UFCフライ級が覚醒した日──世界のメディアは、一時は消滅の危機にあったフライ級が、この日の「パントージャvs.カラフランス」「ロイヴァルvs.ヴァン」の2試合により、一気に爆発したと報じた。同級の日本の平良達郎、堀口恭司、朝倉海、鶴屋怜の試合も控えるなか、『UFC 317』のフライ級2試合の試合後のコメントを紹介していきたい。
2025年6月28日(日本時間29日朝8時~)米国ネヴァダ州ラスベガスのT-モバイル・アリーナにて『UFC 317: Topuria vs. Oliveira』(U-NEXT配信)が開催された。
コメインのUFC世界フライ級王座戦アレシャンドレ・ パントージャvs.カイ・カラ・フランスの直前には、フライ級1位のブランドン・ ロイヴァル(米国)と同級12位のジョシュア・ヴァン(ミャンマー)が対戦。6位のマネル・ケイプの負傷欠場により、UFC4連勝中のヴァンが前戦から3週間間隔の試合の緊急オファーを受けて、格上にチャレンジする3R戦だった。
ヴァンは、ミャンマーのハカで生まれ、母国の情勢悪化を受けて、10歳の時にマレーシアへ移住。難民キャンプを経て、3年後に米国テキサス州ヒューストンへ移り住み、19歳で米国で初めて格闘技に取り組んだ。2020年からアマチュアMMAに参戦し、21年10月にプロMMAデビュー。22年12月にFury FCで王者となると、23年6月にUFCに初参戦し3連勝も、24年7月にチャールズ・ジョンソンに3R TKO負け。その後、25年6月7日の前戦ブルーノ・シウバ戦まで4連勝をマークしている。UFC7勝1敗(2KO・5判定)。
フライ級では鶴屋怜に次ぐ2番目の若さの23歳で、3月の『UFC313』では、欠場したシウバの代役参戦の鶴屋のテイクダウンを凌いで打撃を入れ、鶴屋にキャリア初黒星を与えている。1分平均の打撃のヒット数はUFC史上1位。
ロイヴァルは、23年12月に王者パントージャに判定負けで戴冠ならず。24年2月に2位のブランドン・モレノにスプリット判定で勝利すると、24年12月の前戦でも5位の平良達郎と死闘の末にスプリット判定勝ちで2連勝中。王座戦から3試合を5R戦い抜いている。今回はマネル・ケイプの負傷欠場により、危険なストライカー、ヴァンの挑戦を受けることとなった。
MMAファイターとしての総合力に加え、17勝中13のフィニュシュ力(4KO・TKO、9SUB)を持つロイバル。長身サウスポーで懐も深く蹴りも打てて、柔術黒帯のグラウンドでは、スクランブル巧者でもあり、引き出しの多さを誇る。32歳。
▼フライ級 5分3R ※選手名からインタビュー〇ジョシュア・ヴァン(ミャンマー)14位 15勝2敗(UFC8勝1敗)※UFC5連勝[判定3-0] ※29-28×2, 30-27×ブランドン・ロイヴァル(米国)1位 17勝8敗(UFC7勝4敗)※マネル・ケイプ(ポルトガル)6位は負傷欠場
試合は、フライ級の歴史に残る打撃戦となった。
長身サウスポーのロイヴァルの右ジャブ、左ストレート、左の蹴りやヒザに対し、ヴァンは、対サウスポーの定石である外足を取ることをせず、ロイヴァルの右前足の内側に左前足を置き、初回から得意の右ストレートを当ててロイヴァルに尻もちを着かせると、ロイヴァルの左を被弾しながらも、自身の打撃を信じて3Rにもその立ち位置ならではの関節蹴りを効かせて残り10秒で右を当ててダウンを奪いパウンド。トップのままホーンを聞いた。
その打撃は、ヴァンが204、ロイヴァルが215と、双方が200発以上の有効打を記録するUFC史上初の試合に。判定は3-0(29-28×2, 30-27)でヴァンが勝利。
1位を下したヴァンはケージの中で、「僕の右の親指が完全に壊れているんだ。(骨折した足で戦ったようには見えなかったが?)俺たちはロイヴァルがタフな奴だと知ってる。俺たちはここに戦争をするために来たんだ。終わらせたかったけど、3R目でほぼ決着がつきかけただろ。俺たちは常にトップを狙っている。世界に見せる時が来た。ファイト・オブ・ザ・ナイトだろ? ダナ、今夜の勝者(パントージャvs.カラ・フランス)とフェイスオフさせてくれ」と語り、王座戦をアピールした。
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アジア人初のUFC男子世界王者になる
その後のU-NEXTのインタビューでは、「外足を取らなかったのはなぜか」という本誌の質問に、「俺の戦略は、内側に入って自分の距離で戦うことだった」と答え、右の三日月蹴りも当てながらも、「バックステップしたとき、骨が変に動いてる感じがして、“くそっ”って思ったよ」と、前戦で痛めていた親指が定まらないなか、右の蹴り、奥足で踏み込んでいたことを明かした。
コメイン後、カラ・フランスにリアネイキドチョークで一本勝ちしたパントージャとは、ケージインしてフェイスオフをかわした。「彼は素晴らしいチャンピオンだけど、ジョシュア・ヴァンとは戦っていない」と、これまでの挑戦者とは違う、とアピールしたが、バックステージでも来るべき王座戦に向け、「他の選手とは全く違う試合をしてみせる、みんな近いうちにそれが分かる。俺が何を見せるか、その目で見てくれ」と自信をのぞかせた。
また、試合後会見には、ミャンマーの国旗を背にまとい登場。「僕が数年前にMMAをやっているのを見て、ミャンマーやビルマ人がこのレベルに達するなんて誰も思ってもいなかっただろう。でも、いま僕の試合を見て、多くの新世代がジムに行くように連絡をくれている。子供だけでなく親たちにも多くの目を覚まさせた。だから、本当に本当に、幸せだ」と、語った。
現在、UFC世界王者でアジア人は女子ストロー級のジャン・ウェイリー(中国)のみ。まだ男子ではアジアから世界王者は生まれていない。朝倉海(31歳)がパントージャとのタイトルマッチで敗れ、ここまでもっとも王座に近いのはフライ級5位の平良達郎(25歳)と、バンタム級5位のソン・ヤドン(27歳)だったが、今回の試合で、1位を倒したヴァンが次の挑戦者に決定。ミャンマー初、アジア初のUFC男子世界王者誕生の期待がかかる。
試合前の本誌のインタビューにヴァンは「アジア人初の男子王者になる。それを今、一番目指してる」と明言。そして、U-NEXTのインタビューでは、「日本のみんな、本当に応援ありがとう。アジア人同士だから俺たちは“兄弟”だよね。俺もアジアの文化のためにやってる。応援と愛に心から感謝してる!」と結んでいる。なお、試合後ヴァンはフライ級1位にランキング。12位からごぼう抜きでトップコンテンダーとなっている。
また、ダナ・ホワイト代表はヴァンとロイヴァルの試合について「トラック(制作チーム、私、マッチメイカーの間でメッセージが飛び交っていた。3R目に突入する時点で、彼らはすでに歴代トップ10の重要な打撃を記録していた。最終的に歴代3位にランクインし、階級記録を破った。彼らは今夜(金銭的に)成功するだろうし、それは当然の報酬だ」と、激闘を称えた。
続けて、「ランキング12位の選手が、急なオファーで世界ランキング1位の選手と対戦したことは印象的だった。その選手は記者会見で『このスポーツで最も軽視されている選手だ』と語り、勝利に強く意欲を示していた。タイトル挑戦権を得られることを知っていたからこそ、今夜は勝利を目指してきた。その若者は正しいことを全てやった。今夜、彼は急なオファーでチャンスを得た。そして、完全に結果を出した」とヴァンを高く評価した。
また、ヴァンがUFC世界フライ級王者アレッシャンドレ・パントージャの次期挑戦者に決定したことについては、「彼はナンバーワンコンテンダーで、勝者がタイトル挑戦権を得ることを私は既に述べた。明らかに今やるべき試合だ。今夜のファンからの反応は素晴らしかった。今後どう展開するかは見ていく必要がある」と語っている。
そして、UFC副会長兼アジア部門責任者ケビン・チャンは「ジョシュア・ヴァンのUFCでの急成長は驚くべきものだ。彼はミャンマーのファンに真のスポーツのアイコンを提供し、刺激的なスタイルと卓越したスキルでアジアの観客を魅了している。ジョシュアは、新しい世代のMMAアスリートが成し遂げられることを体現している。彼はアジア出身選手としてUFCタイトルを争う3人目の選手として歴史に名を残すため、彼の未来に期待しています」とのコメントを発表した
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なぜ、ロイヴァルは組まなかったのか?「サソリとカエルの話」
一方、敗れたロイヴァルは、リーチを活かしたアウトキックボクシングで守ることなく、圧力をかけることで自身の打撃で勝負した。その反面、距離が近くなったところでヴァンの打撃も被弾。そして、最大の疑問は、得意の組み技を混ぜて戦おうとはしなかったことだった。
試合前の本誌のインタビューでは、急遽の対戦相手の変更に「マネルの方が爆発力があって足使いも上手いから、むしろそっちに合わせてた方が大変だったかも。ジョシュアは前後の動きが中心だから、そこまで大きな切り替えじゃなかったよ」と語っていたロイヴァル。
MMAとしての引き出しの多さについて、「おそらくヴァン選手からあなたをテイクダウンする動きは少ないかと思います。相手が組んで来ない、ということはMMAにおいて有利と感じますか?」と問うと、「いや、正直どっちでもいいよ。俺も彼を寝かせるつもりはないし、殴り合う気満々だ。ボクシングが得意なら、俺も打ち合いに付き合うよ。“レッツ・ボックス”さ。必ず面白い試合になるはずだし、理想を言えば一方的に俺が勝って終わりたいね」と、打撃戦を予告していた。
その言葉通り、打ち合いで上回ろうとしたロイヴァル。ヴァンと同じ20歳でプロデビューしながら、当時は少年更生施設で働いていたロイヴァルは、適正階級で戦えない時代や、フライ級不遇の時代を経て、いまのメインカードにたどり着いている。フライ級に注目が集まり始めたこのタイミングで、T-モバイルアリーナのファンを沸かせる試合をあらかじめ選択していたともいえる。
この試合を見たパントージャに本誌は「ロイヴァルはヴァンにテイクダウンに行かなかったのか・行けなかったのか、どう考えますか?」と問うと、王者は、「ロイヴァルは大きなミスを犯した。俺もジョシュア・ヴァンの試合をいくつか見るなかで彼がとてもテイクダウンディフェンスが上手いことは知ってたし、それはロイヴァルも見て知るところだったろう。だから彼は消耗したくないからテイクダウンを狙いにいかなかった。だが、それは大きな間違いだ。自分のほうにグラウンドで優位性があるなら、そこはトライしなくてはいけない。テイクダウンとグラウンドのプレッシャーがないから、ヴァンにアドバンテージを取られた」と、敗因を語っている。
なぜ、ロイヴァルは組まなかったのか。正確には、近い距離では首相撲ヒジ・ヒザなど、組みも混ぜていたが、鶴屋の投げ以外のテイクダウンを切ったヴァンを相手に、そこから組み技・寝技で勝負する動きは見せなかった。
ファイト・オブ・ザ・ナイトを受賞した試合後、ロイヴァルはSNSを更新。今回の試合を「“サソリとカエルの話”」(※)と寓話に例えている。
※川を渡りたいサソリがカエルに運んでくれるよう頼む。カエルはサソリに刺されるのではないかと躊躇するが、サソリは川の真ん中で殺したら自分も溺れてしまうと言い、刺さないと約束する。カエルは運ぶことに同意するが、川の中ほどでサソリはカエルを刺し、二人とも溺れる。死の間際、カエルは「結末が分かっていながらなぜ刺したのか」とサソリに尋ねると、サソリは「申し訳ないが、仕方がなかったんだ。自分はサソリだから、その性質は変えられない」と答える。
「“サソリとカエルの話”一部の人は、本能が自己破壊的または有害な行動につながっても、制御不能な本能によって動かされる。僕が変われたらいいのに、僕はいつもこれだった。長い間僕を支えてくれた人たちに感謝します」と、記したロイヴァルは顔を腫らして、オクタゴンを後にしている。
ロイヴァルを撃破したヴァンを見たパントージャは、「なにしろ相手は、23歳の若くてハングリー、しかもヴァンはガンガン出てくるタイプだ。俺にとっても現状、いちばん大きな挑戦となる。だから月曜からすぐ練習だ。もう相手は分かってるんだから、相手に向けての練習を始める」と、ジムに戻れば再びハングリーな挑戦者に戻るとコメント。
コンテンダーとなったヴァンは、負傷でサスペンド(出場停止)期間が空くことを明かしている。10月10日に24歳になるミャンマーの“The Fearless”(恐れ知らず)は、引退したジョン・ジョーンズと並ぶ、最年少23歳での戴冠を望んでいる。
以下は、試合後のヴァンとの一問一答だ。
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ヴァン「バックステップしたときに、骨が変に動いてる感じがして──」(U-NEXTインタビュー)
──ブランドン・ロイヴァル選手との試合を終えたばかりで、あらためてフライ級1位のロイヴァル選手をどのように感じましたか。「最高の気分だよ。彼はタフだ。本当に、本当にタフだった。ランキング1位なのは理由があるってことだよね。テクニックもスキルも本当に信じられないくらいすごくて、今夜は彼から多くを学んだよ」
──長身サウスポー構えの相手に、オーソドックスのあなたは、左足をアウトサイドを取るのではなく、左足をインサイドに入って右を当てたのは勇気のある作戦でしたか?
「俺の戦略は、内側に入って自分の距離で戦うことだったんだけど、彼はすごく上手くて、俺から離れて距離をとった。もちろん左の打撃も来るけど、彼には右ジャブもあるからね。さっきも言ったけど、すごくスキルのある選手。今夜は本当に彼から学ばされた。心からリスペクトしてる」
──忘れがちですが、あなたの前戦は3週間前のブルーノ・シウバ戦でした。ロイヴァル戦後に明かした親指の怪我はいつからでしたか?
「怪我をしたのは前の試合で、チームも知っているよ。骨が折れたかどうかは分からないけど、今夜のケージの中でも同じ感じがあったんだ。トレーニング中から、右足ではうまく動けなくて、キックもまともに出せなかったんだよ。だから今夜の試合も、相手に打たれてバックステップしてたとき、骨が変に動いてる感じがして、“くそっ”って思ったよ。でも試合中だったから、そのまま続けた。アドレナリンも出てたしね」
──それでも戦い、ダウンを奪って勝利しました。コメインのパントージャvs.カラフランスをケージサイドでどう見ましたか。
「パントージャは偉大な王者さ。ドミネートしてたね。でも俺はいつも戦いの場に上がるときには自信がある。言っている通り、他の選手とは全く違う試合をしてみせる、みんな近いうちにそれが分かる。俺が何を見せるか、その目で見てくれ」
──ランク1位を倒して、環境が一変しそう?
「さあ、これから戻って様子を見る(笑)。どうなるかは分からないけどね」
──日本のファンにメッセージを。
「日本のみんな、本当に応援ありがとう。俺たちは“兄弟”だよね。アジア人同士だから。俺もアジアの文化のためにやってる。応援と愛に心から感謝してる!」
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会見でのヴァン「ミャンマーという国を代表できることがすべて」
──ブランドン・ロイヴァルとの試合に勝利ました。
「これは人生を変える瞬間だ。神は偉大な計画者で、すべては理由があって起こったんだ」
──ミャンマーの旗を背にしていますね。この最後の1時間が一気に押し寄せてくるような感覚をどう感じていますか。
「俺たちチームは常に自分たちができることを理解している。だから(ロイヴァルに勝っても)何も驚かなかったんだ。分かるかな? 僕は常にこの1位のポジションに居続けることを知っていた。だから、“覚えておけ、僕の名前は今や#1ジョシュア”だ」
──トレーニングを始めたのは5年前、というのは本当ですか?
「イエス。5年前はトレーニングを始めたばかりだったけど、街中で戦っていた。分かるよね? 若い頃から、子供の頃から、戦いは俺の血の中にあったんだ」
──1年間で6回目の試合です。なぜそんなに活発に活動できるのですか?
「家にいると退屈するから、“やらなきゃ”と思ったんだ。多分、家に帰って数日休んだらジムに戻るだろう。活動的であることが、俺をより良い人間にするんだ。外に出てトラブルを引き起こすようなことをしないから。だからジムにいて人生を良くしたい」
──今回の試合がタイトル挑戦をかけた試合になることは、3週間前に試合を依頼された時、知っていましたか?
「知らなかったけど、予想していた。なぜなら、ナンバーワンを倒せば、戦う相手がいないだろう? だから、連絡が来て『すぐにコーチと話してくれ』と。ダニエル・ピネダがマネージャーに連絡して『試合を受ける』と言った。ダニエルが『やろう』と言った瞬間、俺は“よし、タイトルマッチだ”と、頭の中でそう思っていたんだ」
──UFCのボスが「この試合の勝者が次のタイトル戦に出場する」と実際に言ったことで、プレッシャーを感じた?
「自分にプレッシャーをかけるのは好きじゃない。だって、彼はそう言ったけど、もし試合に勝たなければタイトル戦はないんだ。だから、そんなことは考えない。ただ冷静さを保ち、チームメイトと寝たり遊んだりして楽しむだけだ」
──今回の試合でコーナーマンが言っていたことは?
「俺のコーナーは『急ぐな』と言っていた。最初のラウンドで何度か聞いたし、2R目でも聞いた。時々急いでしまうと、それが捕まる原因になるから『落ち着け』と。そういうことを言ってた。それが俺たちの戦略で、時間をかけて隙を探る、そういうことだった」
──多くの人がブランドン・ロイヴァルとの試合が「今まで見た中で最も狂ったフライ級の試合の一つだ」と言っています。
「本当に、彼はスニーキーだよ(笑)。彼がパワーがないと思って前へ進もうとした瞬間、狡猾なパワーを持っていた。俺を油断させたんだ。彼はナンバーワンである理由がある。そして、彼は本当にタフだ。あの選手が好きで、チャンスをくれたことに感謝してるよ」
──ロイ・ヴァルとの試合での打撃の数は予想していたか? 344の有効打が記録され、これは3R戦では最多記録だ。彼は467回、打撃を試みた。UFCの記録だ。
「彼はただ疲れるだけだったんだ、わかるだろ? だから、自分が何に巻き込まれるか分かっていたけど、彼を倒せると思っていたんだ。本当に。彼を倒せると思っていた。でも彼は強かった。そして、あの狡猾な力を持っていた。例えば、前に進んだら上からのパンチで殴られて。“ああ、やばい、引かないと”って。それが初めて出血した瞬間だったと思う。それは良い経験だったし、すごく珍しいことだ」
──解説チームは「ブランドンが終盤にパワーがあったように感じた」と言っていましたが、統計ではあなたがより多く放ってヒットさせていました。彼に7、8発のパンチを当てても、まだ前に進み続けてきたのはどんな感じでしたか。
「本当に、僕は彼と戦うことを承知で臨んで、フィニッシュを期待していたよ。でも彼は本当にタフ。だから、彼を(ほんとうは)数回倒したと思う。1R目のパンチで彼を倒した。そして追撃を試みた。でも、言ったように、彼はパワフルでスニーキーだ。彼を殴るたびに、彼はより強い反撃で返してくるから、わかるだろ? コーチたちは、急いで突っ込むのを止めさせようとしているし(笑)、彼には敬意を表するよ」
──オクタゴンに次の挑戦者が現れるのは珍しいことです。パントージャの勝利についてどう思っていますか? あなたとチームは弱点や隙を分析し始めているでしょうか。
「いや、まだだ。彼の試合をただ観戦しただけだ。彼を研究したことはない。なぜなら、僕は1試合ずつ取り組むタイプだから。この後、ジムに戻って彼を研究する。わかるだろ? これがニューエラ・ファィティング(新時代の格闘技)さ」
──メインの後でパントージャとフェイスオフをしました。チャンピオンの目を真っ直ぐに見つめる時のエネルギーはどんな感じだった?
「尊敬する必要があると思う。これは我々のショーで、彼が参加したから、俺も参加した。だから、ただ尊重するだけだった。彼が家族を養うためにこの格闘技をやっていること、わかるよね? 俺も同じだ。母を養うためにこのことをやっているんだ。俺たちは家族のために戦っている。だから、彼が準備ができたら、俺も準備ができている」
──彼の直近の2試合は、激しいグラップリングでした」。テイクダウンしてチョークアウトする。だから、あなたはレスリングシューズを履いてパントージャ戦に備えることになるでしょうか。
「知ってるだろう? 僕のテイクダウン防御も完璧だからね。彼はまだ“ジョシュア・ヴァン”と戦ったことがない。つまり、みんな、最後はそれを知るだろう」
──UFCはスペインに行くかもしれません。トプリアはスペインの顔のような存在になっていますから。あなたが必死に持ち込んだその旗が、チャンピオンとの対戦で注目されることになる。あなたは、この時が必ず来ると思っていたでしょうけど、あなたの国ミャンマーを最大の注目を浴びる最大の格闘技の舞台に立たせられることに、どれほど興奮していますか?
「それはすべてを意味する。それがすべてだ。国を代表できること自体が。新世代は──僕が数年前にこのこと(MMA)をやっているのを見て、ミャンマー国民やビルマ民族がこのレベルに達するなんて思ってもいなかっただろう。でも今、僕が見せているのを見て……分かるかな? 多くの新世代がジムに行くように連絡をくれているんだ。だから、子供だけでなく親たちにも多くの目を覚まさせた。だから、本当に本当に、幸せだ」
──タイトルを獲得することは、すべてのファイターが望むことですが、4連続防衛のパントージャのように明らかに素晴らしいチャンピオンを倒すことは、さらに特別なことでしょうか。それとも、ベルトそのものに興味がありますか。
「ああ、この階級でのレガシーだよ、分かるだろう? 彼を倒すことは、僕のレガシーにとっても、より大きな意味を持つんだ」
──あなたはジョン・ジョーンズがベルトを獲得した時と同じ年齢です(※JJはUFC史上最年少記録の23歳8カ月で王座獲得)。だからUFCに行って「24歳になる前に試合を組んでくれ」と頼むことも?
「彼の記録に並ぶために。だから10月までに試合を組んでもらわないと……でも医者が出場停止にしたから(苦笑)」
──サスペンドなんですね。あなたにとって、この試合に勝って王座挑戦は本当に早い展開だったと思います。こんなチャンスが巡ってきたら絶対に掴むべきだ、ということは分かっていますが、この試合前に怪我や打撲があったのですか。100%の状態でなかったと思いますが。
「僕の親指がひどく痛かったんだ、分かるだろ? 試合中、ファイトキャンプや何かでもキックを放つことが出来なかったんだ。でも、アドレナリンとかでスルーして戦ったんだ。親指がひどく痛かった、それがすべてだよ」
──パントージャとのタイトルマッチは5Rになります。Fury FCでもタイトル戦(5R戦で2Rに一本勝ち)の準備を経験したことがあるから、UFCでも5Rを戦うことに問題ありませんか。
「それはもし……通常通り(4R以降になっても)続くだろうね。さっきも言ったように、僕はジョシュア・ヴァンだ。普通の選手のようには戦わない。だから、全く異なる試合になるだろう」
──今回の試合がもし5Rだったら、3R目のように、残り2Rで彼を倒せたと思いますか?
「つまり、5Rあれば? フィニッシュできたかもしれないよね」
──パントージャとカイの試合が進行中だった時、ケージサイドで何を見て、どう感じた?
「カイのことは本当に尊敬しているけど、彼はジョシュアじゃない。わかるだろ? チャンピオンと戦った時、彼は怖がったり緊張したり、つまり尊敬しすぎたんだ。尊敬しすぎると勝てないんだよ。“殺るか・殺られるか”だ。ジョシュア・ヴァンは唯一無二だ。それは絶対だ」
──最後に。この勝利後のパーティーはどれくらい大きくなるでしょうか? 今回の試合は多くの人にとって今年のハイライトだと思うので。
「4オンスファイトクラブ(テキサス州ヒューストン)のチームメイトたちがラスベガスの観客席の中にいたんだ。それが僕を励ましてくれた。だから、ホテルに戻って何か計画を立てるつもりだよ」