MMA
インタビュー

RIZINから修斗帰還、川名TENCHO雄生「僕の試合がハマればハマるほど、将棋や囲碁の対局を見ているような感覚になってくるはず」

2021/09/19 11:09

ダメージがあっても試合の翌日からお店に立ってます。笑顔でベルト巻いてお迎えしますよ

――まだ9月ですから、その後、できれば年内にもう1試合という気持ちもあるんでしょうか?

「9月でこの試合が終わって、できればもう1試合できるとありがたいのですが、9月に試合って後半組めるかどうか怪しい時期ではあります。9月に無事に終わったとして、10月はやっぱり難しいので、期間的に11月か12月になってくるのですが、12月の大晦日となってくると、ある程度枠というのが厳しくなってくる。それで、11月組まれるかどうかとなってくると、格闘技界の全体的な流れ的に“まだ川名ちょっと出すには早いよ”、みたいなことになるかなという危惧もあります(苦笑)」

――今回がそれを払拭するような形になるのか。それにしても、ここ3、4年の間、店長になったあたりから、かなり環境の変化が激しかったですよね。

「お店をオープンした2017年辺りからは本当に激動でした。開業、結婚から妻の出産。そしてアメリカPFL挑戦、コロナ禍のチャンピオンシップ、RIZIN参戦。目まぐるしかったですね」

──ご家族の皆さん、特に奥様は大変でしたね。

「はい、頑張ってもらいました。このアメリカでの挑戦の時に『俺に投資してくれ!』と説得して。結果的には負けてしまって文句は言われましたが(笑)、選手としては大きな経験になりましたし、自信に繋がりました。自分の当時の立ち位置を確認する事ができた事は選手として大きな収穫でした」

──海外では連敗という結果になりましたが、修斗では2017年から無敗、6連勝中です。

「そうですね。世界タイトルを奪った後に海外も視野に入れていたのですが、コロナの騒動が起きて、それもなかなか難しい状況になった時に良いタイミングでお話をいただきました。その自信を持ってRIZINに参戦したのですが、なかなか結果に繋げられてない状況です」

──2018年シーズンでPFLに参戦していましたが、今でも追っていますか。

「ある程度記事などでは追ったりはしているんですけど。自分が出たときと比べて、レベルはめちゃくちゃ上がっていますね」

──フェザー級は特に。ただあれは過酷なシステムではないですか。ファイターとしてはいかがですか。

「本戦に残れれば、来年ももう仕事が約束される。それは選手にとってはすごくいいですよね。やっぱり団体と何試合か契約していても、このコロナ禍で試合が組まれないという状態も多い。“飼い殺し”状態になることもあります。PFLのシステムであれば、本戦にさえ残っていれば来年は必ず仕事がある。生き残ることができれば、ですが、選手側からすると安心な部分があります。いいいシステムだなと思いますね」

――なるほど。コンスタントに試合をやれるという意味ではいいんですね。

「1カ月半スパンで試合があるので、怪我やコンディショニング作りとかはすごい大変です。最初、ズラっと並んでメンバー発表されたのと、気付いたら半分くらい選手が入れ替わっているような感じもありましたし、この週では試合が出来ても、違う週だとメディカルを通らなくて駄目ということもあります」

――川名選手にとっては、今回の1年2カ月ぶりの修斗マット復帰戦は、どんな気持ちなんでしょうか。

「RIZINよりも修斗のほうが緊張するんですよね。RIZINだと入場したときに、お客さんってやっぱり遠いんです。あまり視線を感じなくて、背景みたいな感じなんです。でも、修斗の後楽園とかですと、やっぱり入場するとお客さんの距離が近いので、視線が生々しいんです。お客さん一人ひとりの顔や表情も分かるので」

――集中するのが大変そうです。ケージの中に入ってしまっても周囲は気になりますか。

「自分は入場曲がかかると、頭の中でスイッチがかかるように、自己暗示みたいなのをかけているので、入場曲がかかればもうバチンと入れ替わるようにしていますね。ただ、それをやる前はめちゃくちゃ緊張してますけど(苦笑)」

――練習仲間の北岡悟選手が入場時に見せるように、それぞれのファイターにスイッチの入れ方がありそうです。

「“やる気スイッチ”を自分でどうやって入れるかというのは知っている選手はけっこういるんじゃないですかね」

――その表情の変化も、現地で、ABEMAで楽しみにしてもらいたいと。

「RIZINに出て、ある程度コアな格闘技ファンの方たち以外の、ミディアムユーザーくらいの方々も自分のことを知ってもらえるようになって、そういった方々が、修斗、DEEPなどの別の団体に興味を持って見ていただけたらいいなというのは思いますね。今回は自分を介して、修斗ってこういう団体で、こういう選手がいるんだというのを知ってもらえたら嬉しいです」

──ところでこのコロナで、川名選手が店長を務める「北海しゃぶしゃぶ 湘南藤沢店」の方にも影響はありましたか。

「そうですね。今は夜のみで3時間しか営業ができない状態です。取り扱っているのがラムしゃぶなので、どうしても夜の時間帯の営業になってしいます。お酒の提供もできませんし、客足も結構減っている状態ですが、店は開けるようにしています。お客様に忘れられないように。コロナが明けた時に皆さんに戻ってきて欲しいですからね」

──飲食関係の方は本当に大変ですね。

「平日はほとんど自分一人で営業しています」

──お客さんもびっくりするんじゃないですか。チャンピオン一人ですか? って。

「格闘技ファンの皆さんは『え?』って感じです(笑)。でも格闘技ファンの皆さんにお店に来ていただくことが多くなったので皆さんに助けて頂いてます。嬉しい限りです。コロナが明けたら沢山の方に来ていただきたいです。笑顔でお迎えしますよ」

――試合とあわせてお店でも、何かキャンペーンを考えていますか。

「RIZINのときも、何かちょっとやりたいなと思ったんですけども、表立って“キャンペーンです!”みたいな感じではいまはやれなくて、ひっそりと、ファンですって来た方々にはちょっとサービスをしたり……。前回から、試合後とかにTwitterのスペースという機能で、試合後こういう感じだったよ、みたいなのはちょっとやっていて、これからもやっていこうかなと思っているので、無事に試合が終われば、当日か翌日くらいにはスペースで試合の報告みたいなのをしようかなとは思っています」

――TENCHOも大変ですね。この間のDEEP JEWELS前では、Y&K ACADEMYの“お嬢さま”山本美憂選手に仕える執事として、前日計量に登場するなど、いろいろなキャラがスパークしているような感じがあるんですが、それは本来の川名選手の姿が徐々に表れているということなんでしょうか。

「けっこうRIZINに出る前の修斗時代は、あまり喋らなくて、寡黙で硬そうな人物だな、みたいな」

――そう思っていました。

「と思われていると思うんですけども、あれって、人間って知らないものに対してちょっと恐怖を覚えたりするじゃないですか。なので、あまり自分の人間味を出したくなかったんですよね。どういう人なんだろうというのをあまり知られたくなくて、そこであえて喋らなかったり、トゲのあるコメントしたりしていた部分はあります。そのストッパーを外した感じですね。今の方が自分の素の部分が出せていると思います。この店長職についた事が影響していると思います。RIZINに出るとなったときに、自分もこういう職業的なものを合わせて考えたときに、店長というキャラを生かして、RIZINに出て、広告塔として頑張っていこうかなと決意し、自己プロデュースに走っていった感じはあります。

 それが思いのほかはまっていって、自分のジムの子たちが試合するときに、少しでも見てもらいたくて、“川名店長がなんかやってる”みたいなきっかけから、その選手の試合を見てもらえたら嬉しいなというのがあって、前日計量とかに付き添ってるというのはあります。計量で大体みんな似たような発言だったりするじゃないですか。10試合あって、1、2人は何か奇抜なことをして記事に取り上げてもらって、大会や試合に注目してもらえればなと」

――選手の戦績を掲載するMMA TAPOLOGYには、すでに“TENCHO”のニックネームが追加されていて、こうして世界に広がっていくのだなと。

「川名よりも店長ってすごい呼びやすいですよね。アルバイトとかをするとたいてい“店長”と呼ぶ人がいて、呼びやすさと親しみやすさというのがあって、やっぱりいいんじゃないかなと」

――今回の修斗参戦でも“TENCHO”が入っていました。

「実は……けっこう考えたんですね。RIZINに出るときだけ“TENCHO”でもいいのかな、とか思ってたんですけども、一緒に練習してる選手からも、“TENCHO”って呼ばれるようになってきて、これはもう統一しようかなと。それでちゃんとリングネーム“TENCHO”入りで申請しました」

――ちょっと悩んだというのが、それもまた川名選手らしいです。

「ちょっと悩みましたけど、修斗は修斗でちゃんと今まで川名雄生でやってきたので、川名雄生でいいのかなと思ってたんですけども、名は体を表すというか、それで周囲もそう認識してくれるので、ここは統一しちゃおうとしました」

――新たな扉を開いた“TENCHO”がどんな試合をするか、期待しています。

「はい。それに試合の翌日からお店に立ってますから、試合をご覧になった皆さんは是非いらしてください」

──翌日からですか!?

「ボコボコの顔でも出てますよ。片目が開いてれば大丈夫でしょう。笑顔でベルト巻いてお迎えしますよ」

◆川名TENCHO雄生(YUKI TENCHO KAWANA)
世界ライト級チャンピオン/初防衛戦
かわな・ゆうき
[所属]Y&K MMA ACADEMY
[出身]神奈川県横須賀市
[生年月日]1991年2月5日(30歳)
[身長]170cm
[戦績]12戦10勝(1S・4KO)1敗1分
[最近5試合の戦績]
2018.03.25 ○(3R判定 3-0)ジン・テホ
2019.01.27 ○(3R判定 3-0)岡野裕城
2020.07.12 ○(1R3:48 KO)キャプテン☆アフリカ
2020.09.27 ×(3R判定 2-1)武田幸司 ※RIZIN
2021.06.27 ×(3R判定 3-0)矢地祐介 ※RIZIN
[Twitter]@yuki0205k

MAGAZINE

ゴング格闘技 NO.335
2024年11月22日発売
年末年始の主役たちを特集。UFC世界王座に挑む朝倉海、パントージャ独占インタビュー、大晦日・鈴木千裕vs.クレベル、井上直樹、久保優太。武尊、KANA。「武の世界」でプロハースカ、石井慧も
ブラジリアン柔術&総合格闘技専門店 ブルテリアブラジリアン柔術&総合格闘技専門店 ブルテリア