(C)GONG KAKUTOGI/RIZIN FF
2025年9月28日(日)愛知・IGアリーナにて『RIZIN.51』が開催され、フライ級ではGP準決勝2試合とリザーブマッチが行われた。
元谷友貴が神龍誠に、扇久保博正がアリベク・ガジャマトフにそれぞれ判定勝ちし、「扇久保vs.元谷」が大晦日決勝に決まるなか、第10試合では、リザーブマッチとして、山本アーセン(KRAZY BEE/NAUGHTY HOUSE)と伊藤裕樹(ネックス)が対戦した。
伊藤は、1回戦で南アフリカ王者のエンカジムーロ・ズールーに判定勝ちしながらも、「総選挙」で落選。今回補欠戦として2023年5月に判定負けしているアーセンとの試合がマッチアップされた。そのアーセンは1回戦で神龍誠のギロチンチョークで一本負けしていた。
試合は、打撃に活路を見出したい伊藤に、アーセンがレスリング勝負。伊藤もスクランブルで切り返す場面を見せるも、最後にコントロールするアーセンはクラッチを組み続けて、判定3-0で勝利。
試合後は、1回戦敗退からのリザーバー復活での奇跡の優勝に意欲を示したが、榊原CEOは「少し考えたい」と留保をつけている。
2年4カ月ぶりの再戦で前回同様に伊藤を封じ込めたアーセンと、1回戦の勝者でありながら、GPから脱落した伊藤との試合後の一問一答全文は以下の通りだ。
山本アーセン「最後までずっと倒そうとしてた自分がいたんで、まだ気持ちは折れてなかった」
──山本アーセン選手の試合後インタビューを始めたいと思います。
「(おもむろにタッパーからクッキーを取り出し口に入れて)お願いします(笑)」
──伊藤選手との試合を終えた、率直な感想をお聞かせください。
「まあ……すみません、ちょっと待ってください(クッキーを飲み込む)。打撃でも自分の仲間とやってた景色だったり、やらないといけないことが見えてたんスけど、ちょっと安牌を狙いすぎたっていうのもあったし、グラウンドでももっとアグレッシブに一本狙いに行ける内容にできたはずだったんですけど、そこもちょっと安牌を取ってしまって。まあ、自分の中でダメダメだったんですけど、でも今回の試合は『悔いのないように出し切る』っていうテーマはギリギリ、クリアできたのかなって思ってて。前回試合、負けて“ああ、俺ここまでか”って思って。でも伊藤裕樹君と名古屋でできるっていうお話をもらった時に、“あ、これは神様からもらったチャンスで、これで俺が試合で出し切れなかったら、もう格闘家・山本アーセンはもうないな”って思ってた試合だったんですよ。
でも、3Rまでずっと攻め続けたって言っていいのかわかんないけどまあ、自分を出し切った試合だったんで。これからもダメなところは埋めて、いいところは伸ばして、次はちゃんとね、フィニッシュをできる試合だったり、もっとお客さんが喜ぶようなワクワクするような試合をやっていきたいですね。ちょっと自分の中ではつまんない、俺がお客さんだったら、見ててつまんねえなと思う試合だったんで。次はちゃんと、RIZINに呼んでいただける選手として、もっと面白い試合して、自分がやってても納得いくような試合をできるように、また仲間とイチから作り直して帰ってきます。応援ありがとうございました」
──再戦となった伊藤選手との試合の印象を教えてください。
「伊藤裕樹君の印象というか伊藤裕樹君とやる時って、なんかいつも自分の人生の中で落ちてる時だったり、這い上がるその瞬間だったり、自分の人生の中で超大事な瞬間にいつも裕樹が現れて、戦うってことなんだけど、俺からしたら、いつも手を差し伸べて、俺を救ってくれるような存在であって。プライベートでも普通に俺は仲間だと思ってるような奴なんで、今回も自分が“あっ、試されてる”っていう時に裕樹が相手だったから、印象は特に、自分しか見てないんでアレなんですけど、でもやっぱこうやって大事な時に裕樹って現れてくるんだなって改めて思ったすね(エナジードリンクを飲んで)うまっ」
──試合を終えたばかりですが、今後の展望・目標を教えてください。
「リバーブマッチって言われてたんですけど、まあ自分、本当それ考えてなくて。ただ単に裕樹と戦って、全力出してブッ飛ばすしか頭になかったから、とりあえず今回勝って、俺がリザーブってことですか?」
──そのあたりはちょっとまた社内で確認します。
「よくわかんないですよね。とりあえず、今、自分の我儘に付き合ってくれた体に飴を入れて、で、また仲間たちと練習再開して、もっと強くなって帰ってきます」
──昨日確認したところでは、勝者が決勝のリザーバーということでした(※大会前日時点の情報)。
「本当でいいとこばっか取っちゃうんですよね。そういう星のもとに生まれてるんですね」
──そうなるといずれかの決勝進出者が欠場する場合は、優勝を賭けて戦うことになります。
「かっこいいよね、俺ね」
──ところで今回、ずっとクラッチを組んで掴んでいました。あれは最後まで持つ自信がありましたか。
「それがテストだったんですよ、自分の中で。あそこでちょっとでも諦めて、打撃でまとめられてたら、俺にもう格闘家としての心はないなって思ってたんで。まあ、最後までね、ずっと倒そうとしてた自分がいたんで、まだ気持ちは折れてなかったです。大丈夫です」
──途中ギロチンチョークが来ましたが、躊躇なくダブルレッグテイクダウンしました。
「来ればいいと思ってたんで。チームメイトの(中野)剛貴に散々かけられたので、もうそこは大丈夫でした。『頭上げろ!』っていうの、めっちゃ聞こえてたし、後輩に説教されてました、試合中」
──テイクダウンして首を抱えている展開が多かったと思いますが、理想としてはその後どういうフィニッシュを考えていましたか。
「バックチョークですね」
──あそこからバックに回りたかったということですね。
「回りたかったんですけどちょっと体が言うこときかなかったですね。だからあそこ練習とかだったらすぐボンボン出るんですけど、やっぱちゃんと練習でやってることをしっかり試合で出せる選手になります。頑張ります」
──今日の躍動する試合見ると、これをなぜ神龍戦で出せなかったのか? という疑問もわきますが、ご自身として思うところはありますか?
「なんですかね。うーん。まあしっかり(ギロチンが)入ってしまったっていうのが、アレだったんですよね。抜けなかったですね、あの時は。外そうと思ってた自分の手が動脈を押していて“ああっ”と手を抜いたらもう絞めの力が強くてそのまま一気に極められたって感じですね。あの時ちゃんとテイクダウンして頭をすぐ中に入れてたら、あれはなかったんですけどね。自分の悪い癖が出ちゃって、それを掬われたって感じですね」
──アーセン選手に勝った神龍誠選手も今日は負けてしまいました。
「そうですね。自分はドクターチェックに入って縫ってもらっていたので、試合内容は見てなかったんですけど、でも(元谷)友貴兄ぃがフルマークで勝っていたので“スゲえな”と思って。しかも今回、減量もすげえ辛い状況からクリアして、その状況からフルマークで勝ってるから、いや、やっぱすげえなって思ったのと、若手、俺らもっと頑張んないとなって思ったっスよね。止めちゃってるから。神龍君含め、俺含め。もっとね、上の先輩たちが安心して預けられる時代を作っていかないとダメだなって、ちょっと思わされましたね」
──伊藤選手に先ほどこの会見場で、3度目のアーセン戦があるとしたら勝つためには何が必要か、とお伺いしたところ、「アーセン選手のところへ出稽古に行こうかな」と。
「ああ、いいと思う。いいと思うけど。もうそしたら3回目やんないからね、俺。もういいから『もうKRAZY BEEになれ』って言うよ、それだったら」
──受け入れますか。
「うん、もちろんですよ。だってあの仲間ですかららもう。1回目の試合終わってから普通にインスタでも話したりするし。うん、仲間だと思ってるけど、やっぱリング上ではそんなのはないから。でも、試合終わったら仲間だから」
──来た時から召し上がっているそれは何ですか?
「これは妹が作ってくれたクッキーです。毎回試合終わると絶対妹がクッキー作ってくれるんですよ。カロリーやばいんですけど、これを勝って食うのが一番美味しいんですけど、前回負けて食ったのがちょっとあんま美味しくなかったんで、今回勝って食えるのが超嬉しいです」
──特別な何かが入ってたりするんですか?
「愛です(笑)。ありがとうございました」
──(以下、英語での質疑応答)今日のような状況をクレイジーな人生だと実感しますか?
「MMAファイターとしての人生で?」
──前戦で負けて今こうしている結果についてです。
「アップアンダウンって感じだよ。そりゃいつもトップでいたいけど、でもなんて言うか神様が成長するために良いものをくれたみたいだから、この人生を愛している。チーム全員に恵まれて成長して。この状況、全てが。マジでラッキーだよ」
──このプロセス全体であなたの家族は、特にモチベーションの面で、大きな役割を果たしていると思う?
「もちろん、チームなしでは、勝つこともできず、ここにいることもなかった。RIZINなしでも、君たちなしでは、俺はここにはいないんだ。すべてが俺のモチベーションだから。本当に愛してるよ。だから俺は行く」
──最後の質問です。少し休みたいですか? それともここからの2大会を楽しみにしていますか。
「くそ、行こうぜ。やるぜ。自分もチームもやる気だよ。ただ、1週間だけクソみたいな生活させてくれ(笑)、そしたら戻ってくる。1週間だけジャンキー生活だ。OK、その次の週からは完全にクリーンにならなきゃ」












