MMA
インタビュー

【UFC】シンガポール決戦直前! 中村倫也×鶴屋怜「世界と戦うために」(後篇)

2023/08/25 04:08
  2023年8月26日(土)にシンガポールで開催される『UFC Fight Night: Holloway vs. Korean Zombie』のバンタム級に中村倫也(フリー)、翌27日(日)『ROAD TO UFC(RTU)シーズン2 準決勝』のフライ級に鶴屋怜(パラエストラ千葉ネットワーク)が出場する。  中村は本戦デビューでいきなりメインカード入りし、米国のファーニー・ガルシアと対戦。鶴屋はMMA9勝1敗のマーク・クリマコと対戦する。『SAMURAI TOP TEAMプロジェクト』の0期生として海外武者修行も経験した2人が語る、それぞれのシンガポール決戦とは? ジョー・ローガンを『ワアアアアア!』ってさせるのを2人でやりたい (前篇からの続き) ──鶴屋選手にとってタイ合宿が必要だったのは? 鶴屋 タイに行くと、フライ級やバンタム級の、自分に近い階級の強い選手が多いんです。あっちの選手は気の強い選手が多いですし、スパーリング中も、日本だとある程度お互いのことを気遣いながらやったりするんですけど、タイとかは結構そういうことは考えずに思い切りブン回してくる選手もいるので。でも、試合だったらいきなりそういう選手と当たったらびっくりしちゃうかもしれないけど、練習でそういうタイプの選手とも手合わせできてよかったかなって。 ──なるほど。国際戦での免疫も出来ると。さて、26日と27日のそれぞれの試合の話では、中村選手は前回が本戦にRTU決勝が入っていたので、すでにUFCデビュー戦のようでしたが……。 中村 そうですね、決勝が本戦に入っていたので、あれがUFCデビュー戦のような感じでもいいようですけど、今回はUFCと契約して初の試合ということになりますね。 (C)Zuffa llc/UFC ──その意味では、「RTU1」でもオクタゴンを経験しており、気負いが感じられません。 中村 ここまで3つ、UFCのケージで試合を消化できたのはすごく大きくて、いきなりとかではないので“また、あそこね”という感覚を持てた。あの「RTU」のトーナメントは自分には良かったなと思いますね。 ──対戦相手の10勝3敗のファニー・ガルシア選手をどうとらえていますか。 中村 メキシコの“ボクシングあがり”で。今、メキシコ勢は乗ってますし、そういう意味での警戒みたいなのもありますが、今回の試合はフィニッシュしたいなと思っています。相手もまだフィニッシュ負けはないので、どういう形になるか探してある程度見えてきていて。向こうは当然ボクシングがしたくて、横の動きがすごい上手いので、そこを制するような攻撃のパターンは、何個かあるので。ハマればパウンド地獄ですね。 ──あの右のパンチは、かなり振ってくる。当たれば強打に感じます。 中村 はい、当たれば。向こうは右を当てようとして動く。それが、“タ・タ・タン! タ・タン!”みたいな感じで、4つ目、5つ目も出たりするし、下がりながらも打てるので、そこはメキシコボクシングの特徴ですね。だからその辺は、自分も……そうですね、アートみたいな、芸術感を見せられたらいいなと思っています。 ──ミクストマーシャルアーツを見せると。そのためには……。 中村 “自分で居続ける”ことですね。UFC初戦で分かりやすい目標は、15分以内にフィニュシュすることですが、自分からペースを作って、相手に対応させることで選択肢を狭めさせてフィニュシュしたい。今回はMMA IQを見せたいと思います。 ──UFCデビュー戦とは思えないコメントです。鶴屋選手は「ROAD TO UFC」の準決勝で、あと2試合勝てば、UFCと契約になります。負けたら終わりのトーナメントのなかで、今回の対戦相手マーク・クリマコをどうとらえていますか。 鶴屋 印象としては、結構、ローキックを多めに打ってくる選手で、そこで距離とかを作ってくると思うのですけど、身長も小さいしリーチもたぶん自分より小さいので、ガンガン前に来てタックルとかも狙ってくることも想定しています。自分も普通にいつも通り上になって上からブン殴るか、極めるかで、1、2Rくらいで極められればいいかなって感じですね。  テイクダウンとかは全然負けないと思っていますし、前の試合では、ほかの2人とも思ったより大したことなかったです。ジー・ニウシュイエもチェ・ソングクも。イ・ジョンヒョンがもっとレベル高いかなと思っていたんですけど、見てみたら、全部相手が打ってくるの返すだけでそんなに武器はないなって。クリマコもトータルファイトでそんなメチャクチャ武器あるのかな? って思っています。 ──中村選手からは、今回のRTUのフライ級戦線で鶴屋選手をどう見ていますか。 中村 リーチもあるし、実はジャブもメッチ上手いと思います。そのへんもたぶん、今後見えてくると思うのですけど、組みとレスリングは言うまでもないって感じだと思うので。やられる場面の想像ができないです。日本人一人で、あの中ではダントツですよね。パフォーマンスを見ていても。危なっかしいところとか全然ないです。別に“もうUFCファイター”だと思ってますけどね。 鶴屋 (笑)。 中村 もちろん試合では何があるか分からない、ということも分かった上で、臨んでいると思うので。 (C)Zuffa llc/UFC ──UFC PIが上海にあって、1回戦は向こうの地元で、施設の充実度もともかくコーチ陣も揃っていて研究されていると感じました。 中村 研究したとて……っていう感じではないでしょうか。 鶴屋 自分としては、特には意識していないですけど、前回も決勝に行っている選手や、中国勢はみんな階級1個落としているという話も聞くので、そういう中国の選手がどれだけできるか分からないけど、楽しみですね。UFCに出ることが目標ではないので。  次、(平良)達郎くんがフライ級でランカー(※元15位のダビッド・ドボジャーク)と勝負しますが、ランカーを見ても、どの選手もそんなに大差あるわけじゃないなというか、全然やってみれば、チャンピオン(アレッシャンドリ・パントージャ)だとしてもめちゃめちゃ負けるような相手じゃないと思うし、みんな大きく見すぎて“俺には無理だ”となる人が多すぎますが、日本人が1人、チャンピオンになれば、そこからどんどん生まれてくると思います。  なので、自分はフライ級のなかでランキングに絡んでもっと盛り上げられたらいいと思っています。(ランカー以外も含めて)見てると強そうに見えるけど、やってみたらバケモンじゃない感じはしますし。練習と試合は違うと思いますけど、そんなに大してして差はないと思うのですけどね。 ──そう感じるのにも、現地で実際に合わせた肌感覚が活きますね。 鶴屋 ぽんとう、そう思います。 ──中村倫也選手は、UFCバンタム級のランカーだったり、ライバルたちをどう見ていますか。 中村 “すげー強いな”という思いは当然あるんですけど、結局同じ体重の同じ質量の、同じくらいの脳みそ使った人間だなと思うので、“絶対勝てない”とかはないです。どんだけ工夫して自分を限界まで持っていって可能性を限りなく開けるかっていう、本当に自分との戦いですね。 ──そのための集中力も高いと。 中村 はい。日本人ならではの、繊細にアンテナ張って生きているのは、本番の集中力にも繋がると思うし、自分も内面を鍛えて成長できたという手ごたえを感じています。心の位置を据えて、練習や試合に入ることで身体が動く。一流の選手って、そういう日本人の集中力からくるものが、大谷翔平選手や井上尚弥選手を見ていてもそうだと思うし、自分もUFCでちゃんと日本を背負って新時代のサムライが来たぞって、思わせたいです。 ──中村選手はどこに行っても相手を大きく見すぎることがなさそうです。 中村 いやいやいや、根はクソビビりだから。メッチャ“おおお”ってなるけど、レスリングで世界で試合してみましたとか、そういうのがいっぱいあって“ああ、なるほど”と視野が広がっただけの話です。 ──今回の『SAMURAI TOP TEAMプロジェクト』を応援してくれるファンにもメッセージを。 中村 本当に格闘技って、感情が入るので、応援する側って。自分もファン歴がすごい長かったので、小っちゃいときにこういうのあったらノゲイラとかにめっちゃ入れたかった。勝ったら一緒に勝ったような気になってほしいし、この道を選んだ限りは、どこかでキツい時期も絶対あると思うんですけど、そういう苦楽を一緒に共有してもらえれば、と思いますね。とりあえず育成ゲーム感覚でいいので(笑)サポート、よろしくお願いします。 鶴屋 自分は格闘家なので、試合で勝つということが恩返しになると思っているので、応援を受けて、しっかり練習して、試合で結果として恩返しできたらいいなと思っています。 ──では、最後にお互いに向けて。 中村 鶴屋選手には、ここはサクっと契約を取ってもらって、今後UFC日本大会とかで、一緒に世界中で暴れられたら光栄だと思っています。放送席のジョー・ローガンを『ワアアアアア!』ってさせるのを2人でやりたいです(笑)。それで僕は頑張ってベルトを獲って引退するので、僕が引退してから二階級制覇を狙ってもらって(笑)。 鶴屋 (笑)。倫也選手のUFCデビュー戦で日本人みんな注目しているし、先人というか、大暴れしてほしいですね、世界で。 中村 ありがとうございます。試合が1日違いで、同じ会場なので現地でも会うと思いますが、互いに頑張りましょう! 鶴屋 はい、やりましょう!  * * *  今回のインタビュー後の24日の会見で中村は、報道陣を前にすべて英語で回答。デビュー戦でいきなりメインカード入りしたことについて、「色々な意味でモチベーションが上がります。絶対に届けられるものってあると思うんで。それぐらい今回も自分と向き合って作ってきました。集中力や一歩踏み出す勇気とか、いつも応援していただいているものを、試合で返していけたらと思ってます」と語り、対戦相手のファーニー・ガルシアが13戦10勝3敗中、一度もフィニュシュされていないことについても、「タフなファイターですが、彼をフィニュシュする最初のファイターが自分になりたいです」と自信を見せた。  また、8月19日にショーン・オマリーがアルジャメイン・スターリングを2R TKOに下して戴冠したことを受けて、「すごいチャンピオンが生まれたなと思っています。自分が対戦するまで防衛してほしいと思っています。そこに辿り着くのは? 2年から3年くらいかなと思っています。いま28歳で、年齢を重ねるごとに強くなっているように感じますので、自分のピークは32歳、33歳頃になると思いますので楽しみにして頂けたらと思います」と、バンタム級での今後についても語っている。
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