MMA
インタビュー

【UFC】日本人UFCファイター同時出場対談! 佐藤天「本当の意味でUFCファイターの仲間入りを果たしたい」× 魅津希「勝って佐藤選手に繋げたい」=8.22「UFC」

2020/08/19 10:08

佐藤「ここは青木さんがたくさんいるみたいな感じ」

佐藤 自分もそうですね。カマル・ウスマンとか、 アウンラ・ンサンとかチャンピオンばかりで、ギルバート・バーンズとかも、みんな強いので、そういう衝撃もあったんですけど……初めて来たときは、ゲストじゃなくて、ただの出稽古みたいな感じの扱い方をされるので、スパーリングとかも“5割(の力で)”って言われてるのに、みんなもう倒しにくるんですよ(笑)。すごかったです。当たり前だなとは思ったんですけど。いまだにそうですね。新しい選手が来ると、誰かしらにやられてます。“お前なんか知らねえよ”みたいな感じで。

――やはり出稽古といのはそういうものなんですね。チームメイト以外の人間なら試したいことも出来る。その洗礼を浴びたと。

佐藤 洗礼を浴びたんですけど、自分はけっこう慣れているというか。日本でも青木(真也)さんとかと一緒にやってきたので、練習で青木さんにやられて殴りかかったりとかもしてたんで(笑)、慣れてるというか。ここもそんな感じね、みたいな。青木さんがたくさんいるみたいな感じで。

――その佐藤天伝説、聞いたことがあります(笑)。しかし「青木さんがたくさんいるみたいな感じ」は説得力があります(笑)。

魅津希 “ここはそんな感じね”と思える佐藤さんはすごいかも(笑)。

佐藤 確かに自分も出稽古が来たときは、同じ階級の人たちから“一生勝てない”と思わせてやろうみたいな気持ちになるときはあるので、分かるんですけど、そういうこともあって、本当最初はキツかった時もあったんですけど、ずっと通って本気だというのを分かってくれたらチームとしてすごく良くしてくれるんです。

魅津希 分かります。他の日本人選手もアメリカで練習したほうがいいと思います? 私たちみたいな感じで。

佐藤 合う・合わないはあるのかなと思います。今、自分はフロリダで誰も周りに知ってる人がいない。その分、やるべきことをやれているし、みんな同じ目的でトップを目指している。住んでいる環境が、最初はキツいですけど、それが当たり前になっちゃえば、ストレスもそんなに無いというか。本当に、思いっ切り格闘技が出来ているので、逆に毎日刺激があっていいという感じなんです。でも、人によっては、言葉も違うし文化も違うので、環境に慣れずにストレスを感じる人は、練習前に潰れちゃったりとかもあると思います。

 ただ、選手として必要なものはたくさんあると思っています。ジムにもよると思いますけど、自分のジムにはコーチに各専門家がいて、ヘンリーが打撃コーチで、もともと立ち技選手ですけど、MMAの打撃コーチ業として確立している。レスリングコーチもそう。コーチ業に専念しているので、はっきり言って技術レベルが日本とちょっと違うというのがあります。そういう環境を求めるんだったら、いいものは転がっていると思います。

 一方で、日本のほうが形ができるまではすごく丁寧に教えてくれるというところもある。こっちの選手はもともと武器を持っている、いい選手が来るんですけど、形が出来ていないと、一から教えるというのはそんなに丁寧ではないというか、親切ではないかなと思っています。プロの選手が集まって揉まれながらも、ちゃんと技術もドリルとかでどんどんやっていくという感じなので、やっぱりある程度形が出来ていたほうがやりたいことを得られるかなというのは思います。

魅津希 確かにそれはありますね。

佐藤 自分もレスリングとか、全然日本でちゃんと教わってこなかったこともあって、こっちで一個一個教わったという経緯もあるので、日本で経験を積んで形になっている選手で、さらに上を目指したいんだったら、こっちにきて損なことは無いんじゃないかなというのは、自分の体感として思いますね。

魅津希 私も愛知で培った打撃の技術があったので、それにプラス、自分に足りないものをと思ってアメリカに来たんです。技術の足りない部分のパーツを集めて融合させる。打撃があるから、ロンゴにいるアルジャメイン・スターリングのような、レスリングがすごく上手い選手にも教えてもらって、グラップリングを強化できる。プラスしていくことでどんどんレベルアップしていく感じなので、土台があるのとないのとでは、ちょっと違うかなと思いました。

佐藤 あとは本当にコーチ全員が一つのジムにいることも大きいです。東京でやっているときは、ボクシングはボクシングジムで練習し、レスリングは大学に行って練習して、さらに出稽古も行って……とやりくりしていくんですけど、結局、それをまとめて見てくれる人がいないから、自分で取捨選択して、自分で全部まとめていかないといけない。それはちょっと効率良くないかなという。

 こっちの場合、コーチ全員が同じ場にいて、同じ練習を見ているので、すぐに意思の疎通が選手と出来ますし、コーチ間の意思の疎通も出来ているので、とても理にかなっている。選手って時間が限られるので、そこの効率も考えると環境はすごくいいと思いますね。

魅津希「弟(井上直樹)にバックに回られると逃げられない」

――そういえば、ニューヨークで練習を積み、いまはRIZIN参戦のため日本で練習している魅津希選手の弟の井上直樹選手が先日、見事な一本勝ちを極めました。あの試合は魅津希選手はどのようにご覧になられましたか。

魅津希 佐藤さん、私の弟、どうでした?

佐藤 良かったです。正直言って対戦相手とはレベルが違うなと思ったんですけど、そういう試合ってけっこう難しい部分もあって。その中ですごい冷静に戦えていたというのは、強さが一回り二回り違うなと。あれだけ打撃が出来て、極めもあって。MMAとして攻撃を繋げられるというのは、完成度が高いですよね。RIZINを2日間見てすごいなと思ったのは、井上選手と朝倉海選手。海選手に並んで、実力がある選手だなと、見てすごく実感しましたね。

魅津希 私の弟をすごい褒めてくれる!

佐藤 魅津希選手もそうですけど、やっぱり打撃のレベルが高い。正直言って、全体的な日本の総合格闘技の打撃のレベルって高くはないと思っているんです。その中でも、あれだけ極めがあって、打撃も高いレベルで出来ているというのは、なかなかすごいなと思っています。

魅津希 日本人ってけっこうスタミナ重視じゃないですか?

佐藤 そうですね……あとは「総合格闘家には、総合格闘技用の打撃がある」みたいなことを言う人がけっこういるじゃないですか。もちろん間違ってはいないんですけど、前提として打撃の技術があるのかどうか。ボクシングでボクサーと対等に出来るだけの技術があれば、そこから応用で総合格闘技に回せるはずなんですけど、形が出来ていないで総合格闘技だから総合の打撃だけでいいというのは逃げなのかなと。

 組みもそうですよね。「ピュアレスリングと総合格闘技は違うから」と言うとき、そもそもレスリングの技術を知っているか。総合は別と言う選手が多い中で、井上選手があれだけグラウンドもレスリングも打撃も完成度が高いというのは、本当にやり込んでいる証拠だと思うので、そういう部分で勉強になりますし、ほかの選手も見たほうがいいと思っています。

魅津希 弟に代わって、ありがとうございます(笑)。弟とはいつもニューヨークで一緒に練習してたので気になって。こっちでの私とのスパーリングのときとかは茶々入れると、「ふーん」みたいな、聞いてるのか聞いてないのか分からない感じなんですけど(笑)、日本では水垣偉弥さんからアドバイスをもらいつつ、アメリカのコーチとマネジャーと弟で、ZOOMで水垣さんのトレーニングも見させてもらったりもしていたんです。

──おお、そういったチームでの共有も海を越えてされていたんですね。

魅津希 はい。ソニックスクワッドの皆さんにもお世話になって、怪我も無くコンディションもいいし、まあ大丈夫だねと思っていたんですけど、すごいいい形ですぐにチョークを極めて。セットも早かったのですごく良かったなと思います。結果的にすぐに終わっちゃったので、もう少し打撃の部分も見たかったですけど。

──がぶりからバック、チョークを武器とする渡部修斗選手を相手に、リアネイキドチョークで後ろ手を2回剥がされましたが、最後の拳の隠し方が絶妙でした。

魅津希 そうですね。裏、バック回られるともう逃げられないんですよ、私も。足も長いし、『邪魔』と言って(笑)ほどいても入って組んでくるんです。

佐藤 秋葉もやられてる(2016年4月「DEEP CAGE IMPACT 2016」で秋葉尉頼が井上にリアネイキドチョークで一本負け)ので、あのときは敵コーナーでしたが、強いのは分かっていました。今回もバック取って、ああもう相手は逃げられないなと思いました。強いですよね。

魅津希 でも、弟がリング上のマイクで石渡(伸太郎)さんの名前を出したらしいんですけど、たぶんあれ困って、目の前の解説席に石渡選手がいたから言ったと思うんですよ(笑)。だって、そんな(試合前は)石渡選手とやりたい、みたいな感じじゃなかったので、マイク渡されて困ってテンパっちゃって、じゃあ、みたいな。そしたら石渡さん、ツイッターで「じゃあとりあえずみたいな雑な絡みやめて」みたいな感じで言ってて、あ、これだと思って(苦笑)。石渡さん、怪我している中、すみません。弟も困って言ったんだなと思って。次、強敵と当たるかもしれないので、もうちょっと、日本で今やっている練習の成果が出てくれたらいいなと思います。

佐藤 元谷(友貴)選手とやってほしいですね(※その後、井上直樹はSNSで「9月試合できます、元谷選手どうでしょうか! お願いします!」とツイート)。

魅津希 そしたら盛り上がるじゃないですか。強い選手と強い選手が当たって、弟の強さも光ってくれれば、日本もすごい盛り上がるだろうし、実力も分かってくれるだろうし。だから、次の試合も楽しみですね。

MAGAZINE

ゴング格闘技 NO.331
2024年3月22日発売
UFC参戦に向け、ラスベガス合宿の朝倉海。「プロフェッショナル・ファイターの育て方」でチームを特集。『RIZIN.46』鈴木千裕×金原正徳インタビュー、復活K-1 WGP、PFL特集も
ブラジリアン柔術&総合格闘技専門店 ブルテリアブラジリアン柔術&総合格闘技専門店 ブルテリア

関連するイベント