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17戦無敗──170cmの前フェザー級王者“エル・マタドール”が、178cmの元ライト級王者を1R 2分27秒、KOに下し、二階級制覇を成し遂げた。それがイリア・トプリアvs.チャールズ・オリベイラのメインイベントだった。
2025年6月28日(日本時間29日)米国ネヴァダ州ラスベガスのT-モバイル・アリーナで開催された『UFC 317: Topuria vs. Oliveira』(U-NEXT配信)。
メインカードのフライ級で「パントージャvs.カラフランス」「ロイヴァルvs.ヴァン」の2試合で沸き上がるなか、トリを飾ったのは「UFC世界ライト級王座決定戦」(5分5R)。前ライト級王者のイスラム・マハチェフが王座を返上したため、空位となった王座の決定戦が行われた。
ここまで16戦無敗のイリア・トプリア(ジョージア/スペイン)は、レスリングベース。1997年にドイツで生まれ、7歳で両親の故郷であるジョージアに移住し、8歳の時にグレコローマンレスリングを始めた。15歳でスペインに移住。2015年、18歳でプロMMAデビューを果たすと、2018年にはジョージア人として初めてブラジリアン柔術の黒帯を取得している。
20年10月にUFCデビューし、24年2月の『UFC298』でアレクサンダー・ヴォルカノフスキーを2R KOに下してフェザー級新王者に。同年10月にはマックス・ホロウェイも3R KO、初防衛に成功した。16戦無敗で14フィニッシュ(6KO・8一本)の無敵の王者は、25年2月にフェザー級王座を返上し、ライト級転向を表明した。そしていきなりの「王座決定戦」で二階級制覇を目論む。MMAグラップラーからMMAボクサーへと進化を遂げた。28歳。
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— UFC (@ufc) June 29, 2025
対するチャールズ・オリベイラ(ブラジル)は、ファヴェーラで生まれ育ち、社会的プログラムの一環として無料のクラスを開講していた道場で習得したブラジリアン柔術を武器に、UFC最多フィニッシュ勝利(20勝)、最多一本勝ち(16勝)を誇るMMAグラップラー。2022年10月にイスラム・マハチェフに一本負けで約4年10カ月ぶりの黒星。23年6月にベニール・ダリウシュに1R TKO勝ちで再起後、マハチェフとのリマッチが組まれたが練負傷欠場。24年4月にアルマン・ツァルキャンと接戦の末にスプリット判定負け。24年11月にはマイケル・チャンドラーと再戦し、判定勝ちで再起を遂げている。類まれな極め力を誇るスタイルから、オリベイラもトプリア同様に打撃を向上させてきたが、被弾も少なくない。35歳。
▼UFC世界ライト級王座決定戦 5分5R
〇イリア・トプリア(ジョージア/スペイン)前フェザー級王者 17勝0敗(UFC9勝0敗)
[1R 2分27秒 TKO] ※右ストレート→左フック→パウンド
×チャールズ・オリベイラ(ブラジル)ライト級2位 35勝11敗1NC(UFC23勝11敗1NC)
※トプリアがライト級新王者に。フェザー級と二階級制覇
試合は、開始から近い距離で立ち会った両者。右カーフ、前蹴りのオリベイラ。体格差はあるが、トプリアは安定した下半身から精度の高い左ジャブ、右ストレートのワンツーで入る。
オリベイラはダブルレッグから両脇を差すが、トプリアは右小手で絞り、左手を差し込んで四つに。背中でクラッチしているオリベイラは小外を合わせて投げるが、左で差しているトプリアが上で着地。階級をライトに上げた(2022年以来)トプリアが際を制している。
ここでオリベイラにポジションを譲らなかったトプリアはインサイドガードに。オリベイラはクローズドガードから左手を後方に送って三角絞めを狙ったか、右足を前に出すが、ここでその足を流してパスガードしたトプリア! 右で脇差し、オリベイラの右手を左ヒザで押さえつけてクルスフィックスに。寝技巧者のオリベイラ相手にグラップリングの強さを見せている。
右手を外したオリベイラは下から外掛けでストレートフットロック、外ヒール狙いで崩すと、トプリアはヒザを抜いてから、オリベイラの出血を見て右のパウンドで足を抜く。ブレークからスタンドに。
2階級制覇🏆️🏆️
— UFC Japan (@ufc_jp) June 29, 2025
イリア・トプリア🌹
フェザー級👉️ライト級🆕#UFC317 pic.twitter.com/9F0IWVsfin
オリベイラの右カーフにカウンターの左ジャブを突くトプリアは、左から右オーバーハンド。サイズを活かして組んで首相撲を狙うオリベイラに突き飛ばされるが、戻してジャブを突くと、オリベイラも右アッパーをヒット。トプリアは左ボディジャブから顔面に左ジャブと上下に打ち分け。
オリベイラが繰り出した右手を左手でパーリングして上から押さえるように左フックで押さえて、カウンターのボラート気味の右フックを効かせて左フックの返しも崩れるオリベイラの首に打ち込みマットに沈めた。
スタンドでの強い軸。テイクダウンの際でトップを奪うバランス、寝技師のオリベイラを難なくパスし、下からの極めにもベースを作ってパウンドを打ち込んだトプリア。スタンドでは蹴りの間合いにさぜずに、リーチ差を埋めるパンチ勝負を、上下、さらに左右の振り子でもブレずに的確にカウンターを当てた。
まさしく本人が言う「次のレベルにいる」ことを証明してみせた二階級制覇王者。
👑👑イリア・トプリア👑👑
— U-NEXT 格闘技 公式 (@UNEXT_fight) June 29, 2025
1R KO勝利で二階級制覇、達成🌹
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💬|自分に自信を持てるだけの練習を積み重ねてきた
💬|チャールズのような人はどうしたって嫌いようがないから対戦相手になると大変。立派な生き方を体現しているような人。それでも自分の仕事はしないと。… pic.twitter.com/F5g8KphwPk
試合後の会見と公式インタビューでは、試合前のファイトキャンプ終了後に、まるでかつての木村政彦のように試合前にもかかわらず「優勝おめでとう」と祝勝会を行っていたことを明かしている。強者に通じる、そのメンタルの理由とは──。






