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2021年9月20日(月・祝)、東京・後楽園ホールにて、プロ修斗公式戦『PROFESSIONAL SHOOTO2021Vol.6 in Supported by ONE Championship』が開催される。
メインは、世界ライト級チャンピオンシップ(5分5R)として、王者・川名TENCHO雄生(Y&K MMA ACADEMY)が初防衛戦。同級1位の挑戦者・西川大和(西川道場)と対戦する。
王者・川名は、2020年7月のキャプテン☆アフリカ戦での1R KO勝ちで同級王座戴冠以来の修斗参戦。修斗世界王者として、2020年9月にRIZINに初参戦し、DEEP王者の武田光司にスプリット判定負け後、2021年6月のRIZIN2戦目でも矢地祐介に判定負けと2連敗を喫しており、修斗ケージに戻っての初防衛戦で本来の強さを取り戻せるか。
対する西川は、立ち技でも活躍する“18歳の二刀流”。MMAでは、2020年5月の修斗初参戦から未だ負け知らずの5連勝中で、前戦では元環太平洋ライト級王者“剛腕”大尊伸光に三角絞めで一本勝ちしている。
また1月に西川は、マックス・ザ・ボディに2R バックマウントからのパウンドラッシュでTKO勝ちを収めており、その後のマックスが環太平洋ライト級王者のキャプテン☆アフリカを下したことを考えても、挑戦者としての評価の高さがうかがえる。
30歳の川名は北米PFL、RIZINでも王者クラスとの対戦を重ねており、経験に裏打ちされた試合運びとケージでの強さに定評がある。一方の西川は、大尊戦でまさかの引き込みからの三角絞めを極めてみせたが、トップに強い川名相手に、今回はどんな戦い方を見せるか。
18歳での世界王者誕生なるか、それとも“TENCHO”のニックネームを加えた川名が北海しゃぶしゃぶ湘南藤沢店の命運を賭けて、虎の子の王座を守るか。本誌インタビューと修斗オフィシャルからのコメントを合わせて、下記に紹介する。
西川選手は、スタンドとグラウンドの“ミックス”がうまくできていない
――9月20日(月・祝)の修斗・後楽園ホール大会で、修斗復帰戦を迎える川名TENCHO雄生選手です。率直に、今回の試合が決まったことをどう感じていますか?
「RIZINの試合が終わってから、比較的早めに防衛戦のお話はいただけて、次の予定が立ったというのはすごい喜ばしいことだなと思います。このコロナ禍の状況で、いつ試合が組まれるかどうかも分からない状態で、明確に『この日やるからね』とオファーがあるのはすごくありがたいですね」
――次の試合の予定が早めに立つことはファイターにとっても、観客にとってもベストな状態の試合を見ることができて楽しみです。RIZINにチャンピオンが出ていて、王座戦線が停滞しがちなときに、ホームに戻って王者としての責務を果たせるという部分もあるのではないですか。
「そうですね。やはり今いる舞台から、チャンピオンの人がまた別のステージに行って、今のベルトをどうするのかというときに、個人的にはちゃんと防衛戦をやるつもりでいて、その話を団体側とちゃんとして出させていただいている感じでした。もちろん他の方々はそれぞれ違う事情があるとは思うので、防衛する・しないは個人の自由かなとは思っていますが」
――そんな中で、挑戦者が18歳で修斗5連勝中の西川大和選手に決まりました。最初にこの話を聞いたときはどう感じましたか。
「西川選手の前回の試合も見ていますし、ランキング1位の大尊(伸光)選手に勝っているので、その挑戦権は得られているということで納得はしていますね。確か中学卒業してから格闘技に専念しているとか……ご両親も、西川選手自身も振り切ってるなというイメージです。まだまだ彼は若い選手です。格闘技に対する覚悟は尊敬します。年齢の割にはいろんな経験も積んでいる選手です。ただその積んできたレベルに関して、自分のキャリアとは比べ物にならないと思っています。その部分の差が試合に影響してくると思います」
――西川選手は2021年は2試合、マックス・ザ・ボディ選手を2R TKO。大尊選手に2R 三角絞めで勝ってきています。
「マックス・ザ・ボディ選手との試合を見て、体格が上の選手相手でも、ちょっと強引にでもいけるかなという体力の強さと、あとは大尊選手との試合を見ると、小技なり、技術を見せてきたので、両方、一応兼ね備えてはいるのかなという印象を受けますね」
――そもそも立ち技の試合も経験している選手です。「立っても寝ても行ける」選手ですが、その間の際、組みの部分では未知数にも感じます。大尊戦では自ら引き込んでいます。
「あまりいい引き込みの形ではなかったなとは思っています。積極的に自分からしっかりと引き込みに行ったという形ではなくて、大尊選手の打撃でちょっとプレッシャーをかけられて、成り行き的に引き込んだという感じかなとは思います。最初からしっかりと引き込んで形をつくっていって、下からコントロールするという印象はなかったですね」
――その形になっても、クローズドガードに入れて相手のパンチを避けながら、下から打撃を入れてスイープを狙う。下のまま3分40秒間を過ごしています。
「相手が引き込みが自信があるならば、全然やってもらっても構わないです。ただ、ポイントゲームで考えるならば、上にトップに立っている人のほうがやっぱり有利です。下はそれなりに、ちゃんとコントロールしているという状況を作らなきゃいけないですし、そうじゃないとポイントゲームでは圧倒的に不利になってくる。その状況を踏まえて、あのスタイルでやってくるのであれば全然楽かなというふうには思いますね」
――緑川創選手と立ち会えるスタンドについては、どのように見ていますか?
「むしろ西川選手は、寝技よりもスタンドのほうがやや強いのかなと感じています。スタンドのほうがまだやれるのかなと。ただ、西川選手の試合を見ていると、MMAをやっているというより、『立ち技』と『寝技』をやっているという印象です。スタンドとグラウンドの“ミックス”がうまくできていないという印象があり、そこは環境的に、練習相手とそういう攻防はあまり生まれていないのかなというのは想像できます。
自分はその点、そういうところでは分があると思っているので、そういった形で、揺さぶりをかけたりだとか、相手のほころびをどんどん見つけていくような試合になるかなとは思っています」
――その意味では、1年2カ月ぶりのケージで川名選手のMMAが発揮出来るのではないですか。
「もともとZSTのリングで十数試合経験していて、修斗に移ってからは主に金網だったので、自分はリングでも金網でも、どちらでもいいとは思っているんです。ただ、対戦相手によっては金網のほうがやりやすいなというのが生まれてくるということはあります」
――今回の西川戦は、後者であると。
「そうですね。西川選手との試合でしたら金網のほうがやりやすいなと思います。そこはもうMMAとして金網を使ったテクニックが使えるので。その点、西川選手はあまり金網を使ったテクニックは、教えてもらっていないのではないかという印象を受けます」
――川名選手が身を持って教える形になる。
「試合の中でいろいろと学んでくれと」
――RIZINのライト級戦線は、もっとも厳しい階級のひとつと感じています。久米鷹介選手、武田光司選手、そして川名雄生選手と、各メジャー団体のチャンピオンが凌ぎを削った。武田戦、矢地佑介戦は、川名選手にとってどういう試合でしたか。
「修斗で今いる人たちよりも、ワンランク上の人たちと試合をすることによって、削り合いというか、しのぎ合いのレベルが上がったなというのはすごい肌で感じました。いい意味でも悪い意味でも更に細分化された自分の立ち位置が確認できた。ぼんやりとイメージできていたものが、ハッキリとくっきりと見えてきた、いい気づきになった感じです。試合の中でいろいろと試していた事もあって、それに確信が持てるようになりました。
武田選手と矢地選手と戦って、もうちょっと自分の中で一皮むけてやれるように、次のRIZINまでになっておかないと、必然的にRIZIN3連敗はするだろうなと。次のRIZINに呼ばれるまでの間に、自分の中でどれだけもう一つ上に行けるかという、最初の第一歩目が今回のタイトルマッチです」
――6月の矢地戦は、接戦の中で競り負けてしまった。あの敗因をご自身ではどのようにとらえていますか?
「あそこは大きく行きすぎたというのはありますね。自分の中ではある程度大ぶりでいって、相手にプレッシャーを与えて下げさせたかった。その作戦はうまくいってたんですけど、精密さに欠けてしまって、矢地選手のブレイクにかかって、体勢が崩れたところを一発もらったという部分がありました。今回はそこをしっかりと見直して、武田戦のときのような、もっと丁寧に丁寧に、自分の味を出せるような形に戻していけるように取り組んできました」
――再びRIZINに戻るまでにもう1段階レベルを上げるという中で、この先の修斗戦線についてはどう考えていますか。
「このコロナ禍、修斗の中でいうと、正直この西川選手を倒しちゃうと相手がいない状況ですね。来年に防衛戦を誰とやるのかとなったら……、ポッと出の若い子が連戦で大物食いを果たしていくようなことが、いまの下の人たちは無さそうなので。今回の試合でもし防衛できたら、来年はけっこうどっしり構えられるなという感じはあります」
――7月の大阪大会では、3位だったキャプテン☆アフリカ(現4位)選手が、ランク外のマックス・ザ・ボディ選手に判定負けを喫してしまいました。
「あの試合、階級がキャッチウェイトで72kg契約だったかと思います。本来の階級ではないんですけども、本来の階級ではない試合で、西川選手がマックス・ザ・ボディに勝って、アフリカ選手は負けてしまって、というのを考えると、西川選手が今のところやっぱりランキング1位なのは妥当で、やっぱり最強の挑戦者を迎え討つような形かなと思います」
――あらためて、今回の西川戦はどんな試合になるでしょう。勝負を決めるポイントは?
「自分は、相手のしたいことを潰していくような形になる。なので、どちらかというと、一見、試合をつくるのは相手なんですよ。そこを自分がどうやって対処、潰していくかで、試合がどんな展開になるか決まる。ポイントは相手がどういう戦略を立ててくるのかという部分ですかね。
そうやって聞くと、“川名けっこう後手に回るじゃん”みたいな話になると思うんですけど、そういう話ではないんです。相手の攻め手を一個一個潰していくような、詰将棋みたいな形になってくるんです。なので、ちゃんと見ていないと、“川名はこういう意図でこうやっているんだな”というのが分からないような、そういった試合になります」
――相手の反応の中でも変わってくる。攻防ですね。
「ハマればハマるほど、将棋だとか、囲碁の試合だか、対局を見ているような感覚になってくるんじゃないかなとは思っています。一つひとつの肩の動き、足の動き、ステップの動き、立ち位置、“どうしてここに川名いるんだろう”“どうしてこういうことをやっているんだろう”というのを考えていくと、あっという間に5分って過ぎると思うんです。もしかしたら、その1ラウンド、ちょっと動きがないように見えるような試合になる可能性もありますが、相手がうまく仕掛けられなかったら、動きが生まれなかったということは、川名がその動きを潰しているよという風に考えてもらっていいと思います」
――その一つひとつのポジション取りも含めて楽しんでほしいと。
「そうですね。見ているお客さんも頭を使うような試合になればいいなと。パンチ・キックで、“うわあ、なんかすげえの当たった、いいの当たった”みたいな試合じゃなくて、どちらかというと、お客さんが、“なんでこういうことをしているんだろう”と考えるような試合になるかなとは思っています。
最終的には、彼のアクションを全て押さえ込みます。そして全局面で潰していきます。自分は5分5Rフルに使って徹底的に心を折りにいく構えです。修斗には特に目の肥えたファンが多いと思います。そのファンの皆さんを納得させるような試合になると思います。『今の川名に勝てる選手はいないな』と思っていただける試合になると思います」
──若い芽は早めに摘んでおこうと。
「教則として使えるような試合をお見せしますよ。タイトルは『北の野生児の仕留め方教えます』でしょうか。なぜこのアクションをしたのか?なぜここで相手を動かすスペースを作ったのか……。何度も見返せる戦術を楽しんで頂けるような試合になります」
──噛めば噛むほど、見れば見るほど楽しめる試合に。
「圧倒的な差を見せつけた上で、徹底的に心を折りにいきます。そしてこの映像を全国のジムで使って欲しいですね。この場合はこう動いてって。実戦で使えるいろんな技術をお見せします。幸いABEMAで何度も見れますからね」