも、経済的にも、友人関係も、精神的にも、非常に強固に確立されています。私は別のレベルにいます。どれほどネガティブなことを言われても、私を揺るがすことはできません。知ったことか。私は私のままだ」

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