「いまのまま戦う」朝倉の勝算
チャンスはリスクの裏にある。朝倉にとって、そのリスクのひとつは、ボクシングルールでどこまで持ち味を出せるのか、になる。
ストライカーではある。しかし、もともと右利きサウスポーの朝倉はパンチャーではなく、蹴り技を有効活用することで、パンチも巧みに当ててきた。それが、蹴り技や組み技を封印されるなかで、圧倒的なディフェンス力を持つメイウェザーに触れることが出来るか。
「これから試合まではボクシングの練習だけにしようと思っているんですけど、なんか変にボクシングの技術を採り入れるよりは、いまのまま戦った方が相手が戦いにくいと思うので、ボクシングのミットの数を増やしていくだけになると思います。
いろんな打撃の選手ともスパーリングさせてもらって、俺の打撃はやりにくいと言われるから、自分で言うのもなんですけど、すごい異質な特殊なストライカーなので、たぶんメイウェザーがいままでやった相手とは違うと思うので、このままの感じで戦えれば(パンチが)入るんじゃないかなと思ってます」
綺麗なボクシングをやるつもりはない。右利きサウスポーで前手の右フックが強い朝倉は比較的リーチがあり(※朝倉は身長177cm/リーチ174cm、メイウェザーは身長173cm/リーチ185cm)、右でも左でも奥手のストレートが速く、空手ベースの踏み込みが長い。ボクシングのセオリー通りではない打ち方を持つといえる。
しかし、クリーンヒットをほとんどもらわない図抜けた防御力を持つメイウェザーを苦しめた相手は限られる。
初期にエマニュエル・バートンが前進を止めないタフさやトリッキーなスタイルで「最も苦戦した相手」に挙げられた。あるいは、判定まで持ち込んだ階級上のデマーカス・コーリー、変則的なスタイルを持つマルコス・マイダナの独特な軌道のパンチにも序盤は戸惑いを見せている。
それでも50戦50勝(27KO)無敗──誰もその牙城を崩せなかった。2021年には、体重差15kg、身長差15cm、年齢差18歳のローガン・ポールとの「エキシビションマッチ」で8Rを戦い、試合をコントロールしている(※判定無し)。ボクシング経験の無い朝倉が、メイウェザーとボクシングルールで戦うことは、メイウェザーにとって“マネーファイト”でしかない。
研究肌の朝倉は、すでにメイウェザーの動画を「何個か見た」という。その上で、45歳の“マネー”の動きを「現役のときはすさまじい強さだなと思いましたけど、最近のエキシビションの姿を観ていると、だいぶ落ちているなと感じますね。(会見で向き合って)普通になんか弱そう。全然俺の方がデカいし、身体も俺の方がだいぶデカい。パンチ力とかは全然戦えると思う」と、分析する。
さらに、「今回、体重が70kg契約だから(天心戦は66.7kg、ローガン・ポール戦が70.3kg、ローガンに190ポンド=86.18kgまでの制限あり)一応、俺有利で当日、ライト級みたいな身体で戦える。12Rとかあったらメイウェザーが言ってたように、ちょっとキツくてたぶん、俺持たないけど、3分3Rだから、はっきり言うと全然行けると思う。普段(MMAで)5分3Rやっている、瞬発力や爆発力のある俺の戦い方が出来る。
パンチ力は相当自信があるし、人生で1回もKO負けしたことはないから、打たれ強さにも結構、自信がある。ほんとうに肉を切らせて骨を断つ戦法──ガンガンもらいながら行こうかなと思っている」と、自信ものぞかせた。