会場で走っている姿をRIZINスタッフが見た?
――クレベル選手が会場で走っている姿をRIZINスタッフが見た、と。
クレベル 足は固定しているから、ファンとかに呼ばれて小走りに駆け寄ったのはあります。たぶん選手ならよく分かると思うけど、数メートル走るのは走れるけど、MMAの試合をするためには強くステップを踏んで蹴って、テイクダウンするためにも踏み込まないといけない。ハードな練習を何時間も続けてやるのは無理。榊原さんが走っていたと聞いてそう言うのも分かります。かなり無理してでも出る試合もあると思います。でも、僕のような選手は、タイトルマッチで負けたら終わり。
――選手によって契約内容が異なるかと思います。試合数と契約期間、どこの国での独占契約なのか。また、RIZINとしか交渉できない独占交渉期間、またはその後に始まるマッチング期間(他団体と交渉してもOKだが、入ってきたオファーはこれまでの団体に知らせて、それにマッチングできる権利をこれまでの団体が持つ)、チャンピオンになればチャンピオンクローズとしての拘束も発生するでしょう。
山田 選手によっては、この試合に勝った場合という条項があります。何月までの契約、または他の団体からオファーが来た場合はそれと同等、もしくはそれ以上の契約内容で、どちらを優先するか、とか。朝倉未来戦のときは時間もないし、本人は試合に集中したいだろうから、今回は1試合、勝ったら次に何年間契約というのも交渉に応じますと伝えていました。
クレベル(日本語で)自分が一番言いたいのは、本当にファンの人たち、ご迷惑をかけて本当にごめんなさい。コンディションもちょっとずつ戻ってきて、もしまたぜひ機会があれば戦う姿を見せたいです。足のコンディションが100パーセントであれば、いつでも体重を落として、試合出来ます。私は絶対出来ます。これまで試合を逃げたことないし、やっとタイトルマッチに──自分の夢なのに、私は絶対逃げません。
私は最初にRIZINに入ったときから考えはひとつ。日本の中で育ってきて、日本の中のRIZINでチャンピオンになりたいという思いは変わりません。それはまだ私の夢です。KSWからもほかからも声をかけてもらいました。いまもいろいろ話はありますけど、海外に行くときは日本の旗を持って行っているし、日本でチャンピオンになるのは私の夢、それが私の中にあります。日本のファンや生徒たちにそれを見せたい。いま契約が無いけど、日本で4試合連続で一本勝ちして、その機会を得ることはそんなにおかしいことではないんじゃないのかなと思います。
山田 でも彼はファイターだから、戦う場所が必要です。「やらせる」とか、「やらせない」とかじゃなくて、他からオファーが来れば、当然そこも選択肢の一つになると私は思います。
──主催者がファイターより上ということもなく、主催者がファイターを選ぶように、ファイターも戦う場所を選ぶことは当然だと思いますし、日本での4連勝後、クレベル選手を取り巻く環境が大きく変わったのも事実だと思います。そこに慢心は無かったですか。
クレベル 朝倉選手に勝った後、いろいろな新しいことが起き始めた。YouTubeも初心者としていろいろあるけど、流れとしては年末だろうという話があって、それに向けて心構えをしていたのは間違いないです。ただ、私は3試合連続で戦って、心も身体も、もうヤバいというのは感じてた。それでタイトルマッチを待ってたら、天国から地獄に戻った感じ。1年の中で。それをいま私は考えています。もしこの怪我のまま斎藤選手と戦ったら、怪我のことは試合前に言えない。それで負けたら、朝倉に勝ったのもたまたま運が良かっただけと言われると思う。怪我は試合に負けた理由にならない。
――3試合とそれに向かう日々で消耗するのも分かります。1回抜かないと気持ちが持たなかったのも。クレベル選手はいま31歳。もう一度、海外に挑戦するとしたら最後のチャンスになるとも思います。KSWで王座を争ったマテウス・ガムロがUFCに移籍して戦っている試合も見ていますか。UFC初戦で敗れた後は、オクタゴンで2連勝しています。
クレベル もちろん、毎回ガムロの試合は見ています。4月にホルツマンをKOして、7月にジェレミー・スティーブンスをキムラで極めた。私は5R、彼と戦って倒れてない。彼はUFCで、今後のスーパースターになるだろうってみんな言ってるし、ガムロを見て、私も負けられないと思っています。今までこういうことは言わなかったけど、UFCの66kg、61kgのチャンピオンと練習を私はやったことあります。いい練習ができたと私の中で思ってます。
Lightweights beware 🇵🇱
— UFC (@ufc) July 18, 2021
[ @Gamer_MMA | #UFCVegas31 ] pic.twitter.com/4OgZf0BGNv
――タイガー・ムエタイとプーケット・ファイトクラブでも練習していますね。ということは、フェザー級王者のアレクサンダー・ヴォルカノフスキーとバンタム級前王者のピョートル・ヤンと肌を合わせていると。
クレベル タイでヴォルカノフスキーともヤンとも練習しました。1回だけじゃない、毎日、何十回も試合形式でやった。もちろん練習は練習だけど、タイの練習の仕方は知っているでしょ? 私も心のなかでトップを目指せると思っています。日本にもいろいろな強いレベルの選手はいるけど、外で戦うのは、ライオンたちと戦うということ。いまの日本のトップの選手たちがヨーロッパでどこまで戦えるか、トップを目指すのはたぶん難しいと思う。
――だからこそ、クレベル選手がRIZINで戦うなら勝たなくてはいけない。いまのチャンピオンの斎藤裕選手の強さについては、どう思っていますか。
クレベル 斎藤選手を過小評価する選手もいるけど、私は違う。チャンピオンになっているということには理由がある。彼はちゃんと全部出来る。私は斎藤選手は強い人、と思っています。打撃も出来る、下(ガードポジション)も出来る、立つのも上手い。
――全部出来るがゆえに、クレベル選手にとっては相性が悪い相手でしょうか。
クレベル いや、朝倉選手が一番相性良くなかった。アサクラは本当にストライカーで危ない人。この間の試合も(萩原を)打撃で倒せた、やろうと思えばね。けど、朝倉選手はテイクダウン・グラップリングと、いつもと違うことをやったから、あの試合は萩原とレベルが違う。ただトレーニングしただけじゃないの(笑)。サイトウももちろん強い。特別に思っています。斎藤vs.朝倉を観たとき、会場で見たときは、斎藤が勝ったと思いました。けど、ビデオで何回も見返した後は、朝倉が勝ったと思いました。でも見て。(カイル・)アグォン選手、摩嶋(一整)選手、朝倉(未来)選手……私は全部一本勝ちです。そこが違います。
【写真】東京ドーム大会のメインで朝倉未来戦を控えていながら、サトシの勝利に思わず控え室から飛び出してリング上に祝福に駆けつけたクレベルとセコンドのマルキーニョス。
――次戦をどのくらいに戦いたいですか。
クレベル 私はやっぱりファイターです。コンディションが100パーセントで機会があれば、ファイターだから試合を受けていきます。いまサトシがライト級チャンピオン、ヒロもバンタム級チャンピオンと戦った。私も初心と変わらずに、日本でチャンピオンベルトを見せたい人がいっぱいいます。ほんとうに心温かいファンのみんなが熱をくれる。サトシのように私も次でベルトを獲っていきたい。コンディションを整えられれば、私はどこでも、誰とでも戦います。