前田さんの技はどの格闘技ジムでも見ない技です
――そういえば、朝倉海選手の動画で、前田日明さんとコラボするなかで、投げのひとつで、「こういうやり方もあるんですね」と感心していた動画を見ました。
「これまで僕もいろいろな格闘技のジムに出稽古に行かせてもらったり、いろいろな技を見せていただきましたけど、前田さんの技はどの格闘技ジムでも見ない技です」
――それは……カール・ゴッチ式ということなんでしょうか?
「そうですね。ゴッチ式もありますし、実際に前田さんがかけられたことがあるとも話されていて。あとは、藤原喜明組長の関節技とかも踏まえて、ここからこうするんだよ、というのを僕は教えてもらっています」
――海選手が前田さんからレクチャーを受けていたのは、バックからの投げのようでした。
「あれは、ディテールは話せませんが、スタンドバックで片方が後ろから抱きついていて、もう片方が背後につかれている状態。そのときにクラッチの組み方が違うんです。そして持ち上げる方向、落とす角度が違う。通常は上にリフトして横に落としたりするようなイメージもあると思うんですけど、それが、持ち手の組み方、落とす角度・方向が違っている。そこに体重のかけ方とか、自分の立ち位置、ポジショニング、そういう細かい部分の指摘があります」
――なるほど。それはキャッチレスリング、あるいはロシアの選手から伝わったのでしょうか。
「ロシアからだと思います」
――バックを取られて腰を出してアームロックでクラッチを切ろうとしても……。
「切れないですね。切れない理由があります。そういったことを一個一個教えてもらって、忘れないようにメモに書いて、口に出して読み書きをしなさいと言われています」
――藤原さんがカール・ゴッチから教わった技をノートに記したように。
「そうですね。その上で繰り返し練習し、身体に覚えさせています。そういう姿勢を前田さんも見ていてくださったのだと思います。懸命に覚えたかったし、前田さんの背中が好きだったから。僕が言うのはおこがましいですけど、前田さんがいいと感じる“色”が僕もいいと感じられた。僕もその色になって生きていくなら、その色を見せてもらっていいですか、というところから繋がった関係性なんです。
それに国内で“リングス所属”を名乗る、数少ない選手の一人なので、“まだ継承してるんだぞ、まだ前田日明のイズムを持っている選手がいて、これだけ頑張っている選手がいるんだぞ”、というところを見せていきたいです」
――前田さんも愛弟子の活躍に期待しているでしょうね。その前田さんの技術に、いまのMMAの技術が横浜グランドスラムでミックスされているのは興味深いです。
「そうですね。勝村さんとコミュニケーションを取らせていただいて、様々なプロ選手から刺激を受けて、前田さんから教わった技を試してみたり」
――動画で見せていた「当たる瞬間まで前蹴り」は伊藤盛一郎選手が受けた、と言っていました。
「あれも動画では大事な部分は見せていないんです」
――横浜グランドスラムで練習ということは、小見川道大選手のあのヴォンフルーチョークも経験したのでしょうか。
「はい。小見川先輩のヴォンフルーチョークも、ナラントンガラグが朴光哲選手を極めたときに、どうやって相手の気道を塞いで落としているのか、自分も研究していました。小見川先輩はあれをアングルを変えて、ご自身が今までやってきた柔道の抑え込みにアレンジしたサイドからの頭を入れない肩固めにしていましたね」
――柔道といえば、Ryo選手はもともと吉田道場でしたね。柔道ではどんな実績でしょうか。
「日本体育大学出身で柔道は四段です。そんなに大きなタイトルを獲ったことはないです。講道館杯という日本一の体重別決定戦で優勝をした方、田中秀昌選手に勝ったことがあるくらいです。当時、66kg級でした」
――吉田道場ではどのような練習をされていたのですか。
「当時の吉田道場には、吉田秀彦さん、中村和裕さん、滝本誠さん、小見川道大選手、村田龍一選手、和田竜光選手、長倉立尚選手、それに真騎士=マキシモ・ブランコ、大澤茂樹選手らがいて、長南亮さんも参加されていました。自分は、吉田道場で子どもたちに柔道を教える立場で、大学を卒業してから社員として雇っていただいていたので、なかなかプロ練習に参加できなかったのですが、すごいメンバーだったと思います」