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2023年6月24日(土)北海道・真駒内セキスイハイムアイスアリーナで開催される『RIZIN.43』のメインイベントにて、5連勝中の鈴木千裕(クロスポイント吉祥寺)が、RIZINフェザー級王者クレベル・コイケ(ボンサイ柔術)が持つベルトに挑戦する。
タイトルマッチに向け鈴木は、Theパラエストラ沖縄で合宿し、同日(日本時間25日)のUFCフロリダ大会で日本人選手として8年半ぶりの「4連勝」に向かう平良達郎と合同練習を行ってきた。また、東京に戻ってからは、五味隆典の東林間ラスカルジムにも出稽古を敢行している。
公開練習でクレベルの寝技に対し、「ぶっちゃけ力で防げる。ボブ・サップが言ったように『パワーの前には技術は無意味』」と語った本心はどこにあるのか。
平良、五味との練習のなかで鈴木は何を得たのか、本誌で単独インタビューした。
平良と練習「達郎は5手先、10手先を持っている」(鈴木)
──RIZIN北海道大会に向け、鈴木選手はTheパラエストラ沖縄で合宿を組んだようですね。そこでは、同日にUFCで戦う平良達郎選手とも練習する姿を拝見しました。
「すごい勉強になりました。やっぱり世界に行く選手は違うんだなって体感しました」
──どんなところが違う、と感じましたか。
「一番、気づいたのが、みんながサボるところで頑張るというか。みんなが抜くところを攻める感じがあって、それがすごく嫌ですね」
──サボらない。一息つかないということでしょうか。
「すごく言い表し辛いんですけど……将棋で言うと、10手、20手、30手先を考えるというじゃないですか。普通はその先が分かっているつもりでも行けないんですよ。格闘技として、こうされたらこうしてこうしてと、5手、10手先を持っている。でもたいてい2手、3手先で止まっちゃう。ちょっと休まなきゃとか、ここはキープしてみようとかになるんですけど、平良選手は──僕は“達郎”って呼んでるんですけど──3、4、5手先、さらに7、8、9、10と行ける。それってやっぱり簡単じゃないです」
──なるほど。そこで行けるのは、その先の彼なりの「答え」を知っているからでしょうか。
「全部が揃っているんだと思います。答えも知ってますし、それに対応できるフィジカル、スタミナ、技術……全部が整っているから出来ることだと思います」
──そしてそこに向かう勇気もあるから行ける。
「そうです。全局面で自信を持っているので、打撃でもレスリングでも寝技でも全局面で戦えるから強い。それが松根(良太・Theパラエストラ沖縄代表)さんが叩き上げてきたものなのかなと。日本を背負って戦う姿もかっこいいなって。練習の取り組み方も、日本の格闘技を代表して戦えるのは誇りに思えることだろうし、自分もそうなりたい、追いつくぜ、と感じましたね」
──そういうなかで、平良選手と同日にクレベル・コイケ選手という世界で戦ってきたチャンピオンと鈴木選手も戦います。手足の長い平良選手の背格好は、クレベル選手にも似ているのはないでしょうか。
「似てますね。すごいいいイメージで練習出来ました。でも対策うんぬんというより、純粋に、いつもの普段通りの達郎と戦いたいなと思って行って、それが出来たのがすごく嬉しいです」
──なるほど。平良選手を体感できたことが、動きは違えどサイズ的にも結果的に“仮想クレベル”にもなったんじゃないですか。
「そうですね。互いに試合に向かう強い平良達郎と練習できた。それが大きいです」
──さきほどの公開練習では、「寝技はフィジカルというテクニック。どんなに腕十字や三角絞めでも、思いっきり持ち上げてやったら外れる」というコメントがありました。それは、沖縄での練習でも手ごたえを得てのことでしょうか。
「練習では思いっきりはできないので……。平良選手もずっと一本で勝ってきていますから、たかが対策を練ったくらいで対応されてたまるか、ということだと思いますし、僕がクレベル選手だったら、こんなずっと寝技やってきて、そんなちょっと対策されたくらいで極まらない技じゃないぞ、という思いもあると思います。
でも、その差を埋めるのは、根性とパワーと気合なのかなって。みんな“対応”しようとして対応できなかった。としたらそこに立ち向かえるのはパワーだと思います。もちろん、そのパワーのなかに技術が必要だということも」
──それが「フィジカルもテクニックのひとつ」という意味ですね。
「はい、いかにそのパワーを使うか。そこも確認できたと思います」
──沖縄では、平良選手たちとのスパーリング、松根良太代表との技術練習などを行うことができたと。
「あとは2週間のキャンプで、それに入ると用事が無くなるんですよ。東京にいると打ち合わせやミーティングが入ってしまうけど、沖縄にいると入らなくなる。練習だけになる。その環境が集中できます」
──フライ級の平良選手とのスパーリングの模様も一部公開されていましたね。
「いやあ、やられました。強いです。達郎がベテラン選手だったら『あの時代だから、あの人だから』と何かのせいにできるけど、同い年で同じ時代に生きてる同士なんで、何も言い訳出来ない。だから自分も(クレベルに)普通に勝たないと何十歩も置いて行かれちゃうんで、1歩でも近づけるように普通に勝ちます」
──奇しくも同じ「6月24日」に試合。先に試合するのは日本の鈴木選手で、平良選手は米国の24日、日本時間の25日に試合になりますね。
「繋ぎますよ。達郎に。僕もバッっとしっかりKOで勝って、ちゃんとKOという形でしっかり終わらせて。みんなが(クレベルを)KO出来ないじゃないですか。みんながどうしてもKO出来ない理由がある。僕はそれをだいたい答えが分かったんで、その答え合わせをしてみようかなって。僕だったら倒せると思うんで。
それに、達郎を見て、世界で戦っている人を目の前で見るとカッコいいから、それに近づけるように。Bellatorとの対抗戦を見て、すごい刺激を受けたというか、RIZIN代表になってBellatorに乗り込めるんだったら、RIZINを背負って乗り込みたいですし、まずは日本でベルトを獲って、世界に繋げられるように頑張ります」