MMA
インタビュー

【UFC】シンガポール決戦直前! 中村倫也×鶴屋怜「世界と戦うために」(前篇)

2023/08/23 21:08

日本で出来ること、海外で出来ること


取材協力=KIZUNABASE GYM

──昼夜でプロ練ができる層の厚さがありますね。お二人ともこれから日本での練習と海外の練習ももっとやって行きたいと感じていますか。

中村 日本での練習もしたいし、やっぱ当然向こうでの練習も続けていきたいと思っています。やっぱ向こうの人は向こうの人にしかないものがあるし。それはリズムもそうだし、持っている技術もそうだし、そもそも骨格が違うから“力の出方”が違うっていうのもあるし。それを身体で感じたりして、慣れ続けておくことっていうのがすごいメリットになります。日本の細かい部分、細かいコミュニケーションならではの技術だったりとか、やっぱり自分が育ったものを信用するという意味ではそこが一番できるから、そこもやっぱり信じて続けていきたいです。

──MMAだからパーツで切り離せないものの、スタンドなど、細かい技術では日本も遅れてはいないと感じますか。

中村 全然。良し悪しですから、日本人が勝てないというのも力が出せていないというだけで、そんなに差は感じないです。全然強いです、日本人も。

──鶴屋選手は?

鶴屋 海外のほうが良いんだってみんな言いますけど、そうじゃなくって、日本の環境でしかできないことももちろんあるので、どっちも行ける環境というのが自分的にはいいのかなと思います。

──そういった環境をいかに負担なく作るか。ATTでの練習について、中村選手は「これまでは“本当にテイクダウンに繋がる動き”ではなかった」ということも仰っていました。それは技術的な話だけではないですよね。

中村 ATTに行って思ったことなんですけど、“この選手はここにいると、この打撃が出てくるからこうしよう”とか、細かい作りをやるのは当然で、その部分においては得意ではあるんですけど……、練習って5分おきに違う人が来るじゃないですか。だからそもそもシンプルな組み立ての強さが大事だって気付いたんですよ。この相手がこうだから、とかいちいちやってられない。自分の強さを出すっていう意味で、今までやってきたことはただのペテン師みたいな、本当に小手先の技術だなみたいに感じたんです。

“この生き物を本当に倒すならタックルが絶対”だし、“もっとしつこくフェイントをかけて行かなきゃいけない”し、“時には思いっきりドーンと行かなきゃ”だったり、レスリングをやっぱり大事にして、そこの上下のひっかけで揺さぶっていくのをまず一番大事に置かないと。それ自体である程度みんなに引っかかるようにならないと、その先のことなんて、やろうとした瞬間にビチビチビチビチ!(っとイキが良く動く)みたいになっちゃうから。そこでシンプルに強さ出していくのはめっちゃ大事だなっていうことです。

鶴屋 自分は、どの相手だからどうという対策はないんです。動画を見るだけで対策はしない。

──自分の強みをどう出すかということが軸にあるのですか。

鶴屋 そうですね。相手に自分の対応をさせたいです。

中村 それがいいですよね、シンプルに強くて。

──これから、こういったプロジェクトを通じて「こういう環境で練習する機会を作ってみたい」という希望はありますか。

中村 怪我しないのであれば、アゼルバイジャンとかダゲスタンとか行きたいですけど……絶対ヒートするじゃないですか……どうなんですかね? フフフフ。チェチェンの選手とかも、ATTで生ヒザ当てられたし(笑)。

鶴屋 あっちの人、めっちゃ気ぃ強いです。練習終わったあととかもめっちゃ喧嘩してましたよ。

中村 マジ!?(笑)ハハハハ!

鶴屋 ロシアとアメリカの選手がタイで喧嘩とか。(ムハンマド)モカエフも別の選手と言い合いになって喧嘩になって、めっちゃ殴り合いしてましたね(笑)。

中村 レスリングの試合でも、たまにこう組手争いになって、最終的に殴り合いみたいな(笑)。あの、血の気が多い、バーッ!てなる感じは、強さもあり、経験してみたいというのはあります。

鶴屋 自分が行ってみたいのは、カイ・カラ=フランスがいるニュージーランドのシティ・キックボクシングです。(イスラエル)アデサニヤもいて、幅広い階級でトップでやっている選手がいるので、どういう練習をしているのだろうと。同じフライ級のカラ=フランスとかともやってみたいし。ダゲスタンのようなところにも行ってみたいですけど、そっち方面行ってる人いないからアリかなって。

中村 たしかにシティは謎めいてますね。立ち技ベースだけじゃなくて(アレクサンダー)ヴォルカノフスキーもいるし。

鶴屋 はい(笑)。カラ・フランス、ダン・フッカーとかもいて、タイにも練習に来ている選手も多いですし。

──タイガームエタイとシティ・キックボクシングの両方で練習している選手もいますね。今回こういうプロジェクトができてサムライチームとして応援してもらえることで、遠征資金や練習環境を整えられる形になったらやはり助かりますか?

中村・鶴屋 はい。助かります!

──プロジェクト次第で、日本にMMA最前線の指導者を呼んでみるというようなことも可能になると興味深いのですが……。

中村 教えていただいたことを今は持ち帰ってやっているっていう状況で、技術的な部分のみならず、メンタルコーチングの人とかもそうだし、全然、僕はジャンル外の人も──“俺は格闘技こう思うんだよね”っていう飲み屋のオッサンの意見であっても“たしかに”と感じ入ることはあります。聞いた方が得をする。全然、違う脳みそからの視点は、うまく融合できるなら入れたいと思っています。

──中村選手はいまフリーで、KRAZY BEEと他にいくつかのジムを移動しながら仕上げていると思いますが、拠点をつくることも考えていますか。

中村 拠点をつくることは……多分いまはまだすぐにはしないと思います。今は日本でお世話になっているところ、──KRAZY BEEだったり、津田勝憲さんのところにも行きながら練習して、試合毎に4週間か6週間くらい、ATTとかに行きたいとなと考えています。

──鶴屋選手にとってタイ合宿が必要だったのは?

鶴屋 タイに行くと、フライ級やバンタム級の、自分に近い階級の強い選手が多いんです。あっちの選手は気の強い選手が多いですし、スパーリング中も、日本だとある程度お互いのことを気遣いながらやったりするんですけど、タイとかは結構そういうことは考えずに思い切りブン回してくる選手もいるので。でも、試合だったらいきなりそういう選手と当たったらびっくりしちゃうかもしれないけど、練習でそういうタイプの選手とも手合わせできてよかったかなって。

──なるほど。国際戦での免疫も出来ると。さて、26日と27日のそれぞれの試合のお話もうかがいます(※後編へ)。

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