佐藤「チームのみんながハングリーで、常に準備をしてきた」
──さて、こうして強くなる環境を自身で作ってきたお二人がいよいよ試合です。佐藤選手は、前回の試合で対戦相手が二転三転どころか四転五転というなかで、一度、今回戦うダニエル・ロドリゲス(MMA12勝1敗、UFC2連勝中。2月にティム・ミーンズに一本勝ち、5月にガブリエル・グリーンに判定勝ち)が候補に挙がっていたようですね。
佐藤 はい。対戦相手が変わって相手がいないからというので、ダニエル・ロドリゲスのほうに打診をしたみたいなんですけど、2週間前くらいに試合(グリーン戦)したばかりで、さすがにまだ体中痛いから無理、ということで流れた感じですね。
――ティム・ミーンズをニンジャチョークで極めたロドリゲス選手、かなり手強いと感じました。
佐藤 強いですね。やっぱり一発ある選手で、倒す力だったり、試合を決める力を持ってるので。UFCの選手はみんなそういう選手ばかりですけど、アグレッシブですごい好戦的な選手です。
――サウスポー構えで下がりながらもシャープな打撃を打てる。右のジャブと、左は振って来ますね。
佐藤 そうですね。主体は右のジャブと左のオーバーハンド。
――前回の試合からまだ2カ月。試合間隔も短いなか、その相手にここは勝負したいという気持ちもあって試合をすることにしたんでしょうか。
佐藤 前回の試合も短いラウンドで終わって怪我もなく、すぐに練習も再開していたので、本当にいいコンディションを保ちながらやれているので。
魅津希 めっちゃいいですよね、コンディション!
佐藤 はい、めっちゃいいです。2月も1回、身体を作っているので。試合は流れましたが、すぐに練習に戻って。本当に11月からずっといいコンディションを保っています。
魅津希 絶対勝つじゃないですか。
佐藤 チームのみんながハングリーなのと、「コロナの時期でいつ試合があってもおかしくない」とコーチから話を聞かされていますし、その前からみんな体重も作っていて、1週間とか2週間前のオファーでも試合に出られるような準備をしています。他の団体に出ている選手もそうですし、めちゃくちゃ雰囲気いいですね。それをずっとみんな続けてるのはプロだなと感じています。
――たしかに。オファーが来るかもしれないとはいえ、決まっていない試合に向けて準備をし続けられる意識の高さを感じます。さて、魅津希選手は、佐藤選手と同日にブラジルのアマンダ・ラモスと対戦します。前回は急なオファーを受けて一階級上のフライ級のウー・ヤナンと対戦し勝利しましたが、今回のラモス戦は本来のストロー級での参戦となります。減量はいかがですか。
魅津希 体重は大丈夫です、たぶん(笑)。すでにあと3キロちょいくらいなので、いい感じでは落とせてきているかなと思います。問題ないです。
――アマンダ・ラモスは、7勝1敗1分で、7勝のうち5つがKO、2つが一本勝ちというオールフィニッシャーです。バンタム級でも戦っていましたね。
魅津希 そうなんです。バンタムでやっていて、レスリー・スミス戦後(2017年11月)、ドーピング検査で引っかかってから、たぶん2年くらい試合をしていなくて、昨年の12月にストロー級でミランダ(グレンジャー)に一本勝ち(リアネイキドチョーク)している。でも、研究材料があんまり無くて。ストローでやっていた試合も、打撃をあまり出さずに組み付いて転ばせてチョークで極めたという感じでした。
ただ、私は3月の試合延期からずっと家で出来ることしかやって来なかったので、相手どうこうより、どれだけ8月22日にコンディションを戻せるかが勝負で、自分のコンディション次第だなと思ってやってきました。練習再開後、コーチとマンツーマンで始めたんですけど……体重が重かったのもあるんですけど、スタミナは切れるし、こんなヤバいことあるかなと思って……始めた初日は死にましたね……。
佐藤 本当に1、2週間休むだけでも全然身体が変わっちゃいますよね。
魅津希 その通りで、しばらくは本当にへにょへにょだったんですけど、追い込んでもらって、なんとか調子を取り戻すように頑張って、ちょっとずつ戻ってはきたんです。今はすごく調子がいいので、それが試合で出せればいい感じで、見せられる試合が出来ると思います。ただ、相手がどうくるか分からない部分が怖いので、序盤どう来るか。ローキックとかけっこう出してくるので、そのあたりは気を付けて、パンチの軌道も試合で確かめるしかないかなと思っています。そうだ、佐藤さん、無観客ってどうですか?
佐藤 やっぱり変な空気はありますよね。試合前って緊張感や高揚感もあるじゃないですか。それが無観客によってかき消される感じはしましたね。
魅津希 やっぱり観客はいたほうがいいですか?
佐藤 自分はいたほうがいいタイプですね。ただ、別に始まっちゃえば変わらなかったですけど。
魅津希 セコンドの声は聞こえます?
佐藤 それはすごく良く聞こえますね。
魅津希 相手のセコンドの声も聞こえます?
佐藤 聞こえますね。自分にとってはその点は良かったですね。あとは……勝った後にあんまり騒げないという、変な空気になるのはありました(苦笑)。
魅津希 別に騒いでいいんですよね(笑)?
佐藤 全然騒いでる選手はいるんですけど、反応がワーッて返って来ないので、しりすぼみになってしまうというか。観客がいる時とは別の変な緊張感はあるかもしれないですね。あと、自分はあんまり感じなかったですけど、日本のTRIBEの選手で無観客で試合した選手は、『ちょっと疲れる感じがする』って言ってました。人それぞれなんじゃないかなと思っています。
魅津希 私的にはやっぱりお客さんはいたほうがいいかなと思っちゃいました。まだやってないので分かりませんが。中国で自分がアウェーだったとき、ホームの選手への声援が多くて、絶対勝ってやろうと思ったんです。ぶっ倒してやろうと思いながらやれるので、無観客ってどうなんだろうなと、ちょっと微妙な感じがしていました。
佐藤 自分はなかなか無い経験だと思って楽しめた部分もあるんです。観客有りとは違うということさえ頭に入れておけば、問題ないのかなと思います。
魅津希「夏南子ちゃんとはチャンピオンシップで」
──現時点でUFCで戦っている日本人選手はお二人だけですが、先日、村田夏南子選手がUFCと契約し、同じ女子ストロー級のライバルとなりました。RIZINから村田選手が参戦してきたことについてどのようにとらえていますか。
魅津希 日本人でUFCに入ってくる人ってなかなかいないと思うので、夏南子ちゃんがすぐ試合するか分からないですけど、早く一緒に戦えたらいいなとすごく思います。同じ階級なんですけど、スポンサーが一緒なので、仲がすごくいいと私は勝手に思ってるんです。ビデオ電話とかでも、奈部ゆかり選手と夏南子ちゃんとよく3者通話をしていて、いろいろ喋っています。互いに高みを目指して、もし、対戦することがあるならタイトルマッチ以外はやりたくないなと私的には思っています。向こうもたぶんそう思っていると思いますけど(笑)。それにファイトスタイル的にも夏南子ちゃんと私は相性が悪いので、やりたくないです(笑)。
――数少ない日本人選手同士、互いに勝ち上がってチャンピオンシップで会いたいと。
魅津希 そうですね。本当に同じ団体で、一緒に勝っていけたらいいなとすごく思います。
――なるほど。では、最後にあらためて、日本のファンに向けて、試合の意気込みをお聞かせください。
佐藤 今回、日本人ファイターとして魅津希選手と同じイベントに出場できることを嬉しく思います。本当に昨年末からずっといい形で練習を進めてきて、いろいろなことがありながらも、格闘技に集中できる環境を維持しながら、すごく高いモチベーションのまま、自分を作ることが出来ました。今回の試合が4試合契約の最終戦です。1試合負けてしまっているので、今回、本当にしっかり勝ってフィニッシュして、3勝1敗で契約を更新して、本当の意味でUFCファイターの仲間入りを果たしたいと思っています。ぜひ応援していただけると嬉しいです!
魅津希 3月の試合が流れてしまって、コンディションが悪くなって、そこからまた立ち上げた形になって、今回、8月の試合を迎えるわけですけど、本当にファンの皆さんも楽しみにしてくれていると思うので、負けられない試合なんですけど、一番面白い試合をしたいという思いもすごくあります。ただ、前回と異なり自分の階級のストロー級で戦う、負けられない試合なので、勝ちに固執しすぎて面白くなくなってしまったら、ごめんなさい(笑)。そして、たぶん私の方が佐藤選手より早い試合順だと思うので、勝って佐藤選手に繋げられたらいいなとすごく思っています。そのためにも、いいコンディションで試合を迎えたいと思います。