多くの人たちが「あれはラッキーブローだった」と言うけれど──
──なるほど。いよいよ堀口恭司選手との再戦です。あらためて、3Rまで劣勢で、4Rに挽回した前回の試合を振り返って、どう総括していますか。
「堀口との最初の試合は、非常に興味深いものだと思っているんだ。振り返ってみて、実際自分は、あのとき打撃戦を期待していたんだ。ただ、彼はその全く逆のことをやってきて、テイクダウンを仕掛けてただ押さえつけるっいう、そういう戦略で来たので、自分としては、キャリアで一番イライラした試合だったじゃないかなと思う。そのテイクダウンされている間も、非常に自分の心はイラついていて、すごく嫌な感覚で戦っていた。そして、3R後にセコンドからゲキを飛ばされて、自分の中の野性的な部分を呼び起こすような指示をもらったんだ。
そこから4Rに向かって、試合を見直しても、やっぱり4Rから自分の動きだったり、仕掛け方も明らかに変わっている。その中で自分から前に出て手を出して打撃が当たるようになってきてから、自分のペースになってきた。そこで最終的にスピニングバックフィストがヒットした。そういった感覚で試合をしていたよ」
──前回、堀口選手が4Rにあなたをテイクダウンして、立たせた。その一つのミスであなたの勝利に繋がったという見方については、どう思っていますか。
「まあ、そういった意見に対しては、最終的には関係ないかな。結果として自分が堀口をKOしたわけだし、公式的にもその記録がずっと残る。僕が彼をバックフィストでKOしたという事実は絶対変わらないので、それは全く気にしてないね。たくさんの人たちが『あれはラッキーブローだった』と言うけれど、実はあの打撃は、もう何年も前からずっと練習してきたものであって、試合で当たるものに“ラッキーパンチ”はないと思っている。今までのすべての準備と積み重ねと、そのタイミングが全て合致した時に生まれるもの。自分では“ラッキー”だとは思ってないよ」
──今回、堀口選手はどのように戦ってくると予想をしていますか?
「今回の試合は、ちょっと前回とは違う展開になるんじゃないかなと思う。というのも、(前回の王座戦の5Rと異なり)3Rしかないし、堀口はその中でも自分がすごくやり辛い試合展開を作ってくるんじゃないかなと思う。いろんな動きを混ぜて、自分が圧倒できるところを探してそこを突いてくるんじゃないかなと。あと、もう一つ。堀口は前回の試合よりも打撃、パンチをもっと打ってくるんじゃないかなと思っている。
というのも、RIZINのグローブは、思い切り打っても大丈夫だっていうような感覚を持たせてくれるグローブなので、前回のBellatorでの試合よりももう少し打撃で、拳が交錯するような試合になるんじゃないかなと思う。基本的には堀口の動き──出入りの素早さだったり、MMAの全ての要素を混ぜ合わせた攻撃だったり、そういうものを駆使しながら、こちらがすごくやり辛い状況、展開に持っていくんじゃないかなという風に思っいる」
──この2年半で堀口選手はどう変わったと見ていますか? 堀口選手はあなたについて「そうそう簡単にスタイルは変えられない」と言っていました。
「実際、堀口はよりレスリングベースのグラップラーになりつつあるんじゃないかなと思う。当然、勘違いしてほしくないのは、彼は総合的にMMAを全部出来るし、打撃もすごく強い。柔術も。もう全部できる選手だけど、やっぱり寝技における有利性っていうものを、アタックして高めてるんじゃないかなと思うし、試合では打撃の交換は増えるものの、当然自分のことをテイクダウンして一本狙いに来るんじゃないかなと思っているよ」
──そんな相手に対して、あなたはどう変わった?
「そうだな、自分が変わった部分はやはり、自分自身の実力に自信を持つようになったこと。今までこの2年半でいろんな“テスト”を受けてきた。今まで自分にちょっと自信がなくて、戦いながら“これでいいのか?”って疑問を持ちながら戦ってきたけれど、パトリシオ・ピットブルともパッチー・ミックスともやって、そういった経験の中で、自分の自信をどんどん上げていくことができた。歳を取ることによって自分のいろんなものが分かってくるし、自分の身体の使い方とか、自分の戦略、自分の技術に対してやっぱり信用しないと前に進めないんだっていうような気持ちが大きくなってると思う」
──最後は、またスピニングバックフィストで仕留めるのか、あるいは他のいろんな技を計画しているのか、どんなイメージでフィニッシュを考えていますか。
「今回はさすがに堀口はバックフィストにはだいぶ警戒してくると思うので、何を出しても多分見えてるんじゃないかなと思っているんだ。だから自分としては、新しい武器を用意しておかなきゃいけない。それで、平本蓮と練習することによって、日本の打撃技術にだいぶ馴染んできたのかなと思っているんだ」