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シンガポールの総合格闘技団体「ONE Championship」(ONE)のチャトリ・シットヨートンCEO兼会長が5月26日収録のABEMAインタビュ-にて、7月の大会再開(※31日タイ・バンコク)を宣言。同大会を完全生中継するABEMAのインタビューにて、今後の日本市場や日本人選手についても語った。
新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、2020年2月28日のシンガポール大会を最後に、本戦の大会を中断していたONEだが、7月31日(金)のバンコク大会を皮切りに、スタジアムで無観客大会を再開。31日は「ONE: NO SURRENDER」として、全12試合を行う。
バンコク大会のリングでは、3試合の対戦カードが決定。ロッタンvs.ペッダムのONEフライ級ムエタイ世界王座戦、ペットモラコットvs.ヨーセンクライのONEフェザー級ムエタイ世界王座戦、スーパーボンvs.シッティチャイの豪華カードが発表されている。
立ち技競技の大物選手を次々と獲得しているチャトリCEOは、「世界中の立ち技の選手に『もしも自分が世界で一番のキックボクサー、あるいはムエタイ選手であることを証明したいならONEで戦って示せ』と言いたい」と、ラインナップに自信を見せた。
また、日本人選手についても「若松佑弥、平田樹の試合を早く観たい。秋山成勲は私のお気に入り」と語り、青木真也、岡見勇信、内藤のび太、猿田洋祐らの名前も挙げ、「今後1年間で多くの日本人選手が王座を獲得できると願っている。世界中で名前が知れ渡る真の日本人のスーパースター──大坂なおみのような選手──を誕生させたい」と展望を語った。
4万3千人を越える東南アジア最多の感染者を出しているシンガポールだが、死亡者数は26人(※6月26日時点)。4月7日から、必須サービスや製造活動を除く大半の職場を閉鎖する部分的ロックダウン「サーキットブレーカー」を実施していたが、6月1日に同措置を解除し、感染の第2波を警戒しながら経済活動を再開する“ウイズ・コロナ”に踏み出している。
7月31日のバンコク大会以降の日程はどうなるか。公式サイトでは、当初の8月14日マニラ大会、9月4日シンガポール大会などの日程が掲載されているが、チャトリCEOは「世界各国の政府や多くの契約下の選手と調整を行ってきた。各国の状況によるが、再開後、6カ月から1年間はすべて無観客試合になる」と話している。
海外渡航制限や隔離措置の問題もあり、各国在住の主要選手が中心の大会となりそうだが、日本ではどうなるか。チャトリCEOが期待の選手の最後に「もちろんシンヤ・アオキも」とつけ加えた青木真也は5月31日の修斗後、ABEMAにて、「ジャパニーズMMAっていうじゃん? 結局、俺はそれを作りたいんだよね。そういう気持ちはすごく強い。俺、この前『やれんのか!』(大晦日 2007)を後付けで撮影をして、俺、こういうのをやっぱりやりたいって気持ちはちょっとあった」と、2007年の三崎和雄 vs.秋山成勲について言及。
さらに「ああいう感じで青木真也vs.秋山成勲を作れたら、僕が作りたいものになるだろうし、“セクシー山”対 青木真也じゃないんだよね。“魔王”対 青木真也なんだよね。あれこそジャパニーズMMAだと思います。あるなら当然やるし、その中で目の前にあることをコツコツとやって、まさに“いま、ここ、自分”で、現在のことに集中してやっていきたい。未来は明るくはないけど、未来を見て目の前のことを一生懸命やるしかないかなと思います」と、現在の気持ちを語っている。
刻々と状況が変化するなか、まずは7月31日バンコクでの大会再開でONEはどんな一歩を踏み出すか。注目だ。
再開後、6カ月から1年間はスタジアム会場での無観客試合を想定している
──競技者でもあるチャトリ会長にとってもロックダウン中はジムが恋しかったのでは?
「自宅にサンドバッグやムエタイグローブ、ダミーバッグ、柔術用のマット……ワークアウトに必要な道具すべてがここにあります。柔術やムエタイトレーニングが毎日できます。もちろんジムに行けないのは寂しいですが、セルフトレーニングをしています」
──ONEの再開スケジュールについて教えてください。
「2021年に予定されているイベントまで計画し、世界各国の政府や多くの契約下の選手と調整を行ってきました。ONEは7月(31日)に大会を再開します。再開後、6カ月からもしかしたら1年間はすべて無観客試合になるでしょう。もちろん各国の状況にもよりますが、優先すべきは安全です。選手、スタッフ、そしてファンが感染しないことが第一です。ですから、我々制作チームは今後1年間はスタジアム会場での無観客試合を想定しています。
選手たちが戻って来るのを何より心待ちにしています。格闘技はお金儲けをするというより、何よりも我々が一番情熱を注げる存在です。私たちは何より、格闘技が大好きなんです」
──日本では4月に「Road to ONE」が無観客で開催されました。5月31日には、日本において5月の唯一のMMA中継である「修斗」も。
「修斗の坂本(一弘)さんは尊敬できる友人であり、兄弟。私と彼に共通しているのは、2人ともすごく長い間、格闘技に携わっていること。そんななかで修斗がイベントを再開できることはすごく嬉しいし、修斗とONEは今後もともに協力しあっていきます」
悲観的なことを見聞きするが、美しい話も多い。医療従事者の献身、家族愛……大気汚染は100年ぶりに改善に向かっている
──このコロナ禍をどのようにとらえていますか。
「現在の状況は100年に一度と言われるほどの困難な状況であるということです。100年に一度ですよ。全世界が封鎖されていて、全世界で企業の倒産があり、公的私的問わず銀行も破綻し自殺者の数も急激に増えています。
アメリカだけを見てもたったの4週間で過去1年間の自殺者の豪快者数を上回りました。たったの4週間ですよ。更にアメリカの失業者は3000万人から4000万人もいると言われており、世界中の人々に与える影響は本当に深刻なものです。
そんななか、私も自分の部下たちがいて、私は彼らに対してリーダーとして泣き言を言ったり、弱音を吐くのではなく、この状況を乗り越えるためにこう言いました。『いまこそONEが偉大であり人々を奮い立たせるイベントであることを世界中に見せる絶好の機会だ』と。私自身も人々を勇気づけたりすることは楽しいし、チームはこの2カ月間、本当に毎日全力を尽くしています。毎日Zoom会議を行い、オンラインで日々起きている問題に対して話し合って、来る再開の日に向けて準備を行っています。
私自身、この危機に対してはとても困難だと思っていますが、これは一時的であり、これを機会に自分自身がどれだけ凄い人間であるか、他人に対して優しさや愛を持てる人間かを示す機会だともいえる。人間性を示す絶好な機会だと思います。
いろいろなメディアの報道で悲観的な内容を見聞きすることが多いですが、医療従事者の患者に対する美しい心や愛、隣人同士が支えあったり、家で過ごすことで家族愛を確かめあったり、美しい話も至るところで見聞きします。自然環境は大気汚染が100年ぶりに改善に向かっています。地球もまた回復に向かっています。
この危機の間、私はたくさんの楽観的な話を見聞きしました。この世界的な危機を乗り越えたとき、私たち人類は世界中でこれまで以上に良い環境で過ごすことが出来るでしょう。我々は#WeAreONEというハッシュタグのキャンペーンを通じて、真に一つであることを示しましょう」
日本と海外の行き来の問題はあるが、王座挑戦はランキングを遵守したい
──ONEで初めて公式に制定されたランキングはどのような位置づけとなりますか。
「この数年間、多くのファンや選手からランキングの発表を求められてきました。発表に当たって公平であることに重きを置いて、世界中の選手から構成されているONEにおいて、世界中から有識者を募りました。このランキングで誰が上位にいるか、王座獲得までに誰を倒すべきかを知ることができます。上位者が王座に挑戦することは必然となります。ファンや選手、メディアにとっても有益なものだと思っています。
しかし、シンガポールを例に見ても現在、すべてのジムが閉鎖されており、選手は試合に向けた練習をすることが出来ません。でも、日本は先日からジムを開けています(※東京では6月1日から)。でも、シンガポールと日本の行き来の問題など、不明なことが多いのも事実。(ランカー同士の対戦がどこまで実現できるか不明なものの)ランキングを遵守することに全力を尽くします」
【写真】2020年6月20日&21日に、ひと足はやく中国・上海で2日間連続でONEの各国版登竜門大会の「ONEヒーロシリーズ(OHS)」を無観客で開催したONE。20日の「ONEヒーローシリーズ13」のメインイベントでは、ズーラン・ジャシがONE新人のリャン・ フイを判定で下し、MMA戦績を13勝4敗1分(OHS3勝1敗)とした。21日の「ONEヒーローシリーズ14」のメインイベントでは、ONEキックボクシングで、シュー・リューがジャオ・ シャオユーを相手に判定勝ち。戦績を24勝6敗(OHS1勝1敗)としている。
若松、平田を早く観たい。秋山成勲はお気に入りの選手だ
──日本人のなかで王座挑戦の可能性のある選手は?
「もちろんいます。ONEは全世界で最大規模の団体です。あらゆるジャンルの格闘技で一番を決めたい。そんななかで日本人選手はいくつかの階級で王座に近い位置にいます。この1年間、日本人選手にとっては王座挑戦の機会はたくさんあると思います。そこで日本のファンにお願いがあります。どうか日本人選手を応援してください。彼ら彼女らに皆さんの愛を伝えてください。なぜなら、今後1年間で再び日本人選手が世界最強であることを示すことが出来るはずだから」
──大会再開後、ONEで試合を組みたい日本人選手は?
「怪我の回復状況が分かりませんが、若松祐弥はエキサイティングな試合をするので早く戦いを観たい。それに平田樹の試合も。そのほかも素晴らしい選手ばかりです。秋山成勲は私のお気に入りの選手。岡見勇信、内藤禎貴(のび太)、猿田洋佑……ほかにも素晴らしいアスリートがいる。もちろん青木真也も。今後、1年間で日本人から王座を獲得出来る選手が複数出るようにと願っています」
真の立ち技の世界王者はONEである
──立ち技のONEスーパーシリーズでは?
「キックボクシングはまた更にレベルが高く、ONEスーパーシリーズはキックとムエタイの世界一を決めるもので、私は世界中の立ち技の選手に『もしも自分が世界で一番のキックボクサー、あるいはムエタイ選手であることを証明したいならONEで戦って示せ』と言いたい。この数週間で更に有名な選手と交渉を行っています。
(※7.31バンコク大会にて、下記カードが決定。
ONEフライ級ムエタイ世界王座戦
王者ロッタン・ジットムアンノン
挑戦者ペッダム・ペッティンディーアカデミー
ONEフェザー級ムエタイ世界王座戦
王者ペットモラコット・ペッティンディーアカデミー
挑戦者ヨードセングライ・フェアテックス
ONEフェザー級キックボクシング
スーパーボン・バンチャメーク
シッティチャイ・シッソンピーノン)
70kgの階級を例に見ても王者のペトロシアン以外は、ほとんどが世界中のあらゆる団体の王者です。これは驚くべきことです。ほかの階級でも立ち技の強豪が参戦予定です。真の立ち技の世界王者はONEであると言えます」
“日本格闘技界の大坂なおみ”を誕生させたい
──日本選手や日本市場について、どのように分析していますか。
「立ち技に置いては、日本人選手はまだ王座挑戦の域に達しているとは言い難いですが、いつの日か日本人から世界王者が誕生する可能性は十分にあると思います。すでにMMAに関しては王座獲得の可能性が高いと言えます。
日本に限って言えば、正直、過去の日本大会の出来には満足していません。振り返ってみても中国やインドネシアと比較すると日本ではとても苦戦していました。中国やインドネシアは右肩上がりでしたが、日本はなかなか結果が出にくい。日本での展開を更に強化しないといけないと思いました。
日本には自国選手の世界王者や選手の物語が必要です。それらを両面で支え、日本市場を長期的な視点で見れば、武道や武士道、格闘技文化が根付いている日本に置いて、ONEの方程式であるバリュー・カチマン(価値観)やヒーローの物語は日本にとっても大きな存在になるでしょう。日本でのONE Championshipの状況をもっと改善させて、真の日本人のグローバルスーパースターを誕生させたいです。例えるなら大坂なおみ選手のような存在です。我々ONEにはそれを実現できる力とタレント、供給網を持ち併せているし、日々、成長している。日本人選手の今後にとても期待しています」
──最後にファンにメッセージを。
「現在、世界は未曾有の危機に瀕しています。あなた自身やご家族もとても困難な状況であると察します。でも、あなたの身の周りに起きている美しい出来事もあります。家族がこれまで以上に愛しく思えたり、医療従事者がどれほど貢献してくれているか、他人同士がどれほど互いを支え合っているか、こうした美しい出来事がたくさんあるなか、どうかネガティブなことばかりに目を向けないでください。これだけは忘れないで。世界の神々が私たちに100年に一度の困難を与えました。その目的は、単なる苦痛ではなく、私たち自身の偉大さと克服する力を世界中に見せるときなのです。日本のファンの皆さん、ともに乗り越えましょう。なぜなら我々は一つだから。We Are ONE」