▼フライ級 5分3R
〇堀口恭司(日本)34勝5敗(UFC8勝1敗)※UFC復帰・元RIZINフライ級王者
[3R 2分18秒 リアネイキドチョーク]
×タギル・ウランベコフ(ロシア)17勝3敗(UFC6勝2敗)※UFC4連勝でストップ
当初、両者は25年6月のUFCアゼルバイジャン大会で対戦することが決まっていたが、堀口が練習中の怪我により欠場。ウランベコフは代役のアザト・マクスム(カザフスタン)に接戦の末に判定勝ちしている。
ドーハ入りした堀口は「慣れてるんで、別にどこで試合やろうがもう関係ないですよね。しかもこっち、めっちゃ気候いいんですよ。暖かい」とリラックスした表情。今回のセコンドにはいつものマイク・ブラウンに加え、「別の試合で来ているパルンパも多分セコンドについてくれます」と、ATTでは通常ブラウンと2班体勢で動く柔術コーチのマルコス・パルンピーニャもコーナーに入ると明かした。
現在、ATTには堀口恭司、中村倫也、元谷友貴、牛久絢太郎、金太郎らに加え、野村駿太が「所属選手」として加わった。大晦日には5度のライト級王座を防衛中の“絶対王者”ホベルト・サトシ・ソウザに挑戦する野村は10月末までATTに滞在し、堀口と練習。野村にとって「サトシに勝つためにやるべきことが明確になった」というファイトキャンプだったが、堀口にとっても米国で空手の打ち込みが出来る貴重なトレーニングパートナーになったようだ。
「やっぱり自分にとってもすごい良かったですね。本当だったら、もうちょっと直前まで(打ち込みを)やりたかったですけど。(野村がRIZIN会見など)いろいろ予定が入って帰国して。やっぱり空手家同士がやらないと多分できないことなので」と、これまでにない調整も行えたという。
そして、今回は米国からコディ・ダーデンも帯同。2年前にウランベコフと対戦しているダーデンと対策練習も練ってきた。ウランベコフの長いリーチと懐の深さに、いかに突きと蹴り、近い距離ではボクシングの打撃で飛び込むか。そして「レスリングが強い」と言われるウランベコフだが、むしろ組みでは上の組みが脅威で、ダーデン戦では、ウランベコフは四つから小外がけでダーデンを投げてトップを奪っている。そしてクレイトン・カーペンター戦でも見せたやぐら投げ、バックコントロールも。
「身長でかいんで。170cmって言っていますけど、あいつもっとデカいですよね、たぶん。嘘付いてますよ(笑)。ボディロックしたあれ(やぐら投げ)が得意ですよね。でも、逆に言えばあれくらいしかない。タックルを仕掛けるときは、結構みんなに切られているっていう。だけど、腕を巻かれたら本当にやり辛い。巻かせないように」と、上の組みで簡単にクラッチを巻かせないようにしたいとした。
その局面毎に、コーチと研究してきたという堀口。ATTには“答え”があるというが、それは各選手のスタイルによって最適解が複数パターン用意されている。
「答えはあるし、人にもよります。二択三択ぐらいあって合う形で使う。ウランベコフ戦でもプランはできていますけど、やっぱり試合なんで、相手も取りにくるなかうまく対応しないといけない」という。
紆余曲折を経て、9年ぶりにオクタゴンに復帰する。
「自分を受け入れてくれた部分に関しては本当にUFCや周囲に感謝しかないです。だから、その感謝をやっぱりケージの中で見せたい。しっかり勝たないといけない試合だなって。相手は上位5番以内に入る実力があると思う。ここを落とせば上に行けることもないのかなと思ってますね」と気を引き締める。
堀口の変化と同様に、ダヘスタンのウランベコフにも変化がある。
「ウランベコフは打撃がどんどん増えてきてる。でも立ち合ってくれたら嬉しいですよね。自分にはやりやすいんで。どんどん寝かせてくるだろうけど──まあどっちにしろ、自分が倒すんで問題ない」と語った堀口恭司。カタールから、再び、UFC王座への第一歩を踏み出す。
堀口は、2010年にプロデビューして以来、KO・TKO勝ち15回、一本勝ち5回を挙げている日本有数のMMAアスリートの一人。
修斗で世界王者に輝いた後、2013年10月にUFCデビューすると4連勝で当時の王者デメトリアス・ジョンソンと対戦。5R残り1分で腕十字で敗れ、UFCフライ級王座戴冠ならず。しかしその後も3連勝。2016年11月にアリ・バガウティノフに判定勝ち後、当時のUFCフライ級戦線縮小に伴い、オクタゴンを離れ、2017年4月からRIZINに参戦していた。
この間、20試合を戦い、RIZINとBellatorでバンタム級王座を戴冠。現在5連勝中で、24年大晦日の前戦でエンカジムーロ・ズールーに判定勝ちで王座防衛後、RIZINフライ級のベルトを返上。今回、11カ月ぶりの試合で9年ぶりのオクタゴンカムバックとなる。
対するウランベコフはMMA戦績17勝2敗、UFC6勝1敗の強豪。元UFC世界ライト級王者のハビブ・ヌルマゴメドフに師事し、一本勝ち8回を記録しているダゲスタンレスリングのエースで、イーグルスMMA/AKAで練習。2020年10月にUFCに初参戦するとブルーノ・シウバに判定勝ち。22年11月にネイト・マネスをギロチンチョークで下すと、23年12月にコーディ・ダーデンにもリアネイキドチョークで一本勝ち。25年1月にキャリア8戦全勝だったクレイトン・カーペンターに判定勝ち、そして前述の通り、6月にマクスムに判定勝ちで現在、UFC4連勝中。
UFC唯一の黒星の相手は、朝倉海に一本勝ちしたティム・エリオット。22年3月にエリオットと対戦したウランベコフは、初回にエリオットの左オーバーハンドでダウンを喫し、テイクダウンも奪われ判定負け。
また、堀口負傷により対戦相手変更となった6月のアゼルバイジャン大会でウランベコフはマクマンのテイクダウンディフェンスに手を焼き、打撃で上回るも最終回には逆にテイクダウンを奪われるなど苦戦。復帰2戦のデータを得たことで、ATT堀口陣営はどんなプランで臨むか。
本誌の取材でもUFCランカーを語っていた堀口は、ウランベコフを「俺的にはベスト10に全然入っていて、もしかしたら5位以内の実力なんじゃないかなと思っています。身長高くて打撃も寝技もできる。グラップリングが強い」と高く評価。自身のYouTubeでは「怪我は全然ないんで、全然大丈夫。ここでしっかり勝って、ベルトを獲れるように突っ走る。『復帰戦は大事』と言われますが、全部の試合が絶対に落とせないので、同じ気持ちでしっかり勝ちに行こうと思っています」と意気込みを語っている。
ウランベコフは、身長170cmでリーチ178cm、幼少時からレスリングを学び、2014年の世界コンバットサンボ選手権57kg級で優勝。オーソから懐の深い打撃と四つ組みからの強いテイクダウンを武器に、ギロチンチョークなど9つの一本勝ちを誇る。フライ級ランカー内で対戦を嫌がられる選手の一人で、近年MMAグラップリングの比率を増やしている堀口にとって、その力を見せる試合になりそうだ。
堀口の目標は、アジア人初のUFC世界王座獲得。その頂に現在立っているのは、アレッシャンドレ・パントージャで、12月6日(日本時間7日)の『UFC 323: Dvalishvili vs. Yan 2』でジョシュア・ヴァンを挑戦者に迎え、5R戦を戦うことが決定している。堀口はそのパントージャとの同門対決の可能性について、本誌の取材に「チャンピオンとすごい仲いいんですけど、『お前、俺が行ったらブッ飛ばすから』なんて、すごい言ってます。で(パントージャも)『いいよ。いつでも来い』みたいな感じで」と、勝ち進んでいった場合の同門対決が、ATT内で織り込み済みであることを語っていた。その再出発の第一歩が、堀口にとってはアウェイのドーハで刻まれることになる。
現在、UFCフライ級には、堀口を含め3人の日本人選手が名を連ねており、5位の平良達郎(THE BLACKBELT JAPAN)が12月7日に2位のブランドン・モレノ(メキシコ)と対戦。UFC1勝1敗の鶴屋怜(THE BLACKBELT JAPAN)は8月の試合を負傷欠場し、3月のジョシュア・ヴァン戦以来の再起を目指している(※2連敗の朝倉海はバンタム級転向を表明)。
同階級には、元RIZINのマネル・ケイプ(6位 ※12月13日にブランドン・ロイヴァルと対戦)がランキング入りしており、堀口恭司の加入により、さらにフライ級戦線が激化することは間違いない。
#UFCQatar Official Result: Kyoji Horiguchi (@kyoji1012)
— UFC News (@UFCNews) November 22, 2025
defeats Tagir Ulanbekov via Submission at 2:18 of Round 3.
Complete Main Card Results ➡️ https://t.co/2jSOJlZypU pic.twitter.com/1gxWrJOmch
『My Time』で入場の堀口のコーナーマンは、ブラウンにパルンピーニャ、ダーデン。
1R、ともにオーソドックス構え。中央を取るウランベコフに右カーフは堀口。左右に大きくサークリングの堀口。踏み込んで右をボディに。さらに右カーフ。ウランベコフも右の蹴りも遠い。堀口は右関節蹴り、ワンツーで飛び込む。圧力をかけるウランベコフ。
ヒザをかすめるウランベコフに、その蹴り足を取る堀口が崩して離れる。詰めて組むウランベコフを突き放す堀口。右で差して組んで押し込むウランベコフ。左小手の堀口にやぐら投げのウランベコフ。投げるがバックを譲らず立つ堀口に尻を着かせるウランベコフ。左小手巻き立つ堀口。離れる堀口!
右カーフの堀口。さらに右カーフ! 左に回る。堀口は右目を赤くさせる。右を当てて左フックの堀口も前に出るウランベコフ。ホーン。組まれたが攻めさせなかった堀口。拮抗したラウンド。
2R、右フック、前手の直突きを当てて、右カーフで崩した堀口に、ウランベコフが引き込み気味に下に! 左足でパスする堀口に、ギロチンチョークを狙うウランベコフだが、首抜く堀口。ウランベコフの立ちにがぶりからバックでサイドバックでパウンド。ケージまで這うウランベコフ。放し際に堀口は右を突く。
右カーフを嫌うウランベコフは前足を変えてスイッチ。右前蹴り。堀口は右カーフをヒット! 効かせた堀口は左ハイも。ウランベコフは組みに行くが、切る堀口は左を振って、ウランベコフの組みを切ってトップに。ケージに押し込み、シングルレッグのウランベコフにパウンド。ホーンにウランベコフは立ち上がれず。コーナーマンの肩を借りる。
3R、コーナーから強く鼓舞されるウランベコフ。右インカーフを当てた堀口は、左フック! ダウンしたウランベコフが左で差して立とうとするところを潰してマウントでパウンド、立ち上がりに行くウランベコフを潰してケージまで詰めると、ウランベコフは左目尻から出血。
座るウランベコフを潰してボディにヒザ。立ち上がるウランベコフに離れた堀口は右ハイ! さらに右の突き! ダウンしたウランベコフのバックを奪いリアネイキドチョーク! 両足もかけて絞めると、「He is out(彼は落ちた)」とコール。レフェリーが力の抜けたウランベコフの右手を確認し、間に入った。23年大晦日、神龍誠戦以来の一本勝ち。
堀口恭司 @kyoji1012 9年ぶりのUFCで進化した強さを発揮👏
— UFC Japan (@ufc_jp) November 22, 2025
👊 #UFCQatar
📺 @UNEXT_fight & #UFCFightPass pic.twitter.com/iHgAvKZ2Ij
試合後、堀口は「ほんとうにいい気分だよ。UFCにカムバックできたから、これが俺の夢だった。次? もちろん俺はUFCのベルトを狙う。どこだ? パントージャ! 彼は俺のチームメイトだ。でも関係ない、お前のケツを叩き潰すぜ。オーッ!
(チームメイト同士が対戦したいと思うのは非常に珍しいことだが?)もちろんパントージャをリスペクトしている。ただベルトが欲しいだけだ。気にしないよ、分かってるだろ。試合は試合、ビジネスなんだ」と咆哮すると、パントージャのコーチであるパルンピーニャは堀口を笑顔でこづいてみせた。大会後には、パフォーマンス・オブ・ザ・ナイトの5万ドル(約785万円)を獲得している。
Already got his eyes on his next opponent 👀
— UFC (@ufc) November 22, 2025
[ #UFCQatar | @Kyoji1012 ] pic.twitter.com/2HQnwr8BmC
LONGEST ACTIVE @UFC WIN STREAKS - Flyweight
— UFC News (@UFCNews) November 22, 2025
8 - Alexandre Pantoja
5 - Joshua Van
4 - Kyoji Horiguchi (@Kyoji1012) 👊
4 - Andre Lima
*includes wins from previous UFC stint
Complete #UFCQatar Main Card Results ➡️ https://t.co/2jSOJlZypU pic.twitter.com/VwItpp18qy









