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インタビュー

【UFC】日本人UFCファイター同時出場対談! 佐藤天「本当の意味でUFCファイターの仲間入りを果たしたい」× 魅津希「勝って佐藤選手に繋げたい」=8.22「UFC」

2020/08/19 10:08

魅津希「足と連動してパンチを打つ、その使い方が佐藤選手はすごい上手だなって」

――佐藤選手の前回の試合(6月27日ジェイソン・ウイット戦)でも、最初いくつかの種類の違うジャブを突いて、相手の反応を見ていたそうですね。

佐藤 そうですね。あれも当てるだけじゃなくて、触ったりとか、相手がどういうふうに反応するのかを見て探りながら、短い時間でしたが、いい感じで1発目のストレートが当たった。あれもしっかり位置取りしながらじゃないと、自分が出すときに相手の打撃をもらう危険性も高まるので、そういうことを分かってやるのと、分からずやるのとではまったく結果が変わってくるかなと思います。

魅津希 そこの部分を強化しようという人は少ない?

佐藤 いや、たぶんそのやり方がわからないんじゃないですか。サンドバッグを思いっ切り叩いたりとか、打撃の練習に時間を費やしている人はたくさんいると思うんです。ただ、そのやり方が間違っていることもある。悪いやり方で覚えちゃうと本当に上達しない。そのメカニズムを理解して指導してくださる方がとても大切なのかなと思います。

――佐藤選手を指導している極真空手&メジロジム出身のヘンリー・フーフトコーチは、「対戦相手用の練習をするのではなく、自分のスタイルのトレーニングをするんだ」と、それぞれの選手の個性にあった指導をすると聞きました。佐藤選手にもそうしたアドバイスがあったのでしょうか。

佐藤 そうですね。けっこうシステム化されたドリルもやるんですけど、一人ひとり選手の特徴を見て、ミットとかもしてくれるんです。元々のスタイルを生かしながら、それに付け加えて、もっとこうしたほうがいいよという。自分の場合も、こうなったら危ないよという部分を教えてくれながら、ちょっとずつ良くしていってくれます。そこがすごい入り込みやすくて良かったですね。

魅津希 前回のウイット戦でも、右ジャブ、左ストレートと見事なTKO勝ちでしたね。あの出入りは……。

佐藤 あれも自分、顔を弾くジャブを使うので、そこから……詳しく言うと、身体を入れて弾かせると、相手の顔が後ろに行くので、そこからストレートを打とうとすると、届かないか浅いというケースがけっこう練習とかでもあるんです。試合でも、リーチが長い選手とやったりすると、顔が後ろにのけぞる選手の場合、届かないケースが多くて。そこも考えながら練習していて、ジャブを打って、後ろに弾いた分、後ろ足を寄せて。「ワンツー」というよりは、「ジャブ、ステップイン、ストレート」という感じですかね。

魅津希 ジャブから詰めてストレートを当てて、足と連動してパンチを打つ、その使い方がすごい上手だなと思っていました。私だとけっこう前のめりになっちゃうので“おっとっと”みたいになるんですけど(笑)。その身体の使い方が上手だから、ストレートもすごくいいタイミングで届くんだろうなと思います。

佐藤 ありがとうございます。ジャブは“当てよう”とすると前に(身体が)残っちゃうじゃないですか。自分も当初、ボクシングをやり始めたときはそういう感じだったんですけど、打った後すぐ戻れるというか、どの方向にもいけるように意識しています。

 あのウイット戦のときはジャブして、ステップインしてストレートで入ったんですけど、ああいうジャブで戻れる準備もしながら、どっちも行けるように準備をして──一瞬なんですけど相手の様子を見て──入れそうだったので入るという感じです。なので、打った後も続くような意識をすごく持つようにしています。ヘンリーもその部分で、コンビネーションの一部にステップバックだったりを入れたりするので、すごくいいですね。複雑なことじゃないんですけど、すごく大事なことというか。

魅津希 レイ(ロンゴ)も試合前になってくると、相手のスタイルを考慮した上で、このパンチをやったほうがいいからと言って、コンビネーションを組んでくれるんですけど、私が得意ということもあって、ステップよりはダッキングとかヘッドムーブを多く採り入れて打ってくれるんです。今思ったんですけど、私もステップももっと練習しないとなと。スパーリングでもヘッドムーブで体勢が崩れたら、ステップワークをもうちょっとやらないといけないなって自分の中で考えていて。レイのミットでもいつもセコンドの人が近くで見てくれているので、そのアドバイスを聞きながら修正して、一緒にやっている感じです。

魅津希「コカされるし、立てない。技術を持ってるんだなと感じた」

――新型コロナウイルスが世界に広がるなか、お二人とも米国に残って、あるいは米国に戻って、今の練習環境を選択し、試合機会を得てきました。その時の判断はどのように考えてきたのでしょうか。

佐藤 自分は2月の試合が流れて(ニュージーランド大会で対戦相手のマキ・ピトロが体重超過で試合中止)、一時帰国したんですけど、トランプ大統領が入国制限をかけるかもしれないというので、急きょ予定を早めて、3月の時点でアメリカに帰って来たんです。いろいろ心配はありましたが、やっぱりこっちでの練習環境、大きい選手もいますし、UFCで勝つためには必要だという風に思っていて、日本に留まるよりはアメリカにいた方が試合のチャンスも増えるでしょうし、そういうことも含めて、やるべきことをしっかりやるという意味でも、こっちに残るという選択をしました。

魅津希 私も3月28日の試合(テシア・トーレス戦)がコロナで流れてしまって、日本に帰っても2週間隔離になってしまうし、日本でも変わらずステイホームだなと思ったので、対処方法としては変わらないなと思ったので、収束を待つしかないなと思って、落ち着くまでこっちにいようと判断しました。

――それで室内で「ビリーズブートキャンプ」をやっていたと。

佐藤 それ見ました、自分も(笑)。

魅津希 あれ、けっこうきついんですよ! 50分やりました。

――1人でやりきるのはキツそうです。

魅津希 そうですよー。でも1人で黙々とやってて。「あれ、体重減ってるな」と思って。汗めっちゃかくんですよ(笑)。

――その頃、佐藤選手は外でプールサイドとかで練習していましたね。

佐藤 ちょっと家の外で動けるスペースがあるので、時間を決めて集まって、3週間の自粛期間中も、1日2回とか動くようにしてましたから、出来ないながらもやれることはやっていてので、11月にフロリダに来てから、ずっといいコンディションを保つことが出来て、ニューヨークとかと比べると、選手としてはラッキーな環境だったのかなと思います。

魅津希 私はつまらなかったです。ブートキャンプも飽きてきて(苦笑)。

佐藤 それはずっとやっていたら飽きますよね(笑)。

魅津希 佐藤選手のところはファイターズハウスのチームメイトでステイホームしつつも、一緒にやれることはやれるって感じじゃないですか。私の方は弟(井上直樹)も(RIZIN参戦で)日本に帰らなきゃいけなかったので、1人だとやることが無くて。また言いますけどブートキャンプは飽きるじゃないですか(笑)。もうつまんなくて、一番凝ったのが、お菓子づくりでした。

佐藤 それ、体重増えちゃうヤツじゃないですか(笑)。

魅津希 マズいんですけど、やること無さすぎて。買い物も1週間に1回とかで、もうお菓子づくりのために、このお菓子には何がいる? ああ、豆乳か、とかって。

佐藤 ハハハッ(苦笑)

――そういえば練習のみならず、日常生活も英語なわけですよね。佐藤選手はウイット戦でのバックステージでのインタビューで「英語でトライします」と回答していましたね。

佐藤 チームメイトと一緒に生活してるので、英語しか使わないし、コミュニケーションも取らないといけないという環境なので、間違えてもいいからどんどん話そうと。フロリダはスペイン系の人とかもたくさんいるので、けっこうみんなメチャクチャな英語でもバンバン話すんです。間違えててもいいじゃん、というような。相手も分かればいいと、正しい英語を求めているわけではないので、どんどんコミュニケーションを取っていこうというところから始めましたね。30分くらいですけど英語の映像を見たりするようにしていますし、あの試合が終わってから、オンラインで英会話レッスンをしませんかというメッセージを何件かいただいて、始めてみようと思って、今、ちょっと習っています。

魅津希 それ、ズルい! 私も欲しい!

――魅津希選手、全然ズルくないです(笑)。

佐藤 (笑)インスタグラムとかで1分くらいの、英語で自分の小さな頃の物語とかを、英会話のレッスンの一環で上げてみましょうみたいなのを継続してやっていこうかなと思っています。海外の人からもけっこう反響があって、嬉しかったですね。

 ところで、魅津希選手も海外に練習拠点を移して、自分と同じ環境だと思うんですけど、僕は当初、海外勢と自分との差を確かめたくて、そういう目的を持って来たんですけど、最初に来たとき、衝撃を受けたんです。選手が強いのはもちろんなんですけども、練習とかの一個一個のディテールが細かいし、すごくハングリーなんですよね。そこにすごく驚きというか、“これは差がつくな”というのを、今のサンフォードに来てすごく実感してます。アジアの選手もいるし、いろいろな国から選手が来ているんですけど、魅津希選手は初めて来たときはどんな印象だったんですか?

魅津希 私はレイのところに来たとき、ロングアイランドに行ったときは、当初、女子の選手がそんなにいなかったんです。練習相手とかもそこまでレベルが高いわけじゃなくて、アマチュア上がりのプロ選手が多くて、スパーリングもそこまで強いなとは思わなくて。こっちに来た当初に、フライ級のジェシカ・アイとケイトリン・チョケイジアン(両者ともにヴァレンティーナ・シェフチェンコの女子フライ級王座に挑戦経験あり)が練習しに来て、スパーリングをやったんです。ジェシカ・アイとはけっこう渡り合えちゃって、なんなら腕十字ちょっと取りかけたみたいな感じになって、いけるなと思ったんですよ。

 その後もスパーリングパートナーがいなかったので、ヘンゾ・グレイシーのところに行ったんですね。コロナ前とかは週1、週2とかで行ってたんですけど、打撃は渡り合えるんですけど、グラップリングに関してはメチャメチャ強いなと思って。日本では出稽古とかあんまりしたことなかったですけど、女子で一緒にやっていたなかで、グラップリングでこんなに強い選手はいないなと思って。レスリングも上手いし、コカされるし、立てないしってなったときに、やっぱり技術を持ってるんだなというのを感じました。

 MMAで試合していると、やっぱり自分の得意なところで戦うのでそんなに分からなかったですけど、場面場面で上手い外国人選手は、細かい技術練習をやっている。私が一番、衝撃を受けたのはグラップリング、レスリングの部分でした。愛知では、打撃を主にやっていたので、それ以外の部分を自分は強化しないといけないんだなというのを再確認しましたね。ヘンゾのところでコテンパンにされて……ムカつくんですよ、本当に(笑)。

佐藤 分かります。

魅津希 ここで取り組めば、自分はもっと強くなれるなというのを感じて、コロナ前は毎週毎週行っていましたね。

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